我、深海棲艦ニ転生ス!   作:☆桜椛★

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我、行動ヲ開始スル!

ヲ級side…

 

 

シャボンディ諸島での戦闘から数日。私は現在、深海鎮守府にある会議室のテーブルに座って会議にて、シャボンディ諸島に行ったメンバーを代表して私と飛行場姫と戦艦棲姫、そして鎮守府に残ってもらっていた姫級4名を集めて会議を開いていた。

因みにシャボンディ諸島での戦闘は、一応私達の勝利という形で終わった。一応というのは、最後の私達の一斉射撃とサカズキ“大噴火”が激突して大爆発が起きた後、爆煙で視界が悪くなっている内に逃げられてしまったからだ。煙が晴れた時には既にサカズキの姿は無く、かなり遠くに気を失ったサカズキを担いだアイマスクを付けた背の高い海兵が走り去って行くのが見えた。戦艦棲姫と飛行場姫は逃すものかと彼等に狙いを定めたのだが、突然分厚い氷の壁が出現してそのまま逃げられたのだ。

飛行場姫はまだ艦載機で仕留めようとしていたが、正直言って別に絶対に殺す必要もなかったので、攻撃を止めさせてそのまま深海鎮守府に帰還した。まぁ、飛行場姫は滅茶苦茶不満そうにしていたので、帰りに攻撃して来た軍艦4隻を沈めさせてあげた。

しかし、今回の件で私達は確実に海軍に賞金首として指名手配される。天竜人を殺して、シャボンディ諸島の繁華街のど真ん中で海軍大将の赤犬と殺り合って、大将返り討ちにした上に帰りに軍艦4隻沈めて帰ったのだ。海軍や世界政府から見たら私達は天竜人を殺害した未知の力を持った大罪人だ。

だが、私としてはそもそもあの会ってすぐ奴隷にしようとする屑を守る海軍や世界政府が非常に許せないのだよ。

 

 

「ト言う訳デちょっとアチこちノ海ヲ私達の縄張りニして海軍ト世界政府ノ船ヲ沈めまくロウ思うノだけド、どう思ウ?」

 

「突然何ヲ言イ出スンデスノ?ヲ級」

 

 

私が満面の笑みを浮かべながらみんなに聞いてみたら、私の正面に座ってる鬼級の深海棲艦が疑問符を浮かべた。

彼女は《離島棲鬼(りとうせいき)》。外見は他の姫級や鬼級に比べて若干幼く、強くウェーブした腰より長い黒髪をしたお嬢様風。服装は頭には黒い大きな布が二重になっているボンネットとリブ生地のノースリーブに、膝丈位の黒のフリルフレアスカート。黒いボディストッキングのようなものを着ていて、露出は顔と手だけという全体的に真っ黒な服装だ。よく見るとボンネットのカチューシャ部分の横から角が生えており、背中にも角がある。

本当は今回の会議には彼女曰く姉の《離島棲()》が来る予定だったが、彼女は今手が離せないらしく、代わりに来てもらった。因みに離島棲鬼は語尾が「〜デスノ」で、離島棲姫は「〜デスワ」だ。そんな離島棲鬼はカップに入った紅茶を飲みながら私に聞き返してきた。

 

 

「イヤ、多分今回の件デ私達深海棲艦ハ海軍や賞金稼ぎニ常に狙われル事になるダロウ?それだけナラ私は気にスル事も無イ。襲って来たラ返り討チニすればイイ。しかし、あの屑ヲ守り、連中ノ犯罪行為に何もしナイ海軍と世界政府ガ気に食ワナイから嫌がらセしようト思っテナ」

 

「デモ意外デスノ。ヲ級ハアマリ争イガ好キデハナイト思ッテイマシタノ」

 

「ウン……私モ…ソウ思ッテタワ」

 

 

離島棲鬼に同意したのは《集積地棲姫(しゅうせきちせいき)》。深海棲艦としては初のメガネを掛けた姫級で、ヘッドフォンのような物を装着し、髪は大きく長い三つ編みにして首にマフラーのように巻いて、白いワンピースの様な服装をしている。彼女はこの鎮守府で物資の調達や、島の外の情報収集をしてもらっている。収集癖があり、偶に島に流れ着く漂流物や、沈めた海賊船から面白い物を拾っては、彼女専用の倉庫にコレクションとして大事にしまっている。後、工廠娘達と共同で新兵器や設備をよく開発している。

 

 

「そういウ時もあル。それデ?どう思ウ?」

 

「ワタクシ ハ賛成デスノ。キットオ姉様モ賛成シマスノ」

 

「ウ〜ン……私モ…別ニ構ワナイカナ」

 

「離島棲鬼と集積地棲姫ハ賛成カ。……他のみんなハ?」

 

「私ハ賛成ダ」

 

「私モサ」

 

 

離島棲鬼と集積地棲姫の賛成を確認し、私は他の飛行場姫と戦艦棲姫以外の姫級達に顔を向けた。戦艦棲姫と飛行場姫は聞かなくても賛成一筋だろう。多分この2人が現在ここにいるメンバーの中で1番進んで海軍とかを沈めるだろう。だが海軍にだっていい奴はいる筈だ。そこら辺は集積地棲姫に聞いて確認してから沈めるようにと言っておこう。

 

 

「私ハ、ヤリタイ事ガアルノデ、積極的ニハ参加出来マセンガ、賛成デス」

 

 

離島棲鬼の隣に座っている姫級が小さく手を挙げながら賛成してくれた。

彼女は《港湾棲姫(こうわんせいき)》。腰周りはキュっと引きしまり、臀部から脚にかけてはむっちりしたかなりグラマラスな体型をしており、トップスにはノースリーブのたてセタを連想させるリブ生地のワンピースを着用しているが、ボトムにはズボンやスカートの類ははいていない。白い長髪をしていて、額には大きな角が1本あり、両手には大きな鉤爪を持っている。戦闘以外では基本的に優しい性格で、よく建造されたばかりの深海棲艦達の世話をしたり、私が留守の時には食堂でみんなのご飯を作っており、みんなのオカン的な立場にある。ただ、彼女はその…何よりも目を引くのが横からはみ出ちゃうほどの巨乳であり、よく離島棲鬼などの胸を気にしている者達からは恨み篭った目で涙を流しながら睨まれたりしている。

……っていうか、やりたい事?

 

 

「やりたイ事ッテなんダ?初耳なんだガ」

 

「ソノ…《ヒューマンショップ》ナル物ニ、無理矢理奴隷ニサレタ者ガイルト聞イタノデ…」

 

「アァ……成る程、納得しタ。いいゾ、好きにスルとイイ」

 

 

ヒューマンショップは分かりやすく言えば奴隷専門店だ。そこには様々な理由で奴隷になった者達が、天竜人やどこかの国のお偉いさんに金で買われたりする場所で、天竜人が主に奴隷を買う為に利用するので海軍や世界政府も営業を黙認している店だ。その様々な理由の中に、親が金が欲しくて自分の子供を売ったり、海賊や人攫いに攫われたりと、無理矢理奴隷にされた者達が多く存在する。

つまり優しい性格の港湾棲姫は、そんな者達を出来れば元の居場所に戻す、または保護したいと考えているのだろう。それはみんな察しているのか、許可が出て聖母の様な笑みを浮かべて「良シ♪」と小さくガッツポーズをしている港湾棲姫を優しい眼差しで眺めていた。

 

 

「………私モ……賛成デイイワ」

 

 

みんなで港湾棲姫を眺めていると、ふと1人の深海棲艦が思い出したかのように小さく片手を挙げ賛成した。

彼女は《中間棲姫(ちゅうかんせいき)》。飛行場姫の様な白色ベースの成人女性型をしている。飛行場姫と比べると目付きが鋭くなっており、角の白色の部分の面積が増えている。服装は姫袖に大きく波打ったロングドレスと大人びたもので、顔の下半分を武骨な鉤爪状の艤装で覆っている。彼女は他の深海棲艦の中でもあまり表情を変える事がなく、まるで機械のような雰囲気ではあるが、意外と可愛い物好きである。以前私が作ったクッキーをパクパク食べる妖精さん達を普段からは想像出来ない穏やかな表情で見つめているのを目撃した。

これで取り敢えず全員の賛成を確認した。私はその後みんなにどのようにするかを詳しく説明した。

簡単に纏めると、鎮守府にいる姫級達はそれぞれ自分の気に入った島を中心に近海を縄張りとしてもらい、その海域に入った海賊や不正などを行う海軍、また天竜人がのる船や奴隷船(奴隷は保護)を沈める。一般市民や貿易船などには攻撃してはいけない。主にこの2つを守ればOKだ。他にも色々やってはいけない事、緊急時の対応なども話した。

 

 

「では、準備ガ出来次第行動開始。以上解散!」

 

 

 

 

 

 

マリンフォードにある海軍本部のとある一室。そこに今、海軍中将達と、重傷を負って入院中のサカズキ以外の大将。そして、今回彼等を呼んだセンゴク元帥が会議をしていた。議題は勿論、先日発生したシャボンディ諸島での天竜人殺害事件と、海軍大将に重傷を負わせ逃亡した犯人達についてだ。

 

 

「……以上を持ちまして、報告を終わります。」

 

「まさか…赤犬が負かされるとはな」

 

 

報告書の束を持った海兵の話を聞き、センゴク元帥は苦虫を噛み潰した様な顔をした。他の中将・大将達も同様である。

今回の件での被害は大きい。戦闘により、シャボンディ諸島の繁華街の一部が壊滅状態。シャボンディ諸島に置かれた海軍駐屯地に所属する海兵約500名の内約7割が死亡、2割が重傷、1割が軽傷。海軍大将赤犬が重傷。港に停泊していた軍艦4隻が轟沈。そして何より天竜人が1名殺害された上に犯人達にはまんまと逃げられてしまった。しかもそれが幼い子供を含めた女性7名による被害ときた。

 

 

「しっかし、あの嬢ちゃん達がこんな力を持ってるとはなぁ…」

 

 

手元の資料を見ながら頭を掻くアイマスクを付けた海兵は《クザン》。“ヒエヒエの実”の氷結人間にして、『だらけきった正義』を掲げる海軍大将“青雉”である。そして、シャボンディ諸島にて瀕死のサカズキを回収し、一度だけ犯人達の顔を見ている人物だ。

 

 

「しかも、全員が何かの実の能力者で、ロギアの能力者でもダメージを受け流せない。おっそろしい女達だねぇ〜?」

 

 

クザン座るサングラスを掛けた黄色いスーツの海兵は《ボルサリーノ》。“ピカピカの実”の光人間にして、『どっちつかずの正義』を掲げる海軍大将“黄猿”である。彼の言葉を聞いてセンゴクは頭を抱えたくなった。そんなセンゴクを見て、1人の老兵…海軍の英雄とも呼ばれている海軍中将《モンキー・D・ガープ》が豪快に煎餅をバリバリ食べながら笑い出した。

 

 

ぶわはははは!!なんじゃいセンゴク。いつもより窶れて見えるぞ?」

 

黙っとれガープ!!貴様はもう少し事の重大さを理解したらどうなんだ!!」

 

 

センゴクは呑気に煎餅をバリバリ食べるガープに怒鳴り声をあげた。しかしガープは全く臆する事なく普通に煎餅を食べ続ける。そんなガープにイライラしながらも、センゴクは話し出した。

 

 

「今回の件で、天竜人達は犯人を一刻も早く逮捕または処刑しろと言って来ている。本来ならばすぐに懸賞金を懸け、手配書を世界中にばら撒く所だが、天竜人が殺害されるのは前代未聞。更に海軍大将に1人重傷を負わせる連中だ。しかも写真も無い。写真は似顔絵にするとして、懸賞金は幾らにすればいいだろうか?」

 

「サカズキを負かすぐらいだからねぇ〜。軽く1億は超えてるよぉ〜?」

 

「しかもそれが複数人いるからなぁ……天竜人殺害した奴を億越えで後は5000から7000万辺りがいいんじゃあねーの?」

 

「う〜〜む……やはりその辺りが妥当か。良し、天竜人を殺害した娘を懸賞金1億4000万。他の者達はそれぞれ6500万ベリーで懸賞金を懸け「元帥!!センゴク元帥!!」ん?」

 

 

 

センゴクが話していると、ドタドタと廊下を走る足音が聞こえて来た。センゴク達が何事だと足音のする方を見ると、とても焦った様子の海兵が1人部屋に入って来て、海軍式の敬礼をした。

 

 

「報告します!!か、海軍第4、第7、第8、第12支部が、『深海棲艦』と名乗る先日の天竜人殺害事件の犯人と特徴が一致する者達から襲撃を受け!崩壊しました!!更に第9、第13、第18支部は現在襲撃を受け、ほぼ壊滅状態です!!」

 

「「「「「ッ!!?」」」」」

 

なんだと!?どういう事だ!!?何かの間違いではないのか!?

 

 

突然の報告にセンゴクは顔を驚愕に染め、クザン、ボルサリーノ、その他海軍中将達は目を見開いて騒めき、先程まで笑っていたガープも真剣な表情となった。


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