八幡のちょっとリアルな大学生活。   作:23番

17 / 32
お久しぶりです。遅くなって申し訳ありませんでした。
9月の最後になります。

大分期間が空いてしまいましたが、今回も読んで頂けると嬉しいです。

感想・意見・アドバイスなど頂けるともっと嬉しいです。
またお手すきの際にどうぞ。


9月③

 

 

 城廻めぐりは喘いでいた。

 

 お客さんの探していた本を見つけ、手渡すと柔らかな笑みとお礼が返ってきて、心が温まった。それが小さい子であるから、愛らしさまで追加されてつい頬が緩む。

 会計を終え、「ありがとうございました」と言うと、母親に連れられながら「お姉ちゃんバイバーイ」と手を振ってくれた。

 レジ前に設置された不要レシートを入れる箱に手を伸ばす。覗くと白い紙が溢れかけていて、危ない危ないと思いながらゴミ箱へと捨てる。時刻を確認すると、時計の針は八時を指す直前で、彼の休憩が終わることを示していた。

「ごめん、手洗い行ってくるわ」隣から声を掛けられた。4年の先輩だ。いかにも書店員と言うと書店員に失礼かもしれないが、前髪が目にかかる暗い顔をしていた。

「あ、はい」不意を突かれて思わず背筋が伸びる。

 エプロンを外しながら去る後姿を見つめる。三人で回すシフトに店長と社員はおらず、学生だけがこの店にいた。

 コトン、と本を置かれた音でお客さんの存在に気付いた。「あ、すみません。いらっしゃいませ」と言いつつ、お願いしますとか言ってくれたらいいのに、と心の中で毒づく。

 商品を手に取り、赤いライトに翳すと軽快な音を立てて金額が表示された。スリップを抜き取りながら、金額を口頭で述べる。そこで手に持つ本がライト文芸であることに気付いた。

「こちらの商品にカバーはお付けしますか?」顔を上げ、マニュアル通りの言葉を発した。が、そこで息が詰まった。

「ああ、じゃあ、お願いします」赤いジャンパーに身を包み、毛が逆立つような笑みを浮かべた男がいた。

「あ…」声を発しようにも、喘いだ声しか出ない。

 辛うじて動く眼球で男の姿を捉える。店内に冷房が効いているとは言え、今は夏。それなのに長袖のジャンパーを着ている男に、過去の記憶を蒸し返される。

 夏なのにすごいねー、と笑い、それ以来長袖しか着てこなかった目の前の男に、皮膚が拒否反応を起こし始めた。

「あのぉ、めぐりさん、カバー」

濁った声で名前を呼ばれ、吐き気すら催す。

 暗澹とした空気が体中を占めようとしたとき、冷たい手が私の腕を掴み、思わず悲鳴を上げそうになった。しかし、弾かれるように視線を動かした先にある顔は懐かしく、芯のある、あの教室でよく見た顔だった。

「すみません城廻先輩、事務所の金庫が開かなくて、ちょっと行ってきてくれませんか」頼み事をする言葉なのに、断定的な口調で手を引かれる。

「ひ、きが…」足に力を入れ、何とか踏み出す。

「すみません、少々お待ちください」比企谷君が男に向かって低く叫び、私を強引に連れる。

 階段近くまで来ると腕を離し、腰に手をやり、押してきた。「走って」と呟く。

 言われるがまま、押されるがままに足を踏み出し階段を昇る。途中、嗚咽が洩れ、口元を抑えた。

 事務所の扉に震える手でなんとか鍵を挿し、回すと転がり込んだ。背筋に悪寒が走り、急いで中から鍵を掛ける。

「はあ…はあ…」肩が上下しているのか、震えているのかすら分からなかった。

 耳を済まして誰も近づいてこないことを確認してから、大きく息を吐いた。

 事務所に設置してあるモニターに近づいて目を凝らすと、ちょうど赤いジャンパーの男が自動ドアをくぐるところだった。

 レジを映すカメラに切り替えると、比企谷君の顔がカメラに向いていた。その視線を受け、掠れる視界に涙が溜まるのが分かった。

 

「お疲れ様」セキュリティをかけて、振り返ると比企谷君が何かを言いかけるところだった。「どうしたの?」と尋ねる。

「…いえ」比企谷君は少しの逡巡のあと、首を振った。「車まで送りますよ」と言い、辺りに目を光らせた。

「…ありがと」申し訳ない気持ちが胸を締め付ける。

 ゴミコンテナに袋を投げ入れた後も、建物の影を睨みつけるなどしている彼を見ると、すごく頼もしく見えてしまい、いっそ縋ってしまえばいいのにと駆り立てる。

 先行する心を押しとどめ、深呼吸を繰り返す。

 闇夜に紛れて色の判別がつかない軽自動車の前に立った。元の色を知っている自分でも、実は夜になると色を変えるのではないか、と勘繰ってしまう程の紛れようだった。

「今日はありがとう」今日も、かなと心の中で苦笑する。「ごめんね」

「いえ、全然大丈夫ですよ」比企谷君の声は無理に明るくしている事がバレバレで、思わず笑ってしまった。

「あはは、ごめん、ごめん、ね」笑い声と泣き声の混じった音が自分の口から出ていることには後から気付いた。

 伸ばしてくれた彼の手を制して、頭を振る。揺れた髪が頬を打ち、発破を掛けられている錯覚がした。それでも、今は助かった。

「よし!」パチンッと頬を両手で叩いて顔を上げる。「またね比企谷君!」

 今できる最大の笑顔を、浮かべたつもりだ。

「…ええ、また」比企谷君は察してか、それ以上追及しては来なかった。

 私が車に乗り込むのを確認してから、彼は去っていく。正確には私が扉の鍵を掛けるところまで確認してからだ。

「比企谷君は優しいなあ…」憧れるような、欲しがるような声が出て、自分でも驚いた。

 ブレーキを踏み込み、エンジンを掛ける。車体が震え、フットブレーキを外した。ギアに手を掛け、ドライブに合わせる。前方に視線を向け、また息が止まった。

「あ…う…」

 息ができない。喘ぎ声だけが喉を通過する。

 肺が、身体が、空気を求めているのに、入ってこない。どうやって息をするのか忘れてしまったかのように何もできない。空気が、空気が欲しい。比企谷君…。

 いや、駄目だ。頼っては駄目だ。

 浅い呼吸を繰り返しながら、高校で習った講座を思い出した。生徒会を含めて行った体育祭向けの応急処置の内容だ。

 一端息を止め、お腹に手を当てる。ゆっくりゆっくりと腹式呼吸を繰り返す。負けない。私は負けない。

 呼吸が落ち着いてきたところで、強い覚悟をもってフロントガラスを見た。

 乗り込む前は暗さで気が付かなかったが、ガラスに液体が張り付いている。所々に塊の様なものも見えた。なんとか頭を働かせ、携帯で写真を撮った。証拠を残しておくといいと、いつか平塚先生に教わった。

 数枚撮り、一度顔を近づけ目を凝らすと、それは割れた生卵だった。視界に入っているだけでも六つは投げられていた。

 もったいないな、というのが率直な感想だった。流石に食べられないし、あの男が触ったものだと考えると指先にチリチリと違和感が出てくる。

 割れて垂れた生卵の先に、赤いランプがきらきらと近づいて来ていた。警察の巡回車だろう。

 視界に捉えてすぐ、ギアを入れてアクセルを踏んだ。警察が走る方向とは垂直に曲がると、赤いランプがバックミラーを横断するのが見えた。

 これ以上心配はかけられない。

 これ以上迷惑はかけられない。

 絶対に負けない。

 挫けそうな自分を置き去りに、強くアクセルを踏み込んだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 夏休みが明けた。明けた明けた言うけど、全然めでたくないんだよなあ。

 後期の木曜日は一限から講義があるが、それでも小町の方が家を出るのが早い。見送ってから部屋に戻ると、財布の中身を確認する。

 学期が始まってから二週間ほどは教科書販売の期間となっていて、大学内に併設された書店で教科書の購入を行う。前期は慣れない新入生の為に、一年生専用の期間が設けられていたが、後期からはその温情もない。ちらと見たことがあったが、すべての学年が入り乱れて購入する様はまさに烏合の衆。

 ため息をつきながら家に鍵を掛け、自転車に跨ると早々に漕ぎ出す。

 未だ夏は真っ盛りで、滴る汗に顔をしかめる。空には隆々とした筋肉を思わせる雲が漂っていた。

 

 駅に着いた車両から学生が雪崩のように吐き出された。もちろんその中に俺もいる。

 躓きながら流れに乗ると、一息ついた。通勤通学ラッシュにはいつまでたっても慣れる気がしない。外国人が満員電車に憧れるとか聞いたことあるけど、毎日乗ってたら絶対苦痛。まあ、その外国人も毎日乗りたくて憧れている訳じゃないだろう。

 駅構内をand more...として歩いていると、前方に見知った茶髪が見えた。確か木曜一限は学部固有科目だったから戸部も履修しているのだろう。

 話し掛けようと一歩踏み出したが、戸部に近寄る集団が見えて速度を緩める。挙動のおかしい俺に左右から怪訝な視線が飛んだ。

 まあ普通に面倒だし?話したいわけじゃないし?と言い訳しつつ首を縮こまらせる。エスカレーターではなく階段を選択し、駆け足でその場から離れた。

 教務課の近くで教室一覧を入手し、講義室へと向かう。

 さて、後期のはじまりだ。

 

 

―――

 

 

 例の通り、学期の初回講義はガイダンスで終わるため、早く終わったり、説明だけが長く続いたりと正直来る意味はない、と思う。一応行くけど。

 三限も早々に終了を告げられ、一時間を残して放り出された。教室に残っていてもよかったが、騒ぐ集団が必ずと言っていいほど存在するので距離を取る。え、友達?ミンナ、トモダチ、イーティー。

 小腹も空いたためにコンビニに寄る。昼時を過ぎた棚には残り物しかなく、空席の多いライブ会場の様でもあった。そりゃあガラガラの席でなんかやりたくないよなあ。

 仕方なくレジ横にあるスナック類に目を向けると、ハッシュドポテトが並べられたところだった。

 

 並べられた瞬間を見ていたのに、レンジでチンするよう指令を受け、コンビニに併設された電子レンジにポテトを突っ込んだ。十秒のボタンを押すと、勝手に動き始める。

 カップにささったストローを咥えて冷たいコーヒーを流し込むと、淹れたて独特の痺れるような苦みが口いっぱいに広がる。持て余した視線を店内に向けると、微かに残された商品を一つ一つ丁寧に並べ直す店員さんが見え、何となく居心地が悪くなった。

「鳴ってるぞ、比企谷」背後から掛けられた声に、驚いてコーヒーを溢しそうになる。ピーピーピーとレンジから音が鳴っていた。

「うおっ」振り返ると葉山がいた。「何してんだお前」

「何って、コンビニに来たに決まってるじゃないか」と肩を竦め、「次の体育までに小腹が空いてね」と笑った。

「ふうん」興味のなさが口から洩れてしまったが、特に罪悪感も感じない。ん?

「比企谷は何を買ったんだ?」と言いレンジの中を覗き込んだ。開ければいいものを、そうしないのは育ちの所為か、こいつの性格なのかは分からない。

 葉山をどかし、粘着を剥がすような音を立てて扉を開ける。「ただのハッシュドポテトだよ」言い方に棘があるのはご愛敬だ。うわあ、可愛くねえ…。

「特別なハッシュドポテトがあるみたいな言い方だな…」葉山は苦笑し、大股で店内に入っていった。

 スタイルがいいから大股に見えるだけで、葉山にとっては普通の歩幅なんだろうなと思う。

 近くの椅子ではふはふと冷ましながら食していると、葉山が戻ってきた。別に戻ってこなくてもいいんだけど…。

「すまん、真似した」椅子に座ると楽しそうに笑う。

「は?」なんだこいつ。俺の真似?他人に合わせて自分のレベルを下げるなって偉い人が言ってましたー。

 見ると、葉山の手には俺と同じポテトが握られていて合点がいく。そのまま追うと、葉山の口の中に三分の一程が消えた。

 口の淵を舐めた舌が油で光ったが、嫌悪感は湧かないから不思議だ。同じ仕草を材木座がしたら、向こう三年はハッシュドポテトが食えなくなるところだった。危ない。

「で、こんなところで何してんだ」一足先に食べ終えた袋を折りたたむ。「まだ三限の時間だろう」

 俺の問いに最後の欠片を口に含むと、俺と同じアイスコーヒーで流し込んでこちらを向く。「ガイダンスだけでね、四限までの時間潰しさ」さっきも言ったけど、微苦笑した。

 面倒くさくて頭を働かせていなかったが、先ほどの違和感が頭を貫いた。体育?

「もしかして四限のサッカー取ってるのか?」ストローを咥えた葉山に訊く。

「え? ああ、そうだよ。比企谷に断られたから一人でやって来るよ」そう言う姿には哀愁が滲んでいる。

 講座に車校と夏休み中に頻繁に会っていたからか、葉山の感情に少し敏感になっているのかもしれない。

「そういえば比企谷は何にしたんだ? 体育」葉山が少し身を乗り出し、「卓球か?」と言う。一色といい馬鹿にしてんのかコイツ。チョレイすっぞ。

「…サッカー」自分でも驚くほど声が出なかった。案の定、葉山は「え?」と聞き返してくる。

「サッカー」今度ははっきりと、でもぶっきらぼうに言うと、葉山の顔に陽が射した、気がした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 三浦との邂逅を果たす日。俺の心を映したわけではないだろうが、あいにく天気は崩れた。黒々とした雲が空を覆い、雨粒が安物のビニール傘を突き破らんとばかりに打ち付ける。お陰で気温はさほど高くないが、じめじめとした空気が身体に纏わり付いてため息が出た。

「ヒッキー?」

 以前は毎日のように耳にしていた名前を呼ばれ、ハッとして声のした方向を向く。

「おお」あの晩以来か、由比ヶ浜が立っていた。

「ごめんね、行こうと思ってたカフェがこの近くで…」由比ヶ浜が申し訳なさそうに眉を下げる。外で待たせていた為だろう。

 学校終わりの集合に、定期区間外だったお金を少しでも節約しようと歩いた俺の落ち度でもあるので「いや、気にすんな」と首を振った。

 ピンクの傘から滴り落ちた水滴を目で追うと、由比ヶ浜のペディキュアが目に入った。素足にサンダルという夏らしい出で立ちだ。視線をそのまま持ち上げると、膝が見え隠れする紺色のフレアスカートにボーダーのシャツ、その上にネイビーのMA-1を着ていた。少々暑そうな気もしたが、生地が薄いのと腕まくりをしているので汗の一つも見えない。

「どうしたの?」由比ヶ浜が首を傾げる。それに再び首を振り、由比ヶ浜の奥に見え隠れする赤色の傘を見つめる。

 それに気付いた由比ヶ浜が横にずれる。傘で顔は見えないが、お馴染みの金髪縦ロールが目に入った。どうしてこうも厄介事を持ってくる主は警告色を用いるのか。

「よ、よお」あの夜の一件を思い出すと、彼女の肌に罪悪感が湧いてくる。傘を持つ手には夏だというのに袖が掛かっていた。

 地面と垂直に持ち上がる傘は、スローモーションのように遅かったが、それは実際に躊躇していたからだろう。焦れるように持ち上がり、ついに面と向かって再会を果たした。

「ひ、ひさしぶり…じゃん、ヒキオ…」俺の傷を目視したのか、最後の言葉は横に逸れた。

 いつかの彼女とは程遠い、覇気のない雰囲気に言葉が詰まる。

「よし!」由比ヶ浜が宣言するように声を高く上げ、「いこっか」と俺と三浦を交互に見た。

 その瞳は優しく、彼女のすべてを受け入れているのだと感じた。

 そんな三浦を、羨ましく感じる自分すらいた。

 

 

―――

 

 

「でさー、結局C判定ばっかでー」運ばれてきた飲み物に口もつけず、テーブルの向かいに座る由比ヶ浜は沈黙を縫い合わせるように話していた。「優美子はどうだったんだっけ?」と隣に訊く。

「あたしは…一応フル単」三浦が呟くように答えた。

「ヒッキーは?」とこちらを向いたが、「いや、やっぱり言わなくていい!」と手を振り、「なんか悲しくなりそうだし…」と項垂れた。

「忙しない奴だな…」ため息に近いものが零れる。

 ぽつぽつと会話も生まれ始め、お目当てと思われるパフェが運ばれた時には三浦の顔には笑顔が見えた。二人から感嘆の声が上がる。

 俺も運ばれてきたケーキを頬張っていると、チラチラと視線を感じた。そちらを向くと三浦が急いで顔を逸らす。再びケーキを食べていると、やはり視線を感じる。しかしその視線は嫌悪や敵意に近いものではなく、何か腫物に触るようなものだった。

 ああ、と納得し絆創膏で守られた傷を思い出す。

 

 傷は順調に治り始め、もう瘡蓋となっていたのだが、今朝の俺の枕は血に濡れていた。唖然とする俺に小町が面倒くさそうに顔を歪め、絆創膏を貼ってくれた。そんな顔しなくても…。

 治りかけ特有の痒みに襲われてはいたが、そのような誘惑に乗るような歳でもなく完治を目指していた。しかし意識のない俺に抗う術はなく、あっけなく瘡蓋は剥がれ流血事件となった。血の塊となった傷に再び痛みがやってきたが、負った当初の様な酷いものではなく胸を撫でおろした。

 手際よく枕カバーを洗う小町になんでそんなに上手いんだと尋ねたら、視界が明滅するほどのビンタと他の女の子にそれ言ったら駄目だよ、という旨のお叱りを受けた。傷よりも叩かれた頬の方が痛い。ご褒美とか言ってるやつマジまんじ。

 

 今朝の記憶を掘り起こしている内に知らず頬をさすっていて、由比ヶ浜に怪訝な視線を向けられたが、「いや、ほっぺたが落ちるほど美味しくて」というと満開の桜のような笑顔ではしゃいだ。

 頬は千切れないが、それなりに美味しいケーキを食べ終えた俺は一回無料というコーヒーのおかわりを頼み、再び彼女らを見やった。

 二人で一つを食べていたパフェはとうに空になっていて、テーブルの淵へと追いやられていた。用のないグラスに既視感を覚えてか、心がざわつく。

「あーし…、その…」声にも少し元気が戻り、お得意の口調も再発したところで三浦がゆっくりと口を開いた。隣の由比ヶ浜の腕が三浦の太もも方向へ伸びている。テーブルで隠れているが、いつか俺も励まされた状況がありありと浮かぶ。「ごめん…なさい」

「あのね、優美子ずっと気にしてたんだよ」そこで由比ヶ浜が口を挟む。「ちゃんと謝りたいって、ずっと言ってたの」

 今の三浦の状態を見ると、誠実な謝罪には見えない。項垂れ、か細い声は、恐らく誰にも届かない。しかし、それ以上に彼女に再会してからの視線はとても痛々しく、あのグループで偶に見せる心配性な一面をこちらに披露していて、謝罪以上に胸を突いた。そしてそれ以上に、俺が気にしていないのだからどうしようもない。

「ああ、いいぞ」コーヒーを啜りながら、あっけらかんと答える。

「え…」三浦の声が裏返った。

 こちらに向けて、意味の分からないといった趣旨の視線を送る三浦の肩に、由比ヶ浜が手を置く。

「あはは、ほらね優美子」由比ヶ浜が笑う。「ヒッキーはそんなこと気にするような人じゃないって」

「いや、でも…怪我して…」尚も沈んだ声を発する彼女を見て、許さない奴がいたら俺が許さない、と口走ってしまいそうな程に、涙ぐむ瞳はか弱かった。

「いや全然いいぞ、むしろ講座でグループワークの練習したとき会話の種になってめっちゃ助かったし」と言い、「最近猫の忍者に追われている」と付け加えた。

 とんでもなく冷たい視線が飛んできたのは承知の上だったが、それが三浦からも向けられるのは想像していなかったために背筋が凍る。いつかの女王の風格が漂い始めたのかと肩をすぼめた。

 それでも、と声がした。「それでも、迷惑かけてごめんなさい」と三浦が頭を下げた。再び顔を上げると、今度は身体を由比ヶ浜に向け、「結衣も、ごめんなさい」と首を垂れた。

 最初は驚いた顔をしていた由比ヶ浜だったが相好を崩すと、「うん、いいよ」と三浦の肩を持ち上げた。

 

 

―――

 

 

 俺が葉山の名前を口のすると三浦の表情は強張ったが、由比ヶ浜から事前に話は聞いていたのだろう、拒否するようなことはなかった。

「海老名が…」三浦はどこか上の空でそう溢した。

 海老名さんが関係の修復を望んでいることは確実で、戸部の話を聞くかぎり大きな蟠りはない様に感じた。だから、この問題に関してはストレートに伝えた。あとは三浦の答えを聞くだけだ。

「優美子は、姫菜の事嫌い?」由比ヶ浜が優しく訊く。

 それに三浦はぶんぶんと首を振った。

「じゃあ、大丈夫だよ」由比ヶ浜が続けるが、三浦はなかなか首を縦に振らなかった。

「結衣は知ってるでしょ…」

 囁くように、毒づくように、三浦が言った。その声は由比ヶ浜の励ましを減退させるには十分だったようで、表情が曇る。

「姫菜も気にしないって」由比ヶ浜が苦しそうに言うが、三浦は、「そんなの分かんないじゃん」と何度も唇を噛んだ。

 水掛け論のように何度も繰り返す彼女らを見て、考える。手元にある携帯には、新規メッセージが到着していた。

 一つ息を吐き、ゆっくりと、ただしっかりと口を開く。「パニック障害」

 二人の視線が俺に向られた。そこに含まれているのは驚き、そして困惑。

「な、なんで…」三浦の口がワナワナと動いた。「なんで知ってんの」と言うと由比ヶ浜に顔を向けた。「まさか結衣…?」

 由比ヶ浜は首を振ったが、三浦がさらに詰め寄ろうとしたために言葉を続ける。「由比ヶ浜は関係ない」三浦の動きが止まる。「本当だ、由比ヶ浜は何も言ってない」

「じゃあ、どうして…」少し息が荒い。

「薬だ」三浦の眼を見て言う。

「薬…?」

「三浦の家に入ったのは知ってるよな」俺の言葉に二人が頷く。「その時、救急箱があるのが不思議だった」

「え、でも救急箱くらい普通あるんじゃ…、私の家にもあるよ?」由比ヶ浜が首を傾げる。

「それは所謂実家だからだろう、一人暮らし、ましてや大学生の部屋に救急箱なんて普通は置かない。置いたとしても、精々消毒液か絆創膏程度が相場だ」

「それだけで…」三浦が歯を食いしばった。彼女の中で病=悪という方程式ができてしまっているのが分かる。

「それだけじゃない」と言い、あらかじめ検索してあったネット記事を画面に表示させて二人に見せる。「悪い、ちょっと調べた」彼女らの視線の先には”抗不安剤”の文字があるはずだ。

 救急箱の中にあった薬の中に、不自然にゴムでまとめられた薬があった。市販の薬ならば箱ごと保存するのではと気になり偶々名称を覚えていたのだ。

「あ…」三浦が観念したかの様な声を出す。

「いや、別に病気がどうこう言いたいわけじゃない」慌てて言葉を繋いだ。事実、病気について聞きたいわけじゃなかった。

 彼女の足枷となっているものの正体を暴き、それを取り除きたかっただけなのだ。

「優美子…」由比ヶ浜が三浦の背中をさする。

 キッチンだけがやけに綺麗だったのも、精神疾患で見られることだという。どうしても汚く見えてしまう。それも判断材料ではあったが、この場でさらに追及する必要もないだろう。

「三浦が長袖を着ている理由もそれか」二人の肩がビクついた。

「ヒッキー」由比ヶ浜が責めるような声を出す。

「すまん」一言謝るが、やめるつもりはなかった。「見せてもらわなくてもいい」拳を握りこむ。「それは痕を隠すためか」

「ヒッキー!」平日の昼間、俺たちしかいない店内に由比ヶ浜の大きな声が響く。それを無視して、三浦を見つめ続けた。

「違ったら、否定してもらってかまわない」意地悪だなと、自分でも思う。

 項垂れたままの背中に、由比ヶ浜の手は添えられたままだ。三浦の腕が動き、ゆっくりと袖に近づく。思わず唾を飲み込んだ。心臓の音と共に、救急箱の下に隠された包帯の束を思い出した。

「そう」三浦が顔を上げ、それと同時に袖をまくり上げた。「これを隠すために長袖を着てる」強い口調だった。そうしなければ、立っていられないとでも思わせる口調だった。

「そうか」否定も肯定も、してはいけない。

 三浦の腕には数本の、皮膚が切れ、修復した痕が見られた。薄いものではあるが、確かに彼女の身体に刻まれている。

「もういいよ優美子」由比ヶ浜が宥めるように袖を戻す。「ヒッキー…」こちらを向くと、非難するように哀しい目を見せた。

「引いたでしょ」三浦が吐き捨てるように言う。

「いや」それを否定する。

「嘘つかないでよ」

「嘘じゃない」さらに否定し、「そして、これから彼女が言う言葉も嘘なんかじゃない」と後ろを振り返る。

 彼女たちの表情は見えないが、椅子が動く音がした。

 俺と由比ヶ浜の予定合わせがこんなに難航した理由、振り返った視線の先には、一人の女の子が立っていた。海老名姫菜だ。

「え、びな…」三浦の声が後ろからする。掠れた声に、怯えが混じる。

「姫菜…」由比ヶ浜も驚いたのだろう。これは俺の独断で行ったことなのだから。

 海老名さんは一歩ずつ近づくと、由比ヶ浜の隣に立つ。「結衣、そこ座ってもいい?」と訊ねた。

 コクコクと頷いた由比ヶ浜は俺の隣にそさくさと移動し袖を掴む。

「久しぶり、優美子」海老名さんが微笑む。

「海老名、あの…」しどろもどろになりながらも、何とか口を開こうとする。しかしそれを海老名さんが制した。

「見てもいい?」三浦の腕を取り、優しく訊く。「嫌なら見ない」

 三浦の肩は震えていたが、息を吐くと瞑目し、了承した。

 袖をゆっくりと持ち上げ、傷を見るや海老名さんは触り始める。「痛くない?」「うん」「結構古いね」「うん」「最近はしてないんだ、偉いじゃん」

 二人のやり取りはまるで、母親が子供の怪我を誉めるときのように見えた。三浦の瞳にはみるみる内に涙が溜まっていく。

 小さな声でやり取りを続ける彼女らを見てか、由比ヶ浜の眼にも涙が浮かぶ。俺の腕は潰れるくらいに握られていた。「痛いですガハマさん」

「あ、ごめん」と言い、手が袖に戻った。

 

 三浦の頬を涙が伝う頃、俺は席を後にする。後の事を由比ヶ浜に託した。

 今になって店内に流れる音楽に気付き、そんなに緊張していたのかと苦笑しそうになる。

 些細な事で発症する精神疾患。誰しもにトリガーがあり、それが彼女には人間関係だったのだろう。その根本的な原因を作ってしまった葉山に、彼女は会えない、でも会いたいと心の乖離が起こった。

 しかし、彼女の状況は良さそうに見えた。病に侵されている様子はなく、傷跡も海老名さんの言う通りに古いものばかりに思えた。

 葉山なら真摯に受け止めてくれそうな、という甘い考えかもしれないが、奴なら問題ないだろう。

 店を出ようとしたところで、遠くの席に青髪のポニーテールが見えた。近寄って声を掛ける。「寂しいか」

「別に」俺の視線から逃れるように、窓の外に目を向ける。「姫菜が楽しいのが一番だし…」

「そうか」海老名さんも怖かったのだろう。拒絶された時の恐怖を考え、川崎に付いて来てもらったのかもしれない。

 それは歪んだ関係だ。と誰かは言うかもしれないが、そんなことはないと思う。誰かの拠り所になるという事は、もっと誇っていいはずなのだ。

「京華、あんたと会いたがってるんだけど」とぶっきらぼうに言われたので、「じゃあ、今から会いに行くか」とぶっきらぼうに言うと、驚かれた。

 店を出て川崎と共に傘を差したところで、何故か”共依存”というフレーズが頭を掠めた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 今にも雨が降り出しそうな曇天の下、相も変わらずじめじめとした空気は肌を障る。

 9月最終日、木曜日の四限は前期に続いて受けることとなったサッカーが恒例となっていた。隣に座る葉山に目を向けると、前期と同じ講師の前期と同じ説明をにこやかに聞いていてイラっときた。さらにその向こうには葉山目当てと思われる女子生徒が増えていて、今度は悲しくなった。

 例年男子に人気のサッカーに女生徒が押し掛けた為、人数調整がうまくいかずに最終的に定員が空いてしまった、という噂が大学内に出回っているのはあながち嘘ではないのかもしれない。イケメン過ぎて大学に迷惑かけるとかどんだけだよコイツ。

 体育講師に視線を戻すと、色めき立つ女生徒への対応を図りかねているのか注意力は散漫な気がした。大人しく座っている男子生徒もどこか浮足立っているようで、やけに髪の毛を整えたり、わざとらしく身体を伸ばしているのが見て取れる。

 準備体操が始まる頃には暑い雲の隙間から陽が射し、未来への光明が見えた気がした。

 依頼もようやくひと段落しそうだ、と息を吐く。

 

 憂鬱な体育も終わり、あとは葉山と話をするだけだ。しかし、胸の中には何故か暗澹とした空気が立ち込める。

 着替えを先に済ました俺は、体育施設の出入り口付近に設置された石造りのベンチに腰掛けていた。扉から続々と出てくる顔には、一日の拘束から解放されたという晴れやかな表情が浮かんでいる。

 葉山と会話をする。それは俺の今日における至上命題だったにも関わらず、気分が下がる。いや、下がるというよりは、揺らぐ。訳のない不安が背中に圧し掛かっていた。

「すまん、待たせた」

 頭上から語り掛けられた言葉に顔を向ける。今日もシャワーを浴びてきたのだろう、濡れた髪が長身痩躯に映える。

「いや、そんなに待ってない」と言い、立ち上がる。「二十分ぐらいだ」嘘だ、十分も待ってない。

「あはは、授業中からカウントされたら俺も弱る」葉山が白い歯を見せた。

「とりあえず行くか」

 葉山を連れ、学部棟のある方向へと足を向ける。陽が差したと思った空には灰色の雲が再び覆っていて、雨が降る前に着きたかった。幸い葉山も天候を察していたのか、二人の歩みは揃う。

「すまない」歩き出してすぐ、葉山が口を開いた。「君の頑張りには答えられない」

 半歩後ろに鳴る足音がコンクリートを叩く。その音が俺を責めているようで、思わず唇を噛んだ。

「何のことだよ」声に苛立ちが孕んだ。

「今朝、優美子から連絡がきた」葉山は用意された台本でも読むかのように、無機質に話す。「もう一度会いたいって」

「会えばいいじゃねえか」と口を挟むが、「優美子の病気の事も聞いた」と葉山は構わず続ける。

「ならなおさら…」と言いかけたところで、葉山が低く、鋭く叫んだ。「できないんだ」コンクリートの道が砂利に変わり、歯ぎしりの様な音を立てる。「これ以上迷惑は掛けられない」

「迷惑…?」葉山が何を言っているのか分からず、繰り返す。

「だから、すまない。色々していたらしいが、俺は応えられない」

「どうしてそこまで」俺は直接訊ねることにする。こうなった以上はそれが一番近道で、最善に思えた。

「……」

 だが、それに葉山は答えなかった。代わりに意外な言葉が返ってくる。「戸部に…」後ろを振り向くと俺は目を剥いた。「戸部に伝えてくれ」葉山の顔は苦痛に歪んでいる。

「何をだ」

「俺は、別に怒ってないって」そう言い、顔を伏せた。

 立ち止まる俺を追い越し、そのまま去っていく。聞きたいことが山ほどあるのに、葉山に追いつこうと歩を進めるのに、暗闇に取り残された気がした。

 その日はそれきり別れた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ただいま…」

 深夜一時近く、両親は寝静まったのだろう、靴はあったがリビングに光はない。スイッチを押すとチカチカと音を立てて電気が付いた。

 ソファに身体を預け、ポケットから携帯を取り出す。戸部からの返信は、まだない。

 怒っていない。そう言った葉山の言葉が今日一日、頭の中を反芻していて仕事に集中できなかった。何回かポイントのサービスをつけ忘れてしまったが、怒られないだろうか。

 いくら考えても、その言葉に心当たりがなかった。風呂敷の上に広げ、あれでもないこれでもないと探し回っているうちに、ついにピースはなくなった。

 それもそのはず、あの葉山の表情を見れば、俺の推測は間違っていない、筈だった。

 

 彼らの願いは関係の再構築、それで問題はない。戸部の願い、海老名さんの依頼、三浦の涙、葉山の瞳。全てが一つの居場所を目指し、そこに戻ろうともがいている。

 海老名さんと三浦の障害はもうない。病気の告白は上手くいったようだし、なにより三浦の独断での接触は吉報以外の何物でもない。あの後すぐに由比ヶ浜に連絡を取ったが、三浦の状況は良好らしい。会えないと言われて一悶着あったそうだが、それは三浦自身が葉山の状態の不可解さに納得できなかったからだという。

 戸部に関しては最初から何も問題はなかったはずだ。謝罪したい。それだけが戸部の願いだ。確かに自動車学校の一件での戸部の行動は予定外だったが、後に緊張や不安で上手く話せなかったと言われてしまえばどうしようもない。とにかく、戻りたいという四者の意志が統一されていることに、俺の気が囚われていた。

 戻れない理由、というものの存在を考慮していなかった。

「俺は比企谷とは違う」その言葉に含まれた意味。もちろん俺と葉山は違う。「進級や進学程度では人間関係はリセットされないよ」と言ったのもあいつだ。では、何故。

 

 もう一度、携帯の画面を表示させる。相変わらず戸部からの返信はない。葉山の発言の意味を理解しなければ、戸部が何を隠しているのかすら分からない。

 机の上に携帯を置き、シャワーを浴びようと立ち上がる。

 窓の外には、未だ蝉の鳴く声は響き渡り、秋の訪れはまだまだ先に感じられた。

 廊下へと続く扉のノブに手を掛けたところで、携帯から新規メッセージの通知を告げる音が鳴った。素早く近寄り、手に取る。

 日付は回り、十月に入っていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 平塚静は表層に触れていた。

 

 店内に響く音楽は何だろうか、と耳を傾けているとセンスのいい、アンティーク調の時計が目に入った。時刻はもう一時になる。

「ねえ、聞いてるのーしずちゃーん」下の方から声がした。

 この世で唯一、私をこの呼び名で呼ぶのは彼女しかいない。

「陽乃、少し飲みすぎだ」机に突っ伏す彼女の手から、グラスを取り上げる。「マスター、水二つ」

 かしこまりました、と言い五十代半ばといった白髪の似合う男性が奥に下がる。もうあの年代でもいいかなあ…。

「比企谷君があ…すう…」小一時間ぶつぶつと一人の名前を呼び続けて疲れたのか、すうすうと寝息を立て始めた。

「こらこら陽乃、風邪ひくぞ」肩を二、三度揺らす、が深い眠りに入ってしまったようだ。「まったく…」

 お二つでよろしかったですか?とマスターが声を掛けてきた。それに、いや、と首を振り一つだけグラスを受け取る。

 完全無欠の傍若無人。そう振る舞う彼女もこうしてしまえばただのあどけない少女。精神的な面でいえば妹の方が自立していると思われる。それを言うと益々対抗心を燃やすから言わないが。

 さあ、このあどけない少女を爪牙に掛け、昔の教師に腹心を布くほど追い詰めた主に説教の一つもしなければならない。

 携帯の画面を表示させ、メール画面に切り替えようとしたところでLINEに通知が入っていた。

 期待に胸を膨らませ、画面を這うように指を動かす。もしかしたら今日の婚活で連絡先を交換した男性かもしれない。二十六歳とかいう食べごろ…ゲフン、自立したいい年齢だった筈だ。

 はあはあと息を荒げていると、マスターが奥に引っ込んでいった気がした。しかし今はそんなことどうでもいい!

 勢いよく画面をタップする。

『今日はありがとうございました。

 これからもお互い頑張りましょうね!』

「チィッ…!!」思わず舌打ちが出た。渾身のシュートがゴールポストに弾かれた気分だ。

 実際は掠りもしていないのではないかという自問を無視して、赤いマークのついた友達追加画面を開く。もしかしたら今日いた人が表示されるかもしれない。

 一番上の欄が少し色が違う為、これが新規の友達候補だろう。名前を目で追う。ひ、き、が…。

「ふっ…」君は変わらないな。

 画面の表層に軽く触れ、友達追加のボタンを押した。

 プロフィール画像はいつか聞いたカマクラという猫だったが、名前をタップして開くホーム画面は、夕日の眩しい、懐かしい景色だった。

 奉仕部の窓から何度も見ていた、彼の思い出だった。

 

 

 




読んでくださってありがとうございます。
次回は10月に入ります。

申し訳ないのですが、更新が遅くなると思います。ひと月に一話は完成させたいとは考えているので、もしよろしければ待っていていただきたいです。

意見、感想、アドバイスなんでもお待ちしております。
では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。