サーヴァントといちゃつくだけ   作:PRD2

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通常エレナ
「貴方のことをマスターとは呼べないわ。それは私にとって、マハトマのことだもの」
水着エレナ
「ねぁ、たまにはマスターも一緒にお茶でも飲みましょうか」
……どういうことなんだろう。
やはり水着だから細かいこと気にしないようにしてるんでしょうか……幕間だと名前呼びでしかも呼び捨てですし。
この小説では基本『立香』で通そうと思います。
何気に名前呼び捨てって初ですね。
バブみのエレナさんはちょっぴり休業。癒しが欲しい時間なのでしょう。
それでも良ければ、読んでやって下さい。


エレナ・ブラヴァツキー 01

「ねえ、立香は将来何になりたいの?」

 椅子に座って本を読んでいた立香は、私の言葉に顔を上げて此方を向いた。ポール・バニヤンと一緒に作ったという木の椅子が、床と擦れて音を鳴らす。

 彼は少しキョトンとした顔をした後、考えるように声をあげながら読んでいた私の著書である『秘密教義(シークレット・ドクトリン)』に栞を挟む。彼は意外と好奇心と知識欲があって、今読んでいるように自分のサーヴァントについて良く知ろうと本を読むことがあるらしく、先日はアレキ君とイーリアスについて話をしたと言っていた。

 そのまま腕を考えて唸り始めた彼を見ながら、私は彼のベッドに寝転んで枕を抱きながら、布団を足でパタパタとはたいた。少し埃が舞ったけど、私は気にせず枕に頬を付けて彼を見る。

「……何に成りたいっていうのは決めてないかな。取り敢えず勉強は続けて、大学にはいきたいなー、とか?」

 彼の答えは、そんな漠然とした物だった。

 いわゆる、一般的な現代の高校生なら、そういった答えはきっと珍しく無いのだろう。たとえ立香が人理修復という大任を任されたとしても、きっとそういう部分は変わることはない。

 それについて、私は何か言おうとは思っていない。どこまでいこうと、どこに辿り着いてもそれは彼の人生だから、私は背中を押してあげることくらいしか出来ない。

 ただ、一つ言おうと思っていたのは、

「でも、あなたここまで神秘に足を突っ込んじゃったんだから、どうやってもこっちの世界からは逃げられないんじゃないかしら?」

「あー……」

 そういえばそうだった、とでも言いたげに声をあげる彼が何だかおかしくて、私は少しだけ笑ってしまった。

「ふふっ、今さらになって気付いたの? 立香、あなたやっぱり、ちょっと抜けてる所があるのね」

「いや、全然考えてなかったよ……オレ、魔術とか全然使えないから、多目に見てくれたりしないかなぁ」

「まあ、確かに補助がないとガンドも打てないんじゃ、魔術に関わるのは難しいと思うけど……でもそれなら、他の神秘に目を向けるのもアリだと思うの、私は」

 少しだけドキドキしながら、その話を切り出す。不自然じゃないかとか、気に障ったりしないかとか、そんなことを気にして、私はつい彼の枕に顔を埋める。

 優しい洗剤の匂いの中に、彼の匂いが少しだけして……何だか安心する。同じ備え付けのシャンプー使ってる筈なのに、私とは違った男の人の匂いがするのは、何だか不思議。

「他の神秘?」

「えぇ、別に魔術が使えなくてもこっちの世界には、色んな不思議が満ち溢れてるわ。魔術は時計塔とかで学べるけど、きっとそういう世界の不思議は、他にも色んな場所で学べる。いえ、時計塔じゃ学べないことは、世界中に沢山あると思うの」

「ふむふむ」

 ……食いつきは、いいかしら。

 頷く彼を見て、動いていた足が少しだけ早くなる。

 急いてはいけない。

 あくまで慎重に、ゆっくりと、気づかれないようなかんじで、自然とした態度で。

「確かにマスターにとっては神秘よりも科学の方が親しみがあると思うけど、だからこそ科学では説明出来ないことって素敵じゃないかしら? かつて太平洋にあったレムリア、超自然的集合体たるハイアラキ、古きことと新しきこと……真理を探求すること。どう、考えただけでマハトマを感じないかしら?」

「なる、ほど?」

 話していて気持ちが昂って、指をくるくるさせながら得意気に語ってしまった。立香は頭に疑問符を立てながらも、一応は頷いている。

 ……どうかしら?

 食いつきは良好、反応はまずまず。

 ──多くを語るのはきっと得策じゃない。語れというのなら幾らでも話してあげたいけど、恐らく途中からヒートアップして立香を引かせてしまう。それは私の望むところではない。

 ならここは、少年に眠る知的好奇心と探求心に訴えかけるのが良い。

「……つまりエレナは、神智学を学んでみるのはどうかと言いたいの?」

「ふぇ!? なんで分かっ、いや、あの、そういうわけじゃないっていうか……」

 立香の鋭い指摘に驚いて、変な声が出た。

 咄嗟に言い繕ろうと、体を起こして言葉を探してみるも、思うように言いたい言葉がでない。自然と抱き締めていた彼の枕で、見られないように顔を隠す。図星を突かれたせいで、今の私はきっと耳まで林檎みたいに真っ赤になってるだろうから。

 そのまま色々考えてみたけれど、結局言い訳なんか出てこなくて、

「あ~もうっ! その通りよ、立香! 神智学とか学んでみる気はないかしら!」

「な、なんでちょっと怒ってるの?」

「怒ってないわよ別に! ……まだ若いあなたに、しつこく薦められたなんて思われたら……なんか嫌じゃない」

 顔を赤くする私に彼はたじろいだが、そのまま静かに諌めようとする姿を見ると、なんだか色々悩んでいた自分が馬鹿みたいだった。

 ──正直にいえば、私は立香に私と同じ道を歩んで欲しいと思ってる。世界の叡知を追い求め、偉大なる精神たるマハトマを知り、真理を手繰る。そんな生き方をして欲しい。

 でもこれは、別に彼に何かの才能を見出だしたからそう願っているわけではない。

 お世辞にも、彼には才能はない。極めて平凡で普通、超自然的な経験をしたことがあるわけでもなければ──人理修復は神秘に溢れたものではあるけど──啓示や何らかの奇跡を垣間見たこともない。彼にあるのは、飛びっきりの善性と決して折れない心の強さだ。たとえ少し揺れたとしても、最後には必ず彼は前に進む姿勢は何者にも変えられない価値があるが、それは必ずしも探求の道には必要じゃない。

 なら、何故私は彼にその道を薦めたいのか。

 それは至極簡単で単純なことで、同時に頭を掻きむしりたくなるくらいの我が儘だ。

 ──彼のことが好きだから。

 理由はそれだけ。それ以上の何物でもない。

 好きな人には、自分と同じ道を生きて欲しいというか、自分のことを理解してもらいたいというか。出来れば一緒に旅とかして世界中を飛び回り、色んな景色を一緒にみてみたいというか。

 ……私と、同じ目線に立って欲しいというか。

 それが叶う筈もないことを私は知っている筈なのに、そうやって未練がましくも何度も考えてしまう。

「んー、神智学かぁ。……エレナの本を読んでてちんぷんかんぷんなオレが学者やれるなんて思えないなぁ」

「別に真剣に考えて欲しいわけじゃないわ。そういう道もあるってことを知って欲しかっただけよ」

 そんな耳障りの良い言葉で何でもないように言ってみても、それでも私の中には燻ってるものがあった。

 ──サーヴァントはいつかいなくなる。

 人理修復が終わり、そのまま恙無く彼のマスターとしての仕事が終われば、当然サーヴァントは座へと帰還することになる。レオナルドのような例外はあっても、少なくとも私はすぐに帰されてしまうだろう。

 ……嫌だなぁ。

 サーヴァントは死人の現身であり、かつていた人間の残滓だ。今を生きている彼の道標になることはあっても、隣を歩く人にはなれない。なってはいけない。それはきっと、マシュみたいな優しくて笑顔の素敵な、未来に生きるべき人の役割だ。

 それでも、私は彼の隣にいたくなった。

 彼と手を繋いで旅をしたい。インドを放浪したり東南アジアを練り歩いては、知的好奇心の示すままに神秘を辿ってみたい。

 彼と話をしていたい。昨日を一緒に振り返って、今日を何でもない風に話し合って、明日を二人で夢見るような関係でいたい。

 彼とだけしか出来ないことをしたい。恋人同士の秘め事とか、夫婦同士の共同作業とか、新しい命を育てるようなときめく未来に生きてみたい。

 ──ああ、なんて恥知らず。

 結局私は、自分のことしか考えていないのだから。

「……浮かない顔してるけど、大丈夫?」

「別に……いえ、少し疲れちゃったわ。話過ぎちゃったのかも」

 心配する声に返事をしながら、ベッドに倒れこむ。抱いていた枕を元に戻して、そのまま頭を任せる。

 思えばこれも、私の我が儘だ。彼が何にも言わないから、勝手に彼のベッドに寝て枕を弄くって……彼の温もりと残り香に身を任せたいだけ。

 浅ましい。

 私はずっと、彼の優しさに甘えている。

「……ねえ、何か私にして欲しいこと、ないかしら?」

「? なんでまた、急に?」

「何でもいいの。カルデアに来てからもずっとお世話になりっぱなしだし、ちょっと何か返せたらなって。お手伝いとか、本の解説とか……もっと個人的なお願いでも、良くってよ」

 最後の言葉は、何故だか少し声が震えて小さな声になった。

 妙に体が熱い。

 喉も渇くし、手足が滲むように熱を帯びていく。

 仕方がないので、胸元を開いてパタパタと風を通し、蒸れてきたソックスが煩わしくなって足だけで適当に脱ぎ捨てた。

 我ながらはしたない真似をしていると気付いてはいても、どうにもならない。

「今なら、何でも言うこと聞いてあげる」

 それは彼へのお返しか、はたまた自分の我が儘か。そんなものは分かりきっていることで。

 勿論男性にこんなことをいうのは、あまりに危機感がなってないことくらい知っていて。

 なのに私は、彼の口からそれを言って貰えるのを無意識に望んでいて。

 ──だから、どこまでいっても私は勝手だ。

 私に目を向けて少し考えた立香は、私に質問された時のように唸りながら悩み。

「──じゃあ、今日は一緒に寝よう」

 自分で望んだくせに、その言葉に私は沸騰したように顔を赤くした。

 

 

「ねえ立香。もう一回確認するけど、本当にこれで良いのね?」

「うん」

「……何でも良いのよ? 本当に、何だって叶えてあげるのに、これで良いの?」

「これが、良いんだよ」

 何度も何度も繰り返し確認して、その度に同じような答えが返ってきたことに私は大きくため息を吐いた。

 現在は就寝時刻。一部のサーヴァント以外は皆自室で休息をとっている時間帯で、それは先ほど一緒に寝ることを願われた私も例外ではない。

 カルデア備え付けの、あまり大きくないベッドに、二人で寝そべる。閨を、褥を共にするとはまさにこの事で、その証拠にすぐ側には彼の体温があって、私の心臓は死んでしまいそうなくらい早鐘を鳴らしている。一歩もいらない、少し身を捩らせただけで届くような近さがそこにはあった。

 だが。

 ……それはそれとして、何で私は立香に背中向けてるのかしら。

 確かに彼の熱はすぐそこにあって、堪らなく幸せなのは確かだ。

 だけど、体勢は彼に後ろから抱き竦められるように手をお腹に回され、そのまま横になっている状態だ。

 嬉しいけど、何か違わないだろうか。

 もっとこう……溢れ出るリビドーに身を任せて、身を焦がすような激情と一夜の甘い共同作業のような何かがあったりするのを期待してた身としては、少し物足りない。

 それと、正直な話後ろから手を回されて、お腹の……丹田の辺りを優しくまさぐられているせいで、体の中を擽られているような感覚がして気が気でない。触れているのは腹なのに、背中に電流が流れるように体が縮こまり、喉の奥から媚びるような声が出そうになる。

 ……ヘンになりそう。

 悶々とした気持ちを抑えながら目を瞑っても、寝ることなんて出来なくて……我慢しなくても良いと思ってきてしまったが、マハトマを感じないので多分良くない結果になる。

 それでもそのままの状態で十分ほどもすれば、それにも少しずつ慣れてきて、興奮よりも安らぎが大きくなっていく。

 心地よくて、気持ち良くて、ずっとこのままでいたいくらいに心が落ち着いていく。

 ふと、カルデアのことを考える。

 思えば私は、生前ではこんなに落ち着いた環境にいたことはないかもしれない。私の生きていた時は……私が、真理を追い求めようと躍起になっていたときは、西へ東へ海を渡り、マハトマを知るために何度も神秘に触れようとしていた。瞑想をすることはあっても、それは自分の内側を知り、悟りを知るための手段に近かった。落ち着きはしても、今このときのように、誰かに触れられて安心するような温かな物ではなかった。

「……エレナ、まだ起きてる?」

「えぇ。起きてるわよ」

 後ろから届く優しい声に、静かに答える。

「落ち着いた?」

「……えぇ」

「良かった。何だか焦ってたみたいだから」

 確かに立香の視点から見れば、私は焦っているように写ったのかもしれない。彼の部屋に入り浸って、落ち着きもなく話をしだして……いや、きっと焦っていたのだろう。来るべきサーヴァントとしての義務が、私達にはあるから。

「……ごめんなさい、立香。今日の私、少しおかしかった」

 お腹に回された彼の手に、そっと自分の手を重ねる。彼からの返答はなかったけど、彼は自分に重ねられた手を、拒まなかった。

「エレナは、さ。自分勝手でいいんだよ」

「……なにそれ、それじゃあ私が迷惑なヒトみたいじゃない。私はあなたにそんな風に思われてたの?」

 彼の声に、茶化して返す。

 ……もし本当にそう思われてたのなら、泣いてしまうかもしれない。

「迷惑なんかじゃない。エレナは自分勝手で我が儘で、でもそれが好きになるような、素敵なヒトだよ」

 自然と言われた好きという言葉に、胸が高鳴る。

 彼の言うことなら、きっとそれは彼の本心で。

 それなら──あぁ、すっごく嬉しい。

「だからさ、あんまり我慢しなくてもいいんだよ。なんか、オレに遠慮して無理に合わせてくれたみたいだけど……少なくとも、オレがエレナのこと嫌いになったりしないから」

 その言葉が、何よりも嬉しくて。

 その言葉に、心が救われて。

「……そっか」

 だからきっと、私は何度も彼に甘えてしまうんだろう。

 優しくて、真っ直ぐで、強い心を持っていて。

 私の悩みを、何でもないように許してしまえる。

 ──息を、吸う。

 部屋の冷たい空気が肺へと流れ、眠っていたいつもの私が起きていく。

 ──息を、吐く。

 胸に詰まった重たい悩みは、外気にさらされ溶けていった。

 私はそのまま寝返りをうち、彼の方へと体を向ける。

 彼の、少し驚いた顔が良く見えた。

「……お願い叶えてくれるんじゃなかったの?」

「ええ、もう叶ったでしょ? それに、体の向きが違うくらいは誤差よ」

「……そうかなぁ」

「ええ、私は何だって知ってるもの。古きこと、新しきこと……すべてはマハトマのお導きよ」

 そのまま私は、腕を彼の背中に回す。

 私よりずっと広い背中に指を這わせて、体を彼に預けていく。彼の体は硬かったけど、それ以上に暖かい。胸に耳を寄せれば、彼の心臓の鼓動が良く聞こえて……速くなったってことは、意識してくれてるってことかしら。

 ……私らしく、ね。

 我慢をするのは止めてしまおう。彼に遠慮したって、きっと良いことは無いんだから。

 私は私らしく、彼を振り回す。

 勝手に手とか繋いで、勝手に話しかけて、勝手に意識して──いつか、絶対気持ちを伝える。

 たとえ報われることのない願いだったとしても、今の私の気持ちは絶対に嘘じゃないし、それを隠してて平気な顔で笑えるほど私は器用じゃない。

「ねえ、立香」

「なに?」

「……お休みなさい」

「……うん、お休み」

 目を閉じて、微睡みに身を委ねる。

 深い海に沈んでいくような感覚、深い深い深淵に体が落ちていく。

 それでも、隣に彼がいてくれるなら──。

 そんなことを思いながら、今日の私は眠るのだった。

 

 




「フォウ、フォフォフォフォウフォウ」
(前回は失礼したよ、マシュ盛ががでてしまった。今回のコンセプトは『甘え』、それとほぼすべてのサーヴァントに言える『焦燥感』についての話だ。ブラヴァツキー婦人はどうやら母性溢れる女性で有名らしいが……果たしてそんな彼女に甘えさせてあげられるのはどういった存在か、今さら問うまでもないことだろう。行動が積極的なのは生前の影響が大きいだろうね、人生経験が豊富そうな彼女も、色恋の機会というものはどうやら無かったようだ。そして、これは誰にも言えることだが、別れというものは何時だって存在する。それは何時になるかは分からなくとも、必ず来ることは分かっていることで……だからこそ、彼らは一歩を踏み出すのだろう。誰だって後悔はしたくないのだから)

エレナさん可愛い。
今回のエレナさんは絆レベル5以上、色んな世界のサーヴァントが一杯いる状態で、彼女の話に耳を傾けたり水着にドギマギする姿を目撃されたりすることでルートに入れます。教え子が出来たみたいで嬉しがってるエレナさんと仲良くなり、年下に女性として見られて焦る彼女に優しくしてあげよう。ルート確定です。
生前は婚約してすぐに出奔した影響か恋愛経験がほぼないくせに、一度好きだと自覚するとグイグイくる恋愛強者。マハトマパワーでチャンスを逃さず、マハトマパワーでポイントも稼ぐ。強い(確信)。
実は男性経験が無いことを気にしてて、男女の秘め事とかに興味がある。大人の女性だし、でも経験ないからちょっと怖い、でもなんかマハトマを感じるし……みたいな。
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