……改めて、明けましておめでとうございます。
皆様の一年が良きものでありますことを、心より願っております。
ちなみに作者は福袋でえっちゃん二枚目と、三十連ガチャでフィンの宝具レベルが3から5になり、さらにレアプリが一つ増えました。
……ついてるな(確信)
というわけで久しぶりの投稿です。
拙い文章ですが、それでも良ければ読んでやってください。
作者は健全と日常がモットーです。
──目が覚めた。
とても自然な目覚めだった。
目を開けると、そこには白い天井が広がっていて、そこでふと『そういえば寝ていたのだった』と気付くような、まるでずっと起きていたかのような気持ちがする。
何度か瞬きをした私は、顔にかかっている自分の髪を気だるげな右手で払おうとしたけれど、顔に張り付いた髪の毛は中々動いてはくれなかった。どうやら寝汗をかいてしまったみたい。
いつも雪が降っている山に建てられたカルデアでは、いつも暑くない程度の空調に設定されているのにどうしてだろうと考えて、やっとその汗をかいているのが顔だけでないことに気が付いた。
「……?」
体を起こして、寝巻きである熊柄のパジャマの襟を指で引っかけ、少し引っ張る。最近話すようになったヴラドさんがデザインして下さったパジャマは汗が
──体が熱い。
心臓はいつもよりも力強く動いていて、頭が呆けてしまう。息は上がっているわけでは無いけれど、吐息はとても暖かくて、まるで体に熱が籠っているよう。体も、少しだけ怠い感じだ。
風邪でも引いてしまったのかと思ったけれど、サーヴァントの私にはかからない筈だ。クリスマスの時はシュメル熱、という病気がカルデア中で広がっていたけれど、その時のように動けないほど体に異常があるわけでもない。
これは──そう。
適度な運動をした後のような、以前マスターや他の子供達と鬼ごっこをしたときみたいな、そんな感覚。
心地の良い温かさと、気持ちの良い
寝ていたはずなのに、運動をした後のような体に何だか違和感があって、そんなにも疲れてしまうような夢でも見ていたのだろうかと、鈍くなった頭を動かしていた思い出してみる。
何度頭を捻ってみても、よく思い出せない。
確か……そう。私と、マスターの出てくる夢だったことは覚えている。私とマスターの二人きりで、それ以外に誰もいなくて……。
それだけ?
本当にそれだけだっただろうか?
いや、違う。それはない。それだけじゃない。
そこから先の事を私は覚えていないけれど、何か──見過ごしてはいけない何かがあったように思える。
それは──何か悪いことをしていたような不安で。
それは──何をしていたか知りたいという興味で。
そして何よりも──気持ちが良かったような……。
「……汗、拭かないと」
ベッドから降りてスリッパを履く。中敷きのふわふわとした感触を感じなからクローゼットを開けてタオルを引き出すが、思っていたよりも寝汗が酷くて、これならいっそシャワーでも浴びてしまった方が早いかも知れない。
朝から水浴び。
何だか贅沢なようにも思えるけれど、これからマスターと会うかもしれないと考えたら、汗をかいたまま会うのは気が引ける。彼はきっと気にしないけれど、やっぱりはしたない。ティテュバにも叱られてしまうだろう。
「あ……いけないわ。あの方はティテュバじゃなくてシバの女王様だもの」
つい彼女の名前を呼んでしまう。
ティテュバと女王様では似ても似つかないのに、何故か彼女達を重ねてしまう。女王様は気にしないと仰ったけれど、彼女は私がティテュバの名前で呼ぶ度に、嬉しいような寂しいような顔をして……次は間違えないようにしないと。
ともあれ、クローゼットからタオルと替えの服を支度すると、胸に抱いてドアへ向かう。ちょっと贅沢だけど、マスターに恥ずかしい姿は見せられない。
それに少しだけ、少しだけだけど、その贅沢が楽しいと感じてしまう。悪いこと、とはマスターは言わないだろうけど、それでも何だかいけない事をしているようで。
……気持ちいい。
背筋がゾクゾクする。
体が震えて、お腹の辺りがむずむずして……とても、はしたないと分かっているのに……気持ちよくなりそうで。
そこまで考えて、ハッと気付いた私は熱くなった思考を振り払うように頭を振った。
……頭を冷やさないと。
変な事を考えてしまった。
最近はよくこういうことをよく考えてしまって……カルデアに慣れてきて疲れが出てしまったのだろうと、一人自分を納得させる。
でも──あぁ、そうね。
──こういことを考える時は、決まってマスターの事を考えている時で。
その事を、私はとっくの昔に気が付いていた。
サーヴァントのお仕事は個人によって異なるけれど、多くの方にとってそれはマスターとのレイシフトの事を指している。
そもそもサーヴァントは人利修復のために呼ばれたお手伝いさんのことで、基本的に特異点などにマスターと一緒に赴き、解決するのが役割になるのは自然なことで。
──じゃあ、その特異点が無いときはどうしているかというと、それは各々のしたいことをする時間になる、らしい。
例えばライオンさんは雷を起こす人と一緒に、スタッフの皆さんのために便利なアイテムを作っているらしい。よく喧嘩されているけれど、エレナさん曰く『それだけ意地と向上意識が高いのよ』とのこと。
例えばティ──シバの女王様は色んな物を売っていて、とても良い香りのする香水や洗剤の他、ラクダの貸し出しをしている。他にもマネージャー、という難しいお仕事もされていて、以前シャンプーをくれたり特別にラクダに乗せて貰ったりした。
他にも作家の皆さんは日夜執筆活動に専念されていたり、アントワネット王妃様たちは良くお茶会を開いていたり、玉藻さん達も同じように女子会というものを開いていたり……本当に色んな事をされている。
けれど、そういった予定の無い私は、カルデアの廊下をさ迷うように歩いていた。
カルデアの廊下はどこも同じような作りで潔癖が過ぎるように思えるけれど、外環に近い所では大きな窓から外が見えるし、案内板が色んな所に掛けてあるからあまり迷うことはない。同じ景色に飽きないようにか、廊下の途中には鉢に入れられた植物が置いてあったりして──私はそれらを見ながら、行く宛もなく足を進める。
周りからすれば、それはまるでカルデアに初めて来たような様子で──実際、最初の私は足を動かす度に驚いていた気がする。
出会う人、見るもの全てに目を見開いて、足を止めて、後ずさって。
そんな私を、マスターが励ましてくれた。
背中をそっと押してくれたり、優しく手を繋いでくれたり、目を合わせて微笑んでくれたり、本当に色んな事を助けて貰った。
だからだろうか。
こうして廊下を歩いていれば、またあの時のように声を掛けてくれるなんて。
そう思いながら、私はため息を吐く。
すると、彼は何時もの優しげな声音でこう話し掛けるのだ。
「──どうかした、アビー?」
私はその声に振り返ると、クスリと笑って、
「──えぇ。貴方を待っていたの、マスター」
そう言うと彼は驚いたような顔をして、
「そっか……ごめんね、探させちゃったかな」
「お気になさらないで。私が勝手にしたことだもの……それに、大した理由があったわけでもないの」
「? じゃあ、何でオレを探してたの?」
「……今日は、まだご挨拶していなかったから……こんな理由で会いに行っては、迷惑……だったかしら?」
「そんなこと無いさ。会いに来てくれるなら、それだけで嬉しい」
彼が嬉しそうに私に笑い掛けると、自然と口角が上がってしまう。それを見られるのが恥ずかしくて、連れてきていた『ユーゴ』で私は口許を隠した。
二人で並んで、廊下を歩く。
まるで、示し合わせたように彼は隣を歩いた。それが、例え無意識だったとしても、私に合わせてくれたんだということが分かって──。
あぁ、本当に彼は優しい人だ。
何時だって私を支えてくれて、こうして隣を歩いてくれて──私が来てほしいと思ったときに、声を掛けてくれて。
それだけで、私は満たされてしまう。
「……クスッ。でも、まさか本当に来てくれるなんて思わなかったわ。来てほしいと思ったら、本当に来てくれたんだもの」
「たまたま通りかかっただけなんだけどね。丁度良かったのかな」
「ええ。まるで私の心を読んでくれたみたいに……本当に、マスターは何時だって私の来て欲しいときに隣にいてくださるのね」
「今日はたまたまだって……でも、アビーが呼んでくれるならいつでも行くよ。すぐには、無理かもしれないけど」
照れくさそうに頬を掻きながら、それでも彼は私を真っ直ぐ見つめてそう言った。裏表もないような、彼の本心からの言葉だった。
その笑顔は、太陽のような、なんて大袈裟な物じゃなくて。
けれど、冷たい夜を和らげる灯火のような笑顔で。
「……ねえ、マスター。ちょっとお願いがあるの……聞いてくださる?」
──だからきっと、これはちょっとした悪戯で。
──もっと言えば、彼への感謝の気持ちで。
マスターが小さく頷いたのを見て、私は『ユーゴ』で顔を隠しながら、
「少し屈んで……目を瞑って欲しいの。少しだけで、良いから」
私のその言葉に彼は不思議そうな顔をすると、そのまま片膝をついて目を瞑ってくれた。
きっと彼にしてみれば、それは子供が小さな悪戯をする前フリみたいな物で、私がそれをしようとするのが珍しいと思っているのかもしれない。
それは、間違いでは無いけれど。
子供扱いされてしまうのは、何だか寂しくて。
私の事を、子供としか見ていないように思えて。
だから、私は少し背伸びをすることにした。
私の背よりも低くなったマスターの肩に、そっと手を乗せて……少し
抱きつくような私の行動に、マスターは何かを言おうとしたみたいだけど、それは結局叶わなかった。
──唇と唇を重ねる。
初めて重ねた彼の唇は思っていたよりも柔らかくて、乾燥した彼の唇の弾力を確めると──あぁ、これがキスなんだなと、今さらのように頭のなかに現実が流れ始めた。
彼が驚いたような声が喉元から聞こえたようにも思えたけれど、それは空気を震わす振動になんてならなくて、ただの熱気を持った吐息が私の口内へと広がっただけだった。
きっと情熱的なフランス人の方なら、ここで舌を絡ますのかもしれない。でも私にはそこまでの勇気がなくて、代わりに私は、マスターの唇に舌先を這わせた。湿り気を持った唇に、擦り合わせるように顔を動かす。
ふわりと、彼の匂いがして。
ならきっと、彼も私の匂いを嗅いでるんじゃないかと思うと、やっぱり朝にシャワーしたのは間違いじゃないって思えて。
──世界で、二人きり。
そう思えるくらいに、私の心はふわふわしていて、浮わついた心が落ち着きを取り戻したのは、数時間にも思えた僅か数秒間の後のこと。
……チュッ。
そんな音が、静かな廊下に小さく響いた。
いつの間にか瞑っていた目を開けば、そこには顔を赤くしたマスターがいて。
それは、私を意識してくれたことに他ならなくて。
それだけのことが、今の私には喜ばしい。
「あ、びー……?」
私の名を呼ぶ彼の声が、浮わついた私の心を呼ぶ戻す。
あまりの挙行に、私は自分がしたことながらも恥ずかしいことこの上無くて、一瞬で紅潮する顔を『ユーゴ』でもう一度隠しながら。
それでも、せめて伝えたくて。
「ぁ、あした……答えを、聞かせて……くださいっ」
それだけ言って、私は飛ぶようにその場を逃げ出した。
女の子らしくない、なんて言葉は今更のこと。
走る私には、何の意味がなくて。
──ただ、一つだけ。
──唇を合わせたあの瞬間に感じた違和感を。
──何度も味わった彼の味を。
私は、まだ気付かない。
「……はむ」
彼の唇を、咥える。
顔を上に向けた彼の唇は、小さな山のように突き出ていて、それを口先で
少しの間、親鳥が雛に餌をあげるように唇を重ねた後、唇を離して彼の顔を見る。
安らかに眠るような顔を浮かべた顔。
何も、あの私のように知らない安らかな顔。
「……すごいのね、私。座長さんの顔を見てて、まだ我慢できるんですもの」
舌先で、彼の唇をなぞる。
キスはせず、何度も何度も猫のように彼の唇に舌を動かし、唾液のリップをつけていくと、胸の奥が堪らなく切なくなっていく。何かを求めるように唇が疼いて、それすらも飲み込みながら舌の動きを止めない。
唇を嘗めていた舌は、少しずつ動かす場所を変えていく。
頬を、首筋を、鎖骨を。
唾液にベタベタになった彼の体を見て、少しだけ罪悪感が湧く。これでは流石の彼も怒ってしまいそうで──それもまた、私にとっては幸せなことで。
「──君はそれで良いのかい?」
唐突に聞こえた、聞き覚えのある声に眉をひそめながらも、面倒くさそうな顔のまま後ろを振り返ると。
白。
暗い室内をそこだけ塗りつぶすかのように存在しているのはフードの男だった。真っ白い服で身を隠しながら、神秘的な杖を右手に持ったそれからは、フードから不適に笑った口許だけが見えていた。
「……二度と来ないでって、言った筈だけど」
「そう言われてもね。僕としては君が彼をここに呼んでいる限り、色々と止めとかないといけなくてね。あまりやり過ぎるようだと、現実世界の彼にも影響がモロに出る。そうなると僕も困るのさ。だって勝手に僕のせいにされたりするし」
「貴方が困るなんて、知らないわ。それに肉体的に繋がったりしない限り、現実の座長さんに影響が出ることはないわ」
「それを注意してるんだけどね……まあ、それなら良いのさ。注意換気なんて僕の仕事じゃない、そういうのは本来君の保護者がすることなんだろうし」
「……用が終わったなら、早く帰ってくださる? 正直私、貴方のこと好きじゃないの」
「手厳しいなぁ……それじゃあ、お邪魔無視はここで退散しよう……僕としては、どちらにしろ面白いことになりそうだしね」
そう呟いた白い影は、そのまま空間に溶けるように消えていく。私はそれを見届けたあと、ため息を一つ吐いてそのまま彼の体にゆっくりと倒れ込む。
彼の胸板の感触を肌で味わいながら、急降下していた気分を紛らわせる。
──台無しだ。
せっかく昂った心が、
父親にじゃれつくように。
或いは恋人に愛を
「……ごめんなさい、座長さん。折角の最後の夜なのに……今日は、ゆっくり寝て過ごすことにしましょう?」
そう耳元で囁いて、彼の首筋に頬を擦り会わせる。彼の体温が伝わってきて、ざわついた心がゆっくりと穏やかになっていく。
「座長さん、マスター……立香さん。ふふっ……ようやく、ようやく明日よ。……一週間ってこんなにも遠いのね。これだけあれば、確かに神様も世界を創れてしまうわ」
彼の首筋に、キスをする。
少しだけ赤くなった彼の肌を見てると、少しだけ笑みが零れてしまう。
「……待っていて。もうすぐよ」
彼に、伝えるように。
自分に、言い聞かせるように。
「もう、貴方を寂しくなんてさせないわ」
ずっと一緒よ。
「フォーウ、ファッフォウ」
(何か最後に穀潰しの気配を感じたが……まあ良い。今回は特に何かしている訳じゃない……それにしても胡散臭いなアイツ。さて、今回、というより一話と今回のテーマとしては『背徳』だ。読めばわかると思うけど、日常回を挟みながら、その裏にある何かが垣間見える……みたいなコンセプトだと作者は主張しているが、ぶっちゃけ作者が暴走しているだけなのであんまり気に止めなくても良い。通常アビゲイルの淡い恋と、セイレムアビゲイルの退廃的な香りが少しでも伝わるなら言うことはない。セイレムアビゲイルがなにやら不穏な空気を醸し出しているが……まあそんなことはカルデアではよくあることだから、気にしなくてもきっと大丈夫だとも)
最初の構想ではアビーと主人公でビリヤードを楽しむ話だったのに……これがシュタインズゲートの選択か。
今回のアビゲイルは絆レベル5以上。
さらにセイレムアビゲイルとも何らかの恋愛フラグ的なのを残し、幕間の物語においてセイレムアビゲイルの精神が何らかの形で少しだけ残ってしまった場合に発生します。
セイレムアビゲイルとフラグをたてた時点で『偶然』アビゲイルを召喚して絆を結び、『幸運にも』セイレムアビゲイルの精神はカルデアに残留し、『奇跡的にも』セイレムアビゲイルがマスターの精神に影響を与えないようにしながら意識だけを遊離させる方法を思い付いた時、ルートは確定します(実質的にはセイレムでフラグたてたら必ずルート確定)。
この場合、マスターに逃げる選択肢はありません。
分岐は二つ。
自分に勝手なことをしたアビーを叱るルート。
そしてアビーのやったことを許すルート。
……さて、どちらが正解のルートであるか。
さほど難しい問題ではありませんね?
次回は新キャラいきます。
色々あって四月くらいまで更新ないかもですが、エタりはしないと思うので気長にお待ちください。