サーヴァントといちゃつくだけ   作:PRD2

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まさかこの人選を予想できた者はいないであろう。
たとえマスターLOVE勢でなくても何だかんだでラブコメみたいにする、それが恋愛脳。だが作者はカプ厨でもあるので公式カップルがいるキャラとマスターとのラブコメ書けないヨ。
といっても今回は導入みたいなものでラブコメはありません。続きを書くときの基礎みたいなものです。先は長いでしょうが、多分書きます。

今回はfateの鬼に対する独自解釈があります。
詳しくは後書きで。
肌に合わない人はバックバック。
うるせえ俺はラブコメが読みてーんだの人は作者と恋愛脳の螺旋階段を共に降りてもらおう。最初の一歩ですが。

それでは今回は彼女の話を。
鬼という破綻した種族にして、傲慢でありながらそれ以上に頭の硬い、そんな少女の話を。



茨木童子 01

 青い空がどこまでも広がっている。

 淀みのない空気と草の匂いを嗅ぎながら、吾は空を見ていた。雑草の萌える草原に寝そべり、大の字になって空を望む。

 ここは……ふらんす、と言ったか。今日は別段やることもなく、酒呑を誘って遊びに興じようとも思ったが……どうにも気が向かず、結局一人でこんなところにれいしふとしてしまった。

 酒呑と遊ぶのが嫌なわけではない。むしろ平時の吾ならば、何度も酒呑の名を呼んでは共に歩こうとしていただろう。カルデアの宝の在りかについてだのマカロンやチョコについてだのと吾が話せば、酒呑は笑って返すに違いない。酒を呑むのは得意ではないが……酒呑と共にいられるなら、飲んでも飲まれても良いと思えるくらいに吾は酒呑が好きだ。

 だが、今日はそうではない。

 気が向かない、気が向かないのだ。興が乗らぬと言っても良い。

 ……良く分からぬ。

 鬼とは自由であるべきだ。好きに生き、欲するがままに奪い、望むままに喰らい、呆気なく死ぬ。それが鬼である。『鬼が傲慢(ごうまん)に振る舞わなくして、誰が傲慢に振る舞うのか』かつて母上が吾にそう教えたことだが、まさにその通りだ。

 だから吾のこの行動も、吾の傲慢なのだろう。

 ……やはり、良く分からぬ。

 何故、吾はここに来たのだ?

 ……空を見たかったからか?

 そういえば以前は──サーヴァント、とやらで喚ばれる前、吾が酒呑と生きた時代にもこうして空を見上げたことがあった。酒呑が酒を呑み、吾は肉をつまみつつ仲間を見回す。吾の配下の鬼共は阿呆のように笑い声を上げて酒を(あお)る。人間を肴に酒に酔いしれ宴に興じる……そんな宴が終わった、朝だったか。

 靄がかかる山の中で、皆が飲み疲れて寝ているなかで、吾は一人で空を見た。欠けた月が太陽と共に空に上がり、何がなくとも口端の上がる、そんな空。宴の後の静けさと、夜が開ける不気味な光景が……吾は好きだったのだ。

 ……カルデアは騒がしい所だ。古今東西の英傑共が毎日のように騒ぎ、女子供は喧しく走り回る。酒盛りをする者、食事を貪る者、楽しげに語り合う者……それこそ大江山での宴のようで、そしてその中心には藤丸立香(マスター)がいる。

 藤丸立香。

 只の人間だ。弱い人間だ。

 脆く儚く、首を掴んで力を込めれば呆気なく死ぬ人間だ。

 吾が何度も奪い、犯し、殺して喰らった人間だ。

 当然のことだ。吾は鬼。宝を奪い、女子供を凌辱し、何がなくても殺すだけ。全ては気紛れでしかない。

 だが……奴は少し違う。

 奴は人間にしては殊勝だ。吾に命令することもないし、襲うこともない。脅せば笑顔でマカロンやチョコを差し出すし、脅さなくとも差し出してくる。緑の人は……まあぎぶあんどていく、というやつだ。前に藤丸が言っていた。

 そもそも会ったときから可笑しな奴だった。鬼である吾を笑って迎え、特異点とやらに連れ出してはすぐに吾に頼る。たまに遊びに連れ出されたこともあった……まあ、悪くなかったがな。人と合わせるのが上手いくせに、たまに強情な時もあって、それが嫌いになれない奴だ。

 奴なら、一緒にいても良い。それこそ、我らが同胞(はらから)として向かい入れてやってもだ。

 吾の配下が理想だが……まあ、食客扱いしてやらんでもない。酒呑も笑ってくれるだろう。

 もし奴と大江山に戻るとしたら……まずは宴を開くべきだろう。酒は飲めんと言っていたから、茶か果実でも用意してやろう。鬼と宴を共にするのに酒を飲めぬなど命知らずか余程の馬鹿だが……まあ、特別に許してやらんでもない。

 肉は……同胞を食うなど、頼光共のような奴でもなければやらんだろうし、猪や熊を狩ればよい。肴は奪えば良いし、それが嫌だというなら作らせるまでだ。後は余興として、奴に歌を歌わせよう。吾等の知らぬ面妖な歌でも構わないし、もし下手であったら盛大に笑ってやる。それはそれで面白い。奴なら吾の配下共とも上手くやるだろう。奴は人の懐に入るのが得意だからな。奴もきっと気に入るだろう。

 宴の最後に残るのは酒を飲まない吾と奴くらいだろう。酒呑や他の奴等も寝てしまうだろうし……なれば奴に片付けでも手伝わせるか。いつもは吾がやっていたことだが、奴と二人ならさっさと終わるだろう。その後は……こうして空を見るのも良い。あの空は良いものだ、奴と見るならさぞ楽しかろう。

 ……奴は、藤丸は、吾と来てくれるだろうか。

 ……来ないだろうなぁ。

 少し考えれば分かることだ。

 同胞を食らう鬼と、誰が友誼(ゆうぎ)を結ぶだろうか。

 吾の知っている奴は、友人を喰われて怒らないような人でなしではない。

 であれば奴とはきっと、宴を開くことはできないだろう。

 ……………………。

「──ここで何してるの? 茨木」

 声がする。

 奴の声だ。

 顔に影がかかったと思えば、奴は覗きこむように吾を見ていた。見下ろされているようで少し腹がたち、吾は鼻を鳴らして立ち上がる。

「別に何も。強いて言うなら空を見ていた」

「そっか。ダ・ヴィンチちゃんから、なんかボーッとしながらレイシフトしたって聞いて心配したんだけど……無事でよかったよ」

「ふん、吾を誰と心得る。大江の山、悪鬼羅刹(あっきらせつ)の頭領にして酒呑童子の盟友、茨木童子だぞ? 心配なことなどあるものか」

 全くだ。

 鬼の心配をするとは、奇妙な奴だ。

「酒呑が探してたよ? 用があるわけじゃないらしいけど、朝から見かけないって」

「そうか、なら戻るとするか。いくぞマスター」

 そう言って踵を返して歩くと、奴が少し驚いた気がして、振り返る。奴は少し奇妙なものを見たとでも言いたげな顔をして、

「……驚いた。茨木のことだからてっきり、なに! 酒呑が呼んでいるだと!? すぐに向かうぞ! とか言うと思ったよ」

「あまり似てない真似をするな気色悪い。別に吾も、いつも酒呑といたいわけではない、ということだ」

 ……いや、そんなわけはない。

 酒呑といれば楽しいし、酒呑となら何でも出来る。

 その筈だ。その通りだ。そうに決まっている。

 だが何故だ、どういうことだ?

 ……今は奴と、マスターと、藤丸と、一緒にいたい。

 ……何なのだ、この気持ちは?

「……マスター、手を出せ」

「えっ? あぁ、はい」

 語調を強くして言うと、奴は戸惑いながらも素直に手を出してきた。無防備というか、特に何も考えていないという風に。

 吾はその右手を、吾の右手で軽く握る。

 それなりに鍛えているようで固くはあるが、あまりゴツゴツとはしていない。何より強く握れば脆く壊れてしまいそうな、そんな手だ。

 だが暖かい手だ。陽だまりのように優しい、焔のような激しさのない、柔らかい手だ。

 何故だろう。

 

 握り潰し、身体ごと焼き尽くしてやろうと思った。

 それと同じくらい、ずっと握っていたい手だった。

 

「? 茨木、さん?」

「……もうよい、今のは忘れろ。それとそう他人行儀な名で呼ぶな、つい握りつぶしてしまうではないか」

 脳裏に過った思考を消し飛ばし、頭を振って手を離した。

 この思考は違う。駄目なものだ。この傲慢は良くない。

 考えるべきではない……せめて、せめて酒呑に話してからするものだ。これは吾が、吾自身が肯定するには早すぎる。

「分かったよ、茨木」

 マスターが笑いながら吾の名を呼ぶ。

 心地よい。幼き頃に夢見た、母上の腕の中を思わせる安心感だ。不思議と身体が熱くなる。こんなの、酒呑でも……いや、違う。これも考えるな。求めるな。

 ……あぁ、今はもう名を呼ぶな。

 次は殺してしまいそうだ。

 

 

 

「それはなぁ、茨木。焦がされたんやろ」

「焦がされた? 吾が?」

「そやね。別にそのままの意味とちゃうで。もっと中の方……茨木の内側のことやで」

「吾の、内側……むぅ良くわからぬぞ。勿体振ってないで早く教えてはくれぬか? どうにも朝から調子が悪い……いや、可笑しいのだ。吾が吾でないような……不気味だが、それが不思議と悪くないというか……とても気になる」

「そら自分で気付かなあかんえ? そうちゃうとおもろないし。……まあ、一つ言えることは、焦がされたんなら焦がし返すのが、スジってものやろなぁ」

「そうか……だがどうすればいいのだ? 吾の炎で焼く……のとは違うのだろう? ……吾も奴にそんなことはしたくない……いや、それも悪くは……ん? なんだ今の……」

「ふふふふ、茨木も鬼らしゅうなったなぁ。綱の方が先や思うとったけど、これはこれでたのしみやわぁ」

 

 




「フォフォフォフォーウ」
(やぁ。わりと評判が良いみたいだから人気欲しさに浅ましくも続いてしまったシリーズだよ。作者は罵ってくれて構わない。茨木童子は趣味じゃないけど、悩める少女は見守っていたいからね。今回は導入なのであざとさポイントも胸キュンもないが、気になるのは今回の彼女が彼女らしく無いことだ。大好きな酒呑童子に絡んだりもせずに一人っきりでふらり、空を見ながらマスターに思いをふける。もしマスターを仲間にしたらという妄想を、結構楽しそうに考えているのが感じ取れるかもね。しかも妙に彼を信頼してるし彼に対して寛大だ。たとえ仲間に反対されても無理矢理仲間にしてしまいそうだね。しかもそれが叶わない妄想だと自覚していながら、それを鬼らしく無理に叶えようともしていない……この辺りは彼女の心が不安定なせいだろう。最後のマスターの手を握ったときの彼女の気持ちだが、これは作者の独自解釈によるものだ。詳しいことは下で説明してもらってくれ)


fateの鬼について
簡潔に纏めるならば究極の気紛れ、もしくは反転属性。
主に人間への愛憎に対して作用する。
たとえ殺したいほど憎んでいる相手に対しても、妙な親近感や純粋な興味を抱いたり。
たとえ友人を、若しくは恋人となるほど好意を抱いていても、ふと殺してしまいたい衝動に駆られる。
ヤンデレというよりメンヘラ。しかも極めて依存性が高く、根深い執着のオマケ付き。
茨木の場合、前者は渡辺綱、後者はマスターとなる。
今回の茨木は絆レベル5以上かつマスターのラブコメ補正、ならびにラキスケにより彼女が自分自身を『女』であると再確認し、マスターが恋愛対象でなくても自分を『女』扱いしていることを自覚すると見られる。今まで友達感覚の幼馴染みが自分のことを女の子として見ていたことを知ったおませさん、みたいな。
この状態の茨木をマスターと二人っきりにすると低確率でマスターは(物理的に)喰われる可能性と(性的に)食われる可能性とが半々くらいで存在し、この可能性はその状況に遭遇する度に上昇していきます。R-18待ったなし。(色んな意味で)

ちなみに作者のイバラギンは宝具レベル5でレベル90だったりします。ピックアップの時に何度もすり抜ける彼女には何かしらの運命を感じて……結構お気に入りだったり。
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