ライダーのアストルフォを召喚してから数日。
表立った行動は未だ起こしてはいない。
どうせ向こう側から来るだろうと思っている。
「ねぇねぇ、マスター」
「・・・ん?」
「マスターはさ・・・聖杯に何か願いがあるの?」
「・・・願い」
私の願いは今叶っている。
これ以上を求めようとすれば何かが壊れる気がして。
「まだ、分からない」
「まだ・・・かぁ」
「・・・ごめん、なさい」
「マスターならこの聖杯戦争の仕組みを分かってると思う。だからこそボクも召喚に応じたんだけどんね?」
聖遺物を使った召喚を行っても狙いの英雄が来るとは限らない。
召喚に応じるのは英雄の応答がなければ召喚は行われないからだ。
ライダーが召喚に応じたのはそれ相応の願いを聖杯に持っているからだろう。
「そういえばボクの願い言ってなかったね」
「・・・うん」
「ボクはねー、特に無いんだ。召喚に応じたのはその時代の世界を見てみたかった・・・ってのが理由。だから必ず叶えたい!っていう願望は無いんだよ」
「・・・すごい、ね。ライダーは」
「今はそういう考えを持ってるんだ。だけれどいつか違う事を叶えたくなったら教えるかもね?」
「・・・分かった」
「マスター程の実力者なんてそうそういないからね!ボクはラッキーだよ、ほんとに!」
英霊になったライダーにそう言われる程には私も・・・ってことなのだろうか。
正直実感自体は感じることは少ない。
それはただ
私の力なんて知れている気がする。
「・・・あの時から何も変わっていないね。マスター」
「・・・そう、かも」
「それは良いことだし、悪いことだ。何も成長していないマスターは弱いよ。実力じゃない力がボクよりも弱い」
「・・・変われる、のかな」
「わかんない!だってボクはボクで、マスターじゃないからね。だから分からない」
「・・・うん」
「さてっ、これからどうするのかな?」
どうするか・・・というのはこれからの行動だろう。
マスターとしての能力が大事な部分だけれど・・・。
「・・・まだ、何もしない」
「ふーん?何か考えがある、ってことでいいのかな?」
「・・・具体的ではない。ただの勘」
「うんうん。分かったよ!」
他の英霊・・・サーヴァントなら怒られているかもしれないね。
だけれどライダーなら何となく分かってくれる気がした。
以心伝心・・・って感じじゃないけれど信頼の強さはお互いにあるから。
「・・・ライダー」
「んー?どうしたの?」
「お出かけ、行こう?」
「良いよー!何もしないなら暇だもんね!」
ライダーの存在は魔術師相手にはばれてしまう。
だから私も存在を元に戻すけれど・・・どうにかしたくはある。
だけどライダーには魔術の付与をしても抵抗をされやすい可能性がある。
「マスター!行こー!」
「あっ・・・」
そんなことを考えているとライダーはもう準備が出来たのか私の手を引っ張って街へ出た。
やはりこの時代の世界を見るのは楽しいのかコロコロと表情が変わっていて見ていて私も楽しい。
「やっと笑ったね。マスター」
「えっ・・・?」
笑っていた・・・のだろうか。
表情なんて久しく表す必要を感じなかったから気にしなかった。
「ほらっ!あっ、あのたい焼きっての食べてみたい!」
「う、うん」
こんなに楽しそうにしてたら何だか考えるのも馬鹿馬鹿しい。
たこ焼きや焼きそばなど色々買わされてしまったがそれでも楽しくはあった。
ただ食べ歩くだけで一日のほとんどを使ってしまったが、有意義な時間だった。
「ライダー、楽しかった?」
「そりゃあもう!美味しい物多かったし、色んな物があって楽しかったよ!」
「・・・そっか」
ニコニコして私に笑いかける。
だがそれもすぐに終わった。
人払いの結界。
どことなく不快な物を感じ取れた。
この近くに他の魔術師やサーヴァントはいない。
ならば・・・この場所まで届いたのは偶然、か。
「どうする?」
「ん・・・見に行こう、か」
「りょーかい!」
私の姿を見られるのは嫌だから・・・何か無いだろうか。
収納空間から適当にローブを見繕うとそれを着込んだ。
「マスター、そのローブ・・・」
「ん・・・?」
「見たことない。自作?」
「ん、そう」
今私が使っているローブは適当に魔術を付与して作ったもの。
気配や存在の希薄化と防刃と対魔力をこれでもかと入れているからローブ自体が最早宝具・・・みたいなものだろう。
「よしっ、行くぞー!」
「お、おー?」
私が召喚したライダー。
何かが違うのに懐かしさを覚えるのはやはり本人だからだろう。
だけれどあの時とは違う。
確固たる理性が感じれる。
何故?
それを追求するにはまだ足りない。
まだ回す。
あらゆる情報と条件を揃えて、思考。
演算し、それを実践。
それにともなう結果をただ求める。
答えが出るのはいつ?