人払いの結界から感じれる魔力を探知して歩く。
遠くの方へ耳を澄ませば金属音が聞こえたが、それも僅か。
恐らくどちらかが落ちたか、両方戦闘を止めたのだろう。
「マスター。どうする?」
「ん・・・一応顔見る」
「りょーかい!」
建物の上を跳んでいくと、サーヴァントと魔術師の魔力が感知できた。
霊体化はしておらず、姿も見れた。
「あれは・・・」
「アーチャーさん?なにか・・・」
「・・・いや少し・・・ね」
「・・・ちっ!」
「マスター?」
だが赤い外套のサーヴァント。
あの人物は私の姿をはっきりと捉えた。
何故だ。
たとえ英霊だろうと、看破持ちのスキルか宝具でなければ存在すら分からないはず。
「・・・ばれた。看破持ちかも」
「そのローブの隠蔽全部かい!?」
「・・・多分、ね」
「このまま突撃するの?」
「・・・いや、向こうから攻撃されないかぎりは良い」
「はーい」
だがそんな平和な考えは意味が無い。
私の後ろに、金髪碧眼の女性が何かを持って攻撃しようとしていたから。
「マスター!!」
ライダーが気付いても間に合わない。
神速に近いあの早さは恐らく歴戦の剣士。
甲冑姿から考えれるは騎士だろう。
「・・・ふふ」
「っ・・・!はぁぁぁ!!」
剣のような何かが私の首筋に触れるか寸前で。
私は紡いだ。
「
その瞬間、私の姿が一瞬にして消える。
能力を使用しての私という存在を転移させるそれは異様に捉えられていた。
だが、ローブの端が斬られており、効力も切れていた。
「っ!セイバー!戦うのを止めろ!」
その時、何かに縛られたように動きが止まっていた。
あれが聖杯戦争のマスターの証でもあり、サーヴァントが逆らえない絶対的な命令権。
「マ、マスター!怪我は!?大丈夫だよね!?」
「ん・・・大丈夫」
ローブの効力が切れても姿を隠せてはいるのでそのまま着ておく事にして・・・。
ライダーはなんだか泣きそうな表情。
そんな危険・・・ではあっただろうけど死ぬつもりは無かったんだけどなあ。
「何故!何故です!あのまま行けば倒せていた!」
「・・・それでも、セイバーに人を殺してほしくなかったんだ」
「ですがっ!」
なんか・・・喧嘩しだした。
聖杯戦争に乗っ取れば私とライダーを殺せば、それだけ聖杯の顕現に近付く。
願いを叶えるために参加しているサーヴァントからすれば今回の非殺傷命令は何故となるだろう。
「セイバー。君の言い分も確かにあるが、それよりもこの場でこれ以上は騒ぎが大きくなるだろう。場所を変えないか?」
「異論はありません。これ以上は不要な戦闘は避けるべきでしょうし」
「・・・ということだ。いきなりこちらから攻撃を仕掛けたがここは手を打ってくれないか?」
「ボクはいいよ!マスター次第だけどね!」
隠蔽系が使えない以上は向こうに有利なのは変わらない。
武器を出していない私が言えないが、明確な敵意を感じないのなら今は構わないか。
「・・・いい」
「ありがとう。俺の家に案内するよ」
赤髪の少年の家へと案内されるとき、どこからか見られているように感じた。
魔術による感覚を遠くに飛ばしているのだろう。
「・・・目障り」
「桜!?」
「マスター!」
「ん・・・」
さっき魔術を破壊したとき、目線以外の反応もあった。
それがこの子なのだろうか。
「小僧、私が背負う。先に整えておけ」
「・・・ああ」
白髪で褐色の青年はどことなく、さっきの赤髪の少年に似ていた。
姿が多少異なるが、魂の在り方が似ている。
魂とは身体の設計図。
それが似ているのは殆ど有り得ない。
「・・・未来、過去・・・」
未来の英霊が召喚されることはあるかもしれない。
触媒となる物があれば聖杯を通じて召喚を行える。
「少し急がねばならなくなってしまった。足を早めるぞ」
素っ気ないが、自身のマスターが大事なのだろう。
サーヴァントとマスターという関係以上の物を抱いていると分かったが闇雲に触れるものではない。
何もいわず、ただ着いていくと辿り着いたのは和風屋敷。
札には衛宮と書かれていた。
中へと案内され、客室へと入ると倒れた少女が寝かされた。
「・・・ふむ。特には異常はないように見えるが・・・」
「分かるんだね、そういうこと」
「マスターとしての繋がりからと扱う術によるものだ」
「・・・見るよ」
「・・・ほう?」
興味深そうに見てくるアーチャーをほっといて、恐らくこの原因は私だろう。
ならそのお返しぐらいはしておかないと気に障る。
「
解析魔術と呼ばれるそれを使用して少女の身体を解析する。
それと並列して能力も行使する。
魂という存在に対する解析。
そこから得られる情報を選び抜き、必要な部分を取り出す。
解析を終え、意識を戻すとライダーが心配そうに私を見ていた。
「終わった、よ」
「それで?何か分かったのか?」
「何か、魔力の残滓が残ってた。誰かの魂そのものがこの子の心臓に取り憑いていて、魔術の破壊によって魂の維持が出来なくなった・・・そんな感じ」
「ふむ・・・それだけ分かるのならもう大丈夫なのだろう」
「安静に、してれば、治る」
魔力の残滓のパターンを記録してあるから、いざという時使える・・・かもしれない。
無駄に終わりそうなら捨てればいいし。
「マスター」
「ん・・・?」
「寝た方がいいよ」
「・・・?」
寝た方がいいって言われても、どういうことなのだろう。
私に睡眠不足という概念はない。
一応たまに寝るときはあったが、それでも必要性を感じない。
「ああ。今の君は酷い顔だ。睡眠をとった方がいいだろう。何、私のマスターの助けをしてくれた者を悪くはしないさ」
「ほらっ!アーチャーがこう言ってるんだからマスターは早く寝よう?」
「ん・・・でも」
「でもじゃない!ほらボクも一緒に寝てあげるから!」
「わっ・・・」
急に視点が高くなった。
ライダーにお姫様抱っこされたのだと分かると急に顔が赤くなったのが分かった。
これが羞恥というものなのだろうか。
凄く恥ずかしい、という気持ちが出てきた。
「客室はこの隣にもある。そこを使うといい。小僧とマスターには私から言っておこう」
「助かるよ。それじゃお借りしまーす」
隣の客室に連れていかれると布団が用意されており、そこへ寝かされた。
「ら、ぃだぁ・・・」
自分でもこんな声が出るのだと分かった。
甘えたような声に自己嫌悪が出る。
「独りじゃ寝れない?」
口で否定する前に私は頷いた。
自分らしくない、と思っても何故か思い通りにならない。
「じゃあ隣で寝てあげよう。何かあれば守ってあげるからね!」
礼装を外したライダーは私服姿へと変化すると私の隣で目を閉じはじめた。
本当にここで寝るんだ。
「・・・ぁり、がと」
咄嗟に口から出た言葉は感謝のそれだったが、少し嬉しくはあった。
隣にライダーが寝ていることに安心感が出ると段々と目が閉じられてきた。
これがちゃんとした睡眠なのだろうか。
あの時のような今の光景が嬉しくあったが、いつの間にか私は意識を夢の中へと落としていった。