Fate/Fantasm of a wish   作:紅風車

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その身宿るは

深い、深い。

夢というまどろみの中で私はただ立っていた。

数百の石段は最奥へと繋がるように高く。

桜は舞い散っていた。

ここは私がこの身に宿す幻想を具現化した風景。

私の心象そのものだ。

桜は好きだ。

儚いようで、舞い散る姿がとても美しい。

この世界こそが私が好きな光景であり、あの子と共に過ごしたかった場所。

 

「・・・()()()

 

遠くから飛んで来るのは私が自ら創った一振りの刀。

銘は幻想刀。

名前は適当に考えたけれど、今はしっくり来ている。

数々の英雄達が扱うような一品ではないものの、幻想刀そのものは恐らく最強に等しい。

あの聖杯戦争。

恐らくこの武器どころか、私の世界ごと使うことだろう。

だが私に辿り着ける者など存在はしない。

死後、英霊となった彼らとは違い私は現存する。

()()()()()()()()()()()()()()()()この忌ま忌ましい能力はこんなところでも役立つのか。

だがそれも・・・あの子に会えたのなら構わないか。

 

『マスター!どこー!』

 

「ふふ・・・」

 

心象にあの子まで出てくるなんてどれ程までにあの子の存在が大切で心に刻まれているのやら。

そろそろ覚めないと。

夢の中でずっと居ては悲しんじゃうかもだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ・・・ぅ・・・」

 

心象から覚めれば朝日が窓から差し込んでちょうど布団を照らしていた。

横目に見ればライダーがじっと私を見詰めている。

 

「マスター!おはよー!」

 

「ん・・・おはよ」

 

しっかりと寝たからか、普段よりも身体の調子がいい。

魔力もすこぶる安定していた。

睡眠とは意外にも重要なのだなと分かる。

 

「顔色良いね。昨日よりも」

 

「ん、そう」

 

「アーチャーがご飯作ってるみたいだから早く行こ?」

 

「・・・いいよ」

 

だがその前にライダーを呼び止めると髪を整える。

いくら適当に伸ばしているとはいえある程度は綺麗にしたい。

櫛を取ろうとするとライダーが先に取って私の髪を梳いてくれる。

 

「マスターの髪は綺麗だねー」

 

そう、なのだろうか。

自分でも気にしたことがない。

ただ銀色は汚れると目立つし、それは嫌だったから適当に綺麗にしたつもりではあったが。

 

「・・・あの時と全く変わってないね。とっても綺麗だよ」

 

「ん・・・」

 

「変わったといえば・・・長さぐらいかな?」

 

腰にまで届くだろう私の髪は正直梳くだけでも疲れる。

誰かにこうして手伝ってもらわないと中々梳き終わらないのだ。

 

「ねえ、マスター」

 

「・・・?」

 

ライダーに梳かれていると急に後ろからぎゅっと抱きしめられた。

 

「ぁ・・・」

 

「マスターは自分が嫌い?」

 

その問いはどのようなものなのだろう。

自分といっても様々ある気がする。

だが・・・死なないという自分は嫌いだけれど、こうして普通の人間のような生活を送れている自分は好きではある。

 

「ボクはこの世の全てが好き。でもね、それよりももっと好きなのがあるんだ」

 

「・・・どんな、の?」

 

「何だと思う?」

 

ライダーのその愛好心は強い。

そんなのは生前から知っている。

だけれどそれよりも大事な物が出来たのだろうか。

それを察することは私には出来そうにない。

 

「ボクはもう英霊だ。だから叶わない願いだと分かっているつもりだよ」

 

ならば聖杯を使えば良い、と思った。

ライダーがこうして召喚に応じたのは心に少なからず叶えたい願いがあるからだ。

 

「聖杯で叶えないとは思わないけどね。でも・・・」

 

 

「それを叶えれたらボクはどれだけ幸せなのだろうと、幸福に満ち溢れるのだろうと考えた」

 

ライダーの願いは自分自身が幸せになることだけじゃない。

それだけは分かる。

全知全能じゃない私は能力がなければ魔力がただ多い女の子だ。

所詮は異物として生まれ、そして自分自身を忌む。

 

「マスター。ボクの願いはね・・・」

 

ライダーの願い。

それを聞いた時、私は何故か涙を流していた。

感激したわけじゃない。

同情をしたわけじゃない。

だけど、それが叶ったとき私は・・・どうなるのだろう。

 

「マスター。終わったよ!」

 

「あり、がと」

 

ライダーが丁寧に梳いてくれたからか、指がスルッと通る。

 

「よし、早くご飯食べよう!ボクお腹すいた!」

 

バタバタと一足先にライダーは行ってしまった。

ここからでも良い匂いがするあたり、作り手はさぞ素晴らしい腕がある。

こんな匂いを嗅いでいれば私もさすがにお腹が空く。

ライダーの気配を辿れば既に私以外が待っており、今出来上がったようだった。

 

「やっと起きたのか」

 

「ん・・・」

 

「積もる話もあるだろう。だがその前に・・・」

 

どうやら台所はアーチャーが占拠していたらしい。

そして目線を送られ、見ればライダーが隣をポンポンと叩いている。

 

「はい、はい」

 

ライダーの隣へ座ればライダーが早く早くとご飯を急かしていた。

 

「君らの口に合うか分からないが、食べてみるといい。小僧、貴様は特にな」

 

フッと笑うアーチャーは自分の料理に自身があるのだろう。

それを裏付けるように見栄えやその匂いは一級。

 

「じゃあ・・・いただきます」

 

手を合わせるとライダーも習って手を合わせた。

こういうところまでは聖杯は知識で与えれないのだろう。

そこを私が教えれば良いのだけどね。

 

「はむ・・・っ!?美味しい!アーチャー美味しいよ!」

 

「ん・・・美味しい」

 

「そうか。それは良かった」

 

「くそ・・・悔しいが美味い」

 

こんな日常も良い・・・。

そんな事を感じる程度には私も変わりつつあるのかな。

ライダーだけいればいいと思っていた私は人間との関わりを止めていたが。

それも改めるべき・・・ということだろう。

アーチャーやセイバーも今のところ敵対はしないように見える。

 

「ふふ」

 

「?、どうかしたのかマスター」

 

「いえ・・・諦めていた事が・・・こんなにあっさりとしてしまうことが嬉しいんです」

 

あの時倒れた少女はもう元気そうにしていた。

魔術の破壊が幸運へと働いたのだろう。

 

「・・・それはどういうことだ」

 

「それも・・・ご説明します」

 

だがその前にまず食事を終えなければ作り手に失礼だろう。

それにこんなに美味しいのならば残すこともないだろうが。

 

 

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