朝のご飯も食べ終わり、全員が床を着く。
「私の事を話したいのですが、その前にお二方の事を聞いても良いですか?」
お二方、つまりは私とライダーだろう。
向こう側は元々の面識があるが私達は初対面。
「朔月朱音」
「ボクは・・・言っちゃって良いのかな?」
大丈夫と頷くとライダーはニコッとしながら話す。
「ボクはアストルフォ!シャルルマーニュが十二勇士の一人で、ライダーのクラスだよ!」
「真名・・・明かしてしまってもよろしいのですか」
「・・・構わない」
「はぁ・・・これでは私も言わねばならないな」
「アーチャーさん?」
「私の名はエミヤ。そこの小僧の未来がこの私だ」
やはり。
この褐色英霊と赤髪の少年は似ている。
それもそうだろう、同一人物で過去か未来の差なのだから。
「エミヤ・・・?アーチャーさんが先輩で・・・先輩が先輩・・・?」
「さ、桜。一度落ち着こう。・・・アーチャー。お前が俺の未来・・・ってことなのか」
「ああ。お前が掲げる正義の味方。それを追い求めた姿が私だ」
「なら・・・俺は何なんだ?」
未来の自分自身がすぐそこにいる。
それを見せられて少年は頭を悩ませた。
自分自身は一体なんなのだろうと。
「シロウ。考えるのは今ではありません。ここで考えるのは場違いかと」
「・・・ああ。そうだな」
「私はセイバー。訳合って真名を名乗ることは出来ません」
真名を名乗れない英霊は後ろめたい事でもない限りは殆どない。
だがあの時の攻撃である程度のスタイルが分かる。
正々堂々。
小細工を嫌うような戦い方は東洋の戦い方ではなく、どちらかといえば西洋。
後ろめたいというのは言葉の声色から予想し、考えつく事はない。
つまるところ、大きな名のある騎士の英霊。
「・・・マスター?」
私に記憶された情報から検索。
名のある騎士、正々堂々、西洋。
ブリテンの王。
導き出されるは、アーサー王ただ一人。
その剣を捜索。
宝具・・・予想、完了。
「ん・・・?どうかした?」
「マスター、何か考えてたの?」
「セイバーの真名。分かった」
その瞬間、セイバーの表情が歪む。
ばれたくないから明かさなかった自身の名に辿り着かれたのだ。
「敵対、しない。どうせ、誰も
それは事実。
たとえ神相手だろうと私に勝つのは不可能。
ありとあらゆる攻撃を無効化させる私の守護を貫けるのは誰一人も居ないのだから。
「ならば、試してみるか?」
「・・・お好きに」
しばし険悪な雰囲気になるも、アーチャーが先に折れた。
向こう側としても無意味な戦闘は避けたいのだろう。
私の攻撃手段や防御手段。
戦闘方法が分からないのに攻撃を先に仕掛けるのは愚か者だ。
「そのような相手ならお爺様の・・・魔術も破壊することは容易いんですね」
「自身の魂を魔術によって憑依させる。だけれどその程度。神代でもない限りは」
神代相手になると私の封印自体を解放してしまわないと相手に出来ない。
「マスター。君の事は私が守ろう。かつての私は見て見ぬ振りをしてしまったことを今でも後悔した。何故あの時助けなかったのかと」
「私の家を知らなかったから、たとえ知っていても先輩だけでは無理だったはずです」
「・・・ああ。今の俺に桜を救いたいという出来事が起きても何も出来ない。人を助ける力が・・・足りないんだ」
桜という女の子。
彼女の体内から聖杯に繋がる者を感じる。
恐らく彼女のお爺様とかいう人が埋め込んだのだろう。
聖杯の器にするために。
「・・・くだらない」
「マスター」
「聖杯を生み出した癖に、ね」
元々聖杯は人工的に生み出された。
その瞬間は今でも覚えている。
勝手に英霊の座へと繋げ、英霊達の願いをも利用するために。
「朔月さん。良いんです。今の私は・・・その、自由ですから」
「・・・朱音でいい。名字、呼びはあまり好きじゃない」
「お爺様が亡くなったのは・・・その、なんとなくですが分かります。今まではこんな会話出来ませんでしたから」
「・・・そう」
本人が良いというのならもういい。
後に引きずって良いことなどない。
・・・アストルフォだけは諦めれなかったけれどね。
「朱音・・・でいいんだよな?」
少年・・・シロウと呼ばれていた彼は私に問う。
もちろん名前呼びなので頷いたが。
「正直な話、俺は聖杯戦争を知らない。セイバーを召喚したのも偶然なんだ」
「先輩は元々無縁の話でしたから。参加するならば、私も。アーチャーさんも・・・お願いできますか?」
「ああ。私は君のサーヴァントだ。君の意向に従おう」
「セイバー。俺は犠牲者を出したくない。手伝ってくれないか」
「構いません。ですがシロウ。あなたは戦い方を知らない。それはどうするのですか」
戦い方・・・ある程度ならば模写できるけれど・・・。
「私が相手しよう」
まあそうなるとは思っていた。
だが私達はどうしようか。
「だが、私だけでは相手も慣れる。朱音、ライダー。君らも出来ないか」
「ボクは良いけどマスターって・・・」
「構わない・・・けど、真剣以外では出来ない」
真剣は実際の剣。
斬れば肉や骨も切れて、殺せる。
私の剣術がどこまで通用するか知らないけどそれでも生半可に相手は出来ない。
ライダーの場合はそもそもあの時は剣なんて見せていなかったからか、心配そう。
それでも大丈夫。
「分かった。頼む・・・っと、そういえば名前言ってなかったな。俺は衛宮士郎だ」
「あっ・・・私もでした・・・。間桐桜と言います」
二人してあわあわと慌てた様子で自己紹介をしているのを見ると二人以外が笑った。
私とライダーも思わず。
こんな人達ならば信じても良い。
私の正体。
ライダーすら知らない私の事をいつか教えれれば良いけれど。