私、朱音は今ライダーの腕の中で身動きが出来ません。
何故かといえば、あの戦闘後にライダーが過保護なぐらい私を甘やかそうとしてきます。
「マスター!」
「んう?」
「おやつ一緒に食べよう?」
「ん・・・」
私が手に取る前にライダーが我先に取って私に食べさせようとする。
ライダーが親鳥で私がひな鳥みたいな光景に桜や士郎達が驚いていた。
それもそうだろうけれど、そもそも英霊となるサーヴァントがマスターに対してこれほどまで表現はしない。
「おいしい?マスター」
「ん・・・うん」
「えへへ、良かったぁ」
今私が食べてる菓子も元々ライダーが作った物。
どうやら桜に聞いて作ったみたいで、それはもう出来たときは嬉しそうに。
「ライダー、トイレ・・・」
「じゃあ連れていってあげるね!」
「ぁ・・・う、うん」
何があったんだろう。
私が召喚したライダーは確実に普通じゃない。
蒸発してしまっている理性がある。
私にだけ異常なまでの過保護。
そして本来触れられない私の武具をライダーは触って振るった。
「ライダー?」
「んー?」
「あなたは、私に召喚されて、良かったの?」
「んー、わかんない!ボクはボクだからね!召喚されて誰に仕えるのかも分からないから良し悪しなんてわかんないよ」
ライダーらしいと言えばライダーらしい。
何かに縛られないライダーは誰がマスターだろうと変わらないだろう。
強いて言うなら私がマスターの時だけは溺愛・・・みたいな感じなのかな。
「ん・・・そっか」
「でもね?朱音がマスターならボクは全力で戦える。気の知れた・・・っていうのもあるけれどね」
「・・・ありがとう」
「えへへ!でもマスター」
まだ、何か隠してるよね?
そんな感じの目線。
事実私の武具自体の出所は私の心象風景から贋物として投影しているに過ぎない。
だから隠していると言われれば隠している。
「・・・マスターが剣なんかで戦う姿が想像できない。ボクにからすれば隠している技術だし、それは詮索すべきじゃないって勘が言ってる」
「ライダー。それ以上は駄目」
「うぐっ・・・そ、そうだね。マスターもマスターで何かあると思ってるから。でも・・・いつか教えて欲しいかな」
「ん・・・いつか、ね」
そう、いつか。
そのうち私の事を教えてあげる。
だからそれまでは秘密。
「ライダー。朱音」
「ん、セイバー?どうしたのさ?」
「少し聞きたいことがあります」
「ボクとマスターの事に関する以外ならある程度はいいけれど」
「何故私が聖杯を求めるか、知っていますか」
元々聖杯戦争で呼び出されるサーヴァントは何か願いを叶えるために聖杯戦争に応じる。
ブリテンの王だったセイバーが願うものは恐らく彼女が死んだ後のブリテン。
自身が王でなければ何か違った未来があったのではないか、というもう一つの可能性を求めたのだろう。
「ボクにはさっぱり。マスターは辿り着いたみたいだけどね」
「・・・ずっと思っていることがあります。私でなければ、何か違ったのではないか、と」
「それは、違う」
ブリテンは崩壊している。
故に現代に存在しない。
だからこそ彼女はそう思ったのだろう。
ならば考え方を変えれば良い。
「逆に、セイバーだったからこそ。そうは考えれない?」
「・・・私、だったからですか。それは・・・考えました」
「でなければすぐに崩壊したかもしれないし、そうではないかもしれない。誰であろうと考える予想、予測」
「セイバー。自分の願いと行いが、誰かを救えると思ったならそれが正解。召喚されても、己に恥じることなく胸を張って言えるのならそれは、美徳」
「・・・そう、ですね。朱音、ありがとうございます」
セイバーは少し晴れた表情で去っていく。
ヒントはあげた。
あとはセイバーがどう思うかで変わるだけの事。
「マスター」
「・・・?」
「ボクは・・・その」
「・・・ふふ」
ライダーの行いは迷惑をかけ、誰かを不幸にしたのかもしれない。
だけれど誰かを救えて幸せに出来たのなら。
「あ、う?ま、マスター?」
ライダーを抱き寄せて頭を撫でてあげる。
この子はちゃんと救った。
「アストルフォ、ありがとう、ね」
「ふぇっ?う、うん?」
何がなんだかわかっていないけれど構わない。
伝わらなくても、行動で示したから。
いつか気づいてくれる。
その時にお返ししてくれたら、私は構わないから。