双頭の骸、虚圏に立つ   作:ハンバーグ男爵

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(音もなく投稿)

(身体が耐えきれず爆発四散)

_人人 人人_
> 突然の死 <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄






十四話 引鉄を我が手に

ねぇーウルキオラ、ホントにあの子来るの?

 

「黙って待て、ジェーン・ドゥ。

藍染様のお考えになった事だ、間違いなく女は現れる。」

 

深夜の空座町、街の片隅で、私の能力使って完全に霊圧を消した私とウルキオラは、ある女の子を待っていた。

藍染君が目を付けた井上織姫という人間の女の子、前にウルキオラの映像で出てきた子だ。あの時は仲間のもげた腕を治療してたっけ。

 

「…………来たか。」

 

予定時刻ピッタリ、井上織姫が現れた。

ウルキオラの渡した特殊なブレスレットを着けているので、霊圧は破面にしか知覚出来ないし、『現世の物質を透過する』っていう覗きし放題のチート能力持ってるんだって。

製造元はどうせザエルアポロだろう、変態はなんでも作ってくれる。

 

「行くぞ。」

 

「……はい。」

 

素っ気ない返事、私と目が合ったから手とか振ってみたけど反応は薄い。

藍染君の作戦はひどいもんだ、あのやり口だと死神側裏切った様なもんだからね。

 

ではでは、織姫ちゃんを虚圏へご案内〜。

 

 

 

……………………

 

 

 

井上織姫という女の子、 アレでかなり強い子だ。あの藍染君の本気の霊圧受けても気丈に振舞ってたし、虚夜宮で完全にアウェーにも関わらずまったく物怖じしてない。

そのまま命じられて、無くなったハズのルピの左腕を治したのには驚いた。

破面って虚だった頃の再生能力とか失ってるから、千切れた程度ならなんとか繋ぎ合わせられるけど、燃やされたり、凍らされたりして完全に消えちゃうと二度と元には戻らないんだ。なのに織姫ちゃんが手当をすると、腕が元から生えていたかのように元に戻った。

これを藍染君は『事象の拒絶』と呼び、神に近しい能力なのだと言った。難しい言葉が多かったので途中から寝てたケド……

とにかく、彼女は傷を負った事実を否定して、無かったことにしてしまえるらしい。

それから、織姫ちゃんの世話はウルキオラがするようだ。

 

やったなウルキオラ!リアルの女の子と触れ合えるで!

心が無い(笑)ウルキオラ君、全く女っ気が無いからお姉さん心配してたんだよ。これであの子にも遂に春が……

 

「ジェーン・ドゥ、貴様余計な事を考えているな?」

 

それにしても織姫ちゃん、うーんこの…デカい(確信)

 

「ジェーン・ドゥ、流石に俺でも今貴様が何を考えているのか容易に想像ができる。

取り敢えず視線を上に上げろ。」

 

ハッハッハ、ナンノコトカナ

 

「仲が良さそうで何よりだ。ウルキオラに同じく、ジェーンにも彼女の面倒を任せよう。同性にしか言えない悩みもあるだろうからね。

新たな同志をもてなしてやってくれ。

それから…織姫、君に見せたいものがある。付いてきてくれるかい?」

 

笑顔でそう告げる藍染君は織姫ちゃんを奥の部屋へ案内していった。

 

あ、警備のロリとメノリが部屋から出てきた。

ロリったらブツブツ文句言ってる、嫉妬は見苦しいゾ。

 

そして暫くすると織姫ちゃんだけ帰ってきた。

多分崩玉を見せたんだろう、織姫ちゃんから冷や汗が止まらない。

 

「貴様の部屋はこっちだ。行くぞ、女。」

 

「……はい。」

 

相変わらず無機質無表情無愛想100%で世の女の子をドン引きさせるのが得意なウルキオラきゅん、こりゃもう才能だね。女の子から嫌われる固有スキルでも持ってんのかよ。

こんな事もあろうかと現世から持ってきた恋愛ゲーム借してやったろ?何やってんのさ。

 

「知らん、アレは一通りやり終えたが何の感慨も得なかった。」

 

律儀に全ルートクリアしとるんかい。

 

なーんて歩いている内に織姫ちゃんの為に用意された部屋に着いたので、さっさとウルキオラを追い出す。

私は織姫ちゃんと2人で話がしたいのだ。

 

「別に構わんが…余計な事を吹き込むなよ。」

 

うっせー顔面死後硬直野郎、さっさと出てけ!

 

「罵倒のバリエーションだけは豊富だな。」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「じゃあお話しよっか、井上織姫ちゃん……

長いから織姫ちゃんでいい?」

 

「は、はい…」

 

ウルキオラという破面が部屋から出ていって、私は残った彼女と付き合って椅子に座っている。

ベージュの髪に紫色の瞳、名前は確か…ジェーンと言ってた。

 

「私の名前はジェーン・ドゥ、現世だとちょっと不吉な名前かもだけど、気にしないでね。

まずはようこそ、虚圏へ。歓迎するよ。

いやー虚夜宮って男世帯だからさー、女の子って貴重なのよね。

あ、生活しててなんか不便な事があったら遠慮なく私に言ってね。ウルキオラの奴女心全くわかってないスカポンタンだから。コスメとか、女の子特有のアレとか、人間って色々気を付けないといけないことが多いんでしょ?雑誌に書いてあったよ。」

 

「えぇ!?あ…はい、ヨロシクオネガイシマス…」

 

あれ?あれあれ?

思ってたより随分フランクだ。もっとこう…「お前に人権は無ぇ!」みたいなひどいことを言われるのかと思ってた!

ていうか破面って雑誌読むんだ…

 

「取り敢えずお腹空いてない?空いてるよね?

ご飯用意してあるから食べなよ。」

 

そう言って彼女が指を鳴らすと、何処からともなく皿に盛られた大量の料理が!?

 

「うわ…すご…」

 

「丁度私もお腹空いてたからさ、一緒に食べよう。

心配しなくても毒なんて入ってないから安心してね。キミはお客様なんだから。」

 

山盛りのピラフを小皿に取って差し出してくるジェーンさん。

美味しそう……はっ!?いけないけない!

私は人質、駄目だよ簡単に心を許しちゃ…

 

 

 

美味しい料理なんかに絶対負けない……!

 

 

 

~〜30分後~〜

 

 

 

「で~?織姫ちゃんは好きな子とかいんの?

やっぱりあのオレンジ髪の死神君?」

 

「え……いやあその…ゴニョゴニョ…」

 

「乙女らしい反応しちゃって可愛いなーこのー!」

 

やっぱりご飯には勝てなかったよ…!

 

「お酒じゃないから大丈夫!」って飲まされたなんか口の中ぱちぱちする飲み物を飲みながら、気が付いたらジェーンさんと2人で恋バナに耽ってた。

ジェーンさんは現世の生活に興味津々で、目をキラキラさせながら私の話を聞いてくれる。

虚圏、ホントに娯楽少ないんだなあ…

 

「織姫ちゃんはあの子の何処が気に入ってんの?」

 

「くっ…黒崎君のいい所…?

かっこいい所とか、優しい所とか、頼りになる所とか…それからそれから…」

 

自分でもびっくりするくらい口が軽いよ!?

ああっ!ここ来る前に黒崎君の家に忍び込んでやらかしたアレコレが走馬灯のように蘇る!?

 

 

ほわんほわんほわん…

 

『あーあ、人生が五回くらいあればいいのになあ…』

 

『そしたら私、五回とも…黒崎君を好きになる。』

 

 

 

 

ぼっ!!!

 

「オワアアアアアアア!?

私はなんて恥ずかしい事を…!!!」

 

ほわあああああああああああああああああああ……今思い出したら死ぬほど恥ずかしいっ!?

何アレ!?ふおおおおお……

 

「急に茹でたタコみたく赤くなってどうしたの織姫ちゃん!?」

 

ジェーンさんに心配されてしまった……挙動不審でゴメンナサイ…

 

「織姫ちゃんは面白いなあ。破面は基本戦うことしか考えてない脳筋共だから、こういう話は新鮮で楽しいよ。」

 

そう言いながら笑うジェーンさんを見ていると、自分が人質だって事を忘れてしまいそうになる。

いけないいけない!せめて私も彼女から情報を引き出さないと…

 

「あの…私からも1つ、聞いてもいいですか?」

 

「返せることなら。」

 

「なんで…貴女達破面は、藍染…様に従うの?」

 

「……むふふ、それはね。

単純に彼が強いからだ。虚圏は単純な縦社会だからねー、強い者が弱い者を支配する、弱肉強食の世界なんだよ。ま、それ以外にも破面にしてくれた恩返しがしたい奴とか、コテンパンにされて復讐の機会伺ってる奴とか色々居るけど、それでも虚圏が藍染君の元に纏まってる原因は彼の実力のおかげかな。」

 

でも…と更に彼女は付け足す。

 

「ひねくれ者なんだよ、藍染君は。」

 

自嘲気味に笑うジェーンさん。その表情には、友人を気遣う時の様な優しさが感じ取れる。

この人、たつきちゃんに似てるかも…

 

「私達は善か悪なら間違いなく悪だ、元は虚なんだしね。

でも、藍染君のお陰で私達は虚の因果から外れて破面になれた。

こうして織姫ちゃんとご飯食べながら笑う事だってできる、その辺に関しちゃ感謝してるよ。

そんな私達のボスが死神と戦えって言うなら、私はそれにある程度は従う。

破面なりの恩返しって奴さ。」

 

ま、実は無理矢理力で従わされてる奴の方が多いんだけどね。ははは。

 

と、ジェーンさんは笑ってた。

 

「そう…ですか…

でも私、たとえ悪人だとしてもジェーンさんに会えてよかったです…」

 

「……!やっぱり織姫ちゃんは可愛い子だね~。」

 

頭を撫でられた!?

 

「その辺りで止めておけジェーン・ドゥ。」

 

いつの間にかウルキオラがジェーンさんの側に立ってる、びっくりした…

 

「んだよノックくらいしろウルキオラ、レディのお部屋だぞ。」

 

「知らん。」

 

ウルキオラとジェーンさんが言い争いを始めたその時…

 

 

 

ゴゴゴゴゴ……

 

 

 

「っ!?」

 

「…………!」

 

「……」

 

空間が揺れてる、無理矢理何かをこじ開けるような歪な霊子の揺れを感じた。

 

「…来たか。奴らの正確な位置を教えろジェーン・ドゥ。」

 

「22号地下通路かな。

う~わ雑な黒腔の開き方しやがってー、穴ガッタガタじゃん。素人の仕事だよ全く。」

 

2人が何か話してる、その後直ぐにウルキオラは去っていって、ジェーンさんもこっちを見てニコッと笑った。

 

「ゴメンね織姫ちゃん。もうちょっと話してたかったんだけど、行かなきゃならなくなっちゃった。

食事は置いておくからお腹が空いたら食べるんだよ?じゃねっ!」

 

早口でそう言って、ジェーンさんはパッと消えてしまった。

 

「あ、言い忘れてた!」

 

戻ってきた!?

 

「着替え、そこのソファに置いてあるから。

ドロドロの服じゃ気持ち悪いでしょ?着替えるといいよ!」

 

また消えた!?

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

虚夜宮内、暗い廊下を複数の足音が響く

 

円卓に設置された椅子は十席。ゾロゾロとやって来た人影は、それぞれの席へと腰を下ろした。

 

誰かが言った

 

「侵入者らしいよ。」

 

 

侵入者

 

虚圏がある男に統一されてからは聞きなれない単語である。

上級破面の巣窟である虚夜宮に侵入しようとする野良虚などまず居ない、純粋な力で上下関係にある彼等にとって、次元の違う相手にわざわざ近付くような馬鹿な真似などする筈が無いからだ。

 

なら、この侵入者とは何者か?

 

「崩落したのは22号地底路だそうだ。」

 

黒人の様な出で立ちをした破面が言った。

 

「22号ォ?また遠い所に出たもんじゃのォ。」

 

それに答えるのはガタイの良い老人、顔の傷跡が彼の威圧感を増している。

 

「全くだね、どうせなら一気に玉座の間にでも現れれば面白かったのに。」

 

残念そうにそう言う眼鏡の優男は肩を竦めた。

 

「仮にそうなれば、藍染様の御手を煩わせる事になる。軽口は慎めザエルアポロ。」

 

彼を戒めるのは褐色金髪のグラマラスな身体をした女。

 

「ふあぁぁ…眠み…」

 

そんな彼等を見ながら、欠伸してさっさと終わらないかと考えている黒髪の男。

 

「…………ジェーンの姿が」『見エナイケド?』

 

仮面の破面の一言に、皆がピクリと反応した。

 

「あの女の事だ、どっかで菓子でも作ってんだろ。」

 

「オイ!アイツが来なけりゃ約束してたケェキはどーなんだよ!」

 

「知らん。」

 

ある男は面倒臭そうに溜息を吐き

 

ある男は巨体を揺らして憤慨している

 

ある男は一切表情を変えずに答えた。

 

 

『憤怒』

 

『強欲』

 

『狂気』

 

『陶酔』

 

『破壊』

 

『虚無』

 

『犠牲』

 

『老い』

 

『孤独』

 

 

主人の命にて集まりし九つの刃達、殺戮能力の高い順に選別された彼等の総称は、《十刃》

 

 

全員が席に着き、1席を残すのみとなる。

それが埋まるより先に、奥の扉が開き3人の男達が姿を現した。

白で統一された死縛装に身を包む3人の内、先頭の男が薄く微笑み静かに告げる。

 

「諸君、よく来てくれた。

まずは…紅茶でも淹れようか、お茶菓子も付けてね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……皆に紅茶は行き渡ったかな?」

 

十刃の座る席を見渡し、紅茶が行き届いた事を確認する藍染。それを見て、アーロニーロの仮面が僅かに動き、無機質な声を発する。

 

『ジェーンガ居ナイヨ、藍染サマ。』

 

「居るさ、君の隣に既に座っている。」

 

それを聞いた十刃達の視線が一斉にアーロニーロの横の空席だった場所に注がれた。

 

「は~いお待たせ、ジェーンお姉さんですよ。」

 

そこにはベージュのポニーテールを揺らし、首元には『5』の数字。他の者とは一風変わった海賊の様なコートを死縛装の上から羽織った破面が、いつの間にか脚を組んで椅子に座っている。

 

彼女こそ十刃最後の1人、始祖の虚ジェーン・ドゥ。

 

 

司る死の形は、『依存』

 

 

 

「いやあメンゴメンゴ。

お待たせ藍染君、頼まれてたお茶菓子だよ。」

 

パチンっと笑顔のジェーンが指を鳴らすと、十刃達の目の前に置かれた紅茶のカップの横へ、皿に載せられた白いケーキが現れた。

頭頂部には黄色くて四角いゼリーの様なキューブがちょこんと載せられデコレーションされている。

 

「私特製、レアチーズケーキ。

デコレーションにちょっち時間かかっちゃった。さあ遠慮なく食べてよ!」

 

満面の笑みで促すジェーンに、十刃達の反応は様々だが、いの1番に食いついたのはヤミーだ。

自身の掌ほどにも満たない大きさのケーキを小さなフォークで器用に半分ほど切り取って、口に運ぶ。

 

「美味え!待たされた甲斐あったぜ!」

 

その声を聞いて、他の十刃達も1人、また1人とケーキと紅茶に手をつけ始めた。

 

「『美味しイ。』」

 

「また腕を上げたなジェーン。

スンスン達がお前を師と仰ぐ理由が分かる。」

 

「でっしょー?ふはは、もっと褒めろ褒めろ。」

 

レアチーズケーキ。

作るのに手間がかかるのが難点だが、完成すればこれ程美味なるスイーツもないだろう。

自称虚圏一の料理人ジェーンの手により作られ、チーズ特有の臭いやくどさも無く、しかし濃厚で後味さっぱり。

ここ最近(ほぼ強制的に)食べる彼女の手料理で舌の肥えた破面達にも好評であった。

 

「ジェーン・ドゥ。

頭頂部にある物体はなんだ。」

 

ケーキをつまみながら、ウルキオラが口を挟む。

 

「何って、ゼリーだよ。

現世で買ってきた蒟蒻(こんにゃく)何とかって歯応えのある奴をクラッシュして、形整えて載せてるの。因みにウルキオラのはブドウ味ね。」

 

ハリベルとグリムジョーのはリンゴで、ゾマリとアーロニーロのはオレンジかなー。他にも色で味が違うゾ。

と、解説するジェーンから視線を外したウルキオラ。周りを見回してある異変に気付く。

 

「貴様とザエルアポロ、そして藍染様のケーキにはそれが乗っていない様だが…」

 

「ああそれね、思ったよりゼリーの数が少なくてさ。ザエルアポロと藍染君の分まで足りなかったの。

藍染君には了承得てるし、ザエルアポロは拳で黙らせたから気にすんなし。」

 

そう言ってジェーンは呆れた表情のザエルアポロを無視して藍染に視線を送り、彼もそれに頷いた。

 

「彼女の言う通りだよ、ウルキオラ。

私は()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「………ご命令とあらば。」

 

訝しみながらも、ウルキオラはケーキとゼリーを口に運ぶ。

ゼリーはジェーンの言った通りブドウ味で、口の中でシュワシュワと炭酸が弾けた。

 

「…………」

 

「美味しい?」

 

「………………分からない。」

 

無表情で戸惑うような仕草のままケーキを食べ続けるウルキオラにニコッと笑いかけ、ジェーンも自分のケーキにフォークを伸ばす。

 

 

これ以上ないくらいほのぼのとした雰囲気の中、十刃達の集会は幕を上げ、そして()()()()()、これ以上3人だけゼリーが載っていない理由を追求する者はいなかった。

 

 

………………

 

 

 

「さて諸君、空腹も満たされた事だし聞いてほしい。」

 

敵襲だ

 

ケーキを食べ終えた藍染の一言にピリリと緊張が走る。

藍染に命ぜられ、東仙が機材を操作すると、長机の中心が丸く開き、そこには虚圏の砂漠をひた走る3人組が映し出された。

 

「…コイツが」『敵ナノ?』

 

「なんじゃい、侵入者というからどんな軍隊かと思うたら、まだ餓鬼じゃァないか。」

 

「ソソられないなあ、全然。」

 

「侮りは禁物だよ。彼等は嘗て『旅禍』と呼ばれ、たった4人で尸魂界へ乗り込み護廷十三隊に戦いを挑んだ人間達だ。」

 

たった3人、しかも長命な彼等からすれば赤子のような年齢の人間達が侵入者。その事実に鼻を鳴らすバラガンとザエルアポロに藍染は釘を刺す。

因みにもう1人の旅禍とは現在虚夜宮に在住の井上織姫の事だ。

 

「仲間を助けにやって来た。と、言うわけですか。藍染様の統治するこの虚夜宮へたった3人で…舐められたものですね。」

 

「だからと言って侮るな。藍染様はそう仰られた筈だぞ、ゾマリ。」

 

「22号潰れちゃったって事は、アイスリンガーとデモウラに勝ったんだ。流石に死神相手にタメ張る様な子達に下っ端じゃ相手になんないよねー。」

 

ま、それで死なれても興醒めだけどさ。

肩をすくめるジェーンを見て満足したように藍染は続ける。

 

「侵入者は3名。

茶渡泰虎、石田雨竜、そして黒崎一護だ。」

 

「……!!!

グリムジョー、ステイッッッ!!!」

 

「俺は犬か!?心配しなくても奴の名前が出たくらいで勝手に飛び出さねえよ!」

 

急に両手を突き出しグリムジョーを押さえつけるようなジェスチャーをするジェーンに鋭いツッコミを入れるグリムジョー。侵入者の1人、黒崎一護とグリムジョーは因縁ある相手だが、血の気が多い彼でも時と場所は弁えているようだ。

 

「……大人しくなったな、グリムジョー。

以前の貴様ならそのまま飛び出して藍染様に叱責される所だ。」

 

「………ケッ!」

 

それがお前の『変化』なのか…と呟くウルキオラの言葉に適当な相槌をし、グリムジョーは椅子へもたれ掛かる。

 

…どこからかヒソヒソと話す声がグリムジョーの耳へ届いた。

十中八九碌でもない事だろうが、鋭敏な破面の聴力が嫌でも会話を拾ってくる。

 

「言ったろー?グリムジョーってば大人の階段登ったよって。」

 

「そうか、あの時の言葉の真意はそう言う意味だったのか。

勉強不足だった。認識を改める必要がある。」

 

「でもさ、大人の階段登ったって言っても絶対アイツ童て「聞こえてんぞジェーンコラァ!!!ウルキオラ!テメェもクソ真面目な顔して頷くんじゃねえッ!」よっしゃ、今度ハリベルのおっぱい揉んどくか?」

 

「揉まねえよ!?なんでちょっと顔赤くしてんだよ♯3(トレス)の女ァ!」

 

グリムジョーが爆発した(比喩)

 

『今夜飲みいく?』位の気軽さでハリベルの胸を指差し満面の笑みを浮かべるジェーンとは対照的に、血管破裂しそうなほどグリムジョーは怒っている。ハリベルは…満更でもないようだ。

ジェーンは知っている、最近彼女は揉まれ過ぎて感度が上がり、その多幸感がクセになりつつある事を。「正直揉まれない日の方が落ち着かない」なんて考えちゃってる事を。

 

始祖の魔の手からは逃れられない。

 

 

 

あっという間にいつものゆるーい雰囲気に戻りつつあるのを暫く堪能し、口直しに紅茶を一口含んだ藍染は柏手一つで制す。円卓の間が静まり返ったタイミングを見計らい、言った。

 

「十刃諸君、見ての通り敵は3名だ。

侮りは不要だが騒ぎ立てる必要も無い。各人、自宮へ戻り平時と同じく行動してくれ。

(おご)らず、(はや)らず、ただ座して敵を待てばいい。

恐れるな。たとえ何が起ころうとも、私と共に歩む限り、我等の前に敵は無い。」

 

静かに、しかし確信を持って宣言する藍染を、十刃達は様々な意図の篭った視線で見つめる。殆ど気にしていないのはジェーンと、小さなケーキを一口一口味わって食すヤミーだけだ。

やがて監視映像が消え、解散を促されたので次々と他の十刃達が去ってくなか、ジェーンはある男を呼び止めた。

 

 

「話あるんだけどさぁ…ウチの宮、寄ってかない?」

 

「……良いだろう、僕も()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「……ジェーンちゃん、動くと思います?」

 

「彼女は自由に泳がせておけばいい、それが最適解だよ。それがこちらにとって有益になる様仕向けるのは我々の手綱次第だ。

……ところでギン、要、君達はジェーンのケーキを食べたのかな?」

 

「はい、立ち食いでしたが。」

 

「いやあジェーンちゃんの作るお菓子美味しいですわ、殺伐とした虚圏で数少ない癒しです。」

 

「ゼリーは何味が当たったんだい?」

 

「どちらも葡萄の味でしたが…どうかされましたか?」

 

「……いや、少し羨ましいと思っただけだよ。

私とした事が自ら損を選ぶなど、らしくなかったね。」

 

「「??」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼等も君の企みの内、という事か…面白い。」

 

 

 

 

 








……話がポンポン進み過ぎじゃね?

つづけ

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