双頭の骸、虚圏に立つ   作:ハンバーグ男爵

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海外産のルーターと戦う事8時間、漸く電波が安定したので投稿

後半だヨ



~侵入者達のここまでの経緯はどうなってるの?~


黒崎一護……アーロニーロ、ドルドーニを撃破後グリムジョーと戦闘。辛勝するも、尸魂界から来た卯ノ花と遭遇し傷を癒され第5の塔へと向かう。

茶渡泰虎……原作通りガンテンバインを悪魔の右手で撃破、しかしその先で出会ったテスラと戦闘中

石田雨竜、阿散井恋次……涅マユリの乱入によってザエルアポロを撃破、その後治療されるも、ザエルアポロの仕掛けた罠が発動しペッシェ、ドンドチャッカ、ネム、マユリと共に巻き込まれ、行方不明。

更木剣八、草鹿やちる……マルジュラと接敵

朽木白哉……ルキアに止めを刺そうとしたゾマリを撃破後、現れたピカロと戦闘。

朽木ルキア…ゾマリに重傷を負わされるも、駆け付けた花太郎により治療を受け回復。

山田花太郎…白夜と共にルキアの下へ駆け付け、治療した。瞬歩は使えないのでちょっと遅れて来た。

虎徹勇音…白夜の霊圧に異常を感じた卯ノ花の命により花太郎の下へ移動中。




二十話 遊び遊ばれ遊び果て 後

 

 

第9十刃の宮は最早原型を留めておらず、朽木白哉とピカロ達の戦闘は激しさを増していく。

実力は白哉の方が上である。だが、物量に任せた鬼道の嵐と、帰刃によって更に速度が増したピカロの猛攻を受け、徐々に疲弊していった。

 

「あはははっ!」

 

「っ…!」

 

左側から迫る赤火砲を千本桜で払い除けると、爆煙を突き破って少女の刃が眼前に迫る。咄嗟に破道の一『衝』を無詠唱で放ち、直撃した衝撃が彼女を大きく後ろへ突き飛ばした。

 

「あれぇ~~」

 

大袈裟に空中を転がって、四枚の翼を翻し体勢を立て直す。大した怪我もなく、相変わらず満面の笑みで鋭い刃を向けるピカロに対し、白哉の方は先程刺された胸の傷から血が溢れ、出血で目がかすみ視界もままならない状態だ。回道で応急処置はできるとはいえ、長くは持たないだろう。

 

 

破道の五十八、闐嵐

 

破道の七十八、斬華輪

 

破道の十一、綴雷電

 

 

多様な鬼道が白夜に向けて放たれる。

反鬼相殺も限界に達し、何れも千本桜で払いきれぬものでは無いが、これでは堂々巡りだ。

(もう一度『散陣』を使うか…?

いや、それこそが奴の狙い…奴はこの戦いで私の技を学習し、成長している。無傷圏への侵入を赦せば今度こそ…)

 

子供の成長速度とは恐ろしいものだ、と白哉は内心嘆息し、かかる鬼道を千本桜で防御した。

 

その時

 

 

「後ろの正面だ・あ・れっ♪」

 

「ッッッ!?」

 

ピカロの声が後ろから響く、正面に居たはずのピカロが残像の様に消えた。これは…

 

(双児響転(へメロス・ソニード)…!)

 

先程自分と戦った十刃、ゾマリ・ルルーの使用していた響転の応用技。本人はあれを「遊び」と称していたが…成程、「遊び」なら悪戯小僧(ピカロ)が習得できない筈が無い。

 

反射で千本桜を刃に変えてつかみ取り、振り向きざまに後ろを薙ぐ。刃同士がぶつかり合う音がして、霞む視界の端で少女が転がった。

その直後、白哉の背中から血飛沫が上がる。

 

「…ッ!?」

 

「すごいすごい!今のも反応できるんだ!」

 

ぱちぱち手を叩きながら喜ぶピカロ。

 

「……」

 

「でもちょっと遅かったね、背中斬れちゃった。

わたしと遊んでまだこれだけ動けるなんて凄いよ、おにいちゃん。」

 

「童にとっては…これも『遊び』か…」

 

「うんっ!殺し合いっていう名前の『遊び』、おかあさんに教わったんだ。だから戦闘が一番得意なわたしが生まれたの。

それがピカロ(わたしたち)に必要なことだったから。」

 

殺し合いって楽しいよね!

 

頬に返り血を滴らせて無邪気に笑う少女の心に偽りは無い、彼女は本心から命の殺り合いを『遊び』だと思っているようだった。加えて、彼女は死なない。幾ら致命の一撃を加えても、何故か身体が霞がかった次の瞬間に傷は癒えて元通りになっているのだ。

何かカラクリがあるに違いないと思ってはいても、それを暴くほど白哉の体力は残されていない。延々と、彼女の遊び相手に付き合わされる。

 

(遊び、か…)

 

彼にとっては聞き慣れぬ、縁のない言葉だった。

 

白哉は由緒ある四大貴族、朽木家に連なる現当主である。規律と掟を重んじる家系故に幼少から武芸と勉学に励み、息を抜いて誰かと遊ぶ事など殆ど…いや全くと言っていいほど機会が無かった。

強いて言うなら唯一歳が近く、白哉をからかいによく朽木邸を訪れていた四楓院夜一と瞬歩を競い合ったりはしたものの、白哉本人からすれば「いい迷惑」程度である。

 

初めて好いた女性は自分を残して早くに逝ってしまった。産まれるはずの自分の子は産まれず、白哉はまた幼子とふれあう機会を失った。

瀞霊廷では子供の魂魄など、草鹿やちるがせいぜいで、菓子を渡せば大人しくなるアレもかなり特殊な部類だ。

 

白哉は子供の扱いを知らない、子供との接し方など分からない。

 

 

(…ままならぬものだな。)

 

 

尽きかけの意識で黙々と刃を振るう。

 

出血が酷い、脚がふらつき目が霞む。永年の研鑽と実戦で培った経験から、ほぼ勘と反射でピカロの攻撃を紙一重で受けきる白哉だが、それでも小さな傷は更に増えていく。

そんな状態が続き、ふらつきながらも刃を交えるうち、遂に卍解を維持出来なくなったのか、千本桜が消え始めた。

 

「あれれ?もう終わりかなー。

うーん…まだちょっと遊び足りないけど、まだ侵入者はいっぱいいるしいっか!

楽しかったよ、おにいちゃん!」

 

少女が合図を送ると、周りのピカロ達が白哉を囲むよう一斉に飛び上がり、止めを刺す為一斉に詠唱を開始する。

 

「終わったあとは綺麗に片付けないとね!」

 

 

滲み出す混濁の紋章

 

不遜なる狂気の器

 

湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる…

 

「なっ…不味いぞ!この詠唱は…」

 

焦るルキア。それもその筈、このオサレ詠唱から繰り出される鬼道は使用出来る者も一握りしか居ないとされる九十番台の大技。

黒き檻に閉じ込め、重力の奔流が敵を引き裂き押し潰すその能力を彼女が知っているのは、その技を間近で見た事があるからだ。

嘗ての尸魂界。双極の丘にて、裏切った藍染惣右介が激昴する狛村左陣に使用し、瀕死の重傷を負わせた技。あの時は詠唱破棄にも関わらず、同じ隊長格を一瞬で地に伏した鬼道を忘れるはずも無い。

 

詠唱が進むにつれて、白哉の周りに幾重にも黒い壁が積み上がり、覆い尽くしていく。唱えているのはあの少女も含めた50人以上のピカロ達による大合唱だ、50人分の黒棺を受けてしまえばどうなるか…きっと跡形も残らないだろう。

 

爬行する鉄の王女

 

絶えず自壊する泥の人形

 

結合せよ

 

反発せよ

 

地に満ち己の無力を知れ…

 

「くっ…兄様…っ!」

 

白哉は立っているのもやっとの状態、最早一刻の猶予も無いと、ルキアが飛び出そうとしたその時。

 

 

「破道の九十、くろひ…」

 

 

 

 

あ~そび~ましょ~ッッ!!

 

 

 

 

ッ!!!!!

 

 

 

ピタリと、時が止まったようにピカロ達の動きが止まる。それに伴い不完全な状態で放置された黒棺も力の行き場を失い崩れ去っていった。

驚いたのはピカロだけではない、ルキアも自分の後ろから聞こえた叫び声に驚き、唖然として声の主の方へと振り返った。

 

四番隊第七席、山田花太郎

 

負傷した隊員の治療を主とする医療部隊。戦闘とは無縁の回復要員、その末席に就く青年が、あろう事かピカロを呼び止めた。

 

「花太郎!?一体何を…」

 

我に返ったルキアが叫ぶももう遅い、()()()()()()()()()()()、目の前のピカロ全員が一斉に花太郎の方へと振り返る。正直かなりホラーだ。

 

びゅうんっと風をきって、少女が花太郎の目の前へ現れた。両手には先程まで白哉を甚振り弄んだダガーナイフが握られている。ひと振りすれば、戦えない花太郎の首など一瞬で床に落ちるだろう。

 

「いいよ、おにいちゃん。何して遊ぶ?」

 

小さな声なのに、その台詞は死刑宣告のようにルキアの耳に冷たく突き刺さった。

 

「……お、鬼ごっことか…」

 

完全に気圧され、おどおどと答える花太郎。

少女が俯き、気まずい沈黙が場を支配した次の瞬間…

 

 

 

「鬼ごっこだああああああああああっ!!!」

 

 

 

少女達の怒号のような歓声が第9宮に鳴り響く。

 

「鬼ごっこ!鬼ごっこするの!?

ヤッター!じゃあおにいちゃんが鬼ね、わたしたち皆捕まえるまで遊ぼう!

みんなー逃げろー!」

 

 

わーーーい!

 

 

瞳を輝かせながら早口でまくしたて、翼を翻し四方八方にそれぞれ飛んで行くピカロ達。

後には呆然と立ち尽くす花太郎とルキア、そして血に塗れながらも辛うじて立つ白哉が残された。

困ったように、花太郎がルキアに苦笑いする。

 

「えっと…」

 

「私に振らないでくれ…」

 

 

 

 

 

程なくして、出血多量で白哉は倒れた。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

虚夜宮、第5の塔。

 

歩きながら考えた結果、結局藍染君の所へ冷やかしに行った私。第5の塔なんて虚夜宮の端っこに集まるなんてろくなこと考えてないだろうと思ったら、やっぱり碌でもない事考えてた。

織姫ちゃんをここまで連れてきて、自分達は予定より早く現世侵攻を開始するらしい。♯1(スターク)♯2(ダーリン)♯3(ハリベル)の準備は完了したって連絡が入ったんだってさ。

そして私が虚圏で展開してる黒腔を全部閉じる、これで侵入者は完全に閉じ込められる訳だ。

 

「要。」

 

「はい…縛道の七十七、『天挺空羅』。」

 

「『聞こえるかい、侵入者諸君。』」

 

何もかも予定通りでご満悦な藍染君が虚圏(こっち)に閉じ込めた侵入者達に別れを告げて、真の目的を明かす。

これから空座町を消滅させて、なんかよく分からない鍵を作るらしい。

 

「じゃあ行ってくる。ウルキオラ、ジェーン、留守を頼んだよ。」

 

「はい、藍染様。」

 

はーい行ってらっしゃーい。ギン君もDJも頑張ってねー。

 

「んー、ほなね。」

 

「…ああ。」

 

お、遂にDJを受け入れ始めた。

 

「受け入れてなどいないッ!!」

 

ほら、デカいラジカセも買ったし、ヒップでホップなCDも一通り揃えたからいつでもいいんだよ?あ、音感とか大丈夫?『鈴虫』でズルしちゃだめよ?

 

「『鈴虫』はそんな事をする為の斬魄刀では無い!というかやる前提で話を進めるなァ!」

 

やっぱおもしれーなこいつ。

 

じゃー私は織姫ちゃんとイチャイチャしながら合図来るまで待ってるからヨロシクぅ。

 

「ああ、君もしっかりね。」

 

(……藍染隊長、絶対録画してはるんやろな。)

 

…?なんかギン君が物憂げな視線で見つめる中、藍染君は黒腔へ入り、後ろの2人もそれに続く。完全に向こうに渡った頃、案の定向こうにも死神達が控えていたらしく、ずっと黒腔の中でスタンバってたダーリン達を投入した。

 

……藍染君の黒腔閉じる直前、なんか周りがすげー燃えてた気がするんだけど気のせいかな?

 

 

「あの…私、ロリちゃんの介抱してあげないと…」

 

ん?ああ、時間取らせちゃってごめんね織姫ちゃん。そういやロリがそっちで二次会始めたんだったね。

酔いどれ状態で私の宮を出たロリはそのまま織姫ちゃんに絡み酒しに行ったらしい、そこでまた酒をたらふく飲んで今はソファで寝てるそう。途中からメノリの目が死んでたそうな。

 

「め…めちゃくちゃ揉まれました…」

 

胸元を抑えながら頬を赤くする織姫ちゃん。

何っ!?私だってまだ我慢してるのに!ロリの奴抜け駆けか!

 

「ジェーンさんも揉む気だったんですかぁ!?」

 

当たり前でしょう!そこに乳があるなら揉む。登山家に何故山に登るのか理由を聞くなんて無粋でしょ!?

 

「お前は全国の登山家に土下座した方がいい。」

 

シャラップ顔面蒼白マン!

ほら、藍染君も織姫ちゃんの居場所ばらしちゃったし、そろそろグリムジョーを倒した黒崎君がここまで辿り着くよ!なんか戦闘後なのに霊圧更に上がってるっぽいし、油断してると負けちゃうんだからね!

 

 

 

私は織姫ちゃんの胸を堪能……もとい織姫ちゃんとロリを介抱してくるからあとヨロシク!

 

「本音が出ているぞ。

まあ…あの死神には少し興味が湧いた。

貴様は藍染様からお呼びが掛かるまで井上織姫の守りをしていろ。」

 

 

言われなくてもそうしますぅ~。

行こっ織姫ちゃん!

 

 

「わわわ、押さないで押さないで!

それにもう鷲掴みにしてる!手つきがいやらしいよぉ~!」

 

 

この後めちゃくちゃ織姫ちゃんの胸揉んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こういった催しは、現世では『キマシタワー』と言うらしいね。ふむ、良い。」

 

「十刃に戦闘任せて暇やからって何言うとんですか。いっぺんそこの炎で頭冷やします?」

 

(……帰刃しようかな。)ソワソワ

 

「DJ、下心が骨まで透けて見えるで。」

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

「来たか、黒崎一護。

グリムジョーと戦ったにしては傷が浅いな。」

 

「ああ、此処へ来る途中卯ノ花さんに治して貰ったからな。

井上は何処だ!」

 

「貴様が知る必要は無い、最早あの女は用済みだ。人質としての価値はもう無い。」

 

「なん…だと…?

てめぇ…井上は無事なのか!?(人質的な意味で)」

 

「価値のない人質の末路など、俺の知ったことではない。(主に貞操的な意味で)」

 

「……ッ!!月牙天衝ォッ!!」

 

「…来い、黒崎一護。」

 

 

 

二人の刃が交差するが二人の会話はすれ違っていた

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………詳しい話を伺っても良いですか?山田七席。」

 

「…アッハイ。」

 

呆れ顔で腕を組む虎徹副隊長の前に正座させられ、涙目で俯く花太郎。その姿は身長差もあって、さながら『姉に叱られる弟』といった様子だ。

 

「おにいちゃんは悪くないでーす。」

 

『ボク達と遊んでるだけでーす。』

 

そんな悲しき花太郎の周りをぐるぐる回りながら、抱き着いたり頬を引っ張ったりを繰り返す2人の子供。なにを隠そうこの2人、先程まで兄様を殺しかけた破面なのだ。

 

 

兄様を瀕死に追いやった破面の子供達は、突如花太郎の提案した『鬼ごっこ』に歓喜し、兄様との戦闘など放り投げて脇目も振らず飛んで逃げていった。

…本当に子供なのだな。

そして何故か、この2人だけ先程から花太郎にくっ付いている。

 

『ボク達が付いてあげないと、おにいちゃん絶対他の子達に追いつけないでしょ。』

 

「うんうん、見るからにトロそうだし。」

 

「ぐっは…ッ!!」

 

言葉の刃が花太郎の心を抉る!

子供って残酷だ…

 

 

 

なおも子供2人に顔を弄られる花太郎を見かねたのか、虎徹副隊長は深い深いため息を吐いた。

 

「話は朽木さんから一通り聞きました。

処置の終わった朽木隊長も、重傷ですが命に別状はないでしょう。

そ・れ・で?何故貴方は急に『鬼ごっこ』などと言い出したの?」

 

「はい…あの子達は子供なので、ああいって誘えば食いついて来るかな、と。

朽木隊長も危なかったですし…」

 

は、半分思いつきではないか!

 

「よく流魂街の子供とこうやって遊んでましたから…あはは…」

 

「貴方…まさか流魂街の駐在任務から帰って来る度に何故か泥だらけになっている理由はこれだったの!?」

 

 

そ、それは遊んでるって言うか…()()()()ないか……?

 

 

「おにいちゃんと遊ぶの楽しかったよ!」

 

仮にも兄様を殺しかけた破面なのだが、この屈託のない少女の笑みにどう返したものか…

 

 

 

 

〝聞こえるかい?侵入者の諸君。〟

 

 

 

 

 

っ!?

 

「この声は…」

 

「天挺空羅か!?」

 

突然頭の中に声が響く、これは見知った霊圧の相手のみに連絡を送る鬼道、天挺空羅だ。声は件の黒幕、藍染惣右介で、私達が織姫を助けに予定通り虚圏へ乗り込んだこと、隊長格4名を誘き出し、且つ幽閉する事に成功したと告げられた。

それを聞いた虎徹副隊長が慌てて位置を探ると、彼女達の通ってきた黒腔は本当に何らかの力で強制的に閉じられてしまったのだとか。破面側の技術なのだろうか…

 

非常に不味い事態だ。虎徹副隊長曰く、空座町にも既に部隊は配置されていて、消滅を防ぐ為に大規模な仕掛けが施されている為、隊長達が藍染を相手に暴れても平気になっているらしい。

現世はきっと総隊長達が何とかしてくれる。そう信じるしかない。しかし目下の問題は私達だ。

虚圏に幽閉されるとなると、孤立無援の中、敵を相手取らなければならなくなる。厳しい戦闘が予想されるが…

 

『おかあさん、もう黒腔閉じちゃったんだ。』

 

「あいぜんさまの予定が早まったんだってさ。」

 

相変わらず能天気だなこの子供達は!

もっと緊張感とかないのか!?

いやとにかく、織姫は第5の塔という場所に囚われているようだ。居場所が割れたならすぐに向かわなければ!

 

……第5の塔…第5の…塔?

 

「第5の塔とは何処だ…?」

 

根本的な話である。

そもそも虚圏の地理なんて私達には分からない、普段なら霊圧を探れば織姫の場所が分かるはずなのに、何故か此処に来てから彼女の霊圧を全く感じなくなったのだ。

 

ぐぬぬ…どうすれば…

 

「あのー…君達は第5の塔って何処か知りません?」

 

いやいや、その子供達に聞いてどうなるというのだ。そもそも敵である破面が私達に情報を流す訳が「知ってるよ。」知ってるんかい!

 

「第5の塔っていつもおかあさんと遊んでる所だもん。」

 

『そういえば空き部屋を掃除するって前に言ってたね。』

 

「言ってた言ってた、新しく来るおねえちゃんが暮らすからって。」

 

「ほ、本当か!?子供達、良ければそこまで案内して欲しいのだが…」

 

その時、しまったと後悔した。

2人が顔を見合わせて、その表情がいやらしくニヤリと笑う。

…凄く嫌な予感がしたがもう遅い。すると勿体ぶってこう告げてきたのだ。

 

『え~どうしよっかな~。』

 

「あのおにいちゃんは遊んでくれたけど、ぺたんこのおねえちゃんにはまだ遊んでもらってないし~。」

 

だっ…誰がぺたんこだ誰が!

 

「このおにいちゃんと一緒にピカロ(わたしたち)を皆捕まえられたら、教えてあげる!」

 

「私も『鬼ごっこ』に付き合えと…?」

 

笑顔で頷く子供達。

兄様は重傷、虎徹副隊長はその看病で動けない。今は一刻も早くピカロ達を全員捕まえて『鬼ごっこ』を終わらせ、織姫の下へ向かわなければ。

 

やるしか…ないのか…

 

 

「わかった、私も探そう。」

 

「わーいやったあ、鬼が増えた。じゃー宜しくね、ぺたんこのおねえちゃん。」

 

「その渾名は止めてくれぬか!?」

 

「そっちのおっきなおねえちゃんは?」

 

「わっ、私は朽木隊長の容態を診ないといけないから…ごめんね。」

 

虎徹副隊長、慌てて視線を逸らす。

…逃げたな。

素直に頷いた少女のピカロが私の肩によじ登り、あらぬ方向にびしっと指を指す。…思ったより軽いな。

同様に、花太郎の傍にいた少年ピカロも肩車をして貰っていた。

 

「よーし、まずはあっち!」

 

どうやらこの状態で他のピカロ達を捕まえるようだ…本当に彼女達は遊んでいるのだな。

殺し合いすら『遊び』の一環とし、楽しむことのみを考える子供の破面…虚にも色々な種がいるのだな。

 

 

考えていても仕方が無い、待っていろ織姫!今助けにゆくぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は戦いが嫌いです

 

どうして他人を傷付けないといけないんですか

 

どうして自分が傷つかなきゃいけないんですか

 

虚の本能がどうとか、破面の矜持とか、どうでもいいんです

 

 

私は私の思うがままに

 

 

そうしても良いと、お母様は仰った

 

 

 

 

実は私は、とある死神さんの為だけに作られる予定だった使い捨ての改造破面らしいです。感情を捨て、理性も無くし、『炎を体内に留める』事を徹底して突き詰めた泥の人形。

我ながら酷いと思います。藍染様、ちょっぴり恨みますよ。

そして私の『型』が作られ、崩玉の力を使い実体化する直前に、お母様が現れました。

 

藍染様の気まぐれで突然予定変更となり、藍染様の代わりにお母様の霊圧が注がれることになりました。

異常な程の霊圧が私の中に注ぎ込まれます。それは暖かいような、こそばゆいような、ふわふわの毛布に全身を包まれるような心地良い感覚でした。

同時にお母様の気持ちも伝わってきます。崩玉は霊圧を注ぐ者の意思によってその効果を変える、万能の力を秘めたこの宝に不可能など無いのです。

さあ、彼女の思うままに新しい私を作り出して下さい。

 

 

 

『可愛い女の子がいい』

…マジですか。藍染様の用意した身体は男性のものです、初っ端から基盤ごと取り替えねばならないとは…ですが万能の力に不可能はありません。その願い叶えて差し上げます。

え〜っと…下を引っ込めて胸を出して、骨格も作り替えてと…

 

 

『身長は150cm程で金髪、肩までかかるくらいの長さで瞳の色は明るいパープル。タレ目がいいな。ドジっ子属性が付いてて且つ面倒見がよく若干舌足らずで周囲に流されやすいところがありながらも通すべき芯はしっかり持っていて、ルピみたいな気難しい子が相手でもお友達になれて運動はそれほど出来なくてもいいからそつない程度にあとスリーサイズだけど…』

ちょちょちょちょっと待って下さい思ったより注文多いです!そして細かい!黙って聞いてればなんで手癖とか性癖までちゃんと設定してるんですか!?キャラクリに慣れすぎてませんかこのご主人様!

因みにこの間、僅か数秒程なのですが、顔の構成から性格まで崩玉がオーバーヒートを起こすレベルの情報量が素体に雪崩込みました。

 

そして優しい声音で、お母様は最後にこう付け足します。

 

『それから……この子には『平穏』を。人造でも改造でも、産まれてくる貴女がいつまでも健やかでいられますように。

この先どんな争いに立ち会っても、()()()()()()()()。そんな能力を付けるよ。』

 

 

 

 

…はい、受諾致しました。お母様。

 

 

 

 

そうして産まれた私は虚圏『最弱の破面』。

上手く剣は振れません、強い虚閃も速い虚弾も撃てません。響転も中途半端、鋼皮もさして硬度はない、強いて言うなら探査回路が少し出来る程度。ヤミーさんに言わせるなら、破面としては出来損ないの『カス』なのでしょう。(これをお母様の目の前で言ってしまったヤミーさんは顔面凹まされてましたが…)

 

 

でも、それでいいのです。

 

 

 

 

 

 

「ーー還して、《滅却霊姫》。」

 

 

 

 

 

お母様の霊圧で象られたせいか、無駄に大きな私の斬魄刀が霧のように霧散して、辺りに広がっていきます。

 

「なんだこりゃア、霧が…」

 

辺りはもう深い霧に包まれて、私と更木さんが辛うじて見える距離。ここら一帯は既に私の術中なのです。

 

 

 

さあ、剣を置いて。一緒に座ってサンドイッチ食べましょう。お菓子もありますよ。

 

「…あぁ、分かった。」

 

「お菓子もあるのー!?」

 

はい、沢山用意しましたから。

それで、貴方達のお話を聞かせてください。

お付き合いしますよ、お母様が全てを終わらせるまで。

 

いつまでも…ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘争心が無ければ争いは生まれない、争いがなければ誰も傷つかない。

そうだ、それでいい。

初めから戦う気すらなければ争いは生まれず、初めから刃を持たなければ誰も傷つかぬ。

ならそうすればいい、そうさせる。

 

彼女はそういうふうに作られた。

 

彼女の能力は『ありとあらゆる戦闘、不和を起こさせない』。

彼女の前で刃は振れず、銃は不発し、放つ霊圧は宙に霧散する。やがて心まで霧に浸され、猛る強者は心穏やかな紳士に、狂う獣は飼い慣らされた犬のように従順なペットへと豹変してしまう。争いの火種を片端から仮初の『平穏』で塗り潰す破面いち『平和』な力。

それが始祖の虚によって生み出された最弱の破面、ワンダーワイス・マルジェラであった。

 

 

 

 

 

誰も傷つかない優しい虚圏(せかい)

 

 

 

 

それが彼女の望みで、始祖の()()だ。

 

















そろそろ主人公戦わせないとな



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