――ごうごうと風が鳴り、ざらざらと雨が降っていた。
「――よし! みんな、忘れものは無いね!?」
未だ太陽が昇りきらない時間帯。
鹿目詢子は玄関の靴箱から靴を取り出しながら、そう叫ぶ。
「ああ、大切なものは全部持った筈だよ。まどか達は?」
「えっと、うん。とりあえず必要かなって思うものは大丈夫。ね、タツヤ」
「持ったー!」
背後には、外出の準備をしている家族達の姿があった。
夫である知久に続き、娘のまどかとその弟のタツヤも頷き一つ。
詢子はそれを確認すると、手早く靴を履き込み玄関のドアノブへ手をかけた。
「……うっわ、重っ」
しかし外開きの扉はまるで抑えつけられているかのように固く、重く。
腕にかかるずしりとした抵抗が、外界の状況をよく伝えていた。
詢子は覚悟と共に、思い切りドアを押し開け――途端、吹き荒れる雨風に全身を押され、たたらを踏んだ。
「おっとぉ、相当気合入ってるなぁ……! 昨日までは風だけだったのに」
「予想以上に酷いね。早く避難所にいかないと」
後ろから顔を出した知久に促され、揃って家から走り出す。
振り落ちる雨が皆の身体を叩き、雨合羽越しに衣服を濡らし。遠くで何かが吹き飛ぶ音が響き、知久に抱えられるタツヤが小さな悲鳴を上げた。
――早朝。見滝原全域において、緊急避難指示が発令された。
ここ数日強まっていた暴風が、とうとう静観を許さぬ規模にまで成長したのだ。
前日夜から避難準備の指示は出ていたものの、真剣に受け止めていた市民は極僅か。
災害大国特有の慣れに囚われ、事態を楽観的に見ていた者ばかりであった。
……しかし鹿目一家においては、ある程度の備えをもってこの日を迎えていた。
災害の原因たる、ワルプルギスの夜。その接近を把握していたまどかが、それとなく注意を促していた為である。
「――しっかし、まどかの言う通り、人数分のカッパ買っといて良かったよ!」
辛うじて機能している信号の赤色灯に足止めされつつ、詢子は雨音に負けない大声でそう言った。
「この嵐じゃ傘なんてすぐオシャカだったろうしね! これも濡れるは濡れるけど、何も無いより大分マシだ!」
「う、うん! 何か、嫌な予感がしたから……!」
まどかもまた大声を張り上げる傍ら、気まずげに俯く。
本当はこの状況になる前に家族を避難させたかったが、魔法関係を秘密にしたままではどうしても上手くいかなかったのだ。
雨具の用意は苦し紛れの産物であり、結果的に家族を雨風に晒してしまった以上、それを褒められても素直に喜べなかった。
……しかしその微妙な表情を、詢子は違う意味で捉えていた。
「……さやかちゃんの事、やっぱ心配?」
「え?」
反射的に出たその声は、幸いにも雨に紛れて届かなかったようだ。
詢子は気遣わしげに目を伏せると、声がよく聞こえるようまどかの隣に寄り添った。
「この嵐で何か色々出張ってるらしいけど、まだ帰ってないんでしょ? ……新しく連絡、あった?」
「……あっ。えっ、と……ううん、メールの返事とかは、全然……」
「そう……」
どうやら、さやか失踪の諸々があったからこそ、今回の嵐に対して敏感になっていると思われているらしい。
それを察したまどかの顔が引き攣ったものの、やはり真実を話す訳にはいかず。敢えて勘違いに乗り、嘘とも真実も言い難い相槌で茶を濁しておく。
少なくとも、ここ最近はメールでのやり取りがご無沙汰となっているのは確かであった。
「……まぁ、さやかちゃんなら大丈夫さ。昔っから並の男の子よりわんぱく小僧だったし、今も傘もささずに走り回ってるんじゃない? きっと」
「――……」
数舜、息が詰まる。
それは希望混じりの励ましてはあったが、的確に事実を突いたものでもあったのだ。
そう――きっと。さやかは今頃、ほむらと共にこの嵐の中を駆けている――。
「……まどか? どした?」
「っ……何でもない。そうだよね。さやかちゃんなら、大丈夫だよね……」
再び詢子から顔を背け、そう答えた。
無論、詢子はその様子に一層心配そうに眉を寄せ、更に言葉を重ね――その寸前、信号機が青へと変わる。
「あおーっ!」
「! は、早く行こう、ママ! パパ!」
「あ、ちょっとまどか!?」
信号機を指さすタツヤの声を号令として、これ幸いと駆け出した。
まどかは余り嘘が得意な方ではない。これ以上は何らかのボロを出しかねなかったと、小さく安堵の息一つ。
背後からの母の視線に努めて知らぬふりをして、避難所への道をひた走る。
「……さやかちゃん、ほむらちゃん……」
荒れる曇天を見上げ、呟く。
詢子の言う通り、心配をしているのは確かだった。
最も、そこには暁美ほむらも入っており、案ずる理由もより物騒なものだ。彼女達を想う度、雨風とは別の寒さが身を震わせる。
(……マミさん、杏子ちゃん。どうか、二人を……!)
ぎゅっと、胸元を握りしめる。
バッドエンド、そしてワルプルギスの夜――強大な敵に挑もうとする友人達の無事を、まどかはただ、祈り続けていた。
■
「へっくち」
見滝原の東に広がる、河川敷。
その周辺にある廃ビルの一つに身を潜ませていたほむらは、可愛らしいクシャミを漏らした。
「……似合わないクシャミすんのね。ギャップ萌えってやつ?」
「……。いいから、早く水を払いなさい」
丁度、外から帰ってきたさやかの半眼から目を逸らし、そう返す。
激しい雨に晒されていたのだろう。さやかの魔法少女服は酷く濡れそぼり、絶え間なく水が垂れ落ちている。
ほむらに従い、部屋の隅で服の端を引き絞れば、足元に小さな水溜りが広がった。
「いやー、びっちょびちょ。これもワルプルギスの夜の影響ってんでしょ?」
「ええ。明確な時刻は分からないけど、この様子では遠からずこの河川敷を通過するでしょうね」
「何でそんな断言できんのよ……って、まー今更か」
湿ったマントで髪を拭きつつ、浮かびかけた疑問をさらりと流し。
さやかは適当な壁に背を預け、そのままずるずると座り込む。むき出しのコンクリートに水気が浸み込み、引きずった。
「……一応、やれるだけの小細工はやって来た。そっち、映ってなかった?」
「支配しているから、平気よ。あなたが作業している間は、景色だけの映像をループさせていたわ」
ほむらはそう言って、窓の外を見る。
少し離れた場所に建つ、空き家のベランダ。そこには丸い形をした金属が――『クモ』が一体配置されており、じっと河川敷の光景を見下ろしていた。
本来であればバッドエンド側の道具であるが、現在ほむらはその内の一体を鹵獲し、機械操作の魔法でこちらの道具と利用していた。
そして前日より嵐に荒れる河川敷の風景を撮影させ、その映像をバッドエンドの元へと送り続けているのだ。
――理由は明快。彼をこの場へおびき寄せる為だ。
「……つーかさぁ、ほんとに来るの? こんなんで」
さやかもそれに目をやりつつ、胡乱気に呟く。
「せめて時間指定するとか、もうちょっと詳しく伝えた方が良かったんじゃない?」
「必要ないわ。アレが私を狙っている以上、意図さえ伝わればそれで十分だもの。余計な肉付けをして、こちら側の状況を悟らせるリスクは増やしたくない」
そう吐き捨て、かつてバッドエンドに傷付けられた右掌を擦る。
あの交渉時、彼はいとも容易くほむらの嘘を看破したのだ。どこから尻尾を掴まれるかも分からず、警戒を重ねて損は無い。
「それに何より――アレはもう、動き出している。誘いに乗ったと判断していい筈よ」
「へ? ……あ、もしかして『印』?」
さやかの言葉に小さく頷き、魔法によって見滝原の地図を投影。その中に浮かぶ光点を――バッドエンドに刻んだ『印』の反応を指し示す。
街中に当たる部分を移動するそれは、確かにこの河川敷への道を進んでいるようだ。
徐々に近づいてくる光点に改めて危機感を覚えたのか、さやかの目つきが鋭さを増した。
「……バッドエンドの方が、早いかな」
「ええ。出来れば、ワルプルギスの夜との戦いに巻き込んでやりたくもあったけど……タイミングは合わなかったようね」
「えぇ……何その地獄絵図……」
さやかが白けた目を向けるが、冗談のつもりは無かった。
ワルプルギスの夜とバッドエンド。諦める気は微塵も無いとはいえ、二つの脅威を続けて相手取る事がどれ程の無謀であるかは、ほむらもこれ以上なく理解している。
だが、両者は決して協力関係では無い。彼らが遭遇した場合、ワルプルギスの夜の手は間違いなくバッドエンドにも及ぶ筈だ。
そうして上手く三つ巴の状況に誘導すれば、ほむらにとって有利な展開となる可能性もあった。
……とはいえ、バッドエンドが黙って策に陥るとも考え難い。
その混乱をほむら捕縛の隙と利用され、却って苦境を招いてしまう事も考えられたが――今となっては、その一か八かの賭けにすら心は大きく揺れていたのだ。
(ワルプルギスの夜の行動が今までと変わりなければ、確実に合わせる事も出来たのだけれど……)
出来なかった口惜しさと、やらずに済んだ安堵が半分ずつ。
複雑な感情が胸裏で混ざり、溜息として外へと落ちる。
「……まぁ、やめておけという事なのでしょうね。戦法に変更は無しよ、準備を」
「…………」
ほむらは頭を振って淡い夢想を振り払うと、さやかへと掌を差し出した。
無論、手を繋げという意味では無い。
それを理解しているさやかは眉を顰め、いつか握った小さな掌をじっと見つめる。
そのまま暫く無言の時が過ぎ――やがて、徐に口を開いて。
「……あたしさ。やっぱ転校生の事、信じきれないと思う」
――鳴りかけた舌打ちを抑える事に、ほむらは酷く苦労した。
「……ええ、知っているわ。けれどそれは、この期に及んで口に出すような事かしら」
「今だからこそよ。こういうの抱え込んだままじゃ、上手く繋がんない気がする」
さやかは湿った髪を乱雑に掻き回しつつ目線を上げ、その先にある冷たい瞳と睨み合う。
「そこら辺は、あんただってそうじゃん。最初っから今まで、あたしの事ぜんっぜん信用してない……つーか、見下してるよね。多分」
「…………」
返答は無かった。
ほむらにとって美樹さやかは、決して嫌いな人物では無い。
しかしその力を信じているかと問われれば、否と言わざるを得なかった。これまでの繰り返しの中で、彼女には幾度となく足を引っ張られ、そして失望して来たからだ。
それを見下しと感じられたのならば、間違ってはいないのだろうとほむらは思う。
「そんなんで信じ合うってのは絶対無理。蟠りっての? 胸の中がもやもやして、連携だって出来っこない」
「では、どうするつもりなのかしら。奴ら相手に、一人ずつ順番に戦うとでも?」
「そんな馬鹿じゃないっつーの。あんたの事は信じないけど――あんたの想いは、別って話」
さやかは一息間を置くと、会話の内容とは裏腹にニヤリと笑みを浮かべた。
どこか意地の悪さを感じさせるその表情に、ほむらは怪訝に眉を上げ――。
「あんたってさ、実はまどかの事、大好きでしょ?」
「――……」
また、返答は無し。
しかし先程とは違い、冷たく見えるほむらの目線が僅かに空へ逸れていた。
すまし顔に反し、反応だけは素直な少女だ。
先のクシャミや、以前己のマントを摘まんだ仕草を思い出し、さやかは小さく苦笑を零した。
「杏子の奴がキッチリ見抜いてたからね。その記憶のせいで無理矢理に気付かされたわよ」
「……別に、好きに捉えればいいわ。けれど、それが何になるというの?」
「あたしにとって、まどかは一番の友達なの。あの子を想ってるってんなら、そこだけは合わせられる気がする」
さやかは大股にほむらへ近づくと、その掌に己の拳を乗せる。
握られた指の隙間から、青と黒の輝きがちらりと覗いていた。
「あんたが大好きなまどかは、あたしが守りたいまどか。違う事、ある?」
――三度。やはり、返答は無く。
それどころか、今度は顔すら背ける有様であったが――やがて、そんなほむらの首が微かに揺れる。
単なる弾みや、見間違いとも取れるそれ。
しかし、さやかにとっては十分な答えであったらしい。不愉快であるかのような、それでいてどこか優しさのある表情を浮かべ、握った拳から力を抜いた。
「……なら、託せるよ。ちょっぴりだけね」
最後に一言、そう告げて。
さやかはほむらに『それら』を預け、足取り軽く嵐の中へと消えていった。
……そうして、一人残されたほむらは、静かに己の手中へ目を落とし――。
「――……」
何かを呟きかけ、声になる前に封じ込め。
まるで壊れ物を扱うように、ゆっくりと『それら』を両手の中へ包み込んだ。
■
暴風。雨粒すらも水平に吹き付ける街の中。
街の輪郭を覆い隠し、霧と見間違えるほどに跳ね回る水飛沫の先に、一つの人影があった。
(……偶には、嵐の中を歩くのも悪くはないな。ただの雨より、精気が濃い)
人影――ウ・ホンフーはそう天を仰ぎ、進んでその身に雨を受ける。
この非常事態において全くもってそぐわない行動であるが、それを咎める者は無い。
ホンフーは存分に嵐の感触を楽しみつつ、悠然と雨に隠れた道を踏んだ。
(ま、本音を言えばやり難くはあるが。いっそストームレインで除けちゃいたい)
打って変わって、顔に張り付く濡れた髪を鬱陶しげに撫でつけ、一息。
暴風雨に体幹一つ乱さず進む彼の行先からは、うねりを上げる水の音が鳴り響いている。
増水し、氾濫を目前とする河川の音だ。
常人であれば一も二も無く避難に走る状況だが、しかしホンフーは気負う事も無く、鼻歌混じりに近づいていく。
熱を帯びたその瞳には、黒髪の背が見えていた。
――前日、『クモ』を通じて送られたとある景色。
ホンフーはそれを黒髪の魔法少女による誘いと捉え、真正面から乗っていた。
無論、何らかの罠である事は疑いようも無い。
しかしワルプルギスの夜が接近する現状は、ホンフーにとっても余裕ある状況では無いのだ。
もし誘いに乗らないままに事が進めば、黒髪の魔法少女は当初の目的通り、かの大魔女の討伐に挑むだろう。そしてこれまでと同じように失敗し、その瞬間に時間遡行を行う筈だ。
ホンフーが無事それに『相乗り』出来るかどうか、未だ不安の種であるのだ。
可能ならば、その前に黒髪の魔法少女を捕えたい所ではあった。
(……さて、そろそろの筈だが)
そうして、歩き続ける事暫し。流れる水がふくらはぎの高さにまで及んだ頃、川沿いに伸びる堤防が見えた。
端末を取り出し『クモ』の映像を確認すれば、そこに映るものと同じもの。遠く見渡せば既視感のある河川敷が見え、そこが示された場所だとすぐに分かった。
ホンフーは気を引き締めると、歩く速度を僅かに緩める。
気配は何も感じない。激しい豪雨や傍らを過ぎる激流が、人の匂いを消していた。
(……クモは、あそこか)
足を止め、並ぶ空き家の一つを見る。
おそらく、魔法で操られているのだろう。端末に映る景色の角度からして、そのベランダ辺りから撮影されている筈だ。
ホンフーは暫く空き家と、『クモ』の映す範囲を眺め――。
「――全ては、小鬼の思うがまま」
――ザリ、と。その言葉と共に、端末の映像が途絶えた。
機械類に動作不良を引き起こす超能力、グレムリンを周囲一帯に発動させたのだ。
時間にして僅か一秒足らず。『相乗り』に備えすぐに魔法の種火を纏い直すと、再び歩を進める。
これで互いに目視での察知となり、もし地雷などの罠が仕掛けられていた場合、それも暫くの間は作動しない。展開される戦闘は、直接的なものだけだ。
そうして、何事も無く黒髪の魔法少女が示した場所の中心に立つと、ホンフーは静かにその時を待った。
「…………」
雨粒が顔を流れ、暴風が体温を奪う。
しかし胸裏より沸き上がる高揚が、心身の動きを鈍らせない。
水滴の当たる痒みも、濡れた衣服の煩わしさも全てが些事。神経が広がり、感覚が研ぎ澄まされていく。
まだか。まだか。まだか――。
ホンフーは熱気を孕む息を吐き、合わせの悪い指関節を小さく鳴らし、
「――!」
――瞬間、世界が止まった。
荒れ狂う風が、降り注ぐ雨が。全て一斉に停止。
同時に無数の雨粒が空中に固定され、透き通るような輝きを以て景色を彩り、飾る。
見渡す限りに散らばる雨水晶――正しき時の中では決して生まれない幻想的な光景に、ホンフーも目を奪われた。
――紛う訳も無い。黒髪の魔法少女による、時間停止だ。
「…………」
しかしホンフーはすぐに我を取り戻すと、両腕を軽く開き武闘の構え。
敢えて触れた雨水晶が飛沫と消え、障害物にならない事を確認し――直後、背後に手刀を突き出した。
「ぐっ――!?」
(……おや?)
鋼の手応え。甲高い金属音に紛れ、子供の声が小さく聞こえた。
数舜遅れて視線を向ければ、そこには折れた刀剣と、それを手にした少女の姿。
――己がこの手で魔女にした筈の魔法少女。美樹さやかだ。
「あら、まぁ……」
まさか、あの場から生き延びていたとは。
ホンフーの目が少しばかり丸みを帯び――その隙を突き、さやかは勢いよく跳躍。間合いの外へと離脱した。
(おっと、いけない)
ホンフーは頭を振って、生まれかけた動揺を抑え込み。両者、仕切り直し。
「……やぁ、どうも。まさか、あなたにまた会う事になるとは思いませんでしたよ」
「……生憎、タフいのが売りなもんでね。そう簡単にはくたばんないって」
「ほぅ――この止まった世界で動けているのも、その丈夫さ故ですかね?」
しかし、さやかはそれに答える気は無いようだ。
無言のまま新たに刀剣を生み出し、切っ先をホンフーへと向ける。
そんな彼女の背からは、以前見た時よりも濃い覇気が立ち昇っていた。
死の危機を乗り越えた事で、多少は成長したという事だろうか。最早隙の類は見当たらず、その瞳には確かな赫怒が燃えている。
「……まぁ、よろしい。疑問は細々ありますが、今は談笑の時では無い」
「…………」
ホンフーやれやれと肩をすくめ、嘆息。
次の瞬間には、軽い態度は鳴りを潜め。鋭い殺気が迸る。
「――さ、いらっしゃい」
――その一言を、合図として。
大きな水飛沫が二つ立ち。振るわれた刃と拳が、幾つもの雨水晶を砕き去った。
『鹿目まどか』
みんな大好きまど神様。現在は避難所に移動中。
本人としては無力感に苛まれているが、その存在がさやかとほむらを繋いでいる。
『鹿目一家』
一家の大黒柱の母、詢子。一家を支える主夫、知久。一家のアイドル、タツヤ。
何かヤンキーっぽかった母と穏やかな父がどう出会って恋に落ちたのか、結構気になる今日この頃。
『暁美ほむら』
みんな大好きほむの助。さやかから大切な何かを受け取ったようだ。
もしワルプルギスの夜との戦いにホンフーを巻き込んだ場合、8割方隙を突かれて捕らわれる。
残りの2割はワルプルギスがホンフーを撃退もしくは殺害するものの、その後に自分も敗北する。詰んどるがな。
『美樹さやか』
みんな大好き可愛いさやかちゃん。ほむらに大切な何かを預け、ホンフーとの戦闘に突入した。
何故か時間停止中の世界を動き回れている。
当然ながら身体強化&治癒の魔法をオーバードライブ中である。
『ウ・ホンフー』
雨に打たれる姿が様になるおじさん。さやか&ほむらとの戦闘に突入。
ほむらと違い、『相乗り』による時間停止中には生物への干渉をする事ができない。しかしそれ以外には干渉でき、物質を動かす事くらいは可能である。
コピー能力の劣化の作用であるが、もう少し劣化の範囲が大きければ、一度目の『相乗り』の際に酸素を取り込む事が出来ず、窒息死していたかもしれない。
あと一週間で一話目投稿から一年ですってよ。嘘でしょ?
いつかは完結まで持っていけるよう頑張りますので、これからも宜しくお願いします。