超能力青年 ウ☆ホンフー   作:変わり身

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15´話 慎重になっている時じゃない

暁美ほむらは、敵の多い魔法少女である。

 

魔法少女としての宿敵である魔女と、その中でも最大の脅威であるワルプルギスの夜。

多くの魔法少女にとって表面的には味方である筈の、無数のインキュベーター達。

他の魔法少女と敵対する事もそれなりに多く、白と黒の魔法少女のような完全な敵対者は勿論、時にはさやかやマミのような味方足り得る者達とも戦うケースは数多い。

 

そして最近では、バッドエンドという決して相容れぬ存在まで現れた。

一度は殺した。だが今の時間軸では生きており、いつかまた敵として立ち塞がる事だろう。

四方八方は勿論、ワルプルギスの夜を越えた先にまで敵が居る。

 

故に――現状において裏で暗躍しているのが誰なのか、ほむらには判断が付かないでいた。

 

 

 

 

 

 

市立見滝原中学校の昼食は、給食ではなく弁当持参である。

 

そのためクラス単位で足並みを揃える必要も無く、昼休み中に解散し、各自済ませておくという形式となっている。

食事場所についてもある程度の自由が利き、敷地内の施設であれば殆どの場所が生徒に開放されていた。

 

各教室は勿論のこと、校庭や中広場といった屋外に集まる者も中々に多い。

特に屋上などの景色のいい場所は、学年問わず人気のスペースであり――彼女達もまた、その一角に腰掛けていた。

 

 

「――わ、おいしい……これ、マミさんが作ったんですか?」

 

 

小さな弁当箱に並んだ、赤みの強い卵焼き。

その内の一つを口にしたまどかは、感嘆と共にそう言った。

 

 

「ええ、トマトとバジルで洋風にしてみたのだけれど、口に合ったのなら良かったわ」

 

「卵焼きってこんなオシャレになるんだ……」

 

「かなり手の凝ったお弁当ですわね……」

 

 

隣に座る仁美も頷くと、その弁当の作者であるマミは嬉しそうに微笑んだ。

 

ここ最近の出来事で急に友人の数を増やした彼女は、料理趣味に力を入れている。

それは友人を家に招いた際に振舞うためのものだったが、こうした場においても先輩としての威厳を保つ一助にはなっているようだ。

 

 

(毎日凝るのも大変でしょうに)

 

 

同席していたほむらは、そんな感心とも呆れともつかない視線を送りつつ、卵焼きを一切れ拝借。

いつかどこかで食べた事のある味付けに、小さな溜息を一つ落とした。

 

 

 

――まどかとマミとの交流が始まってから、早数日。

これまでの時間軸と同様、彼女達は良好な関係を築いていた。

 

やはり幾ら時間を繰り返したとしても、相性の良さは変わらないという事だろう。

お互いすぐに距離を縮め、今ではまどかの繋がりから仁美も交え、こうして昼食を共にするまで仲を深めた。

 

ほむらとしては若干胃に良くない展開ではあったが、先んじてインキュベーターとの縁を切っている以上、マミがまどかを魔法少女に誘ったとしても意味がない。

そのため特に妨害などはしないまま、ほむらは彼女達の親交を静観していた。

 

 

「――へぇ、じゃあ皆にはもう一人仲の良いお友達が居たのね」

 

 

おかず交換を交えた食事を終え、一息ついた後。

いつの間にそのような話題となっていたのか、マミがまどか達へとそう問いかけた。

 

 

「はい、ちょっと前に遠くの学校に転校しちゃったんですけど……」

 

「毎晩のように電話でお話ししていますし、離れ離れになった気はあまりしませんわね」

 

 

さやかの事を話しているのだろう。

楽しそうに語るまどか達を一歩離れた場所で眺めつつ、ほむらはそうと分からないように眉を寄せた。

 

さやかが話題に上がるのが気に入らないという訳では無い。

彼女の事を思い出す度、とある懸念がほむらの心を苛むためだ。

 

 

(美樹さやか……彼女達を見滝原から追い出した存在が、居る――)

 

 

上条恭介の治療に同行し、遠く離れた田舎町へと移ったさやか。

縁もゆかりも無い筈のその地で、彼女はよりもよって佐倉杏子と出会い、友人となったという。

 

さやか達にとっては、紛れもなく偶然の出会いなのだろう。

しかし二人の因果を知るほむらにとっては、そこに何者かの意思が介在しているとしか思えなかった。

 

一体誰が、何の為に?

……何度考え、調査しても。納得のいく答えを出す事は出来ていなかった。

 

 

(可能性があるとすれば、白い魔法少女。彼女の予知なら、こちらの戦力となり得る存在を前もって排除する事も可能……だけれど)

 

 

かつてほむらが戦った者の中には、未来予知の魔法を持つ魔法少女も居た。

彼女達がまた裏で暗躍しているとすれば納得できなくも無いが、それはそれで疑問が残る。

 

本当に彼女達の仕業ならば、邪魔者を田舎町に飛ばすなどといった穏当な事はまずしない。

時が戻り当時の記憶が消えている以上、また関係者全員の殺害などの物騒な手段を取る筈だ。

今更彼女達が関係しているとは、どうしても思えなかった。

 

 

(……他に、彼女達のような魔法少女が居て、敵意を持たれている? それとも私の知らない魔女に目を付けられた? 或いは――)

 

 

――バッドエンド。

 

 

(――っ、違う……!)

 

 

浮かびかけたその名を掻き消すように、首を振った。

 

今回の時間軸では例の兵器実験施設に関わらず、彼との縁は作っていない。

そして前回の奴も白の魔法少女と同じく、このような暗躍をしていなかった。

杏子やさやかと幾度も遭遇し、進んで因縁を作り上げ、その末に死んだ。殺したのだ、この手で。

 

だから、奴ではない。

この時間において奴が関わって来る事などあり得ない。ある筈が無い。

 

 

「――……」

 

 

……必死にそう思い込もうとするも、上手く行かなかった。

 

その理由は分かっていた。

この時間軸にはもう一つ、さやか達の件以外に大きな異常が存在している。

それは既に己の内に入り込み、味方の一人として何食わぬ顔で居座っているのだ。

 

――保澄雫。

これまでの繰り返しの中で出会った事が無く、それでいてバッドエンドの所属するジャジメントとの関りを持つ少女。

 

雫自身が暗躍しているとは思っていない。

出会って未だ間もないとはいえ、そんな器用な真似ができる性格でない事は察せていた。

 

……だが彼女の存在は、あの忌まわしき敵の影をちらつかせる。

 

 

(……それにこの前聞いた話では、巴マミと保澄雫が出会った時、彼女は誰かを伴ってあの病院を訪れている――)

 

 

見滝原総合病院。そこは当時、上条恭介が入院していた場所だ。

そして美樹さやかは、上条の治療方針の変更を理由として見滝原から離されている。

 

――つまり雫には、さやかに関して手を回す機会が少なくとも一度は存在したという事だ。

それも、雫が付き添ったという誰とも知らない『知り合い』と共に。

 

 

「…………」

 

 

単なる考えすぎといえば、それまでだ。

 

そもそも、それはまだほむらがこの時間軸に移動して来た直後の事。

そんな早期から行動を起こせる者など、それこそ時間遡行者のほむらのみ。

雫が連れて来たのが誰であろうと、無関係だと言わざるを得ないのだ。

 

されど――疑わしきに符合する部分がある事も、また確か。

ほむらの勘を刺した小さな棘は、元々あった雫への疑念を確かに膨らませていた。

 

 

「……ほむらちゃん? どうしたの?」

 

「!」

 

 

まどかの声に、意識が現実へと回帰する。

 

見れば既に皆は席を立っており、帰り支度が済んでいた。

思案する内、存外時間が経っていたらしい。ほむらも急ぎ食べかけの弁当箱をしまい込むと、皆に続いて立ち上がる。

 

 

「ごめんなさい、少し考え事をしていたの。戻りましょうか」

 

「うん……何かあった?」

 

「……いいえ、特には」

 

 

心配するまどかに小さな微笑みを作り、歩き出す。

 

髪を揺らす風は冷たくこそ無かったが、以前より多少強まっているようにも感じた。

それにほむらは目を細め、さりげなくマミの横に着きテレパシーを送る。

 

 

(そういえば保澄さん、次はいつ会う予定なのかしら。そろそろ彼女に聞いておかないといけない事があるのだけど)

 

(……ワルプルギスの夜の件ね)

 

 

無論、それだけではない。

しかし特に訂正もせず、ほむらは仁美達に分らぬよう頷きを返した。

 

 

(明日か明後日には新しいお菓子を焼こうと思ってるから、その時には誘うつもりよ。でも保澄さんだったら、連絡すればすぐに来てくれると思うけど……)

 

(流石に話の内容が内容だもの。三人予定を合わせられる日があるのなら、そちらの方が良いと思って)

 

 

実際は、連絡の際雫の端末に己の情報を残したくないという警戒からだった。

しかしマミはその屁理屈に納得したらしく、あっさりと了承する。

 

 

(……じゃあ、明日にでも集まりましょうか。早い方が良いわよね?)

 

(ええ、ありがとう。お茶菓子、期待しているわ)

 

 

などと話している内に階段に差し掛かり、マミは小さく手を振り己の教室へと戻って行った。

ほむらもまどか達と共に教室へ戻りつつ、そっと小さな呼気を一つ。

 

 

(……慎重になっている時じゃない。踏み込まなければ)

 

 

全て見当違いであれば、それが一番いい。

 

さやか達を田舎へ送った者の正体は分からず終わるが、構わない。

ジャジメントとバッドエンドの影は完全に消え、雫を戦力として迎え入れられるのだ。

杏子も居らず戦力不足気味の現状では、最良の結果と言える。

 

だが、もし。

もし彼女が『黒』であったなら――その時は。

 

 

「…………」

 

 

ぴくり、と。

幾度となく引き金を引いた指先が、小さく跳ねた。

 

 

 

 

 

 

おはよう雫ちゃん。そしてごめんなさい!

雫ちゃんは嫌かもしれないけど、あたしもこのままじゃ嫌だから。

ちゃんと許して貰えるまで、何度だって謝ります。連絡します。電話とメールをバンバンします。

なので、何と言ったらいいか分からないけど、これからもよろしくお願いします!

 

 

「…………」

 

 

こんにちは雫ちゃん。本当にごめんなさい。

あたしの事を避けてるのは分かっているけど、それでもやっぱり会いたいです。

会って直接謝りたいです。我儘言ってるのは分かってるけど、そう思います。

今日の午後、雫ちゃん家のお店に行きます。良かったら、会ってやってください。

 

 

「……、……」

 

 

こんばんは雫ちゃん。そしてやっぱり、ごめんなさい。

今度は朝にまちぶせたいなと思います。こういうのは言ったらダメなんだと思うけど、でも言っておかなきゃダメな事だとも思うから、お知らせしておきます。

だから、よければ、朝一緒に――。

 

 

「……っ」

 

 

それ以上見ていられなくなり、端末の画面を消した。

保澄雫は乱暴に原っぱへ寝転がると、苛立たしげに溜息を吐く。

 

 

「……やっぱり、無視すればよかった」

 

 

小さく呟き、晴れ渡る青空を見上げた。

 

魔法で気まぐれに訪れた外国の風は穏やかで、何とも心地の良いものだ。

ここでなら、今まで見ていなかったあやかのメッセージにも落ち着いて目を通せると思ったのだが、そんな事は無かったようだ。

 

その文面からは必死さが滲み、得意のジョークひとつすら無い事が一層それを際立たせる。

怒りとも罪悪感ともつかない波が、雫の心を大きく揺らしていた。

 

 

(ああもう、ほんとに……)

 

 

その先は言葉にならず、感情の波に揺られて消えた。

 

……自分でも、分かっているのだ。

最初はあやかに非があったとはいえ、彼女は既に心の底から反省している。

今も謝罪をしようと全力で頑張っている。

 

 

「…………」

 

 

怒りが消えた訳では無い。

だが意地になっているという自覚が無い訳では無いのだ。

 

足りないのは、あやかと向かい合う為の一歩。

それを行う、心の強さ。

 

 

(……私の『居場所』を大切に、か)

 

 

ふと、先日の魔女との戦いの中でかけられた言葉が胸を過る。

 

それは今の雫にとって、あまりにも認め難いもの。

しかし不思議と拒否の言葉は出て来ない。心のどこかで、そうと認識しているからだ。

 

 

「……悔しいな」

 

 

ぽつりと呟き、目を閉じる。

 

柔らかな風が頬を撫でるが、ささくれ立った心を宥めるには物足りない。

雫は大きく息を吐き、そのままふて寝をすると決めた。

 

起きた時には、何かが変わっているだろうか。

そんな事を期待しつつ、雫は身体からゆっくりと力を抜き――。

 

 

「っ」

 

 

小さな電子音が鳴った。携帯端末にメッセージが着信したのだ。

 

……また、あやかからだろうか。

雫の眉がぴくりと跳ねるが、送り主を確認すればそれは巴マミからのものだった。

安堵とも残念ともつかない吐息を零し、メッセージを開く。

 

 

(お茶のお誘いと……相談?)

 

 

首を傾げかけ、すぐにワルプルギスの夜についてだと察した。

 

その戦いに協力するか否か。

かの大魔女の件を知らされてからこちら、保留という事にして結論を先延ばしにしていたが、そろそろ何らかの答えを出さねばならない時期が来たのだ。

 

雫としては、戦いへの参加は消極的であった。

マミとまどかへの友情はあり、ほむらにはまどかに関する負い目がある。だが、易々と命を懸ける選択が出来るかどうかは別の話だ。

 

戦闘行為には出来る限り関わりたくないが、無関係な見滝原の人々を避難させるくらいであれば、空間結合の魔法で力になる。

迷い、悩み、良心を痛め続けた末、雫はそう答えるつもりでいた――のだが。

 

 

「――……」

 

 

雫の視線が、マミのメッセージから一段下の欄へと移る。

そこにあるのは必死さ漂う言葉の群れ。あやかからの、心掻き乱すメッセージ。

 

 

「……私は……」

 

 

雫は少しの間きつく瞼を閉じると、大きく深呼吸を繰り返す。

そして次に開いた時には、その瞳に静かな光が揺れていた。

 

 

 

 

 

 

――ぽん、ぽん。

見滝原市の一角。暗い路地裏に、ボールの跳ねる音がする。

 

浅く、軽いそれは一定の間隔を保ち、断続的に空気を揺らす。

頼りなくちらつく街灯が、その音の元をぼんやりと照らしていた。

 

 

「――♪ ――♪」

 

 

そこに居たものは、一つの異形。

まるで色紙を丸め、野球帽を被った少年の形に無理矢理組み上げたような、酷く歪な存在だ。

 

――野球帽の使い魔。

 

とある魔法少女がそう呼んでいるそれは、手にした野球ボールを壁に投げ、一人きりのキャッチボールを楽しんでいた。

 

 

「頑張サ頑イ張バ♪」

 

 

投げては捕り、投げては捕り。使い魔はひたすらにボールを追い続ける。

野球自体が好きという訳では無い。ただ何かを投げ、何かを叩くという行為自体を好んでいるだけだ。

 

加えて、こうして野球の真似事をしているだけで、どういう訳か主たる時計塔の魔女の機嫌が良くなる傾向があった。

そのため野球帽の使い魔達は、暇さえあればボールやバットを振り回す習性を持っている。中には結界の外に遊びに出る個体も居り――この使い魔も、その内の一体であった。

 

 

「頑サ張イ、頑ハ……゙」

 

 

だが、それにもやがて飽きは来る。

使い魔は足元に跳ね返ったボールをそのまま見送ると、ふらふらと何処かへ歩き出す。

 

くしゃり、くしゃり。

色紙の潰れる音を発しながら、きょろきょろと周囲に首と思われる部位を振る。何か動くものを探しているのだ。

 

やはり、ボールを投げる相手が壁では物足りない。バットの素振りにおいてもだ。

動き、哭き、血肉を撒き散らす生物を的にするのが一番楽しむ事が出来る。野球帽の使い魔は、一律にそう認識していた。

 

 

「……!」

 

 

視界の端を何かが横切った。

咄嗟に振り向けば、そこには暗がりに蠢く『何か』があった。

 

まず見えたのは、中心に線の入った逆三角形のランプがひとつ。

そしてその下部からは細い胴体が生え、棒が三本手足代わりに付いている。

 

――偽人の魔女の使い魔。

携帯電話のアンテナマークを模したそれが一匹、路地裏の外を走っていた。

 

 

「……頑サ張イバ!」

 

 

マトは、あれにしよう――そう目を輝かせるかのように。

野球帽の使い魔はぴょんと一跳ねすると、何処からか取り出したボールを投げつけた。

 

先程のキャッチボールの時とは違う、全力での投球。それは空を裂き、アンテナマークの使い魔を強襲する。

 

 

「▼? ▽!?」

 

 

だが、コントロールがイマイチだったようだ。

放たれたボールはアンテナマークの使い魔の足元を抉り、あらぬ方向へと跳ね去った。

 

そしてそれにより己が襲撃を受けている事に気付いた使い魔は、慌てたようにその場から走り去る。

野球帽の使い魔は当然追いかけ、使い魔同士の鬼ごっこが始まった。

 

 

「頑サ張イ張バ頑!!」

 

 

ストレート、カーブ、フォーク、スライダー。

多種多様な球種がアンテナマークの使い魔を狙うものの、その身を捉えるには至らない。

器用に身をくねらせて走り続ける姿に激高し、ムキになった野球帽の使い魔は更に激しくボールを投げる。その繰り返し。

 

通りがかりの街灯を曲げ、建物の窓を割り、木の枝を折り、石畳を砕き。

彼らの追走劇は街の各地に被害を出しながら、何処までも続いた。

 

――しかし、最後には運動慣れした野球帽の使い魔に軍配が上がったようだ。

 

 

「――▽ッ!」

 

 

鋭く空を切り裂くボールがアンテナマークの三角ランプに直撃し、黒い飛沫が迸る。

 

アンテナマークの使い魔は堪らず倒れ込み、虫の死骸のように痙攣。

野球帽の使い魔はすかさずバットを取り出すと、大きく振りかぶりながら飛び掛かった。

 

 

「頑サ! 張ィ! 頑バ!!」

 

 

何度も、何度も、何度も、何度も。

どこか楽し気な叫びと共に、幾度となくバットを振り下ろす。

 

全てが終わった後には、アンテナマークの原型すら残らなかった。

バットからの手応えが完全に無くなった頃、野球帽の使い魔はようやくその手を止め、満足げに笑う。

 

ああ、やはり動くものが相手だとより面白い。

使い魔は一仕事終えたと言わんばかりに肩を回し――そこでようやく、周囲の様子が変わっている事に気が付いた。

 

 

「……?」

 

 

まず目に見えたのは、無数に流れる光の筋。

そして空や地面を始め、周囲に広がる全てが機械基盤のようなパネルに置き換わっていた。

明らかに、これまでの街の様子とは一線を画す風景だ。どうやら、知らない内に妙な場所に入り込んでしまったらしい。

 

使い魔は少しの間困惑したものの、その頭の回りは非常に悪い。

あっさりと疑問を放り投げると、元居た場所に戻るべく、鼻歌混じりに振り返った。

 

 

「――――」

 

 

――己に殺到する、アンテナマークの群れ。

それが、背後を向いた使い魔の最期に見た光景であった。

 

 

 

 

 

 

偽人の魔女を主とする結界、その浅瀬。

外界と程近いその場所に、一つの死骸があった。

 

先程どこかから侵入し、魔女の使い魔の一体を殺害した不届き者の死骸だ。

自身が手にかけた使い魔よりも酷い姿となっているそれは、片される事も無く打ち捨てられていた。

 

――やがて、広がるその黒い血だまりの内より光が生まれた。

 

そして死骸から離れるように浮き上がると、空中に一つの紋章を描き、焼き付ける。

時計塔をモチーフとしたそれは徐々に光を強め、周囲に奇妙な音を響かせた。

 

調子はずれの鐘の音。

錆と腐食の香り漂うその音色は、しかし嘆きの嗚咽のようにも感じられる事だろう。

 

 

――そうだ、嘆いている。

紋章の内側で何者かが悲しみ、そして激怒しているのだ。

 

 

……転がる死骸は何も応えない。

鐘の音はそれに近づくように、少しずつその大きさを増していた――。

 

 

 




『暁美ほむら』
考えが色々とニアミスしている魔法少女。お弁当はまどか達との食事に合わせただけなので、出来合いの総菜を適当に詰めただけ。
雫を直接的に問い詰める意思を固めた様子。前回ホンフーと交渉した時の記憶が強く残っているのか、端末での連絡には慎重になっているようだ。
ちょいちょい出てくる白い魔法少女とは、もちろん美国織莉子の事。おりマギ関係はルートが幾つかあるのでぼかしてます。


『鹿目まどか』
お誕生日おめでとうございます。お弁当はちょっと張り切って手作り。
マミとは昼食を一緒にするまで仲を深めた。頼れる先輩として憧れつつあるようだ。
仁美が居たりキュゥべえが居なかったりで、魔法少女には誘われていない。
実は彼女だけ、まだホンフーと会っていない。


『志筑仁美』
さやかの代わりに収まった。お弁当はお母さんの手作りで栄養バランスも完璧。
原作のお昼シーンでは一人だけハブられ気味だったけど、どうしてたんだろう……。
一般人の彼女が居るおかげでマミが魔法の話をあんまり振らなくなっているので、またほむらからの好感度が上がった。


『巴マミ』
やったわっ、友達とお昼よ! お弁当はめっちゃ張り切ってイタリアン風。
まどかを魔法少女に誘わないかとほむらに警戒されているが、そのほむらと雫が居て満足しているのでその気は薄い。
というかそこら辺をせっつくキュゥべえが居ないため、まどかに素質があること自体思い至ってないかもしれない。


『保澄雫』
ぶらぶらと適当に世界を見て回っている。パスポート……?
溜まっているあやかからのメッセージを見てそこそこダメージを受けたようだ。
謎の黒コートから受けた言葉もあり、こちらも何らかの意思を固めつつある様子。


『毬子あやか』
カムゴンヘイヘイカムゴンヘイヘイカムゴンヘイヘイ魑魅魍魎!!!
毎日雫の喫茶店に行き、朝は早起きして待っている。頑張っている。


『野球帽の使い魔』
久々登場、時計塔の魔女の使い魔。致命傷を負うと時計塔の魔女を呼ぶ習性がある。
アンテナマークを追いかけている内に偽人の魔女の結界に迷い込み、縄張り荒らしとしてお仕置きされたようだ。
その主は彼らを大変可愛がっており、傷つけたものを決して許しはしないだろう。


『アンテナマークの使い魔』
こちらも久々登場、偽人の魔女の使い魔。
この街の魔法少女の偵察に出ていたのだが、野球帽の使い魔に目を付けられ殺害されてしまった。
その主は彼らを特に可愛がってはいないが、縄張り荒らしは許せなかった。



まどマギ本編とパワポケ(13)は出た時期が近いのですが、マギレコだけ少しズレがあるんで携帯電話がガラケーとスマホでバラバラだったり。
どうしようかなと迷ったので、携帯電話などは「端末」表記で統一してます。今更!
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