超能力青年 ウ☆ホンフー   作:変わり身
<< 前の話 次の話 >>

9 / 23
9話 何をしたって聞いてんだ

――時は暫し、遡る。

 

 

 

 

「……どうしたの? さやかちゃん」

 

 

夕暮れ近く。

今は亡きマミの意志を継ぎ、街をパトロールするさやかに付き添っていたまどかは、隣を歩く彼女にそう問いかけた。

 

 

「え? どうしたって……何が?」

 

「えっと……なんていうか、雰囲気がちょっとピリピリしてる……かな」

 

 

病院前で待ち合わせをしてからこちら、どうにも気になっていた事だった。

 

どこか表情は固く、いつもより口数も少なく。街を歩く最中も常に視線は周囲を彷徨い、まるで警戒心の高い猫のよう。

マミの死後より日が浅いという事もあり、最初は魔女に緊張しているのかとも思ったが……何かが違う気もした。

 

 

「あー……やっぱ、まどかにはバレちゃうかー。流石あたしの嫁……」

 

「もう、またそんなこと言って……上条くんと何かあったの?」

 

「いやぁ……まぁ『恭介と』っていうか、『恭介が』っていうか。うーん」

 

 

口籠り、言い淀み。何やら相当に悩んでいるらしく、終始難しい表情で唸りつつ気まずい様子で頬を掻く。

その指には、美しい宝石が嵌め込まれた指輪が――さやか自身のソウルジェムが、青く透き通る輝きを放っていた。

 

 

――数日前。美樹さやかは上条恭介の腕の治癒を願い、魔法少女となる道を選んだ。

 

 

魔女と戦う不安はあり、死への恐怖も忘れた訳ではない。

しかし恋する相手を救った選択に後悔は微塵も無く、何より立派な魔法少女であったマミへの憧れが強く残っていたのだ。

 

生来、まっすぐな気質の少女である。一度そうと決めたら意地でも引かず、ただ前だけを向きひた走る。

……そして、その背中を一番身近で見ていたまどかにとって、今の彼女の姿は心配するに値するものだった。

 

 

「――もし、何かあったら相談してくれると嬉しいな。私でも、少しは力になれるかもしれないし……」

 

「まどか……」

 

 

一歩回り込み、視線を逸らさず告げたまどかに、さやかの瞳もまた揺れる。

魔法少女として共に戦う事は、ほむらと、そして当のさやかから引き止められている。それ故の献身とも言えた。

 

それを受けたさやかは照れくさそうに小さく笑い――すぐに真面目な表情となり、ぽつぽつと話し始めた。

 

 

「……あの、さ。まどかはキュゥべえから聞いてる? その……殺し屋ってヤツの話」

 

「う、うん……? ちょっとだけ、だけど」

 

 

唐突に飛び出した殺し屋という単語に、ビクリと肩が震える。

 

――今この街に潜んでいるという超能力者の殺し屋、バッドエンド。

さやかが魔法少女となった日の夜、家を訪れたキュゥべえから「近寄ってはならない」と言い含められた事は、よく覚えていた。

 

 

「それさ、何か似たような人が恭介にコナかけてた……っていうか」

 

「え」

 

「あいや、かもしんない。かもしんないだかんね?」

 

 

さやかは慌てて手を振るも、その表情はやはり固かった。

 

 

「恭介が言ってたんだけどね。中国服来た美人さんに、バッドエンドがどうのこうの言われたんだって」

 

「……それは、その……」

 

「ね、反応困っちゃうよねー。勘違いかもしんないけど……要素的には、さ」

 

 

現状、ハッキリとした確信がある訳ではない。むしろ考え過ぎと切り捨ててしまいたいところではあった。

しかしどうにも胸騒ぎが収まらず、気がつけば人混みに中国服を着た人物か居ないかどうかを探してしまう。

 

恭介が殺しのターゲットにされている可能性を危惧している……という事も当然あるが、一番の心配事は別の部分。

 

 

(興味を持った相手を、超能力者にする……)

 

 

キュゥべえから聞き出した、バッドエンドが行っているという奇妙な行動だ。

そんな事をする理由はともかくとしても、問題はそれによる結果である。

 

 

「――超能力者にされると、死ぬ……」

 

「…………」

 

 

無意識の内に漏れ出た物騒な呟きに、まどかが怯えたように目を伏せた。

 

バッドエンドによって超能力者に覚醒させられた者は、否応なく殺し合いの世界に巻き込まれ、必ず死という結果を迎えるらしい。

キュゥべえは他にも色々と語っていたが――さやかにとっては、細かい理屈などどうでも良かった。

 

せっかく腕が治ったのに。またヴァイオリンが弾けるようになったのに。

超能力などという妙な力を強引に授けられ、恭介の渇望するヴァイオリンの道から遠ざけられた挙げ句死ぬなど、到底許せる事ではない。

 

もし本当に恭介にバッドエンドが接触していたらと考えただけで、言いようのない焦燥感が湧き上がっていた。

 

 

「……そもそも本当なのかな。超能力とか、殺し屋とか」

 

「まぁ魔法があって魔女が居るんだから、超能力があって殺し屋が居てもおかしくないってのがねー……。キュゥべえも嘘つくタイプじゃなさそうだし」

 

「うん……でも、あのジャジメントが雇ってるとか、ちょっと信じられないかな、なんて……」

 

 

ちら、と。まどかの視線が、通りがかった工事現場へと向く。

つい最近まで、件のジャジメントという大企業が経営するスーパーが建っていた場所だ。

 

経営不振か、それとも別の理由があるのか。つい数週間前に突然営業を停止し、解体工事が始まったのだ。

まどかの生活圏内から離れていた事もあり特に利用した事はなかったが、遠目から見た限りでは、極普通のスーパーにしか見えなかった。

 

キュゥべえの話では、バッドエンドはジャジメントに所属しているとの事だが……超能力や殺し屋のようなとんでもない存在を内包しているなど、露程も思った事は無かった。

そう伝えれば、さやかはほんの少し吹き出して。

 

 

「あーそれ、あたしもおんなじ事思った。殺し屋も普段はパートさんで、山芋の仕分けとかやってたりして」

 

「それはそれでちょっと怖いよ、さやかちゃん……」

 

 

思い浮かぶはパートのおばちゃん。

バッドエンドと書かれた名札を胸に働く殺し屋を想像してしまい、互いに小さく笑い合う。

 

そして張り詰めていた気が多少緩んだのか、さやかの表情に少しばかりの柔らかさが戻り。

軽く伸びをした後、むんと両拳を握り締めた。

 

 

「ん! 何か、そんなの怖がるなんて馬鹿らしくなっちゃったなー」

 

「えへへ……スーパーって聞くと、身近すぎて変なイメージ付いちゃうよね」

 

「そーそ。それにもし本当に恭介が狙われてたとしても、パートのおばちゃんなんかにピッチピチの魔法少女が負けるもんか、ってね!」

 

「……えっと、男の人じゃなかったの? その殺し屋さん……」

 

 

おそらく、空元気も多分に混じっているのだろう。

しかし、緊張し続けるよりは良い筈だ。いつもの雰囲気に戻りつつある事を感じ、まどかは苦笑と共に安堵の息を漏らし――。

 

 

「――っ!」

 

 

――突如、さやかの目が見開かれ。勢いよく背後へと振り向いた。

 

 

「え、ど、どうしたの?」

 

「ちょっと待って。これ、もしかして……」

 

 

まどかの言葉を手で制し、集中。

険しい表情で睨む先には路地裏へと続く道があり、そこに広がる薄闇を油断なく注視し続ける。

 

 

「魔女……じゃない。もっと小さな――使い魔!? 行くよまどか!」

 

「あっ、さやかちゃん!?」

 

 

どうやら、某かの魔力を察知したらしい。

 

先程までの空気は全て吹き飛んで。焦り、手を引いて走り出すさやかに、まどかは足をもつれさせながらも何とか追随。

夕焼けの赤すら届かぬ路地裏へと誘われていった。

 

 

 

 

「――♪ ――♪」

 

「居たっ! やっぱ使い魔ッ」

 

 

路地裏を走る事、数分。

走るさやかが指差す先に、それは居た。

 

色紙を丸め、野球帽を被った少年の形に無理矢理組み上げたような、酷く歪な使い魔だ。

 

手に持ったボールのような物を壁に投げ当てており、一人でキャッチボールを楽しんでいるようにも見える。

見たところでは魔女の結界もなく、人間を襲っては居ないようだが――魔法少女として、放置しておく訳には行かない。

 

さやかは息を切らせるまどかを物陰に留まらせると、颯爽と使い魔の前に飛び出し、指に嵌められたソウルジェムを眼前に掲げた。

 

 

「…………」

 

 

細長く、息を吐く。

 

マミの助手をしていた頃に使い魔と戦った事は何度かあったが、マミの魔法によるサポートありきの物だった。

一人の魔法少女としての戦いはこれが初陣。緊張しないと言ったら嘘になる。しかし。

 

 

(見ててよ、マミさん……!)

 

 

そんな湧き上がる怯えを胸底に宿る憧れで押し潰し、己の魔力に火を灯す。

瞬間、ソウルジェムが強烈な輝きを放ち――その光が止んだ後には、魔法少女としての衣装を身に纏ったさやかの姿があった。

 

 

「ふっ――!」

 

 

そして白いマントをはためかせ、魔力より生み出した幾本もの刀剣を周囲に落とし。

その内の一本を握り締めると、次々と使い魔へと投擲。即席の遠距離攻撃として利用した。

 

 

「――頑張サ頑張!?」

 

 

その鋭い殺気に、一人キャッチボールに興じていた使い魔も流石に気がついたようだ。

 

咄嗟に顔を上げ己へと迫る白刃を認めると、驚きに一度体を震わせて――しかし逃げる様子は見せず、むしろ迎え撃つように刃へ向かい立つ。

そしてどこからか取り出した棒を構え、大きく大きく振りかぶる。

 

 

「――頑張サ張イ頑張バ――!」

 

 

――両の足を踏みしめ、上半身を大きく捻るそれはさながら神主打法。

 

そうして振り下ろされた棒が――小さいバットが刃を弾き、続く全てをも打ち返し。これぞ正に返す刀で持って、反対に投手の下へと殺到する。

 

 

「うぇ!? ちょまっ」

 

 

驚いたさやかが咄嗟に飛び退けば、一瞬の後にその場所へ無数の刀剣が突き立ち、穿ち。

轟音を立ててアスファルトが砕け散り、彼女の耳を掠めて何処へともなく消えていく。たらりと一筋、冷や汗が流れた。

 

 

「ぴ、ピッチャー返し……!?」

 

「なかなかやってくれんじゃないのさ……! それならこれでどうだぁっ!」

 

 

予想外に器用な真似をした使い魔を睨みつけ、さやかは突き刺さった刀剣の一本を回収すると、力強く走り出す。

魔力で強化された脚は容易くアスファルトを踏み砕き、常人には不可能なスピードで持って使い魔へと突貫した。

 

 

「――!?!?」

 

「っと、こんなのっ!」

 

 

すると使い魔は先程とは違い慌てふためき逃げ出すと、走りながらボールを投げつけ始めた。

しかし体勢が不安定なためか球威はあまり無く、さやかの一振りで容易く真っ二つとなり地に落ちる。

 

 

(こいつ……もしかして近寄られると弱い?)

 

 

どうやら彼(?)は野球は得意であるが、場外乱闘には慣れていないようだ。

それを察したさやかはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、更に加速。ボールの尽くを切り伏せつつ、使い魔の目前へと迫り寄ると刀剣を一閃させる。

 

 

「でやああああッ――とぉ!?」

 

「頑張張張張ンズッ!!」

 

 

しかし、所詮は素人の剣さばき。使い魔も身を仰け反らせ、紙一重でそれを躱した。

異形の肌に浮かぶ汗が、代わりに切られ飛沫となって。

 

 

「――なんちゃってっ!!」

 

「張頑張ズズ、クガッ!?」

 

 

――直後。強引に身体を捻ったさやかの足先が、使い魔の頭部に直撃。

 

更に速度を落とす事無く地面と足裏で挟み込み、サーフィンの如く紅葉おろしに轢き掛ける。

そうして使い魔の生物とは思えぬ悲鳴が辺りに響く中、さやかは手に持った刀剣を逆手に持ち替え、慈悲の一つなく振り下ろした。

 

 

(――よしっ!)

 

 

――仕留めた。

 

多少不格好ではあったが、勝ちは勝ち。

安堵混じりの喜びが湧き上がり、使い魔へと吸い込まれる刃にも幾許かの自信が映り込み――。

 

 

 

「はい、そこまで」

 

 

 

――彼方より飛来した三角形の槍頭が、その自信を中程から折り飛ばした。

 

 

「なっ……!?」

 

 

甲高く、しかし鈍り混じりの異音が響き、砕けた刀剣がさやかの手から剥がれ宙を舞う。

 

同時にバランスを崩し、堪らず跳躍。何とか地面に着地し転倒は免れたものの、使い魔を拘束から解放してしまった。

咄嗟に見ればふらつきながら逃走を図る野球帽が見え、さやかは混乱しつつも追走し。

 

 

「だァから、そこまでだって!」

 

「!? うわっ!」

 

「さやかちゃん!?」

 

 

突然上空より声と細長い何かが降り落ち、さやかの目前で炸裂。土煙に視界が巻かれ、強制的に足が止まる。

 

 

「な、何……?」

 

 

慌てて距離を取り、新たに構えた刀剣で土煙を吹き飛ばせば、そこには一本の長槍が突き立っていた。

 

所々に赤い意匠を刻む、巨大な槍。

思わず呆然とそれを眺めていると――やがて、その柄の上に小柄な影が降り立った。

 

 

「――ったく、先輩の言う事は聞くもんだろ。なぁ、新人」

 

「…………何よ、あんた」

 

 

赤い装束を身に纏った、勝ち気な印象の少女だ。

 

その胸元には真っ赤なソウルジェムが輝きを放っており、魔法少女である事は疑いようもない。

さやかは突然の闖入者に刀剣の切っ先を向けつつ、小さくなる使い魔の背を赤い少女越しに睨む。

 

 

「誰か知んないけど、どいてくんない? あんただって魔法少女なら、そこに使い魔居るの分かってんでしょ……!」

 

「だからこそ止めてんだよ。あんた、使い魔倒して何しようってのさ」

 

「何って……」

 

 

言っている意味が分からなかった。

 

魔法少女は魔女を倒し、人々の笑顔を護るもの。そのようなマミの教えを受けたさやかにとって、使い魔の討伐は魔法少女として果たすべき義務の一つであった。

決して放棄して良いものではなく、どのような理由があろうとも見逃す事など出来はしない。

 

……するとその考えが伝わったのか、赤い少女は呆れたように肩を竦め、鼻を鳴らす。

 

 

「……はン、ちゃんと正義の味方継いでんだ。自分から損しに行くなんて立派だねぇ」

 

「損……?」

 

「使い魔はほっときゃ勝手に魔女になる。それを待たずに狩ろうなんて、もったいないじゃん」

 

「――――」

 

 

違うかい?――そう言って笑みを浮かべる赤い少女に、さやかは言葉を失った。

 

 

「ほっとくって……意味分かってんの!? 使い魔が育つって事は――」

 

「人が死ぬってんだろ。でも、あたしらだってグリーフシードは必要なんだ。他人がどうなろうと知ったこっちゃないよ」

 

「っ……あんた、それでも魔法少女……!?」

 

 

己の理想とは正反対の在り方に、さやかが瞳に明確な怒りが燃え盛る。

 

しかし赤い少女もまたさやかに思うところがあるのか、苛ついた様子で舌打ちを一つ。

槍の上から飛び降りると、徐にその柄を握り締め、

 

 

「――言ったろ。あんたよりも先輩だってぇのッ!」

 

「うあっ!?」

 

 

一閃。

 

引き抜かれた槍が水平に薙がれ、銀の軌跡を作り出す。

さやかは反射的に刀剣を掲げ受け止めるが、赤い少女の膂力は凄まじく、耐えきれず吹き飛ばされ壁に激突。苦悶の声を上げ、肩口から地に落ちた。

 

 

「さやかちゃん! 大丈夫!?」

 

「ん? 何さ、お仲間かい――って、魔法少女じゃないのか」

 

 

堪らず物陰から飛び出したまどかに、赤い少女は一瞬槍の切っ先を向けかけるも、魔法少女でない事が分かると拍子抜けしたように刃を下げる。

 

どうやら無闇に一般人を襲わない辺りの分別はあるらしい。

その事にさやかは若干の安堵を懐きつつ、刀剣を支えに立ち上がる。彼女の魔法は回復に特化しており、打ち身程度の傷ならばものの数秒で治癒できていた。

 

 

(でも、どうする……?)

 

 

さやかとしては、この非情な魔法少女を放置しておく事は出来ない。

しかしまともに戦っていては、確実に使い魔を逃してしまうだろう。戦いに関しては素人であれど、眼の前の少女が強敵であろう事は痛みを以て理解していた。

 

戦わなければならない。しかし、戦えば逃してしまう。

 

……マミならば、この場も余裕を持って対処できたのだろうか。力も経験も足りぬ己に歯噛みして。

 

 

「ま、いいや。そんでどうする、あたしとやるかい?」

 

「…………」

 

 

こちらが焦って居る事を見抜いているのだろう。赤い少女は敢えて使い魔を遮るように立ち、長槍を構える。

さやかはチラリと刀剣を見つめ……やがて、意を決したように唇を引き結んだ。

 

 

(……まどか、聞こえる?)

 

(! う、うん! 怪我、大丈夫なの……?)

 

 

そしてテレパシーでまどかに呼びかければ、いの一番に身体の心配をされてしまった。

それが強い支えになる一方、力不足が情けなく。顔に出そうになる苦笑を必死に堪える。

 

 

(へーきへーき。そんな事よりさ、ちょっと、いきなり騒いでくれない?)

 

(え? ……っと、ど、どういう事?)

 

(あいつを驚かせるっていうか、一瞬でいいから注意をあたしから外してほしいんだ)

 

(気を逸らせる……う、うん。やってみる……! けど……)

 

 

まどかは突然の提案に戸惑ったようだが、その意図は大体伝わったようだ。

さやかの背を見つつ、小さく一つ頷き――しかしどうすれば良いのか分からず頭を抱える。

 

 

(騒ぐ、驚かす……ど、どうしよう。ビックリする事、えーと、えーと……!)

 

 

おそらく、さやか以上の焦燥感に煽られ、思考がから回る。

あーでもない、こーでもない。暫く必死に悩んだ後――先程さやかと話していた一つの単語が思い浮かび。

 

半ばヤケクソの境地のまま、目を瞑って在らぬ方向を指差し大声を張り上げた。即ち。

 

 

 

「――わ、わぁーっ! あそこ、殺し屋さんが居る……っ!」

 

 

 

「っ、!?」

 

 

――まどかにとって幸運だったのは、赤い少女……佐倉杏子がバッドエンドについて多少聞かされていた事だろう。

 

ある種衝撃的だったキュゥべえからの忠告を思い出した杏子は、ほんの一瞬。反射的にまどかの指先を追った、追ってしまった。

 

 

(――今っ!)

 

 

そして、その決定的な隙を見逃す筈もない。

さやかは瞬時に新たな刀剣を生み出し己の背後に突き刺すと同時、杏子に向けていた刀剣。そのナックルガードの裏に隠れていたトリガーを引き絞り、刀身を弾丸の如く射出した。

 

剣という武器に置いて、少しでもマミの戦闘スタイルを真似するべく生み出した、さやか渾身の隠し機構であった

 

 

「なっ……めんなァ!!」

 

 

しかし杏子も瞬時に反応。

迫る刀身を長槍の柄で叩き落とし、不敵な笑みを浮かべ――さやかの口端が薄く上がっている事に気づき、己の失策を悟った。

 

 

「爆破――ぁぁぁあああああああッ!?」

 

「きゃああああああ!?」

 

「ぐぅッ――!?」

 

 

――轟音。

 

杏子の足元、叩き落とした刀身がさやかの魔力を受けて爆発し、衝撃が辺りを包み込む。足りない実力を補う為の奥の手だ。

咄嗟に飛び退き爆風に巻き込まれる事は避けたものの、至近距離での爆発に少しの間平衡感覚を失い――。

 

 

「……ぁぁぁぁああああああッ先にいいいいい!!」

 

「――なぁ!?」

 

 

その結果、構図としては道を譲る形になっていた。

 

爆風を背中からたなびかせ、異常とも言える速度で持って。片膝を突いた杏子の横を勢いよくさやかがすっ飛んでいく。

杏子に放った刀身と共に、自身の背後に突き刺した刀剣をも爆発させ加速の一助と利用したのだ。

 

通常であれば大怪我は免れない自殺行為であるが、さやかの持つ強力な回復魔法があればすぐに治癒は出来る。

彼女以外には不可能であろう、あまりにも強引な突破であった。

 

 

「いったぁ~……い、けど! これでッ!」

 

 

魔法により背中の火傷を回復させ、路地裏の奥へとひた走る。

 

追うのは当然、未だ近くに居るはずの野球帽を被った使い魔だ。

幸い、その魔力はまだ感知できる範囲に居る。どうもこの先にある貸し倉庫跡地方面に向かっているようで、このまま走り続ければ直に追いつけるだろう。

 

――そして。

 

 

「このっ……とんでもない事しやがるなテメェ!? おいコラ!!」

 

(よし、やっぱ来た……!)

 

 

振り向けば、そこには怒りの表情を浮かべた杏子の姿があった。

残したまどかに矛先が向かなかった事に安堵しつつ、路地の壁を強く蹴る。

 

爆発の勢いを利用するさやかの速度に容易く追いつける辺り、やはり相当な実力があるのだろう。

緊張に呼吸が強ばるが、諦める訳にもいかない。

 

――使い魔を追いながら、杏子とも戦い、そしてどちらにも勝つ。

 

マミのようには行かないかもしれない。だが彼女を目指す魔法少女として成し遂げてやるのだと、そう決めた。

 

 

「こんのぉっ!」

 

「ハ! 同じような手は喰わないって!」

 

 

さやかは更に加速しつつ、牽制として新たに生み出した刀剣を投げつける。

 

すると杏子は長槍の刃と柄を分解し、互いに鎖で繋いだ多節棍のような形態に変化させ。圧倒的なリーチで持って、刀剣が近づく前に遠方へと弾き飛ばした。

これでは先程のように刀身を爆破しても意味がない。さやかの顔に焦りが浮かぶ。

 

 

「どうした、もう小細工は品切れかい!?」

 

「くっ……!」

 

 

自力の差か、彼我の距離は一秒ごとに詰められている。

 

反対に使い魔の背は見えてはいるが、あちらも必死のようで中々距離が縮まらない。

槍の切っ先は既に足元を削っている。このままでは、さやかの足は再び杏子に止められる事だろう――と。

 

 

「張バ張頑張ン……!」

 

(……! そうだ!)

 

 

前を飛び跳ね逃げる使い魔の野球帽を見て、思いつく。

 

果たして上手くいくかどうか――などと考えている暇はない。

さやかは刀剣を一つ。使い魔に向けて構えると、その背に大声で叫びかけた。

 

 

「――9番エース美樹さやか! 第……何球!? とにかく振りかぶってぇ……!」

 

「あァ? あんた何言って――」

 

「!! 頑張バル張ンバーズ!」

 

 

その声を聞いた瞬間、使い魔はピクリと身体を揺らして飛びながら振り向いた。

彼の手にはやはりバットが握られており、心なしか鋭い目を向けているような気さえする。

 

それを見たさやかは小さく笑みを浮かべ、刀剣のトリガーを緩く引きその刀身を撃ち出した。

 

 

「頑頑張ルル――!」

 

 

速度を抑え、真っ直ぐに迫る白刃は正しく甘い球。

使い魔はそんな絶好球へ思い切りバットを振り抜き、先よりもなお鋭いピッチャー返しを投手へ見舞い――さやかは鮮やかに身を捻り、それを回避。

 

 

「んなっ!?」

 

 

当然、外れた刀身はその背後。杏子の下へと突き進む。

 

さやかの身体が影となっていた為か反応が遅れたようで、慌てて槍を引いた時には、刀身は既に十分な間合いへと入っていた。

青い魔力が迸り、刃がチカリと明滅。杏子とさやかの丁度中間の位置で、爆発を引き起こす。

 

 

「うあっ!?」

 

「く……!」

 

 

杏子は後方、さやかは前方。

爆風は互いを反対方向へと押しやり、吹き飛ばし。

 

――さやかと使い魔との距離が、一息の内にゼロとなった。

 

 

「頑頑頑張ッ!?!?」

 

「でぇ――りゃああああッ!」

 

 

爆風の衝撃に翻弄されながらも、視線だけは決して逸らさず。

驚愕する使い魔を覆うようにマントを広げると、その裏から素早く刀剣を突き込んだ。

 

不意を突き、加えて視界を塞がれた使い魔に身を躱す余裕はなく――。

 

 

「――ガ……!」

 

 

まるで、和紙を鋏で突き破るような感覚。

さやかの刃は使い魔の胴体深くに突き刺さり、血飛沫にも似た黒い雫を撒き散らした。

 

 

「やった……!」

 

 

手応えあり。

目的の一つを達したと確信し、さやかの顔に小さな笑みが浮かぶ。

 

これで赤い少女との戦いに専念できる――さやかはそう気を引き締め、瀕死の使い魔から刀剣を引き抜いて、

 

 

「――中々やるじゃないのさ、あんた……!」

 

「なっ……あぐぅ!?」

 

 

振り向く直前、背中を強く打ち据えられた。

 

あまりの痛みに明滅する視界の端に、唸りを上げる鎖と槍の柄を捉える。どうやら、追いついた杏子が奇襲を仕掛けてきたようだ。

防御も出来ず強烈な一撃を受けたさやかは、今しがた致命傷を与えた使い魔ごと弾き飛ばされ――路地裏の行き止まりに張られていたフェンスに激突、金網を大きく歪ませる。

 

 

「く、けほっ」

 

「いいさ。もったいないけど、そんなにそいつが好きなら一緒に仕留めてやるよ!」

 

「っ!」

 

 

咄嗟に反応できたのは、半ば奇跡に近かった。

 

衝撃波すら伴い突き出された、神速の突き。

さやかは両手に作り出した刀剣を交差させ、その中心点でどうにか受け止め――しかし、それが限界だった。

 

 

「死ねッ――!」

 

 

悲鳴を上げる余裕すら無く。一際甲高い音が鳴り響き、刃が砕け。

さやかの身体は防御を貫いた衝撃に耐えきれず、フェンスを突き破りその内部へと吹き飛んで行く。

 

……既に廃屋となっている筈の、貸し倉庫跡地。

そこで行われていた出来事など、知る由もなく――。

 

 

 

 

 

 

「――こんのぉッ!」

 

「――しぶっといんだよテメェ!!」

 

 

――剣戟。

 

赤と青。対象的な二人の少女がぶつかり合い、無数の刃が舞い踊る。

刀剣が宙を裂き、刃の付いた多節棍が渦を巻き。戦いに合わせて四方八方に広がっては、斬撃と破壊を撒き散らす。

 

当然、その周囲がただで済む筈も無い。

 

地面や廃屋。車や自転車、よく分からない機械類――全てが刻まれ、ガラクタと瓦礫の山と変わり。

レジスタンスの拠点となっていた貸し倉庫跡地は、今や見る影もなく荒らされ切り、正真正銘ただの廃墟と化していた。

 

 

「ちくしょう! また変なのが来やがった!」

 

「もうダメだぁ! 放棄! 放棄ー!」

 

 

不幸中の幸いというべきか死人は出ては居ないようだが、当のレジスタンス達にとってはたまった物ではない。

シルバーを始め誰も彼もが情けない悲鳴を上げつつ、三々五々に逃げ出して行く。

 

……そうした混乱極まる状況の中で、ただ一人。

ホンフーだけが取り乱す事もなく、ゆったりと瓦礫の一つに腰掛け、対象的な少女達の戦いを眺めていた。

 

 

(僥倖……と言ったところですかね)

 

 

薄く微笑み、胸裏で呟く。

 

――突如この倉庫跡地に乱入し、勝手に戦い始めた少女達。

 

おそらく、情報屋の言っていた未確認の魔法少女だろう。

今まさに接触したかった存在であり、不幸極まるレジスタンスとは逆に幸運以外の何物でもない。

 

彼女達の素性や戦う理由には見当がつかず、若干判断に困る部分もあるが……ホンフーにとっては瑣末事。

その気になれば、デス・マスを用いた一言で鎮圧は容易い。どうせならばその力を見ておくのも悪くないと、余裕を持って二人の観察に当たっていた。

 

 

(ふむ……青い方は見たままの如く『青い』ようだが――どうも、何処かで視た顔ですねぇ)

 

 

具体的には、見滝原総合病院の中庭。

上条恭介と親しい様子であった少女が、丁度あのような顔をしていたような気がする。

 

灯台下暗しと言うべきか、何というか。どうにも奇妙な脱力感が湧き上がり。

 

 

(……ま、今は良いでしょ。それよりも)

 

 

雑念を消し、観察に集中する。

 

そうして視たところによると、青い少女は戦士としては未熟であるようだ。

 

刀剣の扱いは素人同然。赤い少女の攻撃を捌き切れず、身体のあちこちに裂傷を作っては吹き飛ばされている。

武術家としての視点では、あまり興味は惹かれなかったが――しかし、特筆すべきはそのタフネス。

 

何度身体を切り裂かれても立ち上がり、赤い少女へと向かっていく姿はホンフーの目からしても異常とすら言えるものだ。

よくよく見れば受けた端から傷が再生しているのが分かり、強力な治癒、或いは再生の魔法を持っている事が窺えた。

 

……どう見ても、時間を操っている様子ではない。多少首の角度が下がるが、それはさておき。

 

 

(治癒能力――となると、上条少年を治したのは……)

 

 

先ほど受け取った桧垣からの報告。その内容と青の少女が符合する。

 

そう、おそらくは彼女が上条恭介の腕を治療したのだ。

例えその固有魔法がウルフェンのような自己にしか影響を及ぼさないタイプだったとしても、魔法少女には『キュゥべえへの願い事』がある。

 

魔法少女の固有魔法は、その者の『願い』に関係するものになると聞く。

彼女が治癒能力を持つ魔法少女であり、上条恭介と親密な関係があると思われる以上。どの方面から見ても、彼の腕を治した可能性は極めて高いと言えた。

 

 

(……あの腕は時間が巻き戻された訳では無かったか。まぁ、分かってはいたが)

 

 

苦笑を零しつつ、次に赤い少女に目を向ける。

 

こちらは青い少女と違い、相当に場馴れしているようだ。

 

槍を主体に様々な武器の形態を使いこなしており、体術や相手の動きを視る「目」も悪くない。

完全な喧嘩殺法……いわゆる我流の動きであったが、そのセンスの高さはホンフーをして感心に値する程だ。青い少女の回復能力がなければ、とうに決着が付いていただろう。

 

こちらも時間を操っている様子はないが、かと言って固有魔法を使っている気配も無い。

自然と、ホンフーの視線が赤い少女を主に追い始め――。

 

 

(……ふむ?)

 

 

ふと、彼女もまたホンフーに気を割いている事に気がついた。

 

青い少女と距離を取る度、或いは大振りな攻撃をした直後。余裕と隙ができる度に、ほんの一瞬だけホンフーの様子を窺うのだ。

まぁ、このような混沌とした状況の中、冷静に己を観察する人間が居れば警戒の一つもするだろう……そうも思ったが、それにしては警戒の度合いが高いようにも思えた。

 

 

(そういえば……最初に現れた時、私を見て驚いていましたね)

 

 

目を丸くし、何事かを言いかけていたあの様子。

 

つまり、ホンフーを知る側の人間だという事だろうか。

そうであれば、あの様子にも納得がいくが――同時に、少しばかりやり辛い事になる。

 

特に魔法少女は『バッドエンド』をよく嫌う。雫の態度を思い出し、また苦笑した。

 

 

「――そらっ、これで終わりだッ!!」

 

「うあああああああっ!」

 

 

そうこう思考している内に、ようやく決着したようだ。

一際大きな金属音と共に青い少女が吹き飛ばされ、廃墟の一つに激突。広い範囲に血飛沫を撒き散らし、沈黙する。

 

とはいえ、彼女の治癒能力を見た限りはあれでも死んではいないだろう。

若干の同情をもって、立ちこめる土煙を眺めていると――足音が一つ、ホンフーの耳朶を打つ。

 

視線を戻せば、少し離れた場所に降り立った赤い少女が一人、油断なく隙を窺うようにホンフーを眺めていた。

 

 

「……やぁ、どうも。中々に見ごたえのある戦いぶりでしたよ」

 

「へぇそうかい。……有名な殺し屋に褒められるなんて光栄だね、バッドエンド、だったっけ?」

 

 

やはり、彼女は『バッドエンド』を知っていたらしい。

ホンフーは溜め息を吐くと立ち上がり、やれやれと首を振った。

 

 

「おやおや、私を知ってくれていたとは。こちらこそ光栄です、ええと……」

 

「……マミだよ。巴マミ、この辺テリトリーにしてる魔法少女さ」

 

「あっはっは。こうまで真正面からウソを吐かれると、逆に清々しいですねぇ」

 

 

既に情報屋から巴マミの情報を得た後だ。

騙される理由がある筈も無く、朗らかに笑うホンフーに赤い少女はこれ以上無い程に眉を顰め、舌打ちを一つ。

 

 

「チッ……まぁいいや。そんで、ジロジロ見てきて何の用? けっこー鬱陶しいんだけど」

 

「いやぁ、流石に突然現れて殺し合いを始められれば、誰でも観察すると思いますが……というか、巴マミさんとはお友達で?」

 

「ハ、冗談。単に死んだ奴にメンドー事を押し付けてやろうと思っただけさ」

 

 

――死んだ奴。

 

あっけらかんと告げられたその言葉に、ホンフーの思考が一瞬止まる。

しかしそれを悟られる事もなく、すぐに笑顔を浮かべた。

 

 

「ほぅ、となると巴マミさんは既に亡くなられている訳ですか。そこの所、詳しくお聞きしたいのですが……」

 

「やだね。どうせならそっちで伸びてる青いのに聞きなよ。たぶんマミの腰巾着だったろうから、詳しいだろ」

 

「成程。しかし起こすのも手間ですし……何より私は、貴女自身とお話をしたくもあるのですよ」

 

「ナンパかい? 悪いけどあたしも忙しいんだ、そういうのは次の機会にしてくれよ」

 

 

赤い少女は素気なくそう吐き捨てると、じりじりとホンフーから距離を取り始める。

 

どうも、この少女は荒々しい振る舞いと違い中々に賢しいようだ。

おそらく、少しの隙さえ見つければ強引にでも逃走を図り、そして今後『次の機会』が無いよう立ち回る事だろう。

 

ホンフーはそこまで嫌われている事に辟易としつつ、肩を竦めて、

 

 

「……ま、いいでしょう。では、どうぞお行きなさい。巴マミさんの事も、今は秘密のままで結構です

 

「! ……へぇ、そりゃありがたい。巴マミってのは、あたしの先輩の魔法少女なんだ。魔女に喰われて死んだらしいが、魔法のリボンで銃とか作って――、ッ!?」

 

 

と、そこまで言って、己の口が意思に反して動いている事に気がついたようだ。

 

そうして咄嗟に口を抑えて飛び退ろうとして――失敗。背後に飛ぼうとした足が地に張り付いたまま、動こうとしないのだ。

赤い少女は一瞬狼狽したものの、しかしすぐに戦闘態勢へと切り替え、構えた槍の切っ先をホンフーへ向ける。

 

 

「……テメェ、あたしに何した?」

 

「ほぅ、状況判断能力も中々だ。普通は全部喋ってから気付くものなのですが――」

 

「――何をしたって聞いてんだ!!」

 

 

赤い少女の足元が爆ぜ、土塊が跳ねる。

そして一瞬の後には既にホンフーの目前に迫り、その刃を音速の如き勢いで突き出した。

 

必殺。正しくそう表現すべきその一撃は、鮮やかにホンフーの腹へと吸い込まれ――横合いから薙がれた手刀に、いとも容易く弾かれた。

 

 

「なっ……!?」

 

「甘さは無し。実に有望だ」

 

 

次の瞬間、赤い少女の眼前には開かれた五指が置かれていた。

 

額、眉間、人中――。

顔の急所全てを突き刺さんと迫るそれに総毛立ち、咄嗟に槍を変形。多節棍の形状にし、ホンフーの腕に巻き付け無理矢理に軌道を逸らす。

 

小指の掠った頬が血飛沫を上げて裂け、文字通り血の気が引いて。すぐさま多節棍で互いの足元を地面ごと削り抜き、強引に距離を離した。

 

 

「……オンナノコの顔グチャグチャにするつもりかよ。紳士ヅラして、けっこーやるじゃん」

 

「避けてくれると信じての事ですよ。光栄でしょう?」

 

「ハ! 言ってろカマ野郎……!」

 

 

そう言って槍に戻した武器を構え直す彼女の目には、苛烈な怒りが見て取れた。

先程までと違い、明確に戦う意志を示している。

 

 

(地雷、踏みましたかね)

 

 

巴マミの事を語りたくなかったのか、それとも洗脳まがいの事をされたのが気に入らなかったのか。

どちらにせよこれでは戦いは避けようがなく、ホンフーも静かに武闘の構えを取った。

 

――まぁ、彼女とならば、少し戯れてみるのも悪くない。

 

そんな武人としての衝動に棹ささず、赤い少女を見据え。彼女もまたホンフーを強く睨む。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

レジスタンスの逃げ去った、夜の帳が落ち始めた倉庫跡。

瓦礫の崩れる乾いた音が断続的に響く中、空気だけが際限なく張り詰めていく。

 

槍先が地に擦れ、爪先が砂利を掻き。

ほぼ同時に互いが互いへ踏み込み、刃と拳が鋭く空気を引き裂いて――。

 

 

 

「――――」

 

 

 

――鈍く、調子外れの鐘の音が、周囲一帯に轟いた。

 

 

「!」

 

 

集中を乱され、両者共に仕切り直す。

 

音のした方角を見やれば、そこには先程青い少女と共に飛んできた色紙の塊が――野球帽の使い魔が、力なく浮遊していた。

 

それはピクリとも動かず、だらりと手足を垂らし。息絶えている事は明らかだ。

しかしその周囲には空間の歪みが広がり、その中心に据えられた幾何学的な紋章が不気味な光を放っている。まるで、怒りと悲しみを表しているかのように。

 

鐘の音は、歪んだ空間内部にうっすらと見える時計塔から聞こえているようだ。

 

 

「あれは……」

 

「魔女の結界!? あの使い魔、親を呼んでやがっ――」

 

 

全てを言い終える前に、世界全てが裏返り。

空が割れ、大地が消え。

空間そのものが軋みを上げて、倉庫跡地から全く別の場所へと変質していく。

 

 

――不快な鐘の音が実像を結び、顕現するは魔女の住処。

 

 

居合わせた者は、その全てが為す術もなく――極彩色の異界の裡へと呑み込まれていった。

 

 

 

 

 

 




『鹿目まどか』
みんな大好きまどかちゃん。お誕生日おめでとうございました。
どの媒体でも天使とか女神かな? 女神だったわ。
置いてかれた後は必死にさやか達を追いかけているようだ。


『美樹さやか』
みんな大好きさやかちゃん。常時リジェネかかってるタイプの女の子。
回復魔法があんまりにも便利すぎて、気を抜くと描写的にリョナりそうになる。困った。
ホンフーのせいでちょっぴり警戒心が高まり、短慮が薄れているようだ。


『さやかの刀剣』
色んな人から影響受けまくってるカッコいい武器。
刀身射出はマミさんへの憧れ、劇場版の連結形態は多分杏子の影響だと思ってます。
でも爆発だけは何か変な時空から着想得てそう。ほむら嫌ってた時代から使ってた気もするし。


『佐倉杏子』
みんな大好きあんこちゃん。絶対さやかに喧嘩売るウーマン。
格下だと思って油断してたら出し抜かれ、運悪くホンフーに遭遇してしまった。
おそらく精神操作系の能力に関しては人一倍嫌悪感持ってたりするんじゃなかろうか。


『ウ・ホンフー』
運良く魔法少女に遭遇できてウキウキしたけど、探し人では無いようでガッカリ。
まどマギ勢のほぼ全員から見事に警戒されている。そりゃそうだ。


『野球帽の使い魔』
弾道なし、パワーC、ミートB、肩力D、走力C、守備E、耐エラーF
【ローボールヒッター】


『時計塔の魔女』
愛する使い魔を一人失い、怒りと嘆きに染まっている。


『レジスタンス』
もうだめなんじゃないかな。



なげーよ。


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。