ファランコス、このすばす   作:頭シー◯ス

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灰に使命なし


流れ着いたその場所

 ここは何処なのだろうか。誰に言うでもなく、そう独り言を呟いた火の無い灰は座り込む。

 もう幾度となく行った火継ぎ。気紛れにその火を絶やしたが、初めてやった訳でもないのにおかしな状況に陥っている。

 本来であれば灰の墓所の棺で目覚め、再び使命に殉じる旅をしなければならない。

 だが、気が付けば居た場所は知らない土地。どこか死にかけを思わせる、薪の王たちの故郷が流れ着くロスリックとは似ても似つかない。そんな命の活気がある草原。

 いつまでも座っている訳にはいかないと思い、火の無い灰は立つ。ひとまず、「何かがいそうな壁の中を確認してみよう」と。

 

 道中、でかいだけのカエルをファランの大剣で軽く斬殺し、目的地に着いた火の無い灰は目を疑った。

 見るからに正気の人間が沢山いたのだ。これまで見てきた人間は、ダークリングのせいで亡者に成り果てた者がほとんどだった彼からすれば、あり得ないとすら言える事だ。

 正気な者が沢山いるのは良い事だ。なのだが、火の無い灰からすると謎は深まるばかりだ。

 ダークリングの無い人間など、考えた事すらなかったのだから。

 いつも目覚めるのは火の時代の末期。誰かが薪の王たちを玉座に無理矢理戻さなければ、火の時代が終わる一歩手前。全ての人間にダークリングがあり、弱い連中は亡者に成り果てている。もはや、人間という種族は死に体と言っていい状態だ。

 もしかすれば、早起きでもしてしまったのかもしれない。いくら亡者になっていなくとも、学があるわけでない火の無い灰には、そんなかもしれないとの可能性を上げるくらいしか出来なかった。

 解らぬ事しかない現状に、落ち着いて考えるべきだろうと、火の無い灰は篝火を探すのだった。篝火は何処にあろうとも、ダークリングを持つ不死人にとって唯一の寄る辺なのだから…

 

 篝火が無い。その可能性に気付いたのは、街を探索し始めて3日程時間が経ったくらいであった。

 普通の人間からすれば何を馬鹿なと言いたくなる話だが、火の無い灰からすればあり得ない事だ。

 不死人にとって、火の無い灰にとって旅は篝火を拠点に行うものであった。篝火を巡るのが旅と言っても差し支えない。

 そも、不死人なら誰もが持つが、宝と言えるエスト瓶は篝火で満たす。エストは不死人のメインとなる回復手段故に、必要不可欠といえる。

 ロスリックには各所にその篝火があり、それが普通であった。だから、ここにもあるだろうと探してしまったのだ。

 

「あ、探し物は見つかりましたか?」

 

 店の前を掃除していた女性、名前はウィズが火の無い灰に声を掛けた。街中では剣を抜身のままにしてはいけないなどといった、欠如していた常識を教えてくれた人である。

 無い事が判ったと返せば、まるで自分が悲しいかのように物憂げな顔で励ましの言葉。

 これだけで、火の無い灰はイイ人認定を出す。それでも、ウィズから感じるソウルは異形のソウルなので、いつか手にしたいと思うのだが。

 篝火もなく、火防女による導きもない。頼れそうな人物は目の前に一人とあって、火の無い灰はウィズに今後の相談をするのであった。

 

 自分の名前は何であろうか?ウィズに名前を聞かれ、思ったのはそんな事であった。特に名前を呼ばれる事も無く、火継ぎを繰り返すうちに忘れ去ってしまった名前に未練はない。が、街で生活するのに必要となればそのままという訳にもいかなかった。

 そこで、火の無い灰は装備から名前を貰う事にした。深淵の兆しあれば、一国すら滅ぼすのに躊躇しなかった深淵狩りの集団、ファランの不死隊から。

 火の無い灰改めて、ファランは地味な冒険者デビューをした。なんて事はない。何をするにも先立つモノは必要であり、その稼ぎの為に冒険者になったのだ

 ファランはソウルなら大量に持っているが、エリスなる硬貨は持っておらず無一文となる。幸いにもウィズに事前に相談したお陰で、手持ちのいらない装備を売って登録料は捻出できた。

 登録時に、火防女によって限界まで強化された能力に驚かれたが、それ以外は特には問題はなかった。

 

 ファランのいる街は、初心者の街とまで言われるアクセル。領主が悪徳貴族であるのを除けば、特に問題などない平和な街である。

 そんな平和な街であるアクセルでも、冒険者の仕事は雑用から討伐に調査と多岐に渡り、年がら年中何かしらの依頼がある。冬になると強いモンスターの討伐依頼だけになるらしいが、今は関係無いだろう。

 そんな中からファランが選んだのはジャイアントトードの討伐である。

 人を丸のみにできる巨体に、その大きさに見合った舌の長さで離れた獲物でも捕まえるモンスター。こう聞けばなんと恐ろしいモンスターと思うが、金属が苦手で金属製の鎧でも着ていれば丸のみには滅多にされない。さらには走って逃げれなくもない早さとあって、人間が捕食されるとすれば準備不足の駆け出し冒険者や農家か子供くらいなものである。

 街に入る前に軽く斬殺したことのある相手とあって、ファランに緊張はない。

 ジャイアントトードを前にして、懐からウィズから買った魔道具を取り出す。ジャイアントトードが好む匂いを発し、飲み込んだら爆発して確実に仕留める品だ。

 効果だけなら有用な道具である。ただし、値段がお高くジャイアントトード一匹とは釣り合わない。しかも、付近にいる全てのジャイアントトードを引き寄せてしまうという欠陥品である。

 駆け出し冒険者はまずジャイアントトードを相手にするだろうからと、ウィズは善意でオススメしたのだろう。しかし、初心者が使えばジャイアントトードに囲まれて、最悪食べられて終わりとなる。

 ウィズの澱みと言うべきか穢れと言うべきか判らないが、どこか黒いモノと青いモノが入り交じるソウルに相応しい所業であるが、繰り返すが善意である。

 ウィズは駆け出し冒険者向けと思ってるのだろうが、欠陥扱いの部分も加味すると別の使い道が出てくる。何かしらの理由でジャイアントトードを誘き寄せたいか、食用である肉を大量に得る為に使うのが正しいのであろう。

 そんな思考をしながらでも、ファランの体はもはや染み付いたとまで言える動きでジャイアントトードを仕留めていく。

 左手の短剣を地面に突き立て、軸にしての回転切り。続けて逆回転して切りつけ、最後に体ごと縦回転して両断する。ニ撃でもって逃げれぬように足を切り、トドメの一撃を入れる動きだ。

 狼血を受け継ぎしファランの不死隊は、度々その有り様を狼に例えられていた。深淵狩りである彼らもしくは彼女らに、深淵が関わるモノを逃がす失態は許されない。

 ゆえにその狩りの動きは、まず逃げれぬようにするのだ。人であろうがなんであれ、深淵を広げかねないモノを。そこに、例外など存在しない。例え、己であろうと。

 ジャイアントトードがそんな狩りから逃げられるはずもなく、餌に誘われて姿を現した全てのジャイアントトードは食用肉になる運命であった。

 

 何事もなくクエストを終わらせたファランは、一人で冒険者ギルドに併設された酒場で冒険者カードを見ていた。

 この世界もしくは時代の冒険者は、モンスターを倒す事でソウル的なモノを取り込んでレベルアップする。レベルが上がればステータスが上がり、更にはスキルを習得する為のポイントが得られる。

 なにそれズルい。冒険者カードの概要を聞いたファランの率直な感想がそれであった。

 自身もレベルアップはできるが、火防女の手によってステータスを一つ1上昇させるだけである。無論、冒険者カードの1と火防女の1が同じとは限らないが、それでも全体的に上がるとは差が大きいではないか。

 さらに言うなら、習得さえすれば色々と便利になるスキルも大概である。ポイントさえあれば指先一つで即できるようになるなど、技術を馬鹿にしてすらいるとも感じられる。

 尤も、武器を持てばステータスさえ足りていれば熟練のように振り回し、魔法・奇跡・呪術はスクロールさえあれば習得が容易。ありとあらゆる適性ガン無視な不死人の行為を目にすれば「お前が言うな」と言われるが。

 世界の違いを感じつつも、じっと自身の冒険者カードを見る。

 職業は冒険者であり、持たざる者であった身であるのにスキルポイントは豊富。ステータスに関しては魔王軍との戦いで最前線を生き残れるくらいに高いらしく、スキル欄は空欄である。空欄なのは、ジョブ冒険者は誰かにスキルを教えて貰わないと習得出来ないからである。

 誰かにスキルを教わってスキルを習得するのは当然だが、問題は何を習得するかであった。火防女に限界まで強化されているため、レベルアップでスキルポイントが手に入らないかもしれない。だから習得するスキルは選らばなければならない。

 付け加えるなら、ソロで行動できるようなスキル構成にすべきであろう。白霊と違って、冒険者は捨て駒にしたり、一緒に特攻を気軽にできる相手ではないのだから。

 初心者の街と言うだけあって、アクセルの冒険者のレベルは全体的に低い。教わりさえすれば習得可能性という特性を生かすのであれば、早々にレベルが高く教われるスキルが豊富であろう別の街に行くのも手である。

 尤も、そうするとウィズのソウルが手に入りにくくなるし、何より死んだらどこで復活するか判らない。判明するまではアクセルにいた方が良いだろう。死んだら灰の墓所送りもありえる。

 この世界に使命があるかはまだ判らない。だが、薪の王たちの故郷が流れ着くロスリックを駆け巡り、王狩りを火継ぎを成し遂げた火の無い灰は止まらない。

 深淵の監視者の装束を身に纏い、集めた武器に魔法を駆使して戦うのだ。これまでがそうであったように、これからも一区切りつくまで進む。

 例え旅が徒労に終わるとしても。




火の無い灰
皆大好き好奇心の塊。今はウィズの異形のソウルを欲しいと思うも、積極的に殺しに行くつもりはない。でも機会があったら回収したいと思っている。

ソウル
相手の体力わかるならどんな感じか判るだろうと、異形のソウル所持か判る設定

ファランの不死隊の剣技
深淵歩き(虚偽)アルトリウスの剣技を可能な限り再現したのがあのモーションだと思っている。
パリィ可能という悲しみを背負っており、初見にはワケわからん殺しで熟練にはパリィの鴨にされる。

ファランの大剣
特殊特大剣というオンリーワンなカテゴリにいる。
武器の説明で特に言及はないが、深淵狩りの効果がある。なので狼騎士の大剣と同じで装備すれば今日から君も深淵狩りだ!(なお対象は半分くらいボス)
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