ファランコス、このすばす 作:頭シー◯ス
ふと気が付けば、ダクネスの背後でハベルのコスプレをした不死人がサムズアップしている幻影が見えた。そんな筈はないと凝視すれば、たちどころに消え去る。
確かにダクネスは、「岩のような」と呼ばれるハベルの如き硬さだ。それでも女性に対して「岩のような」は、流石に失礼極まりないと判断は出来る。事実であるかは関係無く、マナーの問題だ。ウィズが言ってた。
そんなダクネスの成長は、早々に諦めるべきかもしれない。別にレベル上げが億劫になったとか、ダクネスのステータスの伸びが悪くなったなどではない。ダクネスのレベルは最初から上がりにくいし、その分ステータスの伸びは良い。
ダクネスはステータスに恵まれているのに、その被虐願望を満たす事しか考えていないのだ。戦う事すら考えていないダクネスに、戦士としての成長は望めない。
硬くて望んで囮になるのはパーティーとしては有用ではあるが、その腕力を考えれば攻撃もして欲しいところである。しかし、ダクネスは攻撃系のスキルを習得は絶対にしないだろう。
ならばファランに出来る事は一つ。ダクネスをスキル無しでも、攻撃が当たるように鍛えるだけだ。ファランだってスキル無しでも攻撃は当たるのだから、いくら年季の違いがあるとしてもダクネスにも出来ない道理は無い。
「……別に私の攻撃が当たらなくても、問題は無いのではないか?」
嘘をつけない性格か、それとも嘘をつけ慣れていないからか、相変わらず気にしている事に関する話題のダクネスの態度は白々しさがする。
無論、無理矢理にやらせようという訳ではない。挑戦するだけでも、ダクネスが悦ぶご褒美、いや、お仕置きも考えてある。
「お仕置き、だと」
ゴクリと、生唾を飲み込む音が聞こえそうな程に、ダクネスの反応は劇的であった。
判りやすい、実に判りやすい反応である。
ダクネスは真っ当な人間なら避けるような、尊厳を傷付ける苦痛を望んでいる。それはモンスターに負けて辱しめられたり、人間の屑としか言えないような男の伴侶となって言いなりになるといったモノだ。
モンスターに袋叩きにされて悦び、ソレを唯一のパーティーメンバーに白い目で見られるなどまだ生温い。苛烈かつ蔑むような痛みこそ望んでいる。
その望みを叶えると言わんばかりに、ファランはどこからともなく、トゲの直剣を抜く。
切りつければ、トゲが出血を強いるその直剣は、ロザリアより中指を二つ名に戴いたトゲの騎士たるカークの得物。無論、
拷問器具染みた直剣に、ダクネスの目は釘付けだ。斬られれば、どれだけの
ファランが無節操に集めた品々の中には、ダクネスが気に入りそうな物が幾つかある。中にはくれてやっても良い物だってある。
ソレを聞いて、ダクネスは欲望の火を灯すのだった。
毒の大木槌がダクネスの胸を鎧越しに強打する。常人であれば尻餅を着くか、少しくらいは浮きそうになる衝撃。それをダクネスは、一身に受けて微動だにしない。
正にクルセイダーの鏡のような仁王立ち。なのだが、その内情は余す事なく
続けて毒の大木槌が振るわれるも、その全てをダクネスは受け止める。盾としては本当に優秀だが、遂にダクネスは不調から表情を歪める。ようやくダクネスを毒状態に追い込んだのだ。
予想よりも耐えたダクネスを驚くを通り越してドン引きしながら、ファランはフィリアノールの聖鈴を取り出す。奇跡の癒しの涙で毒を消すためだ。
奇跡を発動しようとすると、ダクネスが止める。
「もう少し、毒を味わって…」
無視してファランは毒を消すのだった。
ダクネスにとっては無情な対応だが、続けて太陽の光の癒しを使われて回復させられる。
「しかし凄いな。そこまでダメージは受けていなかったが、今の魔法ならかなりの重傷でも治せるんじゃないのか?」
そのくらい出来なければ、名前に太陽を含むに値しないであろう。太陽とは―――神族であっても冠するとすれば最高位に位置付けられる程に―――偉大で、大事な存在なのだから。ただしグウィンは死んで当然。
しかし、ダクネスはそんな事を気にしているべきではあるまい。故にファランは、次の武器をダクネスに渡す。
「また大槌か…」
渡されたモーンの大槌に不満げであるが、スキルを習得しない以上は手に馴染む武器を振るうべきである。それが解っているのと、試した後の
凛とした雰囲気のダクネスは、武器を握ろうともその雰囲気を損なう事なく、まるで絵画のようである。そして武器を振るえば、検討違いではないが仮想敵には当たらないであろう軌道を描く残念具合。なぜ想像でも外す。
ダクネスの技量の低さを見誤っていたのだろう。もしくは、この世界の住人はスキルを過信して、スキルの習得無しでは満足に武器の一つも振るえない身体になっているのか。
鍛えれば良いと思っていたが、とんだ思い上がりであったようだ。不死人なら武器を当たるように振るうなど簡単なのに。
「なんだその目は…っん!」
思わず悦んでしまったダクネスに、ファランの目が濁る。こんな思いをしたのは、召喚した白霊が闇霊に呪術の浄化でワンパンされて以来であろうか。一時期割りとあったかもしれない。
検証と訓練が無駄と判断したファランは、アリアンデルの薔薇でダクネスを滅多打ちにして、ご褒美も終わらすのだった。
ダクネスに攻撃を期待するだけ無駄と知ってから数日。そのダクネスが銀髪の友人とやらを連れて来た。なんでもパーティーに入れたいとの事だ。
「なんで、そんな嫌そうな顔をする!」
本気で言っているのだろうか?ただでさえ前衛二人でバランスが悪いのに、更に前衛を増やすとは。連れてくるなら、プリーストかウィザードであろう。
「確かにそうだが、ソロで苦労してると聞いてな…」
ダクネスはファランの正論に分があると解っている。それでも、数少ない友人が困っているのを見過ごせないのだ。
騎士と友人のキーワードは、ファランにジークバルトを想起させる。だからこそ、銀髪の友人とやらは信用ならない。
異形のソウルを持つ者が、冒険者稼業で苦労?
それも初心者の街であるアクセルで?
しかもソウルは雷を思い起こす黄色を帯びている。憶測でしかないが、
この世界では神は隔絶した存在ゆえに、疑問は胸に留めているが、必要とあらば闇派生した武器か凶王の磔を抜くのも躊躇いは無い。準備ができるなら、対神族として闇属性の魔法を用意だってする。
別に信者でないファランに価値があるのは、その異形のソウルくらいであろう。
「あはは…随分と手厳しいね」
困ったように頬の傷をなぞるが、ファランの目には人間の振りをしているようにしか映らない。
解らない。神族が人間の振りをしてまで、近付いて来たのかが。殺すつもりなら直接しなくとも、信者に神託でも下せばよいだろに。
あるいは、既に自身が手を下さねばならないと、実力を測られているか。英雄一人よりもネズミ十匹の方が怖いのだが。
そこまで考え、パーティーに入れても問題は無いと気付く。
確かに前衛ばかりが揃ってバランスが悪いが、聞けば盗賊。則ち前衛ではあるものの、サポートが主たる役目だ。
ダクネスがそこまで考えているかは疑問だが、ダンジョンなどの探索を視野に入れるなら悪くはない選択だ。
もしも、冒険中に暗殺されそうになったとしても、即死さえ回避出来れば堂々と殺せる。むしろそうなって異形のソウルを手にできれば万々歳である。
頑固なダクネスに折れたと言わんばかりにため息をつき、ファランは心の中だけで喝采を上げながら銀髪の友人改め、盗賊のクリスをパーティーに加えるのだった。
岩のようなハベル
皆大好き脳筋戦士。なのだが、大魔力防護がハベルの物語らしく、「魔術を嫌い、それに対する手段を怠らなかった」とあるので筋バサが正しい姿かもしれない。
ちなみにダクソシリーズ通して本人は出ておらず、古竜の頂にいるのは装備が同じ別人との事。でも硬いのでかなり厄介。
大竜牙と大盾は本人の遺物と明記されているが、その他の防具や指輪はハベルの戦士にまつわる品だったりする。
グウィン
神族VS古竜を神族の勝利に導いた凄い神。だけど薪の王周りはだいたいコイツのせい。
火の時代を存続させる為に火継ぎの儀式を確立。火の時代は人間にとっても別段悪い時代ではないようだが、竜狩りに加わったのに語られなかったりと少なくとも一段下の扱いをしていたもよう。
浄化
相手を内側から焼く呪術。掴んでから焼くので扱いにくい部類。
かつてはバグで特定条件下で右手に持った武器の攻撃力が加算されるなんてことがあった。そのせいでワンパンされるのが珍しくなく、DLC未配信だった当時は唯一の浄化が決まるボスである深淵の監視者も被害にあった。