【完結】ノン・プレイヤー・ストーリー 【オバロ二次】   作:taisa01

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友人知人、仕事仲間。多くの人が大阪と北海道で被災しました。
心よりお見舞い申し上げます

あえて自粛しない方向で、頑張って作品を送り出そうとおもいます。


第六話

ナザリック地下大墳墓 表層

 

 毒沼に囲まれ誰もが近付くことさえなかった場所。そこには神殿を中心とした古代都市があった。しかし建物は朽ち果て、そこにあったであろう人々の営みは風化し塵芥となって消え去っていた。だが残った断片は、そこに生きたものたちの技術力の高さを感じさせるものばかりであった。

 

 今日、ユーザーイベントということで集まり、襲撃に参加したプレイヤー達は一様に驚いていた。なぜなら世界に一つずつしかない最大級のギルド拠点。それに匹敵するほどの広さと作り込みを持つ表層であったからだ。

 

「見掛け倒し……だよな」

「じゃなかったら、あれか? ここは世界トップのギルド拠点に近い規模ってことになるぞ?」

 

 隊列というほどではないが、ある程度パーティーごとにまとまって行動している。気心知れたメンバーで集まっているためか、若干緊張感に欠けており、そんなざわめきが聞こえてくる。敵感知の魔法を使えば、周りは敵だらけ。しかしその姿は見えない。

 

 警戒しながら歩みを進める一行が、地下への入口となる神殿部分に近づいた時、空気が変わった。

 

 ナザリック表層の上空に、巨大な影が浮かび上がる。

 

 影は次第に濃くなり、豪奢な漆黒のローブに身を包んだリッチ、いやオーバーロードの姿を形作る。

 

「己が正義を信じて止まぬ者達よ。我ら異形種の楽園へようこそ」 

 

 上空に浮かぶオーバーロードは、ゆっくりとした仕草で歓待の礼を取る。

 

 演出。

 

 この場に集まったプレイヤーたちは、上空を見上げている。もちろん怨恨から参加を決めた者達は別だが、ある種のイベントとして参加したプレイヤー達にとって、モモンガのソレは、場を盛り上げる最良のスパイスであった。

 

「卿ら、己の一生はすべて定められている」

 

 艶と絶対強者という自負からくる覇気を兼ね備えた声が響き渡る。

 

「勝者は勝者に。敗者は敗者に。そうなるべくして生まれ、どのような経緯を辿ろうとその結末へと帰結する。これが世界の定めである」

 

 ナザリックの表層にいる千人の襲撃者。ナザリック各層のNPC達。ナザリック九層の円卓の間にいるギルメン達。全ての者が今、高らかに謳うモモンガの声に聞き入っている。

 

「ならばどのような努力も、どのような怠惰も、祈りも罪も等しく意味は無い。今一片の罪咎ない者達が奪われ踏み躙られるのは、世の必然なのだから」

 

 仕草、不穏なセリフ、そして演出はまるで勇者達の軍勢を待ち構える魔王そのものであった。

 

「愚かしく奪われ、踏み躙られる傲慢な敗北者たちよ」

 

 いやがおうでも、襲撃に参加したプレイヤーたちの心の底から熱い何かが湧き上がる。お前たちは敗北者であり、生まれ変わろうと変わりはしないと、常に蹂躙されるだけの存在であると目の前の魔王は言っているのだ。

 

 このセリフに映画やドラマのワンシーンを想起し興奮する者。

 

 罵倒され怒りを溜めるもの。

 

 ゲームの中のことでありながら、リアルの現状にまで思いを呼び起こし、強烈な感情を湧き上がらせるもの。

 

――感じ方は様々。

 

 しかし一様に言えるのはこれから何か起こる。そんな期待であった。

 

「ゆえに祝福しよう。我らの贄となれ。AMEN!」

 

 魔王が両手を大きく広げマントがバサリと広がる。

 

 広がったマントは空を覆いつくし、黒と赤でプレイヤー達を塗りつぶす。そして空に溶け込むように魔王の姿が消えると同時に、ナザリック表層のほぼ全域で地鳴りが発生する。

 

 そう、低レベルではあるが、ありとあらゆるアンデッドが一斉に地面から現れたのだ。

 

 そしてプレイヤーが立っていた場所も例外ではない。足元から這い出し、足を掴むなど、まるでパニック映画のような状況になった。

 

 聡いものは、先ほどまでの敵感知の正体と認識し応戦をはじめる。なにしろ襲撃してきたプレイヤーの多くのレベルは百である。低レベルの物理攻撃無効を持つものも少なくない。今襲って来ているアンデッドの群れは三十以下ばかり。即座とはいわないが、十分に余裕をもって殲滅できるものだ。

 

 しかしモモンガによる演説の後、虚をつくような突然の戦闘開始、加えて表層を埋め尽くすような数は、冷静さを失わせるには十分だった。

 

 しかしレベル差はいかんともしがたいもの。時間経過と共に、相手が雑魚とわかると徐々に立て直し、最後の一体はそれこそ余裕をもって殲滅するのだった。

 

 だれもが達成感を得て次の第一階層に向かっていくが、一部の者は気がついていた。

 

 貴重な回復アイテムやMPを少々とはいえ、雑魚相手に浪費してしまったことを。

 

******

 

ナザリック三層 地下聖堂

 

「一層と二層のトラップで350人はしとめたようです」

「そう。では配置について、忠義をつくすでありんす」

 

 シャルティアは、武装を固め、地下聖堂の奥、砕けた聖女の像に腰を掛けながら、ヴァンパイアブライドからの報告を聞く。

 

 ナザリック防衛戦開始から約一時間。

 

 ナザリックの第一層から第三層はダンジョン型のフロアである。ユグドラシルにはフレンドリーファイアがないとはいえ、スペースの関係上同時に戦闘できる人数に制限があるフロアは、罠の効率は高い。その地の利を最大に活かした形で、第二層までで三百五十人のプレイヤーを無力化、または壊滅状態に追い込むことができた。

 しかしシャルティアにとっては、どうでもよい報告であった。

 

 なぜなら、トラップに引っ掛かって死ぬような愚か者に用はない。シャルティアが愛する創造主より与えられたのは、純然たる戦闘力。料理スキルやメイドスキルといった遊びのスキルは一切なく、眼前の敵を殲滅するための能力。

 

 ゆえに待っている。

 

 自分の背後にはヴァンパイアブライド達も武装を整え待機している。

 

 そしてシャルティアの真祖としての能力が、聖堂の外、最後のデストラップに群がる愚か者たちをとらえる。

 

 レベルにすれば至高の御方々と同等。しかしスキルの構成という点ではまたなんとも言えない存在たち。そんなもの達が一歩、また一歩と近付いているのだ。 

 

「恐怖公より連絡。食いつくせぬほどの侵入者を確保と」

「なにが起きているかはあえて考えないようにしんしょう……」

 

 シャルティアの守護階層のワンフロアを預かる恐怖公から、デストラップに引っかかった大量のプレイヤーの状況報告がシャルティアの元にあがる。しかし、大量のゴキブリに侵入者が貪り食われる姿を想像し、思考から外したシャルティアは、恐怖公にフリーハンドを与えることにした。

 

 その結果、恐怖公はその忠義を示すためフロアキャパシティ限界までの犠牲者を捕まえたとだけここに残しておくとしよう。

 

 

******

 

 

 現状、ナザリックにおいて罠などの消費ははげしいものの、あくまで想定の範囲内。少なくともモモンガを含むナザリックのプレイヤー面々は考えていた。

 

――しかし。

 

「おい。表層にまた新しいプレイヤーがあらわれたぞ」

「どこのギルドだ?」

 

 ナザリック表層を映すモニターに表示されたプレイヤーは、一人や二人ではない。着々と増える影。完全武装したプレイヤーは、ナザリック周辺のモンスターなど目もくれず進撃してくる。

 

「二百は軽く超えてるな」

「まだまだ増えるぞ」

「先頭にいるやつら……セラフの連中だ。しかもガチ装備」

「右翼は魔法傭兵団か」

「鷹の団、薔薇、戦争ギルドまでかよ」

 

 ギルメンが、外装の特徴や各種サーチの結果から所属を暴いていく。

 

 その数は

 

「追加で五百。総勢千五百か」

 

 侵入者の数をギルドマスター権限で見ていたモモンガが当初の予想を超える数字を口にするのだった。

 

 そして、その情報は円卓の間に控えていたセバスから、即刻アルベド経由で全守護者……いや、全ナザリックに所属するものに通達されたのだった。

 

 

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