【完結】ノン・プレイヤー・ストーリー 【オバロ二次】   作:taisa01

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ある意味でBエンドのほうが幸せかもしれない。


最終話Aエンド

ナザリック地下大墳墓 玉座の間

 

 ナザリック地下大墳墓の転移と思しき事象から四日目の夜

 

 モモンガは玉座の間にナザリックに所属する者たちを集め、アインズ・ウール・ゴウンと名を変えたことを宣言した。そしてこの名を世界に知らしめるよう厳命する。それは、自分と同じ境遇のプレイヤー、それもアインズ・ウール・ゴウンの仲間達の手がかりを期待してのことであった。

 

 しかし……。

 

 いくらNPCに傅かれ、支配者として演技せざるをえなかったから。

 

 いくら異世界転移と思しき事象に巻き込まれ狼狽していたから。

 

 いくらゲームのキャラクターとなって混乱していたから。

 

 理由はいくらでもつけることができるが、はたして現代社会の一般人として最低限培われた倫理観や常識をかなぐり捨てて、大勢の人間を殺し、さらに拷問する命令を平然と出せるものだろうか?

 

 アインズはふと四日間のことを振り返りそんなことを考える。

 

 しかし結論はでなかった。比較対象がないこともあるが、自分の胸の中にあるのは仲間のこと。そして仲間と造り上げたナザリックのことが全ての中心であり、リアルでのことなどまるで遠い過去のようにさえ感じられるのだ。たった四日で人間はそんなに変われるのだろうか? 疑問にこそ思うが、同時に冷静な自分が囁くのだ。まずは目の前の問題から対処せよ、仲間と生み出したナザリックを守れと。

 

 ゆえにアインズは第一歩となる命令を出し、私室に戻ることにした。

 

 だが、NPC達にとってはそこからが本番であった。

 

 

******

 

 デミウルゴスが伝えたアインズの世界征服宣言に歓喜したNPCたちは、それぞれの任務を遂行するために持ち場へと戻っていった。しかし、玉座の間に残る者もいた。

 

 真祖(トゥルーヴァンパイア) シャルティア・ブラッドフォールン

 

 蟲王(ヴァーミンロード) コキュートス

 

 ダークエルフのアウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ

 

 最上位悪魔(アーチデヴィル) デミウルゴス

 

 執事のセバス・チャン

 

 戦闘メイド プレアデスの面々

 

 そして

 

 サキュバス アルベド

 

 一部の例外はあるが、すくなくとも現在稼働するナザリックの最高戦力といっても良いNPC達である。

 

「アルベド。一つ質問していいでありんすか?」

「どうしたのシャルティア? 改まって」

 

 プレアデスを含め、このメンバーが一堂に集まることは初めてのことである。このタイミングでわざわざアルベドに質問をするのだから、それなりの疑問であろうと周りのものは見守っている。

 

「今回の異変が発生したと思しき四日前、アルベドはわたしらを第六層に集めた時、追加でこう言ったでありんしょ」

 

ーーもう私達の軛はありません。自由に話すことも、自由に触れることも、そして自由に動くこともできます。それを念頭に行動なさい

 

「なぜ、それがわかったでありんすか?」

 

 その言葉はプレイヤーの前で会話をすることをはじめ、NPC達にとってありとあらゆる禁忌や制限は無くなったと宣言したものだ。もちろんそれを何度も破ろうとしたNPCも多いが、その行動は一度も成功することはなかった。質問したシャルティアも別れを言うペロロンチーノに置いていかないでと叫び抱き着こうとしても、指一つ動かすことも、声一つ上げることもできなかったのを鮮明に覚えているからだ。

 

 もちろんシャルティアはアルベドのことを責めているわけではない。しかし長年拘束されていた禁がいきなり解かれたのだ。それをどうやって知ったのか、純粋に気になったからある意味で空気を読まずに質問したのだった。そしてその疑問は、コキュートスやデミウルゴスをはじめ他の守護者達も共通していた疑問であった。

 

「モモンガ様。いえ、アインズ様があの日お困りのようでしたから、お声がけしたまでよ」

 

 さも当然のように、蠱惑的な笑みをいつも通り浮かべながらアルベドは答える。しかし多くのNPC達も言葉にこそしないが、その禁にどれほど苦しめられたかを覚えている。それをいち早く気が付いたのだ。

 

「あの日、たしかセバスたちも侍っていたのではないですか?」

「はい。たしかにアルベド様はアインズ様にお声がけされておいででしたが、しかしながら私達はそのあと直ぐ任務を拝命したので、ほぼ何も知らないといいましょうか」

 

 デミウルゴスの質問にセバスが答える。そしてセバスの言葉を肯定するように、プレアデス達も頷いており、偽りはないのだろう。だからこそ疑問が残る。アルベドがアインズに対して声をかけたことはわかった。しかし他の確認をいつできたのか?

 

「まさか、セバス達が退室したあとアインズ様に破廉恥なことをしたんじゃ……」

 

 シャルティアが気が付いたとばかりにアルベドに詰め寄る。実際はアインズがアルベドのいろんなところに触れたのだが、そんなことをわざわざシャルティアに教える必要はないとばかりに、ほほえんで煙に巻くアルベド。

 

「そもそも出会いがしらアインズ様に抱き着いたのはシャルティアのほうじゃない」

「それは、感極まったということでありんす!」

 

 そんなシャルティアを見ながらアウラが若干呆れたように口にする。その言葉にシャルティアは苦虫をかみしめたように嫌そうな顔をしながら叫ぶ。

 

「まあ、シャルティアのことは置いておいて、私からもいいかな?」

「あら、デミウルゴスも?」

「君が口止めしている終末の件。それはもう過ぎ去ったと考えてもよいのかな?」

 

 少なくとも四日前。

 

 NPC達はこの世界が何らかの終わりを迎えると考えていた。なにより、アインズや最後に訪れたプレイヤー達の口ぶりから、もし世界が存続したとしても、そこにアインズの姿は無いとさえ考えていた。

 

 しかし、結果は違った。アインズは現実という世界に戻ることもなくなり。NPC達を縛っていた制限もなくなった。

 

 喜ばしいことだ。

 

 しかし、喜ばしいからといって、何故という疑問が無くなるわけではない。それはナザリックにおいて最高の英知を与えられたデミウルゴスであっても変わりはしない。むしろ未知は、気が付かぬうちにナザリックの障害となりえるのではないかとさえ考えているのだ。

 

「そうね。アインズ様は私達の行動、言動、それらを見ながら何かを確認されている節があるわ。それに普段であれば定期的に現実の世界とやらに戻られていましたが、すでにこの四日間、戻られた形跡はないわね」

 

 アルベドはそこまでいうと、セバスやプレアデスの面々の顔を見る。そして、全員が是と答える。

 

「そして、アインズ様がお言葉、いままでの行動からすれば……」

「現実への移動ができなくなった。それはナザリック地下大墳墓の転移という問題とリンクしている可能性が高いということかね? しかしそれはあくまで事実の積み重ねでしかないのでは?」

「その通りよ。だからこそ私達は私達で情報を集める必要があるの。アインズ様の深淵なるお考えは広く世界を見通すことでしょう。しかし矮小な私達はそれほどの智謀も知識もない。ならば」

「我々は、アインズ様がお気にもしない、それこそ足元の石ころのような情報を余さず集め、転移の原因、そして終末などについて調査すべきということか」

「その通りよデミウルゴス。終末が本当の意味で去ったのか? それとも、それを誘発した存在がいたのか? どんな状況かはわからない。だからこそ私達の手でアインズ様のお役に立つべきではなくて?」

 

 アルベドとデミウルゴスの言葉の応酬は、いわばナザリックにおける方向性のせめぎあいともいえる。まわりのものからはどちらのセリフも理があるように見えているのだ。

 

 もっとももし、話術に造詣の深いものがいれば、双方がわざと論点をずらしていることに気が付くことができるだろう。

 

「君の意見は分かったよ、アルベド。しかし、至高の御方々に我々が知ることをご報告しないのは不忠にあたるのでは?」

 

 他の面々は理解していないようだが、デミウルゴスにとってアルベドの考えというもの自体を否定する気はなかった。むしろ気にすべきは最後の言葉、この行動が不忠にあたるのではないか? この一言に集約される。

 

「貴方は思い悩む主に、自分がわからないからと精査も終わらぬ、そして心労を重ねさせるような情報をご報告し、問うことが忠義と考えているのかしら? 少なくとも、言葉の端々にいまだ他の至高の御方々のことを気遣われていることは明白。そんな中に、至高の御方々がお話されていた終末とは何だったのですか? と聞けるほど私は恥知らずではないわ。どうみてもアインズ様の御心に無用の波を立てる行為ではなくて?」

 

 もちろん情報の程度によってはご報告するのも正しい行為かもしれないけどねと、アルベドは締めくくる。

 

「いいでしょう。いまは緊急時、終末の件も、我らに課せられた制限が消えたことも棚上げしましょう。そのかわり」

「ええ、日々の調査と合わせてこの件についても並行して調査だけはつづけましょう。もう二度と終焉が訪れぬように」

 

 デミウルゴスもアルベドの意見に一定の理解をしめしたことで、NPC達の行動方針は決定した。

 

 もしこの時、すべてをアインズに話す事になっていれば、また違った未来もあったかもしれない。それは小さなボタンの掛け違えで翌日には治る程度のものなのか、それとも水面の波紋のように、いつか大きなうねりとなり波となって帰ってくるのかは分からない。

 

 すくなくとも今言えることは、NPC達はアインズという主を得て、新たな世界に歩み出すために、終末やNPCの縛っていた何かについての優先度を下げたのだった。

 

****** 

 

 守護者やプレアデスらとの会話を終わらせたアルベドは、アインズより与えられたばかりの私室に入る。まだ与えられたばかりの部屋は、調度品など一通り揃えられているものの、個性と呼べるようなものは何一つなかった。

 

 しかし、部屋に入ると鍵を閉じ、さらに可能な範囲で警戒行ったアルベドは、そのバッグから一枚の大きな布を取り出したのだった。それは、先程アインズが破壊したモモンガとしての紋章が刻まれた旗であった。

 

「ああ、モモンガ様」

 

 そう、この一言が全てを物語っている。

 

 アルベドにとってはアインズではなくモモンガであり、愛すべき相手も敬うべき相手もモモンガなのだ。なにより、自分の中には、あの最後の日にモモンガが設定を書き換えた(触れた)ことによって生まれた確固たる縁があるのだ。

 

 そして、その縁が言っている。もうモモンガは現実に帰ることなどないと。

 

 アルベドにとっては忌々しいことに、アインズはギルドの仲間らの影を追い求めるだろう。本日の命令もその一端であることは明白だった。しかし、それは一時的なこと。何年で培われた友情なのかはわからないが、すくなくともアルベドとアインズの種族特徴をもってすれば、それ以上の時を重ねて少しずつ振り向かせることさえ可能だ。

 

 なによりもタブラ(創造主)の誰に評価されずとも生み出さずにはおれなかった熱量を受け継いたアルベドである。あの終末の直前まで、それこそ狂おしい愛を抱えて消える覚悟さえしていたのだ。

 

 そんな時に生まれたこの奇跡。

 

 なんとしても愛するモモンガを手に入れる。たとえナザリックの者たちと袂を分かつ事となったとしても。

 

 薄暗い部屋の中、アルベドはモモンガの紋章を抱きしめながら一人微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 




Aエンド またの名を アルベドエンド

活動報告も合わせて更新しましたので、ご一読いただければ幸い
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