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「鍬と肥料とジョーロと野菜の種と除草剤……あ、種イモ買おう。園芸用の土も持っていくかな」
手当たり次第に園芸道具を買い込んでいくこの男。彼は別に農家の人とか園芸が趣味とかそう言う訳ではない。単純に臨時収入が入ったから何か新しい事をやろうとした結果、畑でも作っていこうと言う答えが出たのだ。因みに完全に勢いで行っているため、完全にノープランである。
「お会計、13206円になります」
「はい」
「ちょうどお預かりします。会員カードはお持ちでしょうか?」
「いいえ」
「でしたら今入会して頂くと、月々1000円で―」
「結構です」
「そうですか。ありがとうございました~」
内容は不明だが、月々1000円と言う言葉を聞いた瞬間に入会を許否し、レシートを貰って店を出ていった。内容を聞いていれば考えたかも知れないが、月々1000円。つまり1年で12000円。この男の月収は18万とそこそこ。どの道入ると言う結果にはならなかっただろう。
「……包丁と砥石買おう」
何を思ったのかは分からないが、突然包丁を買うと言う考えが出てきて、近くのホームセンターに直行。目的以外の商品には目もくれず、目的のコーナーに歩いていく。そして懐に余裕があるためか、少し値段が高めの包丁に手を出す。
「ダイヤモンド砥石……よしこれにしよう」
包丁は出刃と牛刀、薄刃、柳刃の4本。砥石は両面のダイヤモンド砥石を購入。一体この男がどこへ向かって何をしたいのかは完全に不明である。
「さてと。帰ろう」
満足した様子で家に帰っていくが、この男は1つ忘れている事があった。今日は星座占いで10年に1度の最悪の日であることを。つまり死ぬかもしれないと言うことだ。占いを信じる人からすると、当該する場合は部屋から出たくないと思ってしまう日だ。
だがそんなことは完全に忘れている為、欲しいものを買えたと言うテンションの高い状態で車を運転している。お陰で異変に全く気付けずにいた。
「ん?……は!?嘘だろ!?」
ブレーキが効かないのだ。下り坂に入ったとき、スピードを落とすためにブレーキペダルを踏むのだが、効いてる感覚がなく、徐々にスピードが上がっていく。何度も力一杯ペダルを踏むが全くかからない。
キキィィィィ!!ガシャン!!!
カーブを曲がりきれず、電柱に直撃。更に悪いことに電柱が倒れて運転席に。完全に潰されてしまった。近所の人が通報し、すぐに警察や救急が駆け付け男は車から救出され病院に運ばれたが、助かる見込みは無いだろう。
「………ウワァァァァアッ!?…んあ?どこだ?」
事故に遭って死んだ筈。だが目が覚めてみると車の中でもなく病室でもなく草原。投げ出されたとも考えられるが、その割には体に傷はなく車の部品も転がっていない。あるのは買った鍬とエコバックに入れてた数種の野菜の種、包丁と砥石、後自分が常に持ち運んでいるスマホやタブレット、充電器が入っている別の鞄だけだった。
「マジかよ……肥料とか除草剤とか土結構高かったのに……なんでこれだけ残ってんだよ……」
「珍しいな。こんなところに冒険者以外の人が居るなんて」
「ん?誰だ?」
軽く絶望に打ちひしがれてると、横から声をかけられた。だが目を向けてもそこには誰もいない。不思議に思い辺りを見回すと、「ここだここ。目線を下に向けろ」と偉そうに言われた。
「……スライム?」
「なに不思議そうな目で見てん……あぁ、別の世界から来た人間か。そりゃあ不思議な目で見るか」
「ん~。夢だな、寝よ。どのゲームでも雑魚扱いのスライムが喋れる訳ね~し」
「お~い、現実逃避すんなよ~。夢じゃねーしこれ現実だからな~。あと俺は喋れるスライムだからな。そこら辺の雑魚スライムと一緒にすんな」
寝ようとした男の頭の上に乗っかって、男の言葉を1つ1つ否定しながら跳ねる。感触が確かにある事から、今目の前の事は全て現実であると認識する。
「はぁ……現実なら仕方ない。なぁ、この近くに町とかあるか?と言うかこの世界で生きていくにはどうすれば良い?」
「おいおい。まずはお前さんの名前を教えろよ。と言うか質問しすぎだ」
「あぁ悪い。少し混乱しててな。名前は
「事故って……災難だったな。まぁ質問には答えてやるよ。町はある。この辺は資源が豊富だからな。ここから南に15キロ歩けば小さな町につく。後はどの町にも冒険者ギルドがあるから冒険者登録すればいい。冒険者になれば色々と補助がある。無条件に家も与えられるぞ。毎回稼いだ分の数%は納めることになってるけどな。じゃあ俺はこれで」
スライムが背を向けて森の中に帰ろうとした。だが、何故か動きを止めて少し震えている。何事かと思い、目線の先を直輝も除いてみると、RPGで出てくる中級者向けのモンスターである牛人、ミノタウロスが立っていた。
「なんでお前同じモンスターなのに震えてんだ?」
「あ~、実はな、ミノタウロスって同族以外は基本敵と判断するんだよ。つまり」
「つまり?」
「俺達2人して敵って見られてるって事だよ!!」
それを聞いた瞬間、自分の荷物を全部もって南に走り出した。スライムなんか無視して全力で走っていく。まさに一目散にと言う感じにだ。
「バカ野郎!俺を置いていくんじゃない!」
「なんでくっ付いてんだよ!離れろ!!」
「色々と教えてやっただろ!少し位助けても良いだろ!!」
「ふざけんな!重てーんだよ!」
「仕方ねーだろ殆ど水分なんだから!つーかもっと速く走れ!追い付かれるぞ!!」
『グオオオオオ!!!』
「「ギャアアアアアアアアアア!!!!」」
直輝とスライムの悲鳴が響き渡りながら、ミノタウロスから逃げるために必死に走っている。そして十数分後、ようやく撒くことができた。
「はぁはぁはぁ……逃げられたか?」
「なんとかな……」
「じゃあ降りろ。重い」
「あぁはいはい」
「はぁはぁ……町に着く前に疲れた」
「でも問題ないみたいだぞ。ほら」
スライムにそう言われ、顔を前に向けてみる。そこには巨大な壁があり、目的の町に着いた様だ。
「入るの、もう少し後で良いか?」
「そうしてくれ……ついでに俺も町で休みたい……」
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