人間やろうと思えばどんな環境でも生きていける   作:憲彦

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「前回はかなりヤバい所で終わったな」

「あぁ。あの国王はドラゴンの一件でフリザの恐ろしさを目の当たりにしたお陰か、少しまともになっていたが、またバカなヤツが現れて喧嘩売って……」

「今国王の部屋で一触即発状態。とは言え、どうなるかは大体予想できるけどな」

「じゃあとっとと第16話行くぞ」


第16話

「さてと、始めますか」

 

部屋の中心に立ち、王国最強と言われている戦士長と対峙していた。フリザは力が入ったとは言えない無表情の状態で戦士長を見据えているが、逆に戦士長は余裕その物の態度を取っており、ニタニタと気持ち悪く笑っている。

 

「兵士達の話だと、確かドラゴンを圧倒したんだって?アンタ程度に圧倒されるドラゴンのレベルのたかが知れるな!」

 

「いいからさっさとかかってきなさい。言っておきますが、全力で来ることをお勧めしますよ?」

 

「フッ。後悔するなよ……ハァァァァア!!!」

 

フリザの挑発を受けて、体に力を入れた。すると辺りの家具が振動し、床などにある埃やゴミ等が浮き上がり始める。

 

「ハアアア!!!」

 

「ほう。これは驚きました。先程までレベルは60程でしたが、一気に倍以上に膨れ上がりましたね」

 

「驚いたか?これが俺の固有スキル!レベルアップだ」

 

「成る程。その様な固有スキルをお持ちでしたか。ここ数百年、魔法や戦闘技術、人間その物のレベルは大分落ちましたが、どうやらスキルだけは目覚ましい発展を遂げていたようですね。どれ、正確なステータスを見てみましょう」

 

「いいぜ。でもやる気は無くすなよ?戦う気のない相手を一方的に甚振るのは戦士として気が引けるからな」

 

自信満々に言う戦士長だが、そんなのを無視してマジックアイを発動。レベルを含む全てのステータスを細かくチェックした。

 

「レベルは140に到達しましたか。これはスゴいですね」

 

「ふん。だろ?今の俺は魔王を倒した伝説の勇者よりも高いレベルを持っているんだ。止めるなら今のうちだぞ?」

 

「平和なこの時代において、そこまでのレベルを持つことは確かに自信に繋がりますね。では、ここで参考までに今から貴方が戦う私のレベルをお教えしましょう。私のレベルは、53万です」

 

この男にとって、固有スキルであるレベルアップは自分の全ステータスを一気に上げることができる最強のスキルである。確かに戦士長に届く人間は存在しないかもしれない。だが、それは魔王や魔王軍の存在しない平和な時代でのこと。勇者と魔王、人間とモンスターがバチバチに争っていた時代から生きているフリザに、その道理が通じるとは思えない。

 

「なっ!?」

 

「ですが、勿論フルパワーで貴方と戦うつもりはありませんからご心配なく」

 

「グッ……!」

 

「そうだ。私はこの左手だけで戦ってあげましょう。それなら、少しは楽しめるかもしれません」

 

「グググ……ほざけぇぇぇぇぇえ!!!!」

 

構えていた剣を振り上げ、力を込めて一気に降り下ろした。だがフリザは慌てる様子もなく、それどころか自ら首を差し出しに行った。

 

「ッ!?」

 

「ホホホホ。いけませんね~。せっかくちゃんと当たるように首を差し出してあげましたのに、この程度なんですか?まぁしかし、レベル140ならこの程度ですね」

 

確かに剣は首に当たった。その証拠に、戦士長が剣を振るった衝撃波で剣が向いている方向の物は綺麗に片付いている。だが、フリザは血も流すことなく、首で剣を受け止めている。そして剣の刀身を握り、一気に砕いた。

 

「ナニッ!ガハァッ!?あぁ……」

 

一瞬の事で見ていた人達は理解できなかったが、フリザは刀身を砕いた直後に、戦士長の鳩尾に肘鉄を叩き込んだのだ。これだけの事だが、レベルに雲泥の差がある。単純な攻撃でも大ダメージを受けることに間違いはない。レベルが53万と140ではなおのことだ。

 

「おや。これはこれは、失礼しましたね。お返ししますよ」

 

膝をついて倒れている戦士長に砕いた刀身の半分を投げて渡した。脂汗をにじませ、胃液を吐いているが無理をしてでも立ち上がろうとしている。

 

「無理はしないほうが良いんじゃないんですか?」

 

「ぐぁ……グッ!」

 

「殺すつもりはありませんが、私が勢い余って殺さない内にさっさと金を払ったほうが身のためですよ?」

 

「はぁ、はぁ……ウオォォォォォオ!!」

 

「?」

 

再び体に力を入れると、へし折れた刀身に戦士長の魔力が集り刀身を形成していった。

 

「ほう。コイツは驚きました。魔力で剣を作るとは。ですが、剣が元に戻っても同じことですよ?戦士職の貴方には剣を形成し、更に高い硬度の刀身を作るほどの魔力は当然無い筈です。マイナス分は魔力以外のステータスから差し引かれますから、体力などは随分と落ちている様ですよ?固有スキルで上がったレベルも随分落ちて、今や元々あった60をも下回っています」

 

マジックアイは常時発動している。故にリアルタイムで戦士長のステータスの確認が可能だ。徐々に徐々に、戦士長の体力等が低下しているのを見ているのだろう。力が落ちていることは戦士長も理解しているが、戦士が魔法使いに負けると言うのはプライドが許さないのか、剣を再び構えた。

 

「やれやれ。あれほどの差を見せ付けられてもまだやるのですね……全く。この国の人間は何を考えているのか、さっぱり分かりませんよ」

 

「貴様などに……貴様などに分かってたまるか!ただの町のギルドの受付嬢ごときに、王国戦士の俺の考えが分かってたまるか!!」

 

感情に任せてか、剣をやたらに振り回した。だが、当然フリザに当たるはずがなく、全て避けられて戦士長の体力を削るだけの結果になった。

 

「なぁ王さま。そろそろ止めたらどうだ?お宅の戦士長、死ぬぞ」

 

「そ、そうだな……戦士長、そろそろ―」

 

「黙っていて下さい!勝負は終わっていません!」

 

「おや?勝負だと思っていたんですか?私は単なるお遊びかと思いましたよ」

 

「なッ!……どこまで戦士を愚弄する気だ!」

 

恐らく最後の一撃だろう。刀身がフリザに当たる直前で大爆発。フリザは爆発に飲み込まれた。

 

「フフフ……ハハハハハハ!!どうだ!反応できまい!如何にレベルが高かろうが、この一撃を受ければただでは済まないぞ!魔法使いごときが戦士に逆らうからこうなるのだ。思い知ったか!ハハハハハハ!!」

 

完全に勝った気でいる。フリザの立っていた場所は半径2メートル程爆煙に包まれており、状態は確認できない。だが、普通なら戦士長の勝ちを誰もが確信する。

 

「ハハハハハハ!ハァハハハハハ!…ハッ!?」

 

「ふぅん。埃を巻き上げただけですか。いい加減飽きてきましたね。そろそろ終わらせるとしましょう」

 

人差し指を伸ばし、戦士長の額に軽くぶつけた。だが、それはフリザにとっての軽くであり、常人にとってそれは大砲の一撃と言われても可笑しくない程の威力がある。大きく後方に飛ばされ、壁にめり込んでしまった。

 

「さて、相手に戦う意思は残っていないと思いますが、まだ意識はあるようですね。どうしますか?金を払うことを約束して、この茶番を終わらせますか?それとも、国の大切な戦力である戦士長を失いますか?選ぶ権利は国王である貴方にありますよ?」

 

「金はお支払いする。だが少し待ってもらいたい。1週間いや5日で良い!それまでには必ず揃えてお渡しする。今日のところはそれで勘弁して貰えないか?」

 

「5日?長いですねぇ。4日間猶予を与えます。それまでに揃えなさい。でなければ国もろともあなた方を消します」

 

最後に脅しをかけ、直輝とスライムと一緒に自分達の町へと帰っていった。帰りは魔法で飛んでるため、馬車を使うよりは速いだろう。そして先程まで戦闘が行われていた部屋だが、見ていた人達は腰を抜かして座り込んでいたが、期限は4日間しかない。ケンジはすぐに立ち上がり、城の兵士をかき集めて請求額の収集に動いた。




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