「500年生きてるんだ。大味になるのも仕方ないだろ」
「残念な魔眼持ちだったけどな。しかも変態だし」
「まぁ、それは目を瞑ろう。じゃ、本編行くぞ~」
「で?この町には何しに来たんですか?まさかホームシックとは言いませんよね?」
「フハハハハハ!!そんなわけ無いだろ。私の家は今や世界中にあるんだ!嫁も数えて1000人は超えた!そしてその全てを愛している!ホームシックになる訳は無いのだ!嫁探しをしている道中に妙な噂を聞いてな。一応ギルドの受付である貴様に伝えておこうと思って帰ってきたのだ」
「成る程。話を聞きましょう。が、その前に私のラガー代を払ってもらいます」
いつの間にか取っていたディックの財布を漁り、中からラガーの代金分をキッチリと抜き取った。後は必要なくなったので返した。
「で噂って何ですか?」
「勇者が討伐したとされる魔王に関するものだ。どうやら、最近になって判明したのだが、勇者は魔王を討伐していなかったそうだ」
「チッ。あのポンコツ共が。魔王に情でも湧いたのか?」
魔王が実際は討伐されていなかったと言う話も中々に衝撃的だが、伝説の勇者一行をポンコツ呼ばわりするフリザも衝撃である。
「まぁ討伐してないと言っても、しっかりと封印はしていたようだ。封印された場所も既に分かっている。が、最近そこにちょっかいを出すバカが現れたらしくてな。万が一封印が解けた時は、誰かが再び勇者にならなくてはならない。この噂を伝えるついでに、貴様に勇者の心当たりが無いか聞いてみようと思ってな」
「いきなりそんなこと言われても……」
「異世界からの住民はどうだ?最近は多くこちらに流れてきているそうではないか?」
「残念ながら、2人程知っていますがどちらも勇者ではありません」
「そこの男はどうなんだ?見たところ異世界の様だが?」
「その目で見たらどうですか?」
フリザに言われ顔に着けているドミノマスクをずらして直輝をジロジロと舐め回すように見る。
「なッ!?こ、これは……!」
「ん?どうしました?」
「SでもMでも無いだと!?何故だ!人間は必ずSかMに別けられる筈なのに何故だ!まさか!コイツはNだと言うのか!?どちらにも属さない完全なるNだと言うのか!?」
※N=ノーマル
「ねぇ、コイツの魔眼潰して良い?なんかイラッとくるんだけど」
「貴重な魔眼なので潰すのは止めてください。ただ、なに見てんだ変態野郎」
「ヘブッ!」
フリザがディックの背後に回り込み、強烈な拳骨を脳天に落とした。見事に入ったのか、床を突き破り首から下が完全に地面に埋もれてしまった。相当な威力だったことを物語っている。
「魔王復活の可能性があって、万が一の場合の備えが欲しいときにこの男は……。殺せなくても殺すまで痛め付けますよ?」
「フハハハハハ!私を精神的に痛め付けようと言うのだな?だが無駄だ!私は如何なるプレイも物怖じせずに行うことができる!どんな羞恥プレイでも受けて見せよう!フハハハハハ!!」
「では、彼と採掘に行ってください。どんなプレイにも耐えるんですよね?彼との採掘に耐えたら、先のふざけた行為全てを水に流しましょう」
「なんだそんなことか。別に構わぬぞ。採掘なら私も何度か経験があるからな」
土から抜け出してふたつ返事で了承した。だが、それがこの男を苦しめることになるとは思いもよらなかった。採掘の最中、ディックは今までにない恐怖を身をもって体験することになるのだ。
「じゃあツルハシ無くなるまで掘るぞ」
「いつも通りな。はいはい」
「なんだ?お前たちはこうやって生計を立てているのか?随分と面倒な方法を取っているな~」
「いいから早く手を動かせ。その眼があればレア素材くらい簡単に見つかるだろ」
「フハハハハハ!当然だ!この魔眼に不可能はない!ん!早速見つけたぞ~。では私はここで素材を採掘しやる!貴様も良い素材が掘れるといいな~!ハハハハハ!!」
余裕な態度を取っているディックを無視して、少し離れた位置でツルハシを振っている。かなりの回数採掘をしてきたお陰か、動きに無駄がなく最短の時間で素材を大量に回収していく。
「お?出たなレア素材!さぁ!この私に発掘されるがよグワァァ!?」
「火薬石堀り当てたみたいだな」
「しかも衝撃で爆発するタイプのな」
火薬石。火薬と同じ効果を持つ石。9割以上は熱を加えることで爆発する為、粉末にして通常の火薬と同様に扱われるが、極希に衝撃で爆発するタイプも存在する。見分ける方法は色しかない。
「何故だ!私の魔眼にはレア素材として映っていると言うのに何故なんだ!?」
「火薬石の衝撃で爆発するタイプはランクBの素材。レア素材であることに間違いは無いからな」
「スライムごときに教えられるとは……!ならこっちのアイテムはどうだ!?」
と、新しい素材を見付け掘りに進む。だが、
「キャァァァ!!熱い熱い熱い!!!」
「今度はマグマ石だな」
マグマ石。外側は堅い岩で覆われているが、中にはマグマが結晶化せずに残っている石。見た目の割りに大量にマグマが入っている為、穴を開けると後が大変。加工屋では重宝される素材である。
「アイツ運悪いな」
その後もディックはガツガツ掘り進めるが、気持ち悪い虫の巣に穴を開けて襲われたり、モンスターが大量に現れて襲われたり、落とし穴のトラップが発動して落とされたり、落石にあったりと散々な目にあっていた。
「何故だ……?私の運はここまで悪くはなかった筈だ!なのに何故!」
急いで自分の冒険者カードを取り出し、裏面のステータス表を確認した。すると何故か運の項目が、元々あった200から0を通り越えてマイナスになっていた。
「はぁあ!?何で!?」
「さっきからなに騒いでるんだ?」
「さぁな」
「何故アイツらはトラップに引っ掛からないんだ!?」
魔眼で2人のステータスを確認した。すると直輝の運は元々あった680から900に、スライムの運が元々あった200から350に上がっていた。
「何で貴様らは運が上がってるんだ!?」
実はこれ、直輝のスキルである。最近発見した物だが、直輝が仲間ではないと判断している存在からは運のステータス値を吸収してしまうのだ。そして仲間とみなしている存在には運を分け与える事もできる。洞窟で採掘するとやたらにレア素材が出てくるのは、周りにいるモンスターから運を吸いとってるからだ。
「フリザめ……!この男の事を詳しく言わなかったのはこの為か……!!」
「さてと、終わったし帰るか」
「だな。アンタ早く行くぞ~」
「この恨み……いつか必ず返す……!!」
恨めしそうな声を上げるディックだが、恐らくその声は直輝の耳に入ってはいない。
本当に運だけはぶっ壊れてますね笑
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