人間やろうと思えばどんな環境でも生きていける   作:憲彦

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「不運にも事故で死んでしまった俺は、いつの間にか異世界へと飛ばされていた。そこで出会ったスライムと共に生活し、前回は初の冒険で大金を手にいれた!」

「まさかあんな所に魔法の力が込められた剣があるとは……お前これから冒険者として有名になれるぞ!」

「あ、今まで通りクエストも冒険も最小限だからな。普通の冒険RPG物語なんて始まらないからな」

「なんでだよ!そこはガンガン稼ぎに行くところだろ!!」

「俺はのんびりまったり暮らせればそれで良いんだよ。激しい冒険者ライフなんかお望みじゃねーんだよ。それはじゃあ第5話行ってみよう!」


第5話

「よし!始めるか!」

 

「なにをだ?こんな朝早くから」

 

現在午前6時。店や仕事のある人は兎も角、普通ならまだ寝てても問題のない時間だが、直輝とスライムは既に起きており、何かの準備をしていた。

 

「畑を作るんだよ。俺が元居た世界からこっちに来たとき、荷物もいくつかこっちに来てただろ?その中に死ぬ直前に買った野菜の種とか入ってたんだよ。植えないのは勿体ないだろ」

 

「あぁ~。そう言えばあったな。高かったのが無くなったって嘆いてたけど」

 

「当たり前だ!除草剤とか肥料とか土とか種イモって結構高いんだぞ!しかもキロで買ってたんだからな!そりゃ嘆くだろ!しかも残念なことに種イモはバッグの中に転がってた10個だけ……」

 

そして、鍬に関してはミノタウロスに追いかけ回された時に投げ捨てている。結果から言えば、高い金払って買ったものは全て無くなった。現在手元にある野菜の種はニンジン、トマト、きゅうり、オクラ、トウモロコシ、枝豆、ジャガイモ、かぼちゃ、キャベツの9種類。十分といえば十分だし、実った野菜から種を集めればまた作ることができる。いくつか失ったとは言え元は取れるだろう。

 

「畑つくったら海にでも行くか。食材調達に」

 

「まぁ食いもんが増えるのはありがたいな。早く作ろうぜ」

 

「はいはい。ほれ、お前の鍬。昨日買ってきた」

 

「準備が良いな」

 

「まぁな。さぁ、最初は土を軟らかくするぞ。その後に植える場所を割り振る」

 

プランは決まった。最初は2人で手分けして畑にする範囲の土を耕していく。肥料を失ったため、そこら辺に転がっている落ち葉や牛農家から貰ってきた牛糞を土に混ぜながら耕す。

 

「意外と土が固いな」

 

「当たり前だ。ここは元々畑を想定してないからな。人が住んでても1回も耕されたことが無いなら固くて当然だろ」

 

「……それよりもお前、便利な体の構造してるな」

 

直輝の吐いた愚痴にスライムがツッコミを入れるが、そんなスライムを見て新しい疑問が生まれた。今スライムも鍬を持って耕しているのだが、体の頭頂部にあたる所を伸ばして鍬の取っ手に絡み付き、ムチの様にしならせて勢いよく降り下ろしている。何故こうなるのか、非常に興味が出てくる。

 

「しかし……肥料の代わりがこれで良いのか?」

 

「俺の居た場所じゃよく使ってるぞ。取り敢えず肥料になりそうなものは全部使って野菜を育ててるからな」

 

「成る程。ここらじゃ肥料とか言うのは殆んど使わないし無くても育つからな~。その辺は遅れてるのかもしれない」

 

こっちの世界では余り落ち葉や動物の糞を肥料として利用はしないようだ。スライムの口振りから察するに、直輝の元居た世界で肥料と認識されている物はこの世界では使われずに野菜を育てているのだと思われる。それほどまでに植物が育ちやすい土壌なのかもしれない。

 

「なら入れなくても良かったかもな」

 

「まぁ育たねぇ事はねーだろ」

 

「どうかね~。栄養与えすぎると逆に悪くなるって言うし……つーか俺農業の知識ねーし」

 

「お前の持ってきた道具で調べられないのかよ」

 

「この世界に電波が通じてる訳ないだろ。どうやって調べ物をするんだよ。あれはもはや中に入ってる映像や音楽を聴く以外に価値のないただの板に変わってしまったよ」

 

「どっかの国じゃあ、お前の持ってきたそれと同じものを使ってウェイウェイ言わせてるのがいるけどな」

 

「知ったこっちゃねーよ。どうせ神様にどうかして貰ったんだろ。俺には関係ねーよ。つーか神になんて会ってねーからな」

 

「つくづく運がないヤツだな」

 

作業の合間にある何気ない会話だが、何故か最後の方ではスライムに運の無さを笑われてしまった。スライムの言っている道具とは、直輝の世界ではすっかり世界中に馴染んでいる便利アイテム、スマホとタブレットだ。通信環境さえあれば、どこでも調べたい物を調べられ、見たいものを見ることができる。更に買い物や離れた場所との会話も可能。しかし通信環境の「つ」の字すらないこの世界。調べたり会話をするのは不可能。既に中にダウンロードして回線のない場所で見聞きできる動画や音楽、オフラインのゲームを楽しむ以外なにもできない。早い話、娯楽以外は役に立たない板になってしまったのだ。

 

「海から帰ったら中に入ってる映画見よ。アニメや特撮のだけど……はぁ、こうなるんなら、アニメをいくつか1話から最終話まで落としとくんだったな~。SDカードにさえ移してれば、デバイスは重くならずに持ち運び楽なのに」

 

因みに言っておくと、既に映画やドラマ、ドラマCDにアニメ、音楽をそこそこダウンロードしている。徹夜して見ようと思わなければしばらくは楽しんでられる量はあるのだ。

 

「おい。いつまで固まってる。こっちは終わったぞ」

 

「え?あぁ。こっちも終わったよ。次は柵を建てるぞ。きゅうりやトマトは蔓を伸ばすからな。それを絡める為に必要な物だ。等間隔に土に突き刺してくれ。あ、畝を作ってからな」

 

等間隔に土を盛り上げて畝を作り、その一部に蔦を絡める用の柵を打ち付けていく。ここまで来たら後は簡単だ。種を蒔いて水を適量かけるだけ。そこからは適度に雑草を抜いたりして待つだけだ。

 

「なぁ、種の野菜はともかく、芋はどうやって植えるんだ?」

 

「あぁ、半分に切って芽のある部分を上にして埋めるんだよ。多分」

 

最後の一言が無ければ良かったが、自信が無いのでは仕方ない。取り敢えずうろ覚えの知識に頼るしかない。埋め終わると最後に水をまく。だがジョーロがない。バケツでやれば加減を間違えた時苦労が水の泡。なので部屋を掃除したときと同様、スライムに水を含ませてそれを空中に向かって吐き出させていた。

 

「いや~。本当に便利な構造だ。絞る力1つで水滴の大きさを変えられるんだからな」

 

「おぇぇぇぇぇ!!テメ……次やったら窒息させるぞ!」

 

「なら俺はお前を料理するぞ。涼しげな麺料理にでも転生させてやろうか?」

 

お互いにブラックジョークを交わしながら畑作業は開始から4時間程で終わった。元々広範囲を畑にする訳ではなく、庭の1角20畳ほどの広さなため時間もかからなかったのだろう。植えた量も多いと言う訳ではない。スライムとの2人暮しにはちょうど良い量だ。

 

「海行くぞ~。岩場になんか転がってね~かな?」

 

「流石に無いだろ。潜れば話は別だろうが」

 

「潜る……成る程。よし潜るか。ゴーグルはあるし」

 

「一応ナイフも持っていけ。1回死んだのにここでも死ぬのは嫌だろ」

 

元の世界での嫌な思い出が甦ってくる。確かにここでも死ぬのは嫌だ。しかも潜ってる途中に死ぬと言うことは確実に窒息死。呼吸ができずに悶え苦しんだ上での死。苦しき事この上無しだ。

 

「じゃ、俺は魚釣ってくるから。お前は溺れないように気を付けろよ~」

 

再度溺れないように釘をさし、スライムは釣りスポットへ移動。直輝もスライムに言われた通りにモンスターから素材を剥ぎ取る為に使うナイフを持っていく。

 

「魚はスライムが捕るとして……俺は貝が取れれば良いな。ナイフしかないし」

 

そうナイフしかない。武器は一切持っていない。一応持ってはいるが、ギルドに預金として預けているし、最初に貰った武器は使わないために売り払った。

 

「さてと、潜りますか」

 

海岸に来るとゴーグルを着けて海に潜った。潮は穏やかで流れは全然早くない。釣り以外の漁はしたことの無い直輝だが、これなら簡単に獲物が取れそうだ。早速貝を見付けていくつか拾っている。

 

「プハッ!…簡単にとれるな。数もたくさんいるし、これならしばらくは食い繋げられるぞ」

 

とった貝をアミに入れて再び潜る。それを20分ほど繰り返すと、かなりの量を収穫できた。だがほとんど見たことの無い種類のため、食えるかは分からない。

 

「そろそろ見たことあるヤツ欲しいな……」

 

そう意気込んでもう一度潜る。見慣れたものを取るために必死に岩の裏を探したりする。そしてようやく見付けた。見慣れた食材を。しかし

 

「ブボラァァァァ!!!ゲハッ!?はぁはぁはぁ……見間違いか?俺の顔よりでかかったぞ……あのウニ」

 

大きさが見慣れてなかった。異常なまでに巨大化していたのだ。恐らく見た目的に食べれないと判断され、そのまま成長してしまったのだろう。

 

「持ち上がるか……?」

 

正直余り触りたいとは思わないが、ようやく見付けた見慣れた食材。取るしかない。

 

「ングッ!!」

 

かなりの大きさがあるため、岩と岩の間にみっちり挟まっている。しかし手を付けたからには意地でも取る。手袋のお陰でトゲは刺さらないが、覆われていない部分が少し痛む。トゲが簡単に折れないのが救いだ。

 

「グググググッ!!!オワッ!?」

 

そろそら酸素が続かなくなったとき、綺麗にスッポリと隙間から抜けてくれた。巨大過ぎるウニを抱えたまま、酸素を求めて海面へと上がっていく。

 

「ダアッ!?あぁ!抜けた!重て!はぁ、もう今日は良いや。沢山取れたし」

 

もう十分と思いとった分をもって家へと帰ろうとしたのだが、アミを置いていた岩場の岩、一部分が妙な膨らみかたをしていた。なんか取れそうな感じもするので、隙間にナイフを突き刺し柄の部分を岩で叩く。

 

「お、取れた。……岩牡蠣?うっわその辺にゴロゴロいるわ。潜らなくて良かったわ……」

 

帰り際に岩牡蠣の大群に遭遇。そのままいくつか捕獲して帰っていった。




うp主明日から母親の里帰りに付き合って日本から10日程離れます。その間一切の感想の返信ができないので、その辺お願いします。

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この小説に懲りず、次回以降も別の小説もよろしくお願いします!
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