「レベルがせっかく上がったのに全部ポイントを運に振りやがって……少し考えろよ」
「うるさいぞスライム。これで良いんだよ。こっちの生活を考えた上での振り分けだからな」
「その振り分けが吉と出るのか凶と出るのか、第7話行くぞ!」
「あ~……暇だ」
「掃除よし。食料よし。ギルドへの入金よし。所持金よし。やること無いな……」
7月の中旬。この世界に来てから既に3ヶ月経ったが、最近は暇な日々が続いている。資源豊富なこの町のお陰で釣りに行けば必ず必要な量を採ることが出来る。ギルドへの納入金は初めて冒険に言ったときに稼いだ金で暫くは問題ない。やること無さすぎて家の掃除をやったが、今では埃1つ無い程にピカピカ。植えた野菜も順調に成長している。
「クエストでも受けるか?」
「ふざけんな。やるわけねーだろ……なぁ、この世界の夏って、暑いのか?」
「ん?なんだよ急に。まぁ、暑いって言ったら暑いな」
「どのくらいだ?」
「は?」
「正確な温度を教えろ。何度以上になるんだ?」
「あぁ~……風呂の湯と同じくらいだな」
「ハッ!?」
直輝がこの家で過ごし初始めてからの風呂の温度は、43度程にしている。これは温度計を使って計った為、正確な数字である。
「マジかよ……今の内に対策しとかないと!」
「俺も溶けないように気を付けないとな~。毎年夏は仲間のスライムが気温で殺られてたから」
それは確実に43度よりも高いことになる。早めにどうにかしなくては熱中症で倒れる。もしくは死んでしまう。この世界には当然電気が存在しない。つまりクーラーがない。乗り切れるかが心配な暑さである。
「まぁ頑張れば乗り越えられない事は……居ないし。どこ行った?」
スライムが振り替えると、既に直輝がいなくなっていた。直前まで話をしていたのにだ。当の直輝はと言うと財布の中に入っている金を全部持って店を走り回っていた。
「ルーカスいるか?!」
「ど、どうした?そんなに急いで?取り敢えず水でも飲め」
「助かる……」
出された水を一気に飲み干して、ここに来た用件を話した。目的は冷蔵庫に使われている万年氷の購入。しかも大量にだ。
「…………何に使うんだ?」
「俺は暑いのが嫌だ。だから」
「だから?」
「だから!涼しい地下室を作るんだよ!!」
「はぁ!?地下室?!お前作れるのか?」
「どうにかする!兎に角暑いのは嫌だ!」
「そんな理由で作るか普通?!」
「作って見せるわ!あとセメントとレンガもくれ。金はこれくらいあれば足りるだろ」
「多すぎだ!どんだけ仕入れさせるつもりだ?!」
「兎に角大量に!」
怒鳴るように注文して次に木工ギルドへ。そこでは大量に木材を購入。吸湿性の高い板を何十枚も買い取った。あと皮を剥いだ4メートル程の丸太。いきなり金を大量に出された木工ギルドも道具屋のルーカスと同様の顔をしていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…………」
「で?そんな大がかりな買い物して、財布の中は大丈夫なのか?」
「見事に空……また稼ぎに行かないとダメだ」
財布を逆さまにして振るが、出てくるものは何もない。強いて言えば埃くらいだ。今月の生活費は完全に0となってしまった。
「じゃあまた鉱石取りに行くか?」
「あぁ。ツルハシは大量に買い込んでる。非常食もあるから2日くらい洞窟に籠るか」
「またか……と言うか今回は2日で良いのか?初めての頃は3日で、その後が5日、そして前回が1週間。お陰で随分稼げたが、今日で全部パァ。なのに2日で大丈夫か?」
「問題ない。今回は少し深い場所に行くからな」
「モンスターが出てくるぞ。本当に大丈夫なのか?」
「あぁ。1つ良い手を思い付いたからな」
「ここだ」
「確か、ここから先に行くとモンスターに遭遇するんだっけ?」
「そうだ。しかもそこそこ強い」
目印として、そこには赤いラインが引かれている。町のギルドが迷い込んだ人のために付けたのだろう。そこに木工ギルドから貰ってきた粉状の木屑をラインの上に大量に置く。
「しっかしよくここまで集められたな。金も無いのに」
「物を作ると必ず出るからな。要らないから全部持っていってくれだと」
置かれた量は直輝の身長の半分程の高さ、約90㎝程の山が6つ出来上がった。そのまま入り口まで山を作っていき、等々洞窟の外にまで繋がった。
「ほい。風系の魔法で木屑を舞い上がらせてくれ」
「ん?」
まだ疑問が残っているが、言われた通り洞窟内の木屑を舞い上がらせる。範囲が広いため少し時間がかかったが、3分程で作業が完了した。
「舞い上がったぞ。で次は?」
「離れてろ」
スライムを適当な岩影に隠して、火の付けた松明を洞窟の中に全力で投げ付ける。すると
ズドーン!!
洞窟の中が爆発した。所謂粉塵爆発だ。ある程度塵が舞っている場所に火を放り込めば簡単に起きる爆発。マンガ等では建物の屋根すら吹き飛ぶ程の強さだが、粉塵爆発は密閉された空間でこそ真価を発揮する。爆発音等の反響で威力が倍増するからだ。
「嘘だろ……」
「さぁ~てと。これで安心して採掘が出来る」
「たまにお前の神経を疑うよ」
モンスター出現ラインまで行って採掘を開始しようとしたのだが、既に爆発で鉱石が大量に転がっている。その為採掘と言うよりは殆ど拾っている状態だ。
「吹っ飛ばしたから価値の高い鉱石がゴロゴロ転がってるな。こりゃあ2日も籠る必要は無さそうだぞ」
「じゃあ1番価値の高い鉱石を採ったら帰るか」
「だな」
そう言って2人は奥へ進んでいき、爆発の痕跡の終わりに到着した。どうやら爆発は1番奥まで来ていた様で、そこから先は進めないようになっている。モンスターもチラホラ見えるが、爆死しているか爆発の影響で目を回しているのが殆ど。起きて襲い掛かってくるようなモンスターは1匹も残っていなかった。
「モンスター全然襲ってこないな~」
「爆発で真空になったしいきなり明るくなったからな。ここで過ごしてる連中からしたら、パニックになって当たり前だろ」
「なるほど。お、面白い形のルビー発見。って、何でこんなところからルビー出てくんだよ」
「いい加減慣れろ。お前の世界とは勝手が違うんだからよ。ここで取れるのは確かに不自然だが……お前のふざけた運ってことにしとけば良いだろ」
直輝が掘り出したのは深い赤色をした小さい宝石。しかもルビーと来た。これはかなりの価値を持っている。売れば取り敢えず使った分の半分は取り戻せるだろう。
「また出た。しかもデケーな」
「もう何が出ても俺はツッコまんぞ」
その後も採掘を続けたが、吹っ飛ばしたお陰かすぐに袋の空きが埋まってしまい切り上げる事にした。
「今回は武器出なかったな~」
「普通出ねーよ。出る方がおかしいわ」
武器が出てくるのは非常に希な様で、派手に爆破した今回の採掘では出てこなかった。その代わり希少価値の高い鉱石を大量に採取できた為、損と言う訳ではないだろう。
作業が終わると町に戻った。昼に出たが早めに終わった為まだ明るいと思っていたが、もう夜になっていた。洞窟での作業で時間感覚が狂ったのか、はたまたこの世界の時間の流れが速いのかは分からないが、今日売ることは出来ないようだ。1日置いて次の日朝一でルーカスの店に売りに行く事にした。
「で?今回は何を採ってきたんだ?」
「大体はこの前と同じだ。鉄鉱石や金鉱石、水晶にダイア。後ルビーが取れた」
「ルビー?この辺で出たっけ?」
「出たぞ。デカいのと小さいのが。形は妙だがな」
袋からルビーらしきものを取り出しルーカスに渡す。直輝の言うように確かに妙な形をしている。まるでドラゴンが丸まっている様な形だ。
「ん~……ん?!」
「どうした?」
「これルビーじゃなくて龍血結晶だろ!?SSSクラスの素材だぞ!」
「マジで!?」
龍血結晶。素材ランクは最高級のSSSクラス。強い力を持ったドラゴンの死体から、体に残った力が血液と共に流れ出し結晶化した物。武器や防具に使えば強力な力を与える上に、ドラゴンに対する絶対耐性を付けることが出来る。因みに、レベルで言うなら60以上のドラゴンで無い限り作り出されることはない上に、例え60以上のレベルがあったとしても作られると言う保証はない。
「小さい方でも国を運営するには十分な金になる。希少価値が高すぎて様々な国や冒険者が欲しがるからな。どうする?売るか?」
「買い取れるのか?」
「デカい方は無理だが、小さい方なら買える。昔馴染みの冒険者から手に入ったら譲ってくれって言われてたからな。金は用意してるらしい。デカい方は剣と同様にギルドにでも預けとくんだな」
商談は今回も両者満足と言う形で終わらせることが出来た。そして店で買い取り不可能な龍血結晶は剣と同様にギルドに預けておくことにした。
「龍血結晶ですか。このサイズは珍しいですね」
「やっぱ珍しいのか?」
「はい。このサイズは私は見たことありませんね」
「600年以上生きてる人間が見たこと無いって……」
この様に、フリザも珍しがっていた。膨大な魔力の影響でかなりの時間を生きてきた彼女が見たこと無いと言うことは、相当レアなケースなのだろう。
「どこで見付けたんですか?」
「鉱石採掘の洞窟の1番奥で」
「あぁ。あそこですか。と言うことはあのドラゴンかな?」
「何だ?その懐かしむ様な目は?と言うかあのドラゴンってなに?!」
ここまで言っているが、スライムはもう察している。巨大な龍血結晶が誕生した理由を。そしてその原因は恐らく目の前にいるこの世界最強の存在。殆ど確定している様な物である。
「あのドラゴンはレベル460程でしたので、これくらいの大きさの結晶を作れても不思議ではありませんね」
「なに恐ろしい事サラっと言ってんの!?もうレベルのインフレとかそんなレベルじゃねーんだけど!魔王とかもう子供レベルじゃねーかよ!なに460って!魔王が1番力あった時でもレベル84だぞ!なんでそんなアホみたいに強いドラゴンいるのに世界滅んでねーんだよ!魔王なんか一捻りだろうが!」
「フリザさんいるからじゃねーの?」
「そうだった!目の前にすぐ解決する化け物がいたよ!世界の不思議その物がいたよ!」
結構長いスライムのツッコミ。そしてツッコミに疑問を乗せてぶつけるが、直輝の冷静な言葉で全てが何故か納得できてしまった。
「言われる程でもありませんよ。そのドラゴンと喧嘩した当時は、まだレベル8000程度でしたから」
「頭おかしいんじゃねーの!?それでも十分あり得ないわ!レベル530000もおかしいけど8000あり得ねーわ!!どうなってんだお前の体は!」
「おかしいと言われても。私の師匠でも……いや、あの人レベル40も無かったな……じゃあ剣術の師匠の王国戦士長……あの人もレベル60くらいか……なら体術を教えてくれた格闘家は……ダメだレベル52だ。あれ?身の回りに100越えてる人がいない?」
「普通いねーよ!なんちゅう恐ろしい事言ってんだ!」
レベル40や60も相当な化け物であることを忘れてはならない。この世界では普通かも知れないが、まともに考えてそれでも十分な強さだ。ただフリザが規格外過ぎるだけの事。それだけはお忘れなき様お願いします。
これ10話超えたら、なろうにも載せようと思います。友人に面白いのがあると言われてアカウント作ったんですけど、結局使わずに放置してたので週1で1話ずつ載せていこうかと思います。
使わなかったら勿体ないですからね笑