人間やろうと思えばどんな環境でも生きていける   作:憲彦

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「事故で死んでRPGみたいな世界に行った俺は、そこで出会ったスライムとのんびりまったり異世界生活を送っていた」

「最近金を使いすぎて財布が1回空になったけどな」

「その後しっかり取り戻しただろ?さ、今回から地下室作り始めるぞ」

「なんか嫌な予感がするが、取り敢えず進むぞ第8話!」


第8話

「ここから……こんなもんかな?いやもう少し広く取るか。うん。これくらいだな」

 

「今からここを掘るのかと思うと少し気が重くなるな。今日1日で終わるか?」

 

洞窟から取ってきた物を売った次の日、直輝は家の横のスペースに印を付けながら掘る範囲を決めていた。広さで言えば縦と横で10メートルの正方形。やり方としては、気の済むまで土を掘り返して、万年氷とセメントを混ぜたコンクリートを塗り、そこに木材で部屋を作ると言うやり方だ。潰れないかと言う心配が出てくるが、恐らくそんな心配を越える勢いで暑いのが嫌いなのだろう。

 

「別に1日で終わらせる必要はないだろ。取り敢えず暑くなるまでに終わらせれば良い。と言うわけで、今日は助っ人を呼んできた」

 

「助っ人?誰」

 

「私です」

 

「あ~……こりゃ1日で終わるな」

 

「スライム、残念ながら1日では終わらない。何故なら材料が揃ってないからだ」

 

直輝が助っ人に呼んでいたのは恐らくこの世界最強の存在である冒険者ギルド受付嬢フリザ。この助っ人を見て1日で終わることを確信したスライムだが、残念な事にここにあるのは木材だけで、肝心の万年氷やセメントはまだ届いていない。

 

「届いてないって……今日は到着日だぞ?何か問題でもあったのか?」

 

「航路になってる東の海の沖合いに、巨大な海龍が出たって言ってたな。多分それで遅れてんだろ」

 

「なら最初にそっち始末しますか」

 

「「え?」」

 

親指と人さし指で輪を作り、東の海を覗いてみる。そのまま少しの間、その方向を凝視していた。

 

「なにやってんだ?あれ」

 

「指で作った輪に魔力の膜を張って遠くを見通す魔法だよ。ただ、持ってる魔力量で見える範囲が変わってくるから好んで使う人間はいない。大体は水晶玉を補助に使って見てる」

 

「あ、いた。まだ出港して100キロも進んでませんね。海龍は……進行方向の40キロ先にいますね」

 

「因みに、あれくらいの距離を見る為の魔力はどれくらいなんだ?」

 

「お前の持ってる魔力の9000億倍くらい」

 

直輝の魔力量は最近漸く100になった。これは魔法を使うことのない人間からしたら普通の量だ。しかしフリザは魔法を主体に使う。魔力量が多いのは当然のことだが、流石にその量は異常。しかしそれを飛び越えてある意味感動してしまう。

 

「まず海龍沈めておきますね」

 

「え?静める?」

 

「いや鎮めるじゃねーか?」

 

「いえ。沈めます」

 

慈悲は無いようだ。使っていない片手で指を鳴らすと、その方向から妙な轟音が聞こえてきた。まるで落雷の様な音だ。

 

「今、雷でも落ちたか?」

 

「落ちたな。ここまで音が聞こえるレベルの音となると、船は無事なのだろうか……」

 

「積み荷が落ちてないことを祈るか」

 

「あぁ。それは大丈夫ですよ?あと5秒ほどでここに到着するので」

 

何の事だと思っているが、その言葉通り5秒後に街の港に船が現れた。この光景に直輝とスライムと船に乗っていた人達は言葉を失っていたが、街の住民たちは「またか」と言う感じになっている。

 

「うわぁ~……」

 

「もうヤダこの女……」

 

チートと言う言葉がこの人には似合う。と言うか正にチートその物だ。

 

「じゃ、作業始めますか。深さはどれくらいに?」

 

「そうだな~。5メートルくらいかな」

 

「分かりました。ゼログラ」

 

「無重力?」

 

呪文だろうか。それを唱えると指定した範囲の土が綺麗に持ち上がった。硬く巨大な岩も含めて持ち上げられている。

 

「取り敢えずこの辺に置いておきますね」

 

そのまま邪魔に成らない場所に土砂を置き、今度は逆に超重力をかけて地盤を崩れないように固める。

 

「これで大丈夫ですけど、一応基礎も入れておきますね」

 

そのまま太い角材が17本飛び、各々固定されるべき場所に入っていく。

 

「後はコンクリート入れるだけですね。私細かい作業はできませんので、その辺はお願いします」

 

この直後、ルーカスが直輝の注文した物を持ってきてくれた。万年氷の巨大な塊2つ、大量のセメント、そして注文した覚えのない妙な小石。

 

「んお?なんだ。もうここまで進んだのか」

 

「殆どのフリザさんのお陰だよ」

 

「成る程。ほい。注文されてた物と、コイツは余った仕入れ値で買った太陽石の欠片だ」

 

太陽石。太陽と同じく自らが光を発する石。本来はSクラスの素材だが、欠片はダンジョンのその辺に転がって照らしているため、Cランク素材として扱われる。この世界では建物の照明として使われることが一般的。

 

「地下室の照明にでも使ってくれ。明るすぎるからフィルター機能の付いてるケースもあるぞ」

 

因みに、持ってきたのはラージのピンポン球サイズの物だが、直輝達が作った空間ならこれ1つで明るく照らすことができる。

 

「このケースで明かりを調節できるのか?」

 

「そうだ。4段階で切り替えられる。完全に蓋を閉めれば明かりは溢れないし、この石は周りの光を吸収して光から、蓋を閉めたら自分の光を吸収して半永久的に光続けるぞ」

 

「便利な石だな~」

 

と言うか、便利に作られた世界である。ありがたく太陽石の欠片を貰うと、ちょうどフリザが万年氷を砕いてセメントに混ぜてくれた物が完成したので水を入れてコンクリートに。適当な量を取ってから穴に入ると、壁や床となる部分にそれを塗っていく。

 

「成る程。こうやって涼しい部屋を作るのか。コイツは良いアイディアだな」

 

「俺も聞いたときは驚いたよ。と言うかフリザ、ギルドの仕事は良いのか?」

 

「たいして冒険者が来るって訳じゃないですからね。王国からのクエストの仕訳が主な仕事ですので基本は暇です。街に常駐してる冒険者は直輝さんだけですし」

 

「…………何に釣られた?」

 

「夏場、涼しい環境を使わせてやると言われて」

 

「成る程」

 

「あ、俺にも使わせてくれ。手伝うからよ」

 

やっぱり夏は暑いのだろう。ルーカスも手伝いと引き換えに使わせてもらうことにした。その後はフリザを除く3人でコンクリートを塗っていき、いつの間にか終わっていた。

 

「終わったな。後はどうやって乾かすか……」

 

「急激にやったら割れるし」

 

「時間かけたら次の作業が遅れるし」

 

「固まりましたよ」

 

「「「え?」」」

 

どうやって固めるかで悩んでいたが、既にフリザが固めてくれていた。穴を覗くと、なんか太陽の様な物が中に入っており、程よい熱を放出している。

 

「何だ?これ」

 

「サンシャイン。私の得意な魔法です」

 

「スライム」

 

「…………魔王の城にあった古い魔導書に書かれてた最強の魔法だ。魔王も勇者も習得できなかった伝説の魔法と言う扱いになっている。しかしもっと大きいものかと思ってたんだが」

 

「あ、サイズの調整は可能です。これも魔力量によって変わるようなので、最初はよく山とか湖を消し飛ばしてました」

 

もう訳が分からない。目の前にいる宇宙の帝王と言っても間違いない様な存在に、再び言葉を失ってしまった。ともあれ作業が再開可能になったため、板と釘、トンカチを持ってもう1度中に入っていった。

 

「普通に打ち付ければ良いのか?」

 

「あぁ。あ、でも釜戸や調理場も作るから、そのスペースは作っておいてくれ」

 

「なら、この辺に小さい倉庫とかも欲しいな」

 

「お風呂も付けたらどうですか?」

 

「どうやってスペース増やすんだよ……」

 

「じゃあその辺は私が作っておきますね。ここで良いかな?複製」

 

そのまま横に穴を2ヶ所作って、それも部屋に変えてしまう。ついでに複製の魔法を使って今作っている部屋と同じ素材で固めた。

 

「この辺には湿気を放出する穴が欲しいですね」

 

1人で一気に作業を進めている。それを男たちは地道に作業を進めながら見ていた。

 

「はえーな」

 

「俺はもう驚かねーぞ」

 

もう驚くことを諦めた。驚くと言う感情が勿体なくなってきたのだろう。そしていつの間にか部屋が2つ完成していた。何故か直輝が足を伸ばしても余裕がある浴槽までできてる。もうギルドの受付嬢なんて辞めて内装工場の職に就いた方が良いかもしれない。




次回もお楽しみに。感想とかもよろしくお願いします!

あ、IS×牙狼のクロスオーバー。書くのは未定だと言ったな。あれは嘘だ。もう2話投稿しています。よろしければどうぞ。
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