エレン・イェーガーと呼ばれる転生者は原作26巻までの知識を一字一句間違えることなく記憶している。
これが転生特典と呼ばれる物なのかは不明。
転生者でもなんでもない、特別なことが何もないただの学生で、無気力で世界は灰色に見えていたあの頃。
全てに興味がなく、きれいなものを、海を、山を。未知を知ってもソレは当然あるものと認識していたから、何も感動することがなかった。
俺の学生生活はただの灰色で、だからこそバラ色の人生とまでは言わないけど、何かを変えたいと思った。
キッカケはそんなもので、そんな少年は運命に流されるようにとある漫画に出合った。進撃の巨人と呼ばれたそれは心の色を、価値観を変えるには十分な作品で、だからこそ、世界は残酷でどうしようもないと改めて気づかされて。それでも何もしなくて。
そんな俺だったからこそ、死んで転生してエレン・イェーガーに為ったのだと思う。
偽りの主人公。偽りの世界。そんな、どうしようもない世界。世界は灰色でしかなく、全てが虚構に見えた。
それでも、そんな世界に生まれても一度死んだからには生きたいと思った。
だから、親父を事故に見せかけて殺した。巨人になりたくなかったから。たった13年の人生なんて嫌だったから。なんとかなると、ボンヤリとした考えで父親を殺した。
それが間違いだと、今では思う。かつての前世の記憶は13年でほとんど擦り切れた。何故か進撃原作の知識は一字一句覚えているが。とはいえ、かつての思いはもうない。あの頃のガキだった俺の選択は間違いだと、年がたってから気づいた。いつもいつも間違いしか選択できていない。
今世の母親が目の前で巨人に殺されて、ようやく世界に色が…赤色が世界全てを満たした。
…白状すると、父親をぶっ殺したときは何も感じなかったんだ。俺が何かを感じたのは母親が目の前に食われたときだけ。
そうして、後から全ての敵を皆殺しにしたいと思ったとき俺は…どうして進撃の巨人を継承しなかったのか、とどうしようもなく後悔した。無垢の巨人にはなれる。それ用の薬を一つだけ父は持っていたから奪いとった。だがソレでは意味がない。
原作の設定通りならば進撃の巨人と始祖の巨人はマーレ側に移ったはずだ。継承者が死ぬと、ユミルの民と呼ばれる人種の赤ん坊に巨人能力は継承されるから。だから、時間の問題だ。もしその赤ん坊が自我を持ち自覚したら俺たちは終わる。それを理解している。それを理解しているのに、俺は俺が可愛いから父を殺した。無鉄砲でどうしようもない行動だ。
…仕方が、ないだろ。
俺は一度死んだんだ。あの暗闇の地獄に行きたくないと思ったガキの俺を責めることが…仕方がないじゃないか。
死にたくない。生きたい。そう思うことは人間の本能なのだから。だから殺すことに…。
…あれ。だったらなんだ?俺は本能の赴くままに父親を殺したのか?
クズじゃねえか。
どうしようもない。どうしようもないクズ野郎じゃねえか俺は。自分の本能のままに人を殺すなんて畜生にも劣る。
そもそも全てを知っていたはずなのに、未来の何もかもを知っていたのに、逃げだしたのだから。
こんな俺はハッピーエンドにたどり着くことなく、本来の物語の途中で死ぬのだろう。おそらく本来の主人公よりももっと早く。ジャンの死に急ぎ野郎という評価も正しい。食堂でのジャンの発言も正しい。
それでも、それでもだ。そんなクズであることを認めても、俺は認められない。本来よりも早く死ぬことになってでも、それでも家畜のようにビビって一生を過ごすなんて絶対に嫌だ。巨人を、マーレのゴミどもを全員皆殺しにしたい。
そうだ。それに…俺がクズだとして、始祖の巨人をマーレ側に渡した弊害で未来の人間を見殺しにするのだとしても。
それでもやっぱり俺よりもライナー。お前が一番悪い。お前が原因なんだから一番悪い。おめえがユミル辺りに食われてれば問題なかったんだ。てめえが一番悪い。
なんでてめぇはそうやって同期の奴らと笑いながら飯を食えてるんだ?ずっと、ずっと疑問だった。
すっげぇイライラしたよ。よくもまあ平然とした顔で皆と笑い合えるんだってな。何で大量殺人者の、クソ野郎が被害者と笑いあっているんだ?お前、本当厚顔無恥というか…信じられねえよ。
だから殺すよ。お前と、あの長鼻の気持ちの悪い女と腰ぎんちゃく野郎を。
できる限り苦しんで死ぬように、生きてきたことを後悔するように。お前らが苦しんで死ねるよう努力するよ。
第二話 超大型巨人
そこは、壁の上。意味があるかはわからない大砲の整備のために訓練兵である僕たちはここにいる。
サシャやコニー。トーマスと談笑しながら、整備を始めた。
勿論喋っているところを上官に見られないように。
…ただ僕たちと同じ斑なのに、一人黙々と作業に移るかつての友人がいるが。
一人、そう一人だ。誰とも喋っていない。彼はいつからか寡黙になった。
彼を見た。あ、笑った。ニヤリ、と。残虐性の塊のような笑みを浮かべるかつての友、エレン・イェーガー。
あの日みた笑みと同じ顔をした。
作業の手を休めることなく、壁の外を見ながらそんな顔をする彼はとても気持ち悪かった。
…僕にはわからなかった。いや、今もわからない。友の気持ちが。エレンの思いを。
昔は誰よりもエレンのことを理解しているつもりだった。多分だけどミカサよりも。
ミカサは…盲目だからね、少し。エレンのこととなると思考を停止させるんだ。それが悪いことかどうかといわれたら、まあ…悪くはないんだろうけど。
恐らく、恐らくだけどエレンは何も未来に対して希望を持っていなかった。あの日巨人が大勢来て僕らの故郷を蹂躙する日まで、エレンの目は曇ったままだった。
エレンはそういう奴だと思ってた。そうどこかでわかった気でいたんだ。
でも…違った。決定的に僕が君との明確な差を感じたのはあの日、君の母親が僕たちの目の前で死んだ日。確かに、確かにエレンは笑ったんだ。
実の母親が目の前で臓物を撒き散らして、血まみれで全てに後悔した顔で死んだ姿を見て、確かに笑った。
目の色が変わったんだ。
今では彼は復讐の鬼になっている。僕ですら引いてしまう、正直言うと友達をやめようかと思うくらい残虐な巨人の殺し方には距離をおきそうになった。
巨人は人に夢中なのだから、人を一人生贄にしてソイツに夢中の間にうなじを斬るだとか、落とし穴に人を落とせば、それに巨人は釣られて落とし穴に落ちるだとか、いくらなんでもない。人間性を捨てすぎだ。僕も考えたことはあるけど、実際それを発言したことはない。
まあ、ソレはわかるんだ。あんな悲惨な目にあったんだから。あの時の地獄を考えたらそんな思考になってもおかしくない。
でも、それで僕たちの絆が崩れることはなかった。だってソレは正当な復讐心だからね。
それは分かるさ。けど、なんでキミは…自分の母親が死ぬ姿を見て笑ったの?
確かにあの時、キミは笑った。母親が死んだことに対して笑ったんだ。心の底から相手が死んだことに対して嘲笑していた。
あの日、決定的に僕たちの仲に亀裂が走った
僕にはキミがわからなくなったんだ。
それでも、僕はキミと友達であると、信じたいんだけど…。
「アルミン!休憩にすんぞ!」
…おっと。休憩か。何かエレンと話せたらいいな。
近くでサシャが上官の肉を採ってきたとか、トーマスがウォールマリア奪還の前祝に食おうとか、そんな話をしている。俺はその話に加わっていない。…もう少しで戦いなのに、加われるわけがない。
あれから、5年たった。
ようやく、この日が来た。俺の後悔を、失敗を帳消しにできる計画を。
…やっぱり、原作知識というのは便利だな。もう少しでベルトルト…超大型巨人が来ると知っているから、不思議と心臓の音は響く…が、それだけだった。
今の気持ちは、この胸をズキズキと貫く感情はなんだろう。期待?悲しみ?この戦いが終わったら、俺は今の気持ちを理解できるのだろうか。
今、俺たちがいる場所は壁の上だ。だから町を一望できる。町には大勢の人たちが、笑いながらすごしている。
もう少しでこの場所は地獄になるのだろう。そのとき、俺はどんな気持ちになるのだろうか。
俺はいったい、何を思うのだろうか。こんな感傷も、消えていく記憶なんだろうか。
まあ、どうでもいいか。
ふと、息を吐く。
「えっ?」
それは、誰の声だったか。誰もがあっけにとられ、思考を停止させた。
同時に、響く爆音。
誰も理解していない。その音が、壁が破壊された音だと認識しているのは誰もいない。
その日、人類は思い出した。かつての地獄を。
開戦の音とともに、地獄は再度作られる。
とある、転生者を除いて。
その巨人を見て、歓喜の感情を浮かべるのはただ一人だけ。
それを見て、その惨劇を見てコニーが叫んだ
「壁が、壁が壊された!巨人が入ってくる!チクショウ、やっぱり人類は巨人に「後は頼んだ!」エレンッ!??!」
ただ一人、その状況を予知していた者。死に急ぎ野郎だけが動きだしていた。
この赤い巨体。皮のない、むき出しの筋肉の塊を見て、ただ…ただ笑いがとまらない。
きた、きた、きた。
やはり、このタイミング。腰巾着野郎がきた!!!
同期のサムエルが超大型の出現にあわせて吹き飛んだが、どうでもいい!人一人死ぬ?今はそれよりもこちらのほうが重要だ。
「目標、目の前!超大型巨人!!」
このときを、このときを…!!
「これは好機だ!絶対、絶対に逃がすな!」
「壁を破壊できるのはコイツだけだ!コイツさえ殺せば人類は勝てる!」
そんなものは建前だ。俺はただ、ただコイツを殺したい!!!
猛る精神は立体起動と比例し、最速の動きを、理想の動きを!
もっと、もっと速く!
うなじを削ぐつもりはない。それをしても原作と同じく逃げられるに決まっている。
大量の蒸気。目の前に広がるそれは視界をふさぐが、全てが見えねえわけじゃない。この日を、この日だけを待っていた。口角はギチギチと、自分の意思にかかわらず上がりきっている。
蒸気が超大型から吹き荒れる中、うなじに見える人影。影しか見えねえがベルトルト…てめぇ…逃げるつもりか。そりゃそうだ。コイツの目的は壁を壊すことだけか。
壁を壊したなら、スカした顔して訓練兵に混ざればいいだけだもんな。
ふざけんな…。ふざけんじゃねぇぞ。ありえねぇよ腰巾着野郎。てめぇを許すわけねえだろうが…!
絶対に逃がさない。コイツだけは…こいつだけは継承する
巨人を最も殺すのに適した巨人。マーレのゴミを皆殺しにするのに最適の巨人。
デカい、というのはそれだけで強い。事実、9種類いる巨人の中で戦ったら間違いなく最強の巨人こそが、超大型。
元々、今日この日超大型が来るのを俺は原作知識で知っていた。だからこそ対策をしてきた。超大型に対する秘策を。失敗は許されない。
この日のために用意した武器の一つ、閃光玉。ぶんなげると爆音とともに閃光を放つソレは壁内ではとても貴重ではあったが、これでも訓練兵主席だ。大量に、とはいかないが一つだけなら手に入る術はいくらでもある。一つだけでいい。
殺傷能力はない。ただ一瞬でも光で動きを止めればいい。コイツを超大型のうなじ付近にぶんなげれば、勝ちが確定する。
キャッチボールは…得意じゃなかったが、勿論この日のために練習した。立体起動を動かしながらでも確実に閃光玉を当てる。当てなくてはいけない。
…手が汗で滑る。ようやく来たチャンス。そりゃ手に汗握るのも当たり前だけど、それでもはずさねえよ。
ここで外したら何もかもがお仕舞いになるしな。
この日を、この時を待ちわびていた。
「うっガぁアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ただ、吼える。自身の存在を誇示するように、その思いを載せて大きく手を振りかぶり、閃光玉を大きく振りなげた。
「おっ、ァアアアアあああああ!!!!!」
意味はない叫び。それこそが俺の恨み。行き場を失った意味のない怒り。本能のあるがままに、自信からあふれ出た怒り。閃光玉は俺の怒りと呼応するように、爆発する。
大きく広がる光と爆音。その閃光のせいで、視界は何も見えず。だが関係ない。
位置は、角度は理解している。場所を間違えるはずがない。ベルトルトの位置は頭の中に入ってる。
これでも俺はミカサを超えて立体起動は訓練時代ナンバーワンだ。ズレるはずがない。
ここまでは計画通り。ここからは運。運が悪ければ俺は終わる。だが、運に勝てないのなら世界を相手に勝てるはずもない。
誰にも見せることがなかった、胸ポケットにいれた”ソレ”を口の中にいれて、噛み砕いた。
無垢の巨人になるための薬。フラスコに入ったそれを、確実に、一瞬で発動できるように。噛む力だけで壊せるよう細工しておいたソレを、確かに噛み砕いた。
後悔が…なかったとは言わない。だって、俺は巨人になりたくなかったから父親を殺したのだ。ただ生きたいという生物の原初の願いにとりついた俺に、巨人薬は正反対のものだった。たった13年で死ぬのは、絶対に嫌だった。だからあの日、5年前はそれを否定した。
―――でも、13年だけに寿命を縮めなければ自由を得られないというのなら。
家畜のような生き方しかできないのならば。
母さんの敵をとることができるのならば。
俺は―――あの日できなかった選択をする。
俺の計画を、失敗するつもりはなかった。否、失敗する心配はなかった。
だって、俺は主人公だから。だったら、俺の計画通りに行くはずだ。お前も物語をこんなところで終わらせたくねえはずだよなぁ。だから、俺に運という力を貸せ!
なぁ!俺を転生させた神さまとやらよぉ!!!!!
目は閃光弾のせいで見えないはずなのに、黄色いイカヅチがバチバチと俺を構成する世界に広がって、そうして――――――
「…あれ?」
ふと目を開けると、そこには空が広がっていた。余りにも青い、何者にも染まることができない青。
…冷たい。風の音が大きく広がっている。…いや、それに混じってこれは…人々の、怨嗟の声?
これは…知っている。すぐ分かった。あの時の、5年前のあの時と同じ声だ。
―――地獄を見た。
血まみれで、臓物を撒き散らす母親を見た。
大量の怨嗟の声を何度も聞いた。死体は、もう見飽きた。
5年前、それを知った。知ったからには、もう地獄にはなれた。
だからこそ、風の音に混じった声でわかる。
あの時知った地獄。それと同じ質だ。
ここは、どこだ。どうなった?近く最近の記憶がない。ただ、これは、この現象は恐らく…そういう、ことなのか?
今の場所は、…この肌寒い感覚は…この開放感は、つまりは壁の上。それは…下に広がるのは予想しなくても分かる。
下を覗いた。世界は赤色に染まっていた。大量の巨人と、大量の死体と、逃げ惑う人。
俺が、あの日知った地獄。嫌って嫌って、そうしてようやく望んだ世界。
そうだ、俺はこの景色を望んでいた。この景色があって記憶喪失ということは。
ああ、やった。やってやったぞ。
超大型巨人を継承してやった…!ざまあみろ!ざまあみろベルトルト!
「クックック。…クックックックック」
笑いが、とまらねえ。
ただ、笑っていた。
目の前で壁が破壊されたことで広がった地獄。大量の人間が巨人に食われている地獄。
ソレすらも多大な歓喜という感情に飲み込まれて。胸のズキズキとした痛みを抑えながらも、その地獄を正しく理解し、それでも――――
「やった、やったぞ。やってやった!あっはっはっはっは!!」
地獄の中、ただ。エレン・イェーガーの笑い声は壁の中に広がっていた。
母親が死んだ姿を見たエレン「これが、これが生きるってことかぁ」ニチャァ
アルミン「ええ・・・。」
ぶっ壊してやった!2話にして原作をぶっ壊してやったぞ!やべぇ次どう書くかぜんぜんわかんねえ!どうしよう!エレンやべぇ奴にしすぎた!もう蹂躙しか思いつかねぇ!というか勢いで書いたから文章メチャクチャだ!やべえよ!
すみません。修正するかもしれないですこの話。
Qベルトルト迂闊すぎね?
Aエレンが巨人は人間であると知っているなんて知らなかったのと閃光玉を持ってるなんて知らなかったためそちらに気を向けてなかった。
まあ閃光玉を普通うなじに投げないよね。