ONE PIECE −LOG COLLECTION : ELEANOR−   作:春風駘蕩

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第286話〝汝何を欲す〟

 ───あの日、私達は全部を失った。

 

    何もかもを奪われて、荒波の中に放り出された。

 

『最悪だ………なんだよこの島、何にもねェじゃねェか』

『食い物もねェ…家もねェ…‼︎ こんなところに住めやしねェ…‼︎』

『どうすんだよ…どうすんだよォ!!?』

 

 ───壊れても、縋られても。

    あの時の私には、何もできなかった。

 

『ダメだ!!! 森にゃ入れねェ!!! あそこは猛獣でいっぱいだ!!!』

『海も川も駄目だ!!! 近づいただけで危ねェ!!!』

『どいつもこいつもバケモノばっかりだ‼︎ 行ったらこっちが食われちまう!!!』

 

 ───島は、私達を受け入れなかった。

    私達のどんな努力も嘲笑うみたいに、牙と爪と死を向けてきた。

 

『今日は5人死んだ………みんな飢え死にしちまった』

『こっちは7人死んだ……森のバケモノ共にみんなやられちまった‼︎』

『そんな…それじゃ収穫は!!?』

『何もねェ…‼︎ 畜生……犬死じゃねェか!!!』

『いつまでこんなのが続くんだよォ……………!!?』

 

 ───みんなみんな、苦しんでいた。

    そしてみんな、怒り、憎んでいた。

 

『お前の所為だ……お前の所為だぞ!!!』

『お前が使えねェからこんな被害が出たんだ!!!』

『黙ってねェでなんとか言えよ‼︎』

『なんとかするのがお前の役目だろ!!! 突っ立ってねェでどうにかしろよ!!!』

 

 ───怒鳴られても摑みかからられても、何も言えなかった。

    どうすればいいのか、まるっきりわからなかった。

 

『来るなよ役立たず!!! お前がいるとみんなが迷惑なんだよ‼︎』

『消えろ‼︎ どっかいっちまえ!!!』

『しねー!!!』

 

 ───罵られても、嫌われても、何を言われても。

    何もない私は、何も言えなかった。

 

    だから、全てを渡した。

 

『こ…これ…くれるのか……⁉︎』

『あ…あァ…………助かるよ』

『これでしばらくなんとかなる……天の恵みだ、神の慈悲だァ!!!』

『あんたはおれ達の救世主だぜ!!!』

『助かったァ!!!』

 

 ───みんなが欲していたから、私は与えた。

    みんなが望んでいたから、私がやった。

    そうしたら、みんなが私を頼るようになった。

    みんなが私を讃えるようになった。

 

    だけど、何も満たされなかった。

    満たされるどころか、心はどんどん渇いていった。

 

『どうか………どうかお助け下さい!!!』

『おれ達にゃあんたしじゃいねェんだよ‼︎』

『なァ頼むよ………見捨てないでくれ‼︎ もうあんたを頼るしかないんだよ!!!』

 

 ───みんなが求めてる。望んでる。欲しがってる。

    だからずっと、与えてきた。

 

    そうしないと、無くなっちゃうから。

 

『どうか……お願いだよ!!! 我らがおおさま!!!』

『おおさま!!!』

『王よ‼︎』

『王様よォ!!!』

『おおさま〜〜〜〜!!!』

 

 ───与えて、あげて、渡して、ずっとずっと施し続けて。

    そうしたら…………そのうち、全部が無くなった。

 

 

 

    一体どこから、間違っていたんだろう。

 

 

 

「………………」

 

 沈みかけていた意識が浮上する。

 まっすぐな道をただ歩き続けていたせいだろうか、半ば微睡んでいたらしい。

 

 隣で楽しげに話すルフィを横目に見やり、エールはふと立ち止まる。

 

「んでよォ、そしたらロビンが割り箸を…………」

「………ルフィ、もういいよ」

「え〜〜⁉︎ ここからがホントに面白くなってくんのに〜〜〜」

 

 笑い話を途中で遮られ、ぎょっと目を剥きルフィはエールに抗議する。

 一番の盛り上がりを邪魔され、その上冷めた目を向けられ、悲しみが心の中を占めた。

 

「………思い返してみると、そこまで興味があったわけじゃなかったから。もういいよ、話さなくて」

 

 ふい、と視線を逸らし、何もない壁を見やるエール。

 ルフィはふと、その横顔に違和感を覚え、冷めた表情を凝視する。

 

「うん………いい暇つぶしにはなったかな、それなりに楽しめたよ。たまにはいいかもね、こういうくだらない話を聞いてあげるのも」

 

 感情の失せた抑揚のない声で告げ、エールは歩き出し、ルフィを追い越す。

 やがて、立ち止まったまま困惑の目を向けるルフィに振り向き、急かすように溜息をついた。

 

「…どうしたんだィ、先へ進むんだろう?」

「ん? …おう」

 

 何とも言い難い気分のまま、ルフィはエールの後を追って歩き出す。

 眉間にしわを寄せつつ、ルフィはいつの間にか高くなってきた天井を見上げた。

 

「なんか急に広くなってきたな〜〜〜…今どの辺で? もうそろそろゴールについてもおかしくないと思うんだけどな〜〜」

「……そうだねェ」

 

 途中まであれだけ続いていた罠の数々も、今や随分大人しい。ルフィもただ長い道を歩き続けるだけの冒険に飽きたのか、歩き方も適当だ。

 

「………なー、エール」

 

 無言で歩き続けるエールの背に向けて、不意にルフィが問いかける。胡乱げに振り向いたエールに、渋い表情で首を傾げてみせる。

 

「おめーよ、何でさっきから我慢ばっかしてんだ?」

「………………何の話だィ」

「だっておめェ、わざと楽しくなさそうにしてんだろ。カイチョーのおっさんとこのスゲー機械見てた時も、おれの冒険聞いてた時も、興味あるくせにないフリしてんじゃねーか」

 

 ぴくっ、とエールの方が震える。ほんの僅かに息を呑む声も聞こえる。

 様子の変わった、一瞬強張った空気に臆する事なく、ルフィはじっと目の前の少女を見つめた。

 

「…そんなつもりはまったくないよ」

「あるだろ。見てておれ、なんかモヤモヤしてたぞ」

「……何も変じゃないでしょ。ふっと興味がなくなっただけだよ」

「ウソつけ、本当はもっとおれの話聞きてェんだろ! まだまだたくさんあるんだぞ〜〜〜おれ達の冒険‼︎ おれも話し足りねェ‼︎」

 

 背を向けたまま振り向かないエールに、ルフィは笑う。

 ここまでいろんな思い出話をしながら歩いてきたが、冒険の経験はまだまだ話し足りない。一つ一つが濃くて数時間ではとても足りない。

 

「思い出したらウズウズしてきた………!!! この先ももっともっとすげェワクワクが待ってんだろうなァ……‼︎ どんなお宝が待ってんだろうな!!!」

 

 体の奥から湧き上がる衝動を抑える術など、彼は知らない。

 心に突き動かされるまま、立ち尽くすエールを追い越して走り出す。

 

「よ〜〜し!!! 気合い入れていくぞォ〜〜!!!」

「………ねェ、ルフィ」

「ん?」

 

 拳を突き上げ、奥を目指すルフィの背に、エールが語りかける。

 俯き、前髪で表情を隠した彼女は、きょとんと目を丸くするルフィを、どこか虚ろに見える目で見つめ、問う。

 

「そこまでして宝が欲しいの…?」

 

 問いかける声は、冷え切っていた。呆れ、悲しみ、苛立ち、あらゆる負の感情が混ぜ込まれたような、重く冷たい声だ。

 異様な雰囲気を全身から放ち、エールはルフィだけを見つめて問い続ける。

 

「この先に待ってるのは………人を壊すものだよ。人の欲望を掻き立てて、理性を壊して………最後は全部をめちゃくちゃにする…悪魔の宝だよ」

「ん? なんだ、おめェこの先にあるもの知ってんのか?」

「そんなに〝力〟がほしいかィ…? もう二度と外には出られやしないのに……ここで一生を終えるしかないのに……そんなものを得てどうするんだィ」

 

 ルフィの声に、応えもしない。

 子供のようにはしゃぐ青年を見つめたまま、淡々と語り続ける。

 

「〝宝〟に何の意味があるんだィ? 欲して…手に入れて何の意味があるんだィ? この島じゃ何の役にも立たないものを持って………何になるんだィ」

 

 しん、と静かな暗闇の中、少女の声が響く。

 どこかから流れてきた水滴がぽた、ぽたと水溜りに落ちる音が響き、言い表しがたい不気味さに苛まれる。

 

 いつしかエールは、ルフィに向けて殺気に似た威圧感を放っていた。

 

「……ここにあるのは……」

「だー!!! やめろやめろ‼︎ そっから先は何も言うな!!! つまんねェ!!!」

 

 少女が告げようとした瞬間、ルフィは目を吊り上げ、吠える。

 エールの異様な雰囲気を霧散させるほどの勢いで怒りを露わにした。

 

「おれはなァー……お宝そのものはどうでもいいんだよ。ナミとかは何が何でも欲しがるかもだけど、おれは宝を見つけられたらそれでいい‼︎ そこまでの冒険が一番楽しみなんだ。先に答えなんか言うな!!!」

「……冒険したいから、命をかけるの……?」

「そうだ‼︎ おれが欲しいのは──自由だ!!!」

 

 困惑の目で見つめるエールに、ルフィは自慢げに語る。大きく胸を張り、堂々と仁王立ちして、何一つ奥した様子を見せずに告げる。

 

「おれはいろんな島に行って、いろんな冒険をして!!! いろんなメシ食って!!! …‼︎ いろんな奴に会いてェ!!! だからおれは海へ出たんだ!!! おれは────」

 

 彼のその姿に、エールははっと言葉をなくす。

 己の眼に映る青年の姿が、とある一人の姿と重なった気がして、時が止まったような錯覚に陥る。

 

「おれが持ってる命全部で、精いっぱい旅して!!! 精いっぱい生きてェ!!! それが海賊で、冒険だ!!! 楽しいぞォ〜〜!!?」

 

 にかっ、と全身で楽しさと期待を表し、ルフィは笑う。

 新たな仲間が心に宿す闇。それを本能で感じ取ったのか、それを晴らすように全身全霊で語って聞かせる。

 

「……せいいっぱい…生きる」

 

 無意識に、エールはルフィの言葉を反芻する。

 虚ろだった目に、仄かな光が灯りかけたその時。

 

 ごごごご…!と凄まじい轟音が鳴り始め、それまで単なる広く真っ直ぐな道でしかなかった迷宮が、いくつもの罠と仕掛けで溢れ始めた。

 

「うおおおおおお!!? なんだ!!? なんか急にめちゃくちゃ罠がすげェ事になったぞ!!! 何でだ!!?」

「………中心部が近いのさァ。最後の罠が、私達を入れさせないと発動したんだろうねェ」

「そうなのか!!? じゃあコレ〝よくばり〟の挑戦か!!! とうとう本気になりやがったんだな!!?」

 

 何人も通すものか、と言わんばかりに蠢く仕掛けの数々に、ルフィは驚きながらもやる気に燃える。

 

 ばしっ、と拳を鳴らし鼻息を吹くルフィ。

 その隣を、エールがすたすたと横切り追い抜いていく。

 

「ん? エール?」

「………ねェ、ルフィ‼︎」

 

 くるり、とエールがルフィに振り向く。

 その顔には、彼女がこれまで見せた事のない───明るい満面の笑顔が広がっていた。

 

「競争しないかィ!!?」

 

 年齢相応の、普通の少女と変わらない楽しげな笑顔。

 突然の変化に、ルフィは一瞬あっけにとられながらも、すぐに彼女と同じく満面の笑みを浮かべ、走り出した。

 

「しししし…‼︎ おゥ!!!」

 

 だっ、と青年と少女が同時に走り出す。

 目の前の幾つもの罠めがけて、一切怯える事なく挑みかかる。

 

 段差を飛び越え、壁を伝い、穴に落ち、壁に邪魔され、岩玉に追われ。

 凶悪な罠の数々に襲われながら、二人は子供のような笑顔のまま、終着点を目指して突き進む。

 

 楽しげな笑い声を響かせながら。

 ついに、全ての罠を制覇した先の空間に、ルフィは辿り着いた。

 

「だ───!!!」

 

 最後の罠を飛び越え、これまでで最も広い空間に飛び込むルフィ。

 丸く、室内なのにやたらと明るい不思議な空間。どこかの宮殿の玉座の間のような荘厳さを感じる空間にルフィは立っていた。

 

「すげェ…着いたぞ〜〜〜〜!!! 絶対そうだ!!! ここが迷宮のゴールだァ〜〜〜〜!!!」

 

 迷宮を制した喜びで、思わず勝鬨をあげる。

 両拳を天に突き上げ叫びながら、がばっと背後に勢いよく振り向く。

 

「おい見ろお前らァ!!! すげェぞここ⁉︎ なんかわかんねェけどスッゲェトコに来た……………………ってまだ誰も着いてねェのかよ‼︎」

 

 つい、後ろに仲間達がいる気になっていたルフィは、しーんと静まり返った空間の中でがくりと肩を落とす。喜びの気分も半減だ。

 

「あいつらまだ迷ってんのかなァ……しょーがねェ奴らだな〜」

 

 呆れた表情で帽子に触れ、溜息をこぼす。

 だが、ルフィが飛び出した入り口から、エールがゆっくりと向かってくる姿を見て、にっとまた嬉しそうに笑う。

 

「まァいいや!!! おれが迷路クリア一番乗りだ‼︎ やったァ〜〜〜!!!」

「…おめでとう、ルフィ」

「あ‼︎ 見ろエール‼︎ おれの勝ちだぞ‼︎ しししし」

 

 ひとしきり喜びを露わにした後、ルフィは終着点の空間を見渡す。

 明るくひらけた場所だが、何もない。空間の中央に台座があるだけで、殺風景な〝無〟の部屋だ。

 

「ここが〝よくばり〟のいるところか? 何もねェなァ〜〜〜〜」

「…やっぱり金銀財宝でも一緒に眠ってると思ったかのかィ?」

「んー? 面白かったからいい‼︎ でもホントに何もねェなァ……でも昼寝するにはちょうどいいかもな〜‼︎ …………………ん?」

 

 きょろきょろと辺りを見渡し、ルフィはふと気づく。

 

 中央に置かれた台座。段々になったその上に、箱状のものが一つだけぽつんと置かれている。

 見るからに古い、ぼろぼろになった石でできた棺か何かのようだ。

 

「おい、アレって棺桶だよな?〝よくばり〟のやつ、あそこにいるのか?」

「……あァ、そうだよ」

「そうか……それじゃあ、まァ…ごメーワクをおいのりします。ん? ごメンドウだっけ?」

「…ご冥福をお祈りします、かねェ」

「そう、それだ」

 

 ぺこり、と棺に向けて頭を下げ、妙に礼儀正しいのか無礼なのかわからない挨拶を行うルフィ。

 沈黙する棺を見上げ、本心から残念そうに肩を落とす。

 

「生きてたら礼が言いたかったんだけどなァ〜……面白かったって‼︎ 死んでたら伝わんねェよなァ。残念だな〜〜〜」

「…あんたって奴は、本当に…」

 

 800年も昔の人間に対して、生きていたらなどと呟く彼に、エールはやれやれと肩をすくめる。ほんの少し、その口元を嬉しそうに綻ばせながら。

 

「ん?」

 

 棺を見上げていたルフィは、それに気付く。

 棺から、じゃらじゃらと音が聞こえる。ルフィがそれに気付いた次の瞬間、ぶわっと鈍色の欠片が宙に舞い上がった。

 

「‼︎ エール!!!」

 

 ルフィは咄嗟にエールの前に出て彼女を庇う。

 彼らの見上げる先で、棺に開いた小さな亀裂から漏れ出た欲望の硬貨が、靄のように蠢き形を成していく。

 

「……僕は、どこ」

 

 現れたのは、赤い鳥の怪人だった。

 鷹の顔に孔雀の羽毛の衣装、荒鷲の爪を備えた人型の異形。頭部の右半分が剥き出しで、紫の飴のような皮膚が露わになった怪物。

 

 赤と七色に光る翼を羽ばたかせ、その怪人は虚ろに呟いた。

 

「…アイツ、今までのやつとちょっと違うな。………強ェ」

「どこ……? どこなの…? ………僕はどこ!!?」

 

 警戒し身構えるルフィの前で、怪人が背に生やした七色の翼を羽ばたかせる。

 

 すると、ぼっ、と無数の火が周囲に浮かび上がり。

 次の瞬間、炎が突如宙を飛び、ルフィの目の前で爆発を起こした。

 

「あんにゃろう…………!!! いきなり出てきていい度胸だ‼︎ エール‼︎ おめー危ねェからちょっと下がってろ!!!」

「…………」

「ししし‼︎ あの紫のヨロイも見てェけど、お前がイヤなら仕方ねェ‼︎ すぐにブッ飛ばしてやるから待ってろよ!!!」

 

 無い袖をまくる仕草をして、前に出るルフィ。

 無言で何も答えないエールに気付く事なく、視線を向けてくる赤い鳥の怪人を睨み、拳を地面に叩きつける。

 

「……!!! いた…僕だ‼︎」

 

 何かを見つけた様子で目を光らせ、動き出す鳥の怪人。

 無数の羽を辺りに舞わせ、一歩を踏み出す。

 

「何が僕だ!!! おめェなんかおれ知らねェぞ!!!」

「僕を返せ……返せェェエ!!!」

「何だかわかんねェけどやる気だな…‼︎ かかってこい!!!〝ギア(セカン)…〟」

 

 相手が何かはわからないが、向かってくるなら戦い仕留めるのみ。

 不気味で強力な敵を前に、戦闘態勢に入ろうとした……その時。

 

 

 

「失せろ」

 

 

 

 ぽつりと、小さな呟きがその場に響き。

 宙へ飛び立った赤い怪人が、真下から突き出た石柱に貫かれ、轟音と共に天井に叩きつけられた。

 

「……ん⁉︎ んん⁇」

 

 岩に潰され、消え去った敵を凝視し、ルフィは呆然とした声を漏らす。

 その視線はやがて、自分の背後で何かを呟いた……怪人に向けて手をかざす少女に向けられていく。

 

「…………今の……お前がやったのか? ………何やったんだ?」

 

 その問いに答える事なく、エールはざり、ざり、と足音を響かせ、ルフィの隣を追い抜き前に出る。

 

 目を丸くして棒立ちになるルフィに、ふっ、と。

 全てに興味を無くしたような、冷めた溜息をこぼして語り出す。

 

「…ここまで付き合って貰って、名乗らないのは義理にかけるかねェ…」」

 

 棺を支える祭壇の前に立ち、エールは振り向く。

 一切の感情が消え失せたような無の表情を向け、ルフィを見つめ、告げる。

 

「……私が、〝王〟だよ」

 

 その声が、遺跡の最奥に響く。

 絶句するルフィの目の前で、エールは気怠げにその名を───自身の真の名を口にした。

 

「私が………この島に800年前に暮らしていた、古の王。『よくばりおおさま』──ヒノ・エールさァ」

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