ONE PIECE −LOG COLLECTION : ELEANOR−   作:春風駘蕩

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第288話〝蘇りし狂者〟

 夕暮れの空を、無数の鳥達が飛翔する。

 いく種類もの耳障りな鳴き声を響かせ、橙色の空を黒い影が覆う。

 

 その様は、やけに不気味だ。

 

「何だァ…? 妙に鳥が騒がしいな………ケンカか?」

 

 瓦礫の撤去作業に勤しんでいた町の住人の一人が、それを見上げて眉を顰める。滅多にない事に、ほのかに気味の悪さを感じる。

 

「地震でも来んじゃねェのかァ?」

「おいおいせっかく片付けたとこなのにか!!! 勘弁してくれよ………」

 

 別の仲間の揶揄いに嫌そうに顔を歪め、それでも然程気にせずに作業に戻る。大きなものは全て片付けた、あとは細かい掃除だけだ。

 

 そんな彼らをよそに、新ノ介は険しい表情で鳥達の舞う空を見上げていた。

 

「どうした新さん? 黙っちまって、カラスがそんな気になんのか?」

「…嫌な予感がする」

「あン? ただの鳥だろ、どーって事ァねェさ」

 

 ぼそりと溢れた新ノ介の呟きに、住民達はまともに取り合わない。

 侍が感じ取った前兆を理解する事なく、目の前の自分の事にだけ集中する。

 

「詳しくはわからぬ。わからんが………妙な感覚だ。えもいわれぬ……不吉な」

 

 警戒を絶やさず、佇む新ノ介の脳裏には、かつて見た光景が。

 国を滅ぼす破壊者が舞い降りた時の景色が蘇っていた。

 

⚓️

 

「ゥ……あ…」

 

 大きく目を見開き、エールが呻く。

 自分の腹を貫く何者かの腕を凝視し、その身を震わせる。

 

「…………エール?」

「ア…ガ……ぐァ…!!!」

 

 ルフィの困惑した声にも反応せず、震える手でその何者かの腕を掴む。

 貫かれた腹からじゃらじゃらと何枚もの硬貨が零れ落ちる中、異形の腕が曲げられ、エールの首をきつく締め上げた。

 

「ガ……かハッ!!?」

『──ご安心なされ、〝王〟………その器よ』

 

 苦悶するエールの耳元に、声が響く。

 ゆらりと背後から姿を滲み出させた何かが、下卑た笑みをたたえて少女に語りかけた。

 

「んな…‼︎ なな…な…ななな…な、なななン何だありゃあ…!!?」

「………!!? ……アイツは……!!?」

 

 がらがらと崩れていく遺跡の壁の隙間から、ウソップ達はその光景を目の当たりにする。

 突然の事態に驚愕し、立ち尽くしながら、エールと謎の存在を凝視する。

 

『これよりは退屈に苛まれる事などありませぬ………これは始まり。全てが始まり……そして終わる刻だ』

 

 エールの背後で、影の形が揺れる。

 金属音を響かせながら、徐々にそれは人の形に───豪奢な格好をした、大柄な人物に姿を変える。

 

 エールを貫いたまま、謎の人物はもう片方の手を見下ろし笑みを深めた。

 

「────実に久しき……この感触。視・聴・嗅・味・触…肉体に伝わるあらゆる信号………生物の感覚……!!! 800年ぶりだ………実に懐かしき肉の悦び………………!!!」

「あ……ァ…‼︎ ゲホッ!!!」

「あァ…〝姫〟…………お久しゅうございますなァ。あの人なんら変わらぬお姿…………お懐かしゅうございます」

 

 首を掴む手を引き剥がそうともがき、エールはぎこちなく視線を背後に向ける。そこから聞こえる覚えのある声に、見開いた目を血走らせた。

 

「お…前………!!! ガラ…か…!!?」

「えェ…えェ…えェえェえェ…!!! 左様にございます………あなたに…あなた()に全てを台無しにされた憐れな忠臣……………その成れの果てよ」

 

 丁寧ながら侮蔑の混じった口調から一転、突如憎悪の滲む吐き捨てるような口調に変わり、謎の人物の手に力が篭る。

 より強く苦しむエールを見やり、謎の人物はますます悍ましく嗤った。

 

「クク……クククク…!!! 待っていたぞ…この時を‼︎ 忌々しき封印の戒めより解かれ………貴様の元に辿り着くこの瞬間……………!!! 狭苦しく薄汚い石箱の中でどれだけ待ち侘びた事か」

「く……ァガ……⁉︎」

「そうだ苦しめ…悶えろ…!!! 我が苦悶の時間はこの比ではないぞ……!!!」

 

 げたげたげたげた、笑い声が響く。

 血の代わりに硬貨を吐き出す少女の悶絶する様を愉しみ、心から悦ぶ。

 

 その光景に……遂に彼が動いた。

 

「何やってんだお前ェエエ!!!!」

 

 ぼしゅぅっ!と全身から蒸気を噴き上げ、ルフィが前へ飛び出す。

 遺跡を踏み砕く程の勢いで跳躍し、囚われた仲間とそれを苦しめる敵に肉薄する。

 

「おい⁉︎ 待てルフィ!!!」

「止まれバカ野郎!!!」

〝ゴムゴムの〟!!!〝JET回転銃(ライフル)〟!!!

 

 仲間達の制止の声にも耳を貸さず、長く引き伸ばした腕を捻り上げ、謎の人物の顔面に照準を合わせる。

 速く鋭い一撃を叩き込み、仲間の救出を急いだルフィ。だが。

 

「図が高いぞ、サル」

 

 めきり、と謎の人物の腕が蠢き、次の瞬間、異様な速度と長さで伸びる。

 伸びた腕は今まさに一撃を放たんとしたルフィの腹にぶつけられ、彼は壁に叩きつけられた。

 

「うごわァ!!?」

 

 ルフィの姿が消え、壁にめり込む。一瞬遅れて轟音と破砕音が鳴り響き、壁の一部ががらがらと滝のように崩れ落ちた。

 

「ルフィ‼︎ クソっ……バカ‼︎ 無策に突っ込んでんじゃねェ!!!」

「何アイツ…!!? 誰アレ⁉︎」

 

 視界から消えたルフィを追い、振り向いたサンジが思わず叫ぶ。咄嗟に動けなかった彼は、ルフィの特攻でようやく我に返っていた。

 

 その時、ウソップは気付く。

 豪奢な装いに隠されていた謎の人物の顔が……見覚えのある、時計の針のような特徴的な髭面である事に。

 

「………‼︎ アイツ…昨日海に沈んでたヤツじゃねェか!!! 生きてたのか!!?」

「……知っているのか、この男を。そうか、知り合いか? 友人か? …………まァどちらでもいい」

 

 ウソップの同様の声を聞いた謎の人物が、ちらりと横目を向ける。

 怯んだウソップにそれ以上の興味を示す事なく、〝彼〟はおもむろに己の顔に手を添える。

 

「もう…お前の知るこの男は、この世のどこにもいないがな」

 

 そう呟いた直後、ばちっ、と〝彼〟の顔に電流が走る。

 すると、その顔がぐにゃりと粘土のように蠢き、まるで違う顔に……若々しく、端正に整った別人に変貌する。

 

「顔が………変わった⁉︎」

「今の反応………錬成反応……⁉︎ アイツ…錬金術師か…………⁉︎」

 

 発生した現象に一味から動揺の声が上がり、その中で同業者であるエレノアが強い反応を示す。

 同時に、〝彼〟の呟きの中にあったある単語を思い出し、顔色を変える。

 

「待てよ……錬金術師で…………800年ぶりとか言ってたって事は………まさか…!!?」

 

 一つの可能性に思い至ったエレノアは、血の気の引いた顔で壇上で嗤う異形の存在を見つめる。

 その背後から、別の人間の───沈黙していたコウガミの哄笑が盛大に響き渡った。

 

「ハハハハハ……よもや…!!! よもや彼にまでお目にかかれるとは!!! 私は何と恵まれているのだ!!!」

「おっさん…⁉︎ だ…誰だ!!? アイツは誰なんだよ!??」

 

 何か事情を知っているらしきコウガミに、ウソップが怯えながら尋ねる。

 ただただ危険な存在であると本能的に察してはいたが、聞かざるを得なくなっていた。

 

「古の錬金術師──ガラ!!!」

 

 一味から急かすような視線を受け、コウガミはその名を口にする。

 ゴトーや伊達マルからも同様の目で見つめられながら、高々とその正体を語ってみせる。

 

「800年前!!! この世で最も欲深な王に仕え!!! 究極の欲望の力を生み出した4人の錬金術師たちの筆頭!!! 世界を欲した〝王〟の望みに従い!!! 島中の凶悪にして強力な生物達を捕らえ!!! その力を凝縮させた〝コアメダル〟を創り出した最古の天才!!!」

「メダルを…コイツが………⁉︎」

「しかし!!! その才能と実力!!!〝力〟を生み出した実績を危惧され!!! 主人たる〝王〟に幽閉され命を落とした哀しき偉人!!! よもや彼が今の世に甦るとは!!!」

 

 エールに拒絶され、黙り込んでいた男が、別の古代の人間の登場により復活し、活き活きと喜びを露わにしている。不気味さが強まって見えた。

 

 コウガミの狂喜に目もくれず、他の何にも気を向けず。

〝彼〟は……錬金術師ガラはその手に捕らえた少女に語りかける。

 

「改めて………久しいな…ヒノ・エール。よもやまた相見えるとは思わなんだぞ………力なき小娘が、永き時の果てにとうに擦り切れ消え去ったものと思っていたが、中々どうしてしぶとい…」

「………‼︎」

「流石は…あの男の血を引く者か」

 

 ぎり、と歯を食い縛り、何かを言おうとしたエール。

 それより前にガラは、抵抗するエールの腕を掴み、容赦なく捻りあげる。

 

「あがァァ!!?」

「おおげさな………痛みなどとうに失われて久しかろうに。貴様のそれはただの錯覚……………ありもしない幻覚よ。何より……初めからただの()でしかないのだしな」

 

 少女の腕が、引きちぎられそうなくらいに痛々しく捻られ、指先が激しく痙攣する。

 それでも少女は、背後に立つ敵を睨みつけ、掠れた声を漏らす。

 

「ガラ……なんで……今……この…時代に………!!! しかも………その…身体…………!!!」

 

 ぎろり、と凄まじい憎悪と憤怒に満ちた目で、ガラを見据える。

 ガラは無言でエールを見つめ返すと、突如腹を貫く腕を引き抜き、腕を捻り上げたまま、エールの体を振り上げる。

 

 エールは背後の棺の上に叩きつけられ、再び硬貨の血反吐を吐いた。

 

「ガハッ…アァ!!!」

「無駄口を叩くな………お前はただ身を委ね、明け渡せばいい。全てをな」

「誰……が…………‼︎ やるかァ!!!」

 

 悶えながら、エールはなおもガラを睨みつけ……その目を極彩色に光らせる。

 遺跡の壁が動き、いくつもの腕となってガラに襲いかかろうとし。

 

 しかしその寸前で、遺跡はぴたりと動きを止めてしまう。まるで、ガラの前に触れられない壁があるかのように。

 

「なん…で……⁉︎」

「何を今更………この力を生み出したのは我だ。我が意の通りに操れぬ道理がどこにある」

 

 戸惑うエールの前で、遺跡が勝手に引いていく。

 顔を青ざめさせた少女を見下ろし、冷笑を浮かべた古代の術師は、鋭い爪の生えた腕をゆっくりと掲げる。

 

「お前の施した封印………捕らえ続けてきた〝力〟……全て我が貰い受ける…………!!!」

「や…やめ……!!! やめろォ………!!!」

 

 逃れようともがくエールだが、体の自由が利かない。いつの間にか両手足を戒める遺跡に阻まれ、逃れられない。

 

 壇上で凶刃に晒される少女の姿は───魔に捧げられる生贄そのものだった。

 

「みんな逃げてェ!!!!」

 

 王の墓に集う、全ての者に向けてエールが叫んだ直後。

 ガラの腕が、エールの胸と、彼女が横たえられた棺を……その中で眠る者の胸を貫く。

 

 そして、辺りに真っ赤な閃光が迸った。

 

⚓️

 

 島のある場所に開いた、ある一つの大穴。

 何の変哲もない洞窟として島の住民達に知られる、小さな岩の管があった。

 

「ぶわァア!!!」

 

 その穴から突如、三人の男達が大量の水に押し出され、飛び出してくる。

 サトー、ヤトー、クトーの三人は激しく咳き込みながら、五体満足で生きている互いを見つめ合い、呆けていた。

 

「ゲッホ……ゲホッ………………!!? ここは…外か?」

「遺跡の外に……吐き出されたのか………!!?」

「し…死ぬかと思った」

 

 あれだけ危険な罠に翻弄されてきて、全くの無傷。

 ほっと安堵するよりも、なぜ無事なのかと困惑が先に出て、それ以上の言葉が出ない。

 

「か…会長は? 他の奴らは────…」

 

 と、逸れたまま姿の見えない他の面々を探そうとした時。

 ふと、足元に細かな揺れを感じ、はっと息を呑む。

 

 地震か、津波か、と身構えていた彼らのうち、サトーがある方向を見やり、硬直した。

 

「………何だあれは」

 

 呆然と呟く、彼の視線の先で、男達は。

 

 島の東側の海が激しく波打ち、徐々に盛り上がろうとしている光景を目の当たりにした。

 

⚓️

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 

 ばちばちと青い閃光が迸り、空間を眩しく照らし出す。

 胸を貫かれ、棺に縫い止められたエールは、痛々しく白目を剥き、激しく痙攣を繰り返す。

 

 その度に、周囲の遺跡の壁や床がぼこぼこと歪に蠢いた。

 

「遺跡が動いてる…‼︎ あの男がやっているの⁉︎」

「どう見てもやべェ状況だろこりゃあ!!!」

 

 突然始まった異様な光景に、一味は立ち尽くすほかにない。

 ここにいてはまずいと分かり切っているのだが、どこへ逃げればいいのか見当もつかない状態だ。

 

「ちょっと待ってよロビン………この遺跡はあの子そのもので、あの子が操って動いてたワケでしょ⁉︎」

 

 ふと、エレノアはある嫌な予感に辿り着く。

 少女の言葉、目の前で起こっている現象。それらから総合した推測に、ぞっと背筋に寒気が走る。

 

「…………だとしたら……!!! だとしたら…あの野郎は今…!!!」

「なんだ⁉︎ 何がどうなってんだよオイ!?? アイツはなんだ⁉︎ エールの何だ!!? おれ達の敵か!!? 何がどうなってんだよォ!!!?」

 

 不穏な呟きを近くで聞かされ、ウソップはもう頭を抱えて泣き叫ぶばかりだ。新たな脅威の登場に、右往左往するしかできずにいる。

 

 そんな中、エールを凝視していたサンジが不意に全員の方へ振り向いた。

 

「オイ…‼︎ アイツ男か女か…⁉︎ どっちだ……!!?」

「は⁉︎」

「いきなり何聞いてんだてめェは!!!」

「いいから答えろ!!! どっちだ!!?」

 

 いきなりの意味不明な質問に、固まるその場の全員。

 急かす声に困惑しながらも、閃光の中に覗くガラの顔を今一度凝視する。

 

「…た…‼︎ 多分………いや男‼︎ 男だ絶対に!!!」

「だよな⁉︎ よしわかった!!!」

 

 ウソップが答えた直後、サンジは即座に飛び出す。

 

 烈火に燃える足を振り上げ、少女を捕らえる異形の存在───敵に向けて一切の躊躇いのない蹴撃を叩き込んだ。

 

「〝悪魔風脚〟…!!!青天霹靂(アド リビタム)ショット〟!!!

 

 青い閃光を、一瞬だけ炎の赤が染める。異形の顔面に向けて、隕石のごとき勢いの一撃が放たれる。

 だがそれは、左右から突如生えた壁に阻まれ、弾き返されてしまった。

 

「サンジィ!!?」

「何やってんだお前ェ!!!」

「…………事情は全く飲み込めねェが……一つだけ確かな事がある」

 

 壁に防がれ、宙を舞ったサンジは、仲間達の驚愕と叱責の声を浴びながらすたっと軽やかに降り立つ。

 その目に怒りを燃やし、今尚悲鳴をあげるエールと、それを捕らえる異形の()を鋭く睨みつけた。

 

「あの野郎はレディに暴言を吐き………泣き叫ぶいたいけな美女を戒め捕らえ…惨たらしく弄ぶゲス野郎。そしてなにやら……エールちゃんとの深い因縁があるいけすかねェ野郎」

 

 ぼっ!と黒足に宿る炎が激しさを増す。

 覇気の硬化に加え、自身の激情をも加えた業火をその身に纏い、女性の味方は再度宙へ飛び上がる。

 

「つまりあのクソ野郎はおれの敵で……!!! ヤツを許す道理は一切ねェって事だ!!!」

 

 怒りと決意の咆哮とともに、サンジの蹴撃が再び防壁に炸裂する。

 先程よりも強く、重い一撃が決まり、硬い壁に確かな亀裂が刻み込まれた。

 

 壁越しに衝撃が伝わったのか、ガラの目がぎろりと、自身を睨みつけてくるサンジに向けられる。

 

「ギャ───ッ!!? 完全にこっちに標的が向いてる〜〜〜っ!!!」

「チッ……‼︎ エロコックが!!!」

「ああもう…!!! わけわかんない事起きすぎて頭こんがらがってんのにィ!!!」

 

 ウソップが嘆きの声を上げる横で、眉間に深いしわを寄せたゾロと頭を掻き毟るエレノアが前に飛び出す。

 独断専行に走った仲間への苛立ちを力に変え、敵を狙い撃つ。

 

〝七十二煩悩鳳〟!!!

雷天遣矢(シェキナー)〟!!!

 

 飛ぶ斬撃と風の矢。二つの刃が混ざり、強烈な斬撃の嵐となってガラに迫る。

 奇しくもそれらも壁に阻まれてしまったが、強固な防御に亀裂が走り、ぼろりと一部が崩れ落ちる。

 

「ちょ…ちょっとあんた達⁉︎ どうすんのよ⁉︎ 結局どうすりゃいいのよ!!?」

「助ける!!! 助けて…‼︎ ホントの事全部聞き出す!!!」

 

 戸惑うナミに、ぼこっとめり込んでいた壁から抜け出したルフィが吠える。

 全身の蒸気を強め、構えながら、仲間を捕らえ苦しめる敵を睨みつけ、目の奥で闘志を燃やす。

 

「野郎共!!! エールを奪い取れェ!!!」

「了解」

「事情は飲み込めませんが………アレを放置しておくのは危険なのは明白ですね、ヨホホ」

 

 船長からの指示に、ロビンとブルックは静かに頷き、各々の獲物を構える。

 臆す事なく、躊躇いも迷いもなく従う彼らの姿に、ナミは数秒顔をしかめてから、自身の天候棒を構える。

 

「…!!! ああもう…‼︎ わかったわよ‼︎」

「やりゃあいいんだな⁉︎ やっていいんだな!!?」

「助けていいのか⁉︎ いいんだな⁉︎」

「や…やっていいならやるぞ!!! ま……まままだ文句も言いたりねェしな‼︎」

 

 残る者も次々と、やや躊躇い戸惑いを残しながら前に出る。

 自分達を騙していた相手への怒りよりも、得体の知れない新たな敵への警戒心が勝ったようだ。

 

「ダ……ダメ………‼︎ 来ちゃダメ…‼︎」

「エール…ちょっと待ってろ!!! 今助けるぞォ!!!」

 

 少女のかすれた声での懇願も聞かず、異形の男をただ一つの標的と見定め。

 ルフィは再び、蒸気を放ちながら宙から躍りかかっていった。

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