ONE PIECE −LOG COLLECTION : ELEANOR−   作:春風駘蕩

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第305話〝見くびるな‼︎〟

「ウオオオオオォ!!!」

「ガァアアアアァ!!!」

 

 どごん!

 

 両者が放った拳が、互いの顔面に激突する。

 みしみしと互いの顔を歪ませ、睨み合う2人は、一瞬の拮抗の後、それぞれ反対方向に吹き飛んだ。

 

 吹き飛んだ2人は建物に突っ込み、再度轟音を響かせた。

 

「ウオオオィ!!? 何で向こうのバケモノ共ほっぽり出して味方と殴り合ってんだよ!!!」

「…いやそりゃあ…あいつならこの作戦に納得はしねぇだろうとは思ってたが…‼」

「だからって明らかに相手が違うだろ!!!」

「やめろルフィィイ〜〜〜‼︎」

 

 思わぬ事態に、仲間達から制止の声が飛ぶ。

 

 てっきりエールの戦いに乱入し、共闘すると思っていたのに、あろうことかその拳を向けたのはエール。

 予想だにしない事態に、一味は頭を抱える他になかった。

 

「何考えてんのさ…‼︎」

 

 険しい表情で歯噛みするエレノアの見つめる先で、ルフィとエールは起き上がり、再度激突する。

 そしてまた倒れ込む2人。互角に見えるが、ルフィが血反吐を吐いているのに対し、エールは多少の汚れがついているだけだった。

 

「しししし…‼ お前の〝覇気〟やっぱ硬ェな………‼ こんな硬ェのじいちゃんかエレノアしか知らねェぞ…‼」

 

 ゴムの体に易々と傷を与える強烈な打撃に、ルフィは片方の鼻の穴を塞いでふんっと血を噴きながら笑う。

 がらがらと瓦礫を押し退けて立ち上がる彼女に、鋭い圧を放つ眼差しを向けた。

 

「でも本気じゃねェ。エールお前……手加減してるだろ、そういうのすぐわかるぞ」

「…………何のつもりだィ、アンタ」

「〝ケンカ〟だ」

 

 苛立たしげに問うエール。

 そんな彼女に、にやり、と不敵に笑ってルフィは告げた。

 

「お前がバカな事ばっかり言うからブッ飛ばしたくなった!!!」

「…何がバカだィ…‼ 大人しく引っ込んでりゃ私が全部終わらせてやったものをのこのこと……バカなのはあんたの方じゃないかィ」

 

 ばさっ、エールの後頭部から翼竜の翼が広がり、ばしんと紫の尾が地面を叩き、亀裂を走らせる。

 めきめきと拳を握り締め、ぎりぎりと食いしばった歯を鳴らすと、凄まじい勢いでルフィに向けて一撃を振りかぶった。

 

「私の前から消えろって言っただろ!!!」

「消えねェよ!!!」

 

 自身に向けられた拳に、ルフィも己の一撃を合わせる。

 

 冷たく硬い紫の籠手と黒く染まった拳が正面衝突し、激しい轟音と火花を散らす。

 衝撃波があたり一体に吹き荒れ、爆風が瓦礫を舞い上がらせた。

 

「うげっ!!!」

 

 今度の衝突は、ルフィが圧倒され吹き飛ばされた。ごろごろと地面を転がり、民家の壁に突っ込んで破壊する。

 がらがらと崩れ落ちる屋根の下から、ルフィは「うがーっ‼︎」と雄叫びと共に瓦礫を押し除け、立ち上がった。

 

「はァ……はァ……おれはっ…‼︎ お前が仲間になるまでどこにも行かねェ‼ 海賊はな……欲しいと思ったモンは絶対逃がさねェんだ」

「知らないって…‼︎ 言ってんだろ!!!」

 

 吠えるエールの顔面に、ルフィの拳が決まる。今度はエールが建物に突っ込み、エールは苛立たしげに瓦礫を殴りつける。

 唸り声と共に睨みつけてくる少女に、ルフィは凄まじい形相で立ち塞がった。

 

「本当に1人がいいなら‼〝本気〟で来いよ!!!」

 

 紫の尾が地面を激しく打ちつけ、エールはゆっくりと立ち上がる。

 ぎりぎりと歯を食いしばり、瓦礫を踏み潰しながら、少女は翼竜を模した装飾の下から青年を見据えた。

 

「………‼ 本気…だって……? 私にアンタを『殺せ』ってのかィ…?」

「ああ、やってみろ」

「自殺がしたけりゃ他に頼みなよ……何で私がやらなきゃならないんだィ…‼」

 

 呼吸を荒くし、鬼の形相を見せるエール。漏れ出た息が白い霧となり、周囲に氷の壁を生み出していく。

 まるで目の前の男を遠ざけようとするように……壁を作るように、鋭く尖った氷の壁が出来上がっていく。

 

「おれは死ななきゃ()めねェぞ。おれは海に出た時から、〝夢〟の為なら死んでもいいって覚悟決めてきてんだ‼ お前が何言ったって、止まる気はねェ‼」

「……やめなよ……黙りなよ…‼」

「お前の〝敵〟は、おれ達の〝敵〟だ‼ あいつらの所為で海に出られないんなら…‼ 俺はあいつらを全員ブッ飛ばしてやる!!!」

「………‼ 黙れって…!!!」

「ルフィ…‼︎ もう……」

 

 何度声をかけようと、何度手を差し伸べようと、800年の時を封印の中で過ごしてきた少女には届かない。

 このままでは取り返しのつかない事態になる、そう案じたナミの制止も聞かず、ルフィは雄々しく仁王立ちし、強く吠えた。

 

 

「邪魔だってんなら‼ おれを殺していけ!!!」

 

 

 その言葉に、エールの放つ冷気がより一層の勢いを得る。

 氷の層はより一層分厚く、氷柱は長く鋭く、外界を拒絶し続ける。

 

 ぎりぎりぎりぎり、今にも自らの歯を噛み砕かんばかりに食い縛り、雷のような唸り声をあげる。

 そして、鋭い爪を備えた両腕が振り上げられ───

 

 

 

死なせたくないから言ってんだろうがっ!!!!

 

 

 

 どさりとその場に膝をつき、エールは慟哭をあげた。

 先ほどまでの濃密な殺気は一瞬で霧散し、それどころか鎧が放っていた威圧感が瞬く間に消え去る。

 

「え……」

「何なんだよォ……ガマンするなとか………ウソつくなとか……‼︎ 私だって……‼︎ わたしだって…‼︎ ガマンなんかしたくなかったんだよォ………!!!」

 

 突然のことに絶句する一味をよそに、エールは両手をついて項垂れる。静まり返った世界に、やがてぐすぐすと嗚咽の音が聞こえ始めた。

 

「かあさまに甘えたかった…とおさまにほめてほしかった……‼︎ みんなに………もとめてほしかった…‼︎ ()()()()()()()って‼︎ 言ってほしかった!!!」

「エール……?」

「でも…ダメなんだよ……わたしは……‼︎ 欲しがっちゃダメなんだよ……わたしが欲しがったら…なくなっちゃうから…‼︎」

 

 エールは、泣いていた。

 ぼろぼろと大きな雫を目からこぼし、ひっくひっくと肩を揺らして声を上げる。

 

「…欲しがっても…絶対、わたしのものにならない……それどころか……みんな……みんなわたしのところからなくなっちゃう…………!!!」

「……………‼」

「ホントは……うれしかった…‼︎ 求めてくれて……ひとりにしないでくれて!!! うれしかったんだ!!!」

 

 まるで幼子のように……いや、そこにいたのは、紛れもなく子供だった。

 生まれた時から甘える事も許されず、何も与えられず、大人になるためのあらゆるものを得られないまま身体だけが成長した―――哀れな子供だった。

 

「………でも…ダメ…ダメなんだよ………わたしが欲しがったら……なくなっちゃう………みんなみんな‼︎ 奪われちゃうから!!!」

 

 存在を否定され、積み重ねた努力も献身も蹴散らされ、踏み躙られてきた。

 そんな彼女を海へ連れ出そうとする青年の言葉は、あまりに甘美な誘惑だった───だが、その手を取るには、少女が歩んできた道はあまりに冷たすぎた。

 

「ぃやだ……イヤだよ…‼︎ 取らないでよ…‼︎ わたしから……もう…何も取らないで………わたしをからっぽにしないで…!!!」

 

 渇き、冷め、何の欲望も抱いていないように見えたヒノ・エールという存在―――その真の姿に、一味は言葉が出ない。

 

 ぐすぐすと嗚咽の声を上げるエールを見つめるのは、麦わらの一味だけではない。

 建物の中に潜む者、怯え頭を抱える者……町中の誰もが、痛々しい少女の慟哭を耳にし、黙り込んでいた。

 

 だが、そんな中でくすくすと心底小馬鹿にした笑い声が響く。

 

「おバカさん達ですね〜〜〜♪ お涙頂戴のだ〜〜れも泣かない三文芝居。つまらなくてあくびが出ちゃいます♫ ………ホントにうぜェな、あの猿はよ」

 

 くすくすと声を漏らし、意地悪く歪めた顔を向けながら、苛立ちにちっと舌打ちをこぼす。

 

「うっとうしいので…さっさと死んでもらいましょうか♪」

 

 道化の少女の1人が片手を差し向けた瞬間、騎士の偉業達が一斉に動き出す。

 隊列を組み包囲し、凄まじい勢いで駆けながら、無防備な姿を晒すエールに向けて剣を振りかざす。

 

「ッ!!? ルフィ !!!」

 

 真っ先にそれに気付いたエレノアがはっと我に返り、慌てて声を張り上げた時───

 

 

 

うるせェ!!! 引っ込んでろ!!!!

 

 

 

 無粋に割り込もうとする騎士達に、凄まじい圧が襲いかかる。

 まるで、見えない分厚い壁が迫り来るかのような、あるいは重さを持つ雷に貫かれるかのような、正体不明の〝力〟が騎士達を薙ぎ払う。

 

 ビリビリと天地を震わせるそれを前に、道化の少女達も表情を変え、大きく目を見張りながら硬直した。

 

「…お前、おれ達がいなくなると思ってんのか?」

 

 ルフィは邪魔者がいなくなったためか、未だ意識しないまま圧を弱め、改めてエールに向き直る。

 その目には、なおも彼女への怒りの炎が燃えていた。

 

「おれ達がコイツらに殺されると思ったから、言いたくもねェ悪口言って遠ざけて、一人で戦おうとしてたのか? ──見くびってんじゃねェ!!!!

「ッ…!!!」

「お前の〝仲間〟をナメんじゃねェ!!!〝おれ達〟が……!!! こんな奴らにやられると思ってんのか!!? お前の〝仲間〟は‼ こんな奴らに負けやしねェ!!!」

 

 再び、ルフィの怒号が轟く。

 膝をついたまま、めそめそと泣きじゃくる少女を見下ろし、己の感情をありったけの力を込めてぶちまけた。

 

「お前が何と言おうと……‼︎ おれ達は…()()()()()()!!!!

 

 誰に何を言われようと、本人に拒絶されようと。

 決して退く事のない鋼の心で真っ直ぐに吠える、麦わらの青年に―――いつしか、エールの目を温かな涙が伝い出した。

 

「……あー、つまんね」

 

 しんと静まり返った空気の中、吐き捨てるような声が響く。

 

「あーあー…はいはいはいはい泣かせますね~~…嫌われるのを承知の上で大事な人を遠ざける女を、絶望的な状況でも仲間を信じ抜く主人公(ヒーロー)。カッコイイですね~~~美しいですね~~~やっすいやっすいありきたりな英雄譚ですね~~~………………胸糞悪ィ」

 

 気圧され、黙り込んでいた道化の少女が、言葉とは裏腹に冷めきった表情と声でぶつぶつと呟き出す。

 悪意に満ちた声で、嫌悪感を隠そうともしない顔で、泣き続ける少女を見下し吐き捨てる。

 

「そんなに死にたいのでしたら、お望みのままに―――」

 

 すると、突如がしゃがしゃと音を立て、騎士達が我に返ったように再び動き出す。

 騎士達は剣を振り上げ、徒党を組みなおし、蹲ったまま動けないエールに向けて一斉に襲い掛かった。

 

 迫りくる騎士達に、ゾロとサンジが鋭い目で睨みながら構え出す―――だが。

 

「今だ、突けェエエ!!!」

「「「「「おおおお!!!」」」」」

 

 一味の二強が割り込むよりも前に、数十人の男達が巨大な丸太を抱えながら飛び出し、騎士達に向けて突撃していった。

 突然の重い一撃に騎士達は吹き飛び、背後の同胞と共に後方へ押しやられていく。

 

「侍のおっさん‼」

「てめェら…」

「少し…出遅れてしまったな。許せ」

 

 驚愕に目を見開く青年達の前に、白馬に跨った白い着物の男が近付いてくる。

 

 丸太を抱えた男達を見れば、先日硬貨の異形達が現れた際に戦っていた元海賊だという男達だ。

 先程の大声と関連付けて考えれば、新ノ介がここまで率いてきたという事だろう。

 

「思いのほか用意に手間取ってな……だが、ここからは我等も参戦する。大船に乗ったつもりでいるがいい」

「若い奴らにばっかいいとこ持ってかれてたまるかよォ!!!」

「海賊歴はおれ達の方が長ェんだ‼ ナメられるわけにいくか‼」

 

 勇ましく、騎士達を睨みつけながら吠える男達。その姿は、エールやエレノアを〝悪魔〟などと呼んで遠ざけ、天災のように突然現れた敵軍に怯えて引き篭もっていた時からは想像もつかない。

 

「それになァ…そこの嬢ちゃんの言葉で目ェ覚めた。おれだってガマンなんざして堪るかよ‼」

「こんなちっさな島で一生なんか終えたかねェ…‼ おれ達ァ…‼ もっとでけェ事する為に海に出たんだ!!!」

 

 数人がかりで丸太を抱え、力を合わせ、隊列を組む騎士達を力技で押し出す彼らの目には、以前は燻っていた欲望が轟々と燃えているのが見える。

 流刑の島に流れ着き、囚われ絶望し、諦めていた彼らの心に再び炎が灯っていた。

 

「渦だのバケモノだのが何だってんだ!!! 邪魔する奴らは全部ぶっ殺して、航海を続けてやらァ!!!」

「しししし‼ 何だよお前ら、やっぱ燻ってたのか」

「うるせェ‼」

 

 どぉん、と息を合わせた一撃が騎士達に決まり、数体を纏めて吹っ飛ばす。

 これまで溜め込んできた不満や、かつて抱いていた願望、突如死を宣告された理不尽への苛立ちが籠っていたのだろう。

 

 どどっと倒れ込む敵に向けて、勝利の雄叫びが迸った。

 

「あんた達……」

 

 思わぬ援軍の登場に、エレノアが呆然と声を漏らす。だが、聞こえてきた足音に彼女の表情が強張り、キッと目を吊り上げる。

 

 倒れた同胞達を踏み越えて、次々に進軍してくる増援の騎士達。

 だが、そこへ別の鬨の声が響き、小石や枝、割れた茶碗や草履などあらゆるものが礫として投げ込まれ出した。

 

「やっちまえ~~‼」

「ありったけブチかましてやれェ‼」

 

 ばらばらと跳んでくるそれらに意識を削がれ、騎士達の統率が乱れだす。

 そこへさらに、梯子や包丁や物干し竿、各々で拵えた得物を手にした町の住民達が、老若男女問わず怒号をあげて踊りかかっていた。

 

 その中には……エールを〝悪魔〟と呼び蔑んだ老人の姿もあった。

 

「ジーさん…」

「お……お…お前達のような余所者に…………これ以上好き勝手させられたくないだけだ……‼」

 

 竹の棒を手に、ぶるぶると足を震わせ、涙と鼻水で顔中をぐちゃぐちゃにした老人が、息を切らせて騎士に殴りかかっている。

 ルフィ達に背を向けながら啖呵を切る姿は、まるで彼らを守ろうとしているようにも見えた。

 

「ど…どど…どいつに殺される事になっても…‼ ここ……腰抜けのまま死んで堪るか!!!」

 

 エールに対する恐怖も敵意も、まだ完全には消え切っていないのだろう。だが、それでも彼はここに来た。

 新ノ介はふっと不敵な笑みを浮かべ、すらりと鞘から刀を抜きながら声を上げた。

 

「行くぞ、お前達!!! 我らの底力を見せつける時だ!!!」

「「「「「ウオオオオオオオオ!!!」」」」」

 

 白い偉丈夫の気合いに満ちた声に合わせ、住民達も拳を上げて応える。

 雄叫びと共に突撃を開始する彼らを見送りながら、新ノ介は傍らに駆け寄ったルフィに目を向けた。

 

「〝麦わら〟のルフィ…‼ 手前勝手な頼みだが………力を貸してはくれんか…⁉」

「しししし‼ おう、いいぞ‼ おっさん、すげェな! コイツら全員説得したのか」

 

 最早別人と思えるほど勇敢に、心をひとつに敵に立ち向かう住民達を見てルフィが感心した声を上げる。

 だが―――新ノ介はふっと、意味深な笑みを浮かべて首を横に振った。

 

「…………いや、違う。彼らの心を動かしたのはお前だ…〝麦わら〟のルフィ」

「ん?」

「お前の真摯な言葉が………熱い仲間への想いが彼らの…エールの凍りついた心を溶かしたのだ。…私に出来たのは、火種を少しばかり整えてやっただけ」

 

 ───窮屈にござる!!!

 

(しかと見た………あやつが待っておったのは…きっとお前だ…‼︎)

 

 そう、心の中で新ノ介は確信する。

 今は亡き友の顔を思い浮かべながら、若き〝王〟の隣で声を張り上げる。

 

「共に征こうぞ…!!! 太陽のように輝く麒麟児よ!!!」

「しししし…‼︎ おう!!!」

 

 通じ合う男達。

 暑苦しい彼らを横目に、天候棒を肩に担いだナミが溜息を吐きながら物陰から進み出た。

 

「はァ……結局こうなるのね」

「仕方ないわ……『仲間』を囮にするなんて、私達には合わないもの」

「エールちゃんを泣かせたクソメダル共にゃ…落とし前をつけなきゃ気が済まねェ」

 

 騎士達の奏でる金属音と、住民達の放つ雄叫び。

 一気に騒がしさを……先ほどの孤独な破壊音ではなく、まるで祭のような生き生きとした喧噪を繰り広げる戦場に、麦わらの一味がぞろぞろと集結する。

 

「さ~て? この中で我らが船長の決定に異を唱える人はいる~~~⁇」

「へッ…忘れたな、そんな話」

「そもそも、あいつが一度決めた事を諦めさせられた試しがねーよ」

「ヨホホホ…‼︎ なるべくしてなったという事ですね!!!」

「お…おれはハナからこうなるってわかってたぞエレノア‼︎」

「えーっ⁉︎ そうだったのか⁉︎」

 

 唯一完全な反対票を入れていたゾロも、若干のばつの悪さを滲ませながら刀を抜いて構える。

 

 エールは呆然と、周囲を囲み守るように立ちはだかっていく青年達を見渡す。

 あれだけ冷たく、殺気さえ向けて拒絶した彼らが、まるで何事もなかったかのように傍にいる事に、戸惑わずにはいられない。

 

「行くぞォ!!! 野郎共!!!」

「「「「「おお!!!」」」」」

 

 未だ戸惑い、座り込んだままのエールをよそに、若き海賊達は自分達が求める(自由)を得るため、敵軍を見据え、戦闘態勢に入る。

 そんな彼らに微笑みを浮かべながら、侍もまた雄々しく吠えた。

 

「成敗!!!」

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