ONE PIECE −LOG COLLECTION : ELEANOR−   作:春風駘蕩

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第37話〝魚人海賊〟

「こんなことなら初めから我々が戦るべきだった。アーロンさん、あんたは大人しくしててくれ」

「あんたに怒りのままに暴れられちゃ、チュッ♡ このアーロンパーク粉々に崩壊しちまうぜ‼」

「また建て直させるのも面倒じゃからなァ」

「………」

 

 道着を着たエイの魚人クロオビが、オネェっぽい格好の着物を着たキスの魚人チュウが、大柄なサメの老人フカが、座ったままのアーロンを止める。

 その後ろで、背中を丸めたタコの魚人ハチが何かを溜めむような体勢になっていた。

 

「ん~~‼ くらえ……‼」

 

 明らかに何か企んでいる様子のタコの魚人に、エレノアたちは警戒心をあらわにする。

 

「あのタコ、何かやる気だ」

「タコは、まず塩ゆでにしてスライス。オリーブ油とパプリカで味をつければ酒のつまみに最適だ」

「いや、あれ確かにタコだけど人だから。料理人目線で話さないで?」

「おい、ちょっと困った話を聞いてくれ」

 

 戦闘前とは思えない気の抜けた会話をしているが、敵の動向から目を話すことは決してしない。

 しかしただ一人ルフィだけが、仲間に聞いてもらおうと手招きをしていた。

 

「視界ゼロ〝たこはちブラーック〟!!!」

「〝蛸墨〟か!!!」

 

 準備を終えたハチは、ルフィたちに向かって口から大量の墨を吐き出した。

 警戒していたエレノアたちはかろうじて降り注ぐ黒を躱すことに成功する。が、ルフィはなぜか墨の直撃を受けて真っ黒になってしまった。

 

「あ―――っ!!!」

「バカお前、何でよけねェ‼」

「あ――‼ 前が見えねェ―――っ!!!」

 

 影のように真っ黒になったルフィが、慌てて辺り構わず手を振り回す。

 身動きもできない彼の前に、巨大な瓦礫を持ち上げたハチが近づいていった。

 

「おいルフィ!!! よけろォ!!!」

「うん、問題はそこだ。なんと動けねェんだが、見えねェし」

「…え、今なんて?」

 

 言葉を失ったエレノアが見てみれば、先ほどモームを振り回す際に突っ込んだ足がそのままになっている。

 しかも思った以上に深く突き立てすぎたのか、全く抜ける様子がなかった。

 

「は」

「何であいつは……‼」

「てめェ自分でつっこんだ足だろうが!!!」

 

 あまりの船長のアホさに、全員から呆れた視線が集中する。

 格好の獲物に、ハチは容赦なく瓦礫を振り下ろした。

 

「〝たこはちブラック・オン・ザ・ロック〟!!!!」

 

 凄まじい轟音とともに、巨大な瓦礫がルフィを押しつぶす。

 あまりにもあっけない最期に周りにいたものたちが呆然となるが、一瞬瓦礫に青い閃光が走ったかと思うと、ボロボロと巨大な塊が崩れ始めた。

 

「ほん…っと―――に…情けない。なんでこの人について行こうなんて思っちゃったんだろうなァ…うらむよほんと……」

「おおー、いいぞエレノア」

 

 パリパリと電流が走る両手を挙げたエレノアが、じとっとした半目で虚空を睨む。

 すでにフードは脱ぎ捨てられ、長い手足の大人の姿に変化している。魚人たちを相手するために、全力の戦闘形態に変身したのだ。

 

「同感だ……」

「すげェぞ、エレノア‼」

「まァ、レディーを傷つけるようなクソ一味よりは百倍良いってことで」

「………そういうことにしとくか」

 

 ほっと安堵の息をつく一味に、エレノアも仕方がないといった笑みを浮かべる。

 一方で、エレノアの真の姿を見た魚人たちには動揺が走っていた。

 

「ニュ~~~ッ!!? て…天族ゥ~~!!?」

「まさか実在してたとはな……チュッ♡」

「ありゃあ…昔一度だけ見た錬金術とかいうもんじゃな。あの小娘……見た目で侮っていると痛い目に遭うぞ」

「ならばあの小娘はフカ爺に任せよう」

 

 ハチやが戸惑いの表情を見せる中、フカは冷静にエレノアの能力を分析する。

 年の功ゆえか、多少変わったものを見た程度で慌てるような愚は見せなかった。

 

「…人間にしちゃあ少しはやるようだが…海賊がそんな騎士道を振りかざすとはしょせん生ぬるい」

「……へ、おれの騎士道が生ぬるいかどうか試してみるか、サカナマン? これでも、おれは半生を海賊に育てられてんだ」

「貴様は魚人という種族の本当のレベルを知らんようだな」

 

 冷笑するクロオビに、サンジは皮肉げな笑みを浮かべて右足をあげて構える。

 二人が睨み合う隙に、どうにかルフィの足を抜こうとウソップが体を思いっきり引っ張っていた。

 

「何を遊んでやがるんだ、あいつらは‼ このアーロンパークで!!! 殺す!!!」

「うわああああああ!!! おい、てめェいい加減抜けろ‼」

 

 気づいたハチにまた瓦礫を用意され、ウソップは必死の形相でルフィを抱えて走り出す。

 すると瓦礫を構えたままのハチの背後で、不敵な笑みを浮かべたゾロが剣を抜いた。

 

「おいタコ、あいつら今忙しいんだ。おれが相手してやるよ」

「ニュ‼ ロロノア・ゾロ‼ そうだ忘れてた‼ お前、よくもおれをダマしたな!!!」

 

 別に騙したわけではなく、うまいこと言いくるめて案内させただけなのだが、今更否定するつもりもない。

 六本の腕でそれぞれ剣を持つハチに、ゾロの笑みは凶暴なものに変わっていく。

 

「そうだ‼ また思い出したぞ!!! てめェはおれの同胞をいっぱい斬りやがったんだ!!!」

「そんな古い話興味ねェな。お前が、おれをどんな因縁で殺したがってようが関係ねェ……もう状況は変わってんだよ。お前らが俺たちを(ツブ)してェんじゃねェ‼ おれ達がお前らを(ツブ)してェんだ!!!」

 

 逃げ惑う間に二組の組み合わせができ、ひとまず安堵したウソップは汗を拭きながら親指を立てた。

 

「よ…よーしゾロ、そのタコはお前に譲るぜ。ナイス………しまった‼ 離しちまった‼」

 

 長く長く引っ張られていたルフィの体が、ゴムの張力で元の場所に戻っていく。

 と思いきや、ルフィは引っ張られた反動で向こう側にいたチュウの腹に激突してしまった。

 

「…失敬」

「てめェはやっぱり、おれに殺されてェようだな‼」

「うわああああああああああああああああ!!!」

 

 偶然とはいえ、攻撃した張本人であるウソップにチュウの殺意が向けられ、ウソップは半ば号泣しながら逃げ出した。

 あっという間に消えていく狙撃手の姿に、エレノアは思わず立ち尽くしていた。

 

「はやっ!」

 

 一度は逃走したウソップだが、チュウの注意が村人たちに向けられると、今度は自分の意思で攻撃して引き寄せる。

 逃げたり挑んだりと忙しい彼の戦いに苦笑し、エレノアは肩をすくめた。

 

「……勇ましいんだか情けないんだか」

「余所見していると死ぬぞ、小娘」

 

 気を抜いていたエレノアは、背後から声が聞こえた瞬間右足の脛を盾にして飛び退る。

 ギャリン!と耳障りな金属が鳴り響き、オレンジ色の火花が飛び散った。

 エレノアは一旦体勢を立て直し、自分を襲った魚人の顔を見て大きく目を見開いた。

 

「〝鮫肌〟のフカ……‼〝海峡〟のジンベエの右腕と呼ばれた男か。タイヨウの海賊団が解散した後は行方知れずになったって聞いたけど……ここにいたとはね」

「女子供をいたぶる趣味はないんじゃがのゥ……まァこれもわしら魚人に逆らった罰じゃと思ってあきらめるがええわ」

 

 皺だらけの顔を凶悪に歪め、フカは両拳を構える。

 そしてエレノアが反撃に出る隙も与えず、弾丸のごとき鋭い突きを放ってみせた。

 

「〝阿羅削り〟!!!」

 

 エレノアは真正面から受け止めようとし、寸前で感じた嫌な予感から慌てて受け流しに移行する。

 しかし防御が甘かったのか、鈍い衝撃とともに先ほどより身激しい火花が飛び散った。

 

「………!!? 削れてる…!!?」

「わしの肌は魚人の中でも相当危険らしくてなァ……若ェ頃はすれ違うだけで相手がズタズタになっちまったものよ」

 

 ブーツが裂け、機械鎧(オートメイル)の装甲がヤスリで削られたように抉れているのを目にし、エレノアのこめかみを冷や汗が流れる。

 もし生身の肉体であったならば、一撃で出血多量に持っていかれる重傷を負っていただろう。

 

「『鮫肌拳』……!!! くらってみりゃあその恐ろしさがわかるだろうよ」

「フン…相手にとって不足はない‼」

 

 だがそれでも、エレノアはフカの前から逃げようとはしなかった。

 むしろ自分にふさわしい相手だと、その目に強い闘志を燃やして構えをとった。

 続々と対戦カードが組まれていく中、一歩後ろで引いていたアーロンがゆっくりと近づいてきた。

 

「アーロンさん、あんたはここで暴れねェでくれって言っただろう」

「暴れやしねェさ。だがちょっとな」

 

 アーロンはニヤリと笑うと、ルフィが突き刺さった石床に指を突き立て、バキバキと塊ごと持ち上げていく。

 何をするつもりかはわからないが、こちらもロクでもないことは確かだった。

 

「お前はおれが!!! ブッ飛ばす!!!」

 

 身動きの取れないルフィはアーロンの顔面を殴り飛ばそうともがくが、逆に腕を掴まれ拘束されてしまう。

 触れることすらも満足にできない人間に、魚人の海賊は残虐な笑みを見せつけた。

 

「てめェら本気でおれ達に勝てるとでも……?」

「だったらどうした」

「なめてると痛い目見るよ?」

「思ってるよバ――カ‼ 手ェ離せ‼」

「何か、言いたそうだな」

「いや…結構‼」

 

 アーロンは実に愉しそうに笑いながら、拘束したルフィを高々と持ち上げる。

 その視線の先にあるのは、チャプチャプと波打つ深い海だ。

 

「じゃあ、こういうゲームはどうだ? 悪魔の実の能力者はカナヅチだ。まァ、この状態なら能力者じゃなくても沈むがな…‼ シャハハハハハハハハハ‼」

「まさか…海へ!!?」

 

 エレノアが意図に気づくが、時はすでに遅かった。

 同じく気づいたルフィが殴りかかり、噛みつき、やめさせようともがくがアーロンにはさほど効かず、ぽいっとゴミでも放るように海に投げ捨てられてしまった。

 

「ルフィ‼」

「てめェ!!!」

「なんてむごいことを…‼」

「今助けに…‼」

 

 ザブン!と勢いよく沈んでいくルフィを目の当たりにし、エレノアたちの表情に焦りが生じる。

 慌てて飛び込もうとするサンジであったが、寸前でその肩をエレノアが掴んで止めた。

 

「待って‼ 海の中じゃ魚人には敵わない‼ こいつらの思うツボだよ!!!」

「ルフィを助ける方法は一つだ………‼」

「こいつらを陸で秒殺して海へ入るのか、上等だぜ」

 

 アーロンの前で待ち構える、三人の魚人の戦士たち。

 もう一人は勇敢な海の戦士が引き受け、どこか遠くへ引きつけて行ってくれたが、残った連中も相当に強力な奴ばかりだ。

 ルフィの息が続く間に倒しきるのは、困難と判断できた。

 

「やるぞ!!!」

「「おゥ!!!」」

 

 だがそれでも、希望を繋ぐためには無茶でもやってみせるしかなかった。

 

「シャハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 アーロンの腹立たしい哄笑が辺りに響き渡る。

 魚人海賊団の幹部たちも、同じように馬鹿にした態度で笑い声をあげていた

 

九体(ごたい)満足でいられると思うなよ、タコ助‼」

「アッハッハッハッハッハ‼ ゲームゲーム!!!」

「腐ったマネしてくれるぜ、クソ魚野郎ども‼」

「フン……そう焦るな。どう転ぼうと貴様ら全員生き残れる希望などないのだ」

「覚悟できてんでしょうね……‼ もう容赦しないよ!!!」

「ほざけ小娘……頭が高ェと思い知れ」

 

 敵の大将を倒すため、そして自軍の大将を救い出すため、三人のの戦士たちは自分にあてがわれた敵を見据え、闘志を燃やす。

 

「穿て‼〝紅薔薇槍(ゲイ・ジャルグ)〟!!!〝黄薔薇槍(ゲイ・ボウ)〟!!!」

 

 パンッ!とエレノアが両手のひらを打ち鳴らし、地面を力強く叩く。

 青い閃光とともに勢い良く伸びていく二本の槍を振り回し、魚人の大男に斬りかかる。

 長さの異なる、異なった意匠を持った槍の穂先がフカの分厚い胸板に食らいつく、かに見えたが、激しい火花を散らして弾かれるだけであった。

 

「硬ったァ…‼」

 

 魚人の肉体の強靭さは有名な話だが、ウロコを貫くこともできなかったエレノアはその表情に驚愕をにじませながら飛び退る。

 まるで全身余すことなく鎧を着こんだ武者を相手にしているかのようだ。

 

「そんなナマクラでわしのウロコが貫けるかァ!!!」

「うおゥ!!?」

 

 ただ硬いだけではない。

 フカの鱗の一つ一つは小さな刃のように鋭く、空気を切り裂いて甲高い音を響かせている。

 フカが腕を振るうだけで、荒く重いヤスリのようにエレノアに襲い掛かってくる。とっさに跳躍して躱すが、掠った衣服の一部がビリビリと簡単に引き裂かれ、肌の一部がさらされてしまった。

 

「ニャロ…」

 

 ローブが引き裂かれ、わき腹が丸見えになってしまったエレノアが、フカを睨みつける。

 作り出した槍も刃が欠けてしまい、使い物にならなくなったために投げ捨てるしかなかった。

 その時、エレノアの耳がドサッという音を捉える。

 

「⁉ ゾロ!!?」

「くそ…何でこんな時に…‼」

 

 見れば苦痛の表情を浮かべたゾロが倒れこんでいる。

 体に雑に巻き付けた包帯からは、すでにじわじわと血が滲み始めている。アーロンパークに到着してすぐ暴れまわり、先ほどから続けているハチとの戦闘で傷が開いてしまったようだ。

 

「やっぱりあの傷が深すぎたんだ……」

「そりゃそうだ、常人なら死ぬか半年は歩けもしねェ程の傷なんだ…‼ 兄貴ずっと我慢してたのか‼」

「あれほどの戦闘して平気な顔してやがるからおかしいと思ったぜ‼ バカかあの野郎」

 

 苦悶の表情を浮かべるゾロに、エレノアは心配そうな眼差しが送られ、サンジは憎まれ口をたたきながら焦燥を浮かべる。

 思わず駆け寄りかけた彼に、突然すさまじい衝撃が襲い掛かった。

 

「エイッ!!!」

 

 サンジのみぞおちに突き刺さる、エイの魚人による正拳突き。

 闘牛の突進か、それ以上の衝撃がサンジに襲い掛かり、体格では半分以下のサンジの体が勢いよく吹き飛ばされる。

 アーロンパークの塀に激突し、突き破り、そのままはるか遠くまで撥ね飛ばされていった。

 

「サンジくん!!!」

「よそ見とは…ずいぶん余裕だなァ!!!」

 

 絶叫するエレノアの背後に、フカがもう一度腕を振りかぶる。

 真正面から迫りくる巨大な拳を目にし、エレノアは即座に後方に跳躍し、両足を振り上げて盾にする。

 しかし衝撃を完全に殺しきることはできず、エレノアは口から血を吐きながら海面に叩きつけられた。

 

「片付いたぜ、アーロンさん…」

「ロロノア・ゾロはどうするよ」

「海へでも捨てとけ。たわいもねェ奴らだな…つまらん。おいハチ‼ 起きろ‼ いつまで寝てやがる………‼」

 

 気だるげに腕を振り、フカたちはアーロンのもとに集まっていく。

 先ほどのゾロとの攻防で瓦礫の山の下敷きとなったハチが、遅れて瓦礫を吹き飛ばしながら立ち上がった。

 

「ンニュ~~~~っ!!! このタコ野郎がァ!!! もう怒ったぞ、おれはてめェをブッ殺す!!! おれ様を魚人島で一人を除けばNo.1の剣豪〝六刀流〟のハチと知っているのかァ!!! 貴様ら人間など、天地がひっくり返ってもこのオレには勝てねェんだぞォ!!!! ニュ~~~~っ!!! ニュ?」

「誰に言っとるんじゃお前は…」

 

 すでに起きている者は誰もいないのに、怒りのままに叫ぶハチにフカから呆れた目が向けられる。

 これで本当に終わりか、と絶望が村人たちの間に走った時、ザッと地面を踏みしめる音が響いた。

 

「〝六刀流〟か、くだらねェ。一体、何がすごいんだ⁉」

 

 たった一本残った刀を掴み、どう猛な笑みを浮かべたゾロがほとんど満身創痍の体で立ち上がる。

 突けば倒れそうなほど弱っているというのに、常人ならば思わず射すくめられるほどの迫力に満ちた目で、余裕の態度をとる魚人たちを睨みつけていた。

 

「これだけは言っとくがな、タコ‼ おれには会わなきゃならねェ男がいるんだ……そいつにもう一度会うまでは、おれの命は死神でも取れねェぞ!!!」

 

 ギラリと光る眼で射抜かれ、ハチは眉間にしわを寄せて睨み返す。

 すると、コツコツと靴音を響かせ、壁に空けられた穴を通ってサンジが戻ってきた。

 額から血を流しながら、煙草をくわえて不敵な笑みを浮かべるその姿は、狩人のような静かな殺気に満ちていた。

 

「な――んだ…あいつの正拳(パンチ)が40段なら、いつもくらってたクソジジイの蹴りは400段だな…」

 

 一撃で仕留めたと思っていたクロオビは、存外丈夫な人間に不快げな目を向ける。

 その背後から、ざばっと水飛沫をたてて影が飛び立った。

 

「…あー、ビックリした」

 

 ずぶ濡れになりながら地面に降り立ったエレノアは、ぶるぶると体を振って水滴を落とし、髪をかき上げて肩をすくめた。

 相当な力を加えたはずだが、思ったほどダメージを負っていないことにフカは眉を寄せてエレノアを睨みつけた。

 

「鱗の硬さは健在、動きの切れもまあまあ………でも肝心の(パワー)はだいぶ衰えてるみたいだね、おじーちゃん?」

「……どうやらあれだけやってもわからんらしいのう。これだから最近の若い奴はァ…‼」

 

 小悪魔のような、馬鹿にした態度にフカは苛立たし気に牙をむき出しにする。

 子供かどうかはともかく、女ということもあって手加減してやろうと思っていたのかも知れないが、フカの理性はそこで完全に切れた。

 

「ああああああ!!!」

 

 今もなお逃げ回っている嘘つきの彼も、彼なりの戦いを続けるのだった。

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