ONE PIECE −LOG COLLECTION : ELEANOR−   作:春風駘蕩

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今回は()()の戦闘です。

今回かなりコレジャナイ感が読者の皆様は感じるかもしれませんが、世界観の違いを無理矢理押さえつけたために生じた作者の未熟さです。
まぁいいか、と楽しんでいただけたなら幸いです。


第54話〝夜は終わらない〟

「……さてさて、ゾロ君が帰ってくるまでヒマだなァ…。一人で飲むのもつまんないし、どう時間をつぶしていようか………」

 

 片っ端から叩きのめしてやった賞金稼ぎ達を、適当な場所に放り捨てると、エレノアは頭上の奇麗な月を見上げながら考える。

 戦闘の後だからかすっかり目もさえている。しかし、暇をつぶせるようなものは何も残っていないことに本気で悩んでしまっていた。

 

「…ん?」

 

 そんな時、エレノアの耳がどこかから聞こえてくる戦闘の音を捉える。

 ゾロがまだどこかで賞金稼ぎ達を相手にしているのだろうかと思えば、ふと相手の方の声に何か引っかかるのを感じた。

 

「あれ? 何だろ……聞き覚えのある声を聞いた気がする」

 

 気になったエレノアは、使命感のようなものを抱きながら、音のする方へと歩き始めた。

 

 

「おらァ!!!」

「はっ‼」

 

 凄まじい金属音とともに、ゾロの剣と鎧の大男の拳が激突した。

 かとおもえば、衝撃をいなしたゾロが鎧の腕を弾き、接近して胴に向けて刃を振るう。

 しかしゾロの剣の速度を見切った大男は刀の腹に掌底を放って反らし、反撃とばかりに拳を突きだす。

 

「チッ…‼ 無駄にでけェ身体しやがって…!!!」

「好きでこうなったんじゃないやい!!!」

 

 それを紙一重で躱し、ゾロは力尽くで鎧の防御を抜くために斬撃を放ち続けた。大男もそれを反らし、一進一退の攻防が繰り広げられる。

 すると、不意に体勢を落としたゾロが三本の刃を真下から振り上げ、大男の両腕をかち上げた。

 

「!!!?」

 

 ゾロの馬鹿力が加わったことで、大男の体がわずかに浮き体勢が崩れる。

 そのすきに、ゾロは曲げた足をバネのように伸ばして大きく跳躍し、防御が緩んだ顔面に狙いを定めた。

 

「おれとやるには……ちっとばかし経験がたりなかったな」

「しまっ……!!!」

「そのツラ拝ませてもらうぜ‼」

 

 空中でコマのように回転したゾロが、その勢いに乗せた斬撃を放つ。

 強烈な横薙ぎは大男の兜に直撃し、ガァン‼と凄まじい音を立てて弾き飛ばした。

 鎧の中の素顔を見てやろうと、ゾロがにやりと笑みを浮かべた時。

 

 中身が詰まっているはずの鎧の中から、勢い良く鋭く尖った刃が突き出された。

 

「!!? うおっ…!!!」

 

 間一髪、ゾロは大きく背中を反らすことで放たれた刺突を躱し、大きく後方に跳躍することで距離を稼ぐ。

 驚愕で乱れた呼吸を整えていると、暗い鎧の中から口惜しげな舌打ちが聞こえてきた。

 

「あ~~くっそォ…今のは入ったと思ったんだけどなァ…‼ いいカンしてやがるぜ〝海賊狩り〟…!!!」

 

 膝をついた鎧の首から、ずるずると金髪の小柄な青年が姿を現してきた。

 向けられる金の鋭い瞳にゾロは大きく目を見開き、僅かにタイミングがずれていれば頸動脈を切られていたという事実に冷や汗を流す。

 

「………なんだァ? あのゴツイ鎧の中はずいぶんとちっこい奴が入ってたんだな…」

 

 内心の動揺を悟られないよう、精一杯の虚勢のつもりで挑発の言葉を発するゾロ。

 しかしその瞬間、ゾロの前に姿を現した金髪金目の青年のこめかみに、ビキィッ‼と太い血管が浮き立った。

 

「誰が豆つぶドちびか―――っ!!!」

「うおぉおおぉおおお!!!?」

 

 パンッと両手のひらを打ち合わせた青年が地面を叩いた瞬間、土が巨大な拳の形となってゾロに襲い掛かってきた。

 慌てて飛びのいたゾロは、その攻撃に強い既視感を覚えた。

 

「この技…こいつ……!!! 錬金術師か!!!」

「逃がさん…‼ おれをチビといったその罪!!! 万死に値する!!!」

 

 予想以上の強敵の出現にゾロは戦慄するが、攻撃した本人は相手の態度の変化など微塵も気にしていない様子であった。

 ただただ、自分の外見に対して告げられた言葉に激しい怒りを燃やしていた。

 

「ちょうどいい…他の錬金術師の実力がいかほどのものかはからせてもらうぜ…‼」

 

 だがゾロも、いつまでも呆気にとられているようなタマではない。

 刀を構え、いかなる攻撃が来ようとも対処できるように気合いを入れなおした。

 そんな彼の周囲を、大きな影が覆い隠した。

 

「よそ見してると危ないよ、お兄さん」

「!!! 中身が少ねェと思ったら…まだ中にもう一人いたのか!!!」

 

 先ほど金髪の青年が着ていた鎧が近づいてくるのが見え、ゾロは咄嗟に二人で鎧の中に入っていたのだと考える。

 こうなればもう一人の顔も拝んでやろうと、背後から殴りかかってきた鎧の兜を弾き飛ばした。

 

「なっ…何ィ!!?」

 

 だが、その考えは叶わなかった。

 弾き飛ばした兜の下には、文字通り()()()()()()からだ。

 

「あーっ‼ また僕の頭が!!!」

「あの野郎……‼ 鎧の中身空っぽだったぞ!!? どうなってやがる!!?」

 

 あまりの驚きで思いっきり後ずさるゾロの前で、鎧は首を探して右往左往していた。

 何度見直しても、鎧の中はがらんどうで何かが入っているようには見えない。まるで亡霊かなにかのような不気味さに、ゾロはしばらく開いた口がふさがらなかった。

 

「見られたからには……‼ その口閉じさせてもらうぜ!!!」

 

 鎧に兜を手渡した金髪の青年が、そう言ってゾロを鋭く睨みつける。

 手の甲から伸びた刃に手を添え、青年は獰猛な笑みを浮かべながらゾロに向かって突撃していった。

 

「おれからいくぜ‼ そらそらそらァ!!!」

「ぐっ…!」

 

 鎧から出たことで素早さを増した攻撃に、距離を測り損ねたゾロが苦悶の声をこぼす。

 素早くも相当に重い攻撃を放つ腕を狙うも、甲高い金属音とともに弾かれて火花を散らすだけであった。

 

(こいつも機械鎧(オートメイル)…!!?)

 

 攻撃といい義肢といい、仲間とよく似た攻撃を繰り出してくる相手にゾロはかなりの苦戦を強いられていた。

 苦し紛れに力強く横薙ぎを放つも、青年が急に後方に引き下がって空振りに終わった。

 

「このっ!」

「よっ!!! あとは頼むぜ、アル!!!」

「任せて、狙い撃つ!!!」

 

 軽々と宙に浮いた青年が、後方に控えていた鎧と位置を入れ替わった。

 鎧が地面に描いた奇妙な模様に手を触れると、青い閃光が走って地面が盛り上がり、幾丁もの銃を生み出していった。

 

南ノ果テノ炎ノ世界(ムスペルヘイム)〟!!!!

 

 目を見開いて固まるゾロに向かって、作り出された銃が一斉に火を噴く。

 避ける暇さえ与えず放たれた銃弾は、ゾロを中心とした大きな爆発を生じ、激しい炸裂音を響かせた。

 

「っしゃあ!!! ざまァ見やがれ‼」

 

 自分のもっとも嫌いな言葉を口にした相手を仕留めたことで、青年は思わずその場でガッツポーズをとる。

 そのまま小躍りまで始める彼だったが、爆発地点で上がっていた炎がゆらりと揺らめくのに気が付いた。

 

「三刀流…‼」

 

 聞こえてきた声に、青年と鎧はさっと表情を変えて身構える。

 防御態勢に入った二人に、炎の中から飛び出してきた修羅が三本の刃を振りかざした。

 

狒火達磨(ひひだるま)〟!!!

 

 炎を纏ったすさまじい一撃が、青年と鎧に襲い掛かる。

 鎧の一部に浅く、青年の左足の甲にも傷が刻まれるも、それ以上の目立った外傷はつけられずに終わった。

 ザザッと地面を滑った一人と一体は、冷や汗を流しながら舌打ちした。

 

「やっぱ強ェな…‼」

「うん…‼ 東の海(イーストブルー)で噂になってただけのことはあるね…‼」

「だが…おれ達兄弟の相手じゃねェ…‼」

 

 青年はさらなるやる気をみなぎらせた笑みを浮かべ、自分の拳を打ち付けて気合いを入れなおす。

 鎧はそんな青年にやれやれと言った様子で肩をすくめるが、自らその隣に立って拳を構えていた。

 

「ケッ…同時に来ると厄介だな。錬金術師ってのがこうもやりづれェ相手とは…」

 

 炎を振り払ったゾロもまた、青年たちに険しい視線を向けていたが、その目は明らかに高揚で燃えている。

 航海を始めてようやく出会えた好敵手に、戦闘意欲が刺激されて仕方がないようだった。

 

「こっからは本気でいくぜ…!!!」

「うん‼」

「上等だ…‼」

 

 再び向かい合った両者が、互いの武器を携えてタイミングをはかる。

 次で決着をつける。そんな気迫が高まり始めた時だった。

 

 

 

エ~~~ド~~~く~~~ん♪

 

 

 

 不意に、聞きなれた女の声が響き渡ってきた。

 

ア~~~ル~~~く~~~ん♪

 

 ゾロはいい所で邪魔をされたといった様子で顔をしかめるが、相手はまた違った反応を見せていた。

 雷かなにかに撃たれたかのように、ビクゥッ!!!と大きく全身を震わせたのだ。

 

「……こ、この声は⁉」

「まさか…まさか………!!!」

 

 青年と鎧は、壊れた人形のようにぎこちない動きでゆっくりと振り向いていく。

 ただ事ではない様子を嗅ぎ取ったゾロは、一体何が起ころうとしているのかと青年たちの背後へと目を凝らした。

 

「二人とも……こんなところでな~にやってるのかにゃァ~~?」

 

 はたして現れたのは、ゾロがやはりよく知っている女錬金術師だった。

 しかしいつもの彼女とはどうにも様子が違って見える。具体的に言えば、その顔に浮かんでいるのは奇麗な笑顔なのに、纏っている雰囲気が穏やかではなかった。

 

「あ………あ……!!!」

「姉…弟子………!!!」

「は?」

 

 訝し気に眉を寄せるゾロは、凄まじい殺気を放っているエレノアに、青年と鎧は聞き捨てならない言葉を発したのを聞いた。

 青年と鎧は、もはやゾロのことなど忘れたかのように凍り付き、ガタガタと震えながら立ち尽くしていた。

 

「あ……姉弟子‼ な…何でこんな所に…!!?」

「し…〝白ひげ〟の船にいるはずじゃ……!!!」

 

 エレノアに真っ直ぐ見据えられている一人と一体は、どうにかこの窮地を脱しようと必死に頭の回転させているようだ。

 が、徐々に近づいてくる天使の娘を前に、恐怖でまともに思考することもできずにいる様でもあった。

 

「……あいつら、まさか知り合いなのか…?」

 

 呆然とゾロが呟いていると、青年たちのすぐ近くまで歩み寄ったエレノアがこてんと首をかしげた。

 

「政府の狗に成り下がったと聞いたのに……今度は賞金稼ぎに転職ですか………ずいぶんいいご身分ですねェ…?」

「い、いやいや待て待て待ってくれ姉弟子!!!」

「こっ…これには海より深く海より広いワケがあって……!!!」

 

 滝のような冷や汗を流し、極寒の河に放り込まれた後のように震える二人が言い訳を口にしようとする。

 だがそんな二人の言い分は微塵も聞かず、エレノアは自分の両手のひらをパンッと打ち合わせた。

 

「問答無用‼」

 

 その手が地面に触れた瞬間、先ほど青年たちが放っていたものとは比べ物にならないほどの青い輝きが迸った。

 

「師匠に代わってお仕置だァ―――――!!!!」

「ぎゃあああああああああ!!!!」

 

 エレノアの触れた地面が変形し、まるで大河の洪水のような勢いで造形された拳の嵐が青年たちに襲い掛かった。

 青年たちは悲鳴を上げて逃げ惑い、やがてつんのめるように転んでしまった。

 

「まっ…‼ ままま待ってくれ姉弟子!!! 話を‼ 話を聞いてくれ!!!」

「聞きません…黙って死ね」

 

 なんとか距離だけでも稼ごうと、しりもちをついたまま後ずさる青年と鎧。

 しかしエレノアは、傍からはあまりに憐れな彼らに一切の遠慮も手加減もしなかった。

 

虹霓之剣(カラドボルグ)〟!!!

「ぎゃああああああああ!!!!」

 

 青い閃光を纏う手刀を地面に突き立てた瞬間、光が地面を伝って青年たちの真下で炸裂する。

 次の瞬間、凄まじい輝きとともに地面が爆発し、青年と鎧は空中に勢いよく投げ出されていった。

 

「もう勘弁してくれ姉弟子ィ~~~~~!!!!」

「ごめんなさァ~~~~い!!!」

「フフフフフ…………逃がさないよ…!!!」

 

 ひゅるるる…とどこかへ飛ばされていく青年と鎧を、エレノアは底冷えする笑みを浮かべたまま追いかけていく。

 一人残されたゾロは、獲物を横から掻っ攫われた虚無感と嵐の後のような寂寥感に、反応することもできずにいた。

 

「……なんだありゃ」

 

 そんな呟きにこたえてくれるものは、この場のどこにもいない。

 肩をすくめたゾロは、やがて呆れたように視線を外し、気だるげに歩き始めた。

 

「とりあえずまァ…終わりだな。飲みなおすか」

 

 この何とも言えない虚無感は、酒でしか埋められないような気がしていた。

 

 

「どわっ…‼」

「や~っと追いついたよ……エルリック・エドワードにエルリック・アルフォンス……」

 

 町中を駆け回り、逃げ続けていた青年と鎧は、やがて行き止まりに追い詰められていた。

 壁に背を押し付け、それでもなお逃げようとしている彼らに、エレノアはボキボキと拳を鳴らして近づいて行った。

 

「さ~て…どう料理してあげようか…」

「まっまっまっ待ってくれ!!! おれ達ホントに賞金稼ぎになったわけじゃないんだ!!! なっ⁉」

「うん‼ そうなんだよ姉弟子!!!」

 

 金髪の青年・エドワードの必死の命乞いに、鎧・アルフォンスもブンブンと残像が残るほどの勢いで首肯する。

 しかしエレノアは、そんな懇願を鼻で笑ってあっさり却下した。

 

「そういうわりには、さっき〝一番の稼ぎ頭〟とか言われていい気になってたみたいですけどねェ…?」

「はゥっ!!!」

「出たよ地獄耳!!!」

 

 ゾロとのやり取りや、他の賞金稼ぎからの評価を聞かれていたらしく、エドワードもアルフォンスもギクッと思い切り目をそらした。

 少なくとも、いやいや賞金稼ぎをやっていたわけではなかったようだ。

 

「だいたいどんな理由があって〝国家錬金術師〟が賞金稼ぎみたいな闇の世界に………ん?」

 

 問い詰めようとしたエレノアの耳に、ふと気になる声が届いた。

 

 ―――社長(ボス)の言葉はこうだ、『おれの秘密を知られた』。

    どんな秘密かはもちろん、おれも知らねェ。

 

 ―――我が社の社訓は〝謎〟…。

    社内の誰の素性であろうとも決して詮索してはならない。

    ましてや社長(ボス)の正体など言語道断。

 ―――…それで、よくよく調べ上げていけば、ある王国の要人がこのバロックワークスに潜り込んでるとわかった。

 

 物騒な会話に、そして聞こえてきた気になる単語に、エレノアの眉間にしわが寄った。

 

「………王国の要人?」

「!!? な…何で姉弟子がそのことを…!!!」

「まさか…!!!」

 

 思わず口をついて出ていたエレノアの声に、エドワードとアルフォンスはハッと顔色を変えた。

 先ほどの命の危機の顔色とは違う、大事なものが危険にさらされているかのような、そんな必死さを感じさせる様子だった。

 

「すまん姉弟子!!! 詳しい説明は後だ!!!」

「何てこった…‼ あの人が危ないっ!!!」

「あっ、ちょっと…!」

 

 エドワードとアルフォンスは、エレノアを押しのけるようにして走り去っていく。

 一瞬怒りを忘れて立ち尽くしていたエレノアは、続いて聞こえてきた何者かの声に、思考が停止するのを感じた。

 

 ―――罪人の名は、アラバスタ王国護衛隊長イガラム‼

    …そして、アラバスタ王国〝王女〟ネフェルタリ・ビビ……!!!

 

「ウソォ!!?」

 

 偶然耳にしてしまった驚愕の事実に、エレノアは思わず目を見開いた。

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