欲しいものほど手に入れ難い   作:春風鈴兎

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チョコレートを貰いたかった。

って言えば分かりますよね?

今後のストーリーのネタバレが含んでいるので、どうなるかを知りたくない方は注意バック推奨です。

でも、分岐したやつも書くと思うのでどうか「ふざけるな」や「クソ野郎」などの罵倒はやめてください。


番外編
2月14日


長袖のシャツ1枚だけでは過ごせないとても寒い季節になった。そして、今は家庭科の時間である。

 

「班でまとまってちゃんとやれよなー」

 

先生はそう言って教室を出て行った。1つだけ言わせて欲しい。あんたが出て行ったらほとんどのやつはやらないから出て行かないほうがいいんだけど。

 

「………」

 

「どうしたの?さっきから黙り込んでるけど」

 

「え?……あ、あぁ、なんか悪いな」

 

「悪くないんだけど」

 

「そうか?話し合いだから悪いと思ったんだけど」

 

「話し合いだけどみんな別の事を話してるから心配ないよ」

 

「それはそれでやばくない?」

 

「そうだよねぇー」

 

奥沢はダルそうに答える。そんな中同じ班である弦巻は、いつものようにニコニコしながら僕達のことを見ていた。飽きずに良く見ることが出来るなと思いながら無言の間を作る。

 

「「「………」」」

 

そういえば、何について話し合えばいいんだ?ずっと別の事を考えてたから聞いてなかったから分からん。そんなことより甘い物が食べたい。

 

「そういえば新崎」

 

無言の間を破ったのは………なんと!奥沢だった!

 

「……変なこと考えてない?」

 

「何のことだ?」

 

「まぁ、いいや。ゆりさんが渡したい物があるから楽しみにしててって言ってたよ」

 

「え''?」

 

「何その反応は」

 

「何でもなくはないんだけど、何でもないんだよ」

 

は?と、怒り気味で返してきた奥沢。たしかに、その反応が正しいんだろうけど心が折れかけるからやめてほしい。まぁ、弦巻よりは弱いけどね。

 

「で?何でそんな反応を?」

 

「だって、あの人のことだから無駄に高い物を渡してくるからさ。それに、あの人は今は学校にいないからさ」

 

「……え"?」

 

次は奥沢が変な声を出した。それでもニコニコしながら見ている弦巻がいる。だけど、笑顔じゃない弦巻は予想出来ないから笑顔でいて欲しいけど。

 

「というか、誰からそれを?」

 

「戸山さんから」

 

「……戸山?なんで?」

 

「さぁ?」

 

なんで戸山からなんだ?いつもなら、りみに伝えるはずなのに。……なんか企んでるのか?いや、そうに違いない。例えば、アルコール入りの食べ物を渡してきたり、睡眠薬を入れた食べ物を作ったりとかがあるため危険度がとにかく高い。つまり、慎重に行動するしかないのだ。

 

変なことを考えてる時に今まで話を聞いていた弦巻が話し始めた。

 

「ねぇ、美咲に魁斗」

 

「ん?」「どうしたの?」

 

「今って何をすればいいのかしら?」

 

「「話し合い?」」

 

「内容は?」

 

「生活記録?」「来週の家庭科の調理実習で何を作るか」

 

「どっちが正解なの?」

 

なぜ聞く。

 

「奥沢のやつだ」

 

「どうして嘘をついたの?」

 

「嘘はついてない。話を聞いてなかったから適当に言っただけだ」

 

「なら、いいわ」

 

いいのかよ!めちゃくちゃ心が広すぎるだろ!……こころだけにか。

 

そう思った瞬間思いっきり頭を叩かれた。

 

「いっ!」

 

「バカなことを考えるからそうなるんだよ」

 

「叩いた本人が何を言いやがる」

 

「はっ!叩かれる方が悪い」

 

「なら、こっちが何の理由もなく叩いても良いってことだよな」

 

「は?いい訳ないじゃん」

 

バチバチと目線で奥沢と睨み合っていると教室のドアが開いた。だが、そんなことは今は無視だ。今の敵は奥沢だからな!ちなみに弦巻は紙に絵を描いている。

 

「あたしは叩いても問題ない。だけど、新崎は問題になる。なにかおかしなことでも?」

 

「……お前が好きなやつをバラしてもいいのか?」

 

「うっ……でも、あたしはやる」

 

「へぇー……なら早速」

 

「え?ちょっ」

 

「弦巻ちょっといいk「やめろ!」ぐえっ」

 

弦巻に話そうとした瞬間に襟元を奥沢に引かれて首が閉まりかけた。そのせいで弦巻はこちらを見ながらクエスチョンマークをだしながら固まっていた。

 

「な、なんでもないから」

 

「???魁斗の言葉なのにどうして美咲が?」

 

「えっ……と。なんでもないから気にしないで」

 

「美咲がそう言うならそうなのね」

 

そうやってまた弦巻は絵を描き始めた。というか今どんな状況なんだ?下には奥沢の足があって、上には奥沢の顔があるから……え?待ってくれ。これって膝枕みたいな状況なのか?もしそうだとしたら殺される。あの人に殺される。

 

「な、なぁ、奥沢」

 

「なに?」

 

「この形やばい。殺される」

 

「え?………ご、ごめん///」

 

今の状況を理解した奥沢は顔を赤くしながらすぐに僕のことを解放した。そのことに気付いた弦巻はこんな質問をしてきた。

 

まだ3時間目なのに疲れた。

 

 


 

 

放課後になった。ゆりさんは楽しみにしといてと言っていたが何処で待つかを言われてなかったので学校から出て公園のベンチに座っていた。

 

学校ではあの時間以外何事も無くただ平穏な時間を過ごした。あとは、戸山からクッキーを貰ったぐらいだ。ちなみに、戸山が顔を赤くしてたのを初めて見た。

 

「……しくったな」

 

そう僕はしくったのだ。なぜなら、この寒空の下でなにもせず座っているからだ。動けばいいんだけど、なんか今さら動くのは変じゃね?と思って1時間近く経っている。そもそも、こうなっているのはゆりさんが原因なんだ。さっきと同じことを言うかもしれないけど、ゆりさんが何処で待つかを言ってくれれば良かったのだ。

 

「……」

 

寒い。寒すぎる。こんな寒さじゃ雪が降るんじゃないのか?

 

そう思った直後にパラパラと雪が降り始めた。

 

「げっ……マジか」

 

動いた方が良いのか?いや、でも、雪が積もる感触を確かめたいからなぁ。まぁいいや。このまま待ってよ。

 

 

それから1時間経った時だった。ついに待っていた人が来た。

 

「待った?」

 

「待ってないですよ?」

 

「雪が積もって無かったら通じたかも知れないけど嘘は良くないよ?」

 

「こっちの方が良いと思ったんだけどなぁー」

 

それもそうだねとウインクしながら言ってきた。とても可愛かった。

 

「ところで、なんで雪を振り落とさないの?」

 

「なんか、気持ち良くて」

 

「ふーん……」

 

ゆりさんは不思議そうにしていた。流石にこれ以上寒空の下にいるのは辛いから本題を切り出した。

 

「ところで何をくれるんですか?」

 

「これだよ」

 

ゆりさんは手に持っていた紙袋を渡してきた。

 

「チョコレートにマフラーだよ」

 

「マフラーですか……マフラー!?」

 

「何か変?」

 

「変じゃないですけど、何故マフラーなんですか!?」

 

「だって、魁斗くんのネックウォーマーが古そうだったから新しくしたかったんだもん」

 

え?何この人。めちゃくちゃ可愛いんだけど。

 

「いくらしt「私の手編みマフラーだからね」」

 

「どうして手編みマフラーを?」

 

「進路も決まってるし暇だったからね」

 

「本当に留学しなくて良かったんですか?」

 

「……うん」

 

「嘘つかないでください」

 

僕は立ち上がりゆりさんと向かい合った。

 

「嘘なんか…」

 

「それも嘘です」

 

「うるさい!嘘なんかついてない!」

 

「いいや!ついてます!」

 

「貴方に、魁斗くんに私の何が分かるの!」

 

「っ……!」

 

分からない。僕には貴女のことが分からない。分かる訳がない。そんなの気にしたことがない。いつも貴女が関わってくるから。何かしてもちゃんと関わってくると思ってるから。笑顔で接してくるから。変わらない態度でくるから。

 

「やっぱり分からないんだ」

 

分からない。なんで僕のことを好きになってくれたんだ。なんで笑顔で接してきてくれるんだ。なんで変わらない態度できてくれるんだ。なんで関わってくるんだ。僕は貴女の頼ってばかりなのに。

 

「もういいよ。帰るね」

 

……何か言わなきゃ。このままだと一生後悔する。でも、なんて言えばいいんだ。

 

「バイバイ」

 

なんでこんなに悩む必要があるんだよ。あの人はバカで、ドジで、料理が上手で、綺麗で、可愛くて、ギターが上手で、歌が上手くて、綺麗に泳げて、頭が良くて、手先が器用で……なんだよ、こんなに出てくるのになんで悩んでるんだよ。もう分かってるんだろ?

 

分かってるさ

 

なら、分かるだろ?何をすればいいか。

 

あぁ、分かってるさ

 

だったら行けよ。

 

顔を上げ去って行くゆりさんの後を追いかける。

 

「待ってください」

 

ゆりさんの手を掴み動きを強制的に止める。

 

「なんなの!」

 

「僕には分かりません」

 

「だったらやめてよ!」

 

「やめません!」

 

「どうして!」

 

「だって、僕は。……僕は、僕は!貴女のことが好きだから!」

 

「えっ……」

 

「良く分からないけど好きだから!ゆりさんの良いところは知ってるから!もし、ゆりさんを変に言う人がいるのなら僕はその人にゆりさんの良いところを100個言う!」

 

「そんなに……ないよ」

 

「ありますよ!」

 

ゆりさんは涙を流しながらこっちを向いた。それに笑顔で。

 

「ありがとう」

 

ゆりさんは持っていた傘を捨て背伸びをしてキスをしてきた。唇と唇が触れ合うだけのキスだった。短い時間だけだったけど長い時間していたような気がした。

 

「私なんかでいいの?」

 

「はい。……ゆりさんは僕でいいんですか?」

 

「うん。君がいいの」

 

「僕もです」

 

もう1度キスをした。今回はさっきよりも長い時間キスをした。

 

「あはは、2人とも雪まみれだね」

 

「そう……ですね」

 

僕は考えるより行動する方が合っているのかも知れない。

 

 


 

 

後日のことだ。僕はゆりさんから貰ったマフラーを着け商店街を歩いていた。

 

「あれ?魁斗くん?」

 

「まりなさん?」

 

「久しぶりだね」

 

「そうですね」

 

「そのマフラー貰ったの?」

 

「はい。貰いました」

 

「そう……なんだ。幸せにね」

 

「まりなさんも幸せになってくださいね」

 

「また来てくれると嬉しいよ」

 

そう言ってまりなさんは去っていった。

 

 

あっ、ライブ予定聞けば良かった。




ありがとうございました。

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