上手く書けない
「告白してくれませんか?」
回りくどく聞くのはめんどくさい。だから、直球に聞いた。告白してくれるように。
「えっ……」
「何か?」
「“何か?”はおかしいよね?急に告白してくれないかって言われてもさっきの私みたいになるよ」
「……」
まぁ、そうだろうな。
「だからさ、それを聞いた意味を言ってくれないかな?」
まりなさんはカウンターに思いっきり手を叩いて脅してきた。
「まりなさんは、自分の心にある感情や気持ちを誰かに伝えたいですよね?」
「まぁ、そうだね」
「だから、あの人に伝えてくれませんか?僕はファントムで良いので」
「今はそんな事を言う必要はないよね?なんで、急にあの人に告白してなんて言ったのかって聞いてるんだよ」
胸ぐらを掴みそうな勢いで近付いてくる。そして、睨みつけてくる。
「僕の中にある気持ちを整理したいんですよ。だから、今から渡す紙を見て貴女の気持ちを伝えてください」
「──っ!」
「……でも、貴女が伝えたければで良いですよ」
「なら、どうしてそんなことを!」
まりなさんは胸ぐらを掴んできた。ギターをやっているから握力が強いという予想は当たった。この人の手には青筋が浮かんでいるから分かった事だ。
「さっきも言った通り。僕の気持ちを整理するためですよ」
「喧嘩売ってるの」
「まさか、ファントム役で良いって言ってるんですよ」
「それが──「こんにちは〜」」
まりなさんが何かを言おうとした時にお客様が入ってきた。ただ、カウンターで喧嘩が起きかけていたのでお客様は固まってしまった。
「……After glowの皆様でしょうか?」
この時間に予約しているグループは覚えていたので少しだけ間を空けて質問した。この空気の中で返答していいのかと思っていそうなお客様。喧嘩が起きかけているのにどうして質問してくるんだという顔をしているお客様。ワタワタしているお客様。パンを頬張りながら幸せそうな顔をしているお客様。興味がないのか早く終わらないかと思ってそうなお客様。……ちょっと待て。なんでパンを食べているんだよ。
「えっと……」
「気にしないでください。いつも通りなので」
嘘をつきながら話を進める。
「そ、そうなんですか」
「そうなんですよ。さて、話を戻しましてAfterglowの皆様でしょうか?」
「そうです」
「分かりました。では、2番の部屋にお願いします。終了時間の10分前になりましたらライトが点灯し始めるので」
「分かりました」
ピンク髪の子が答えてAfterglowの皆様は2番の部屋に向かっていった。
……多分だけど話が戻るんだろうな。未だに胸ぐら掴まれてるから。なんていうかやらかしたな。
どうやって終わらせよう。黙り込むか反論するか。……めんどくさい。
「
おっと、さっきまでは大人っぽい返し方だったのに急に子供っぽくなったな。
「馬鹿とはどういう意味ですか?」
「そのままの意味なんだけど」
「あぁ……そういうことですか」
確かに僕は馬鹿だと思う。自分の恋を終わらせて他人の恋を始めさせることは馬鹿な行動だと思う。……けど、恋は始まるものじゃなく落ちるものらしい。
恋は盲目となんかの本にこんなことが書いてあった気がする。その意味は
「終わりでいいですよね?」
「何を!」
「いつまで掴んでるつもりですか。僕はもう……決めたんです」
「──っ!わからない」
「何がですか?」
「どうして!自分だけが後悔すれば良いって思ってることが!」
「僕にだってわかりませんよ!いつのまにかそう思ってた!ただ!ただ!思ってただけだったのに!気付いたらこうなってたんだ!」
「だったら今から治していこうよ!」
「……どうやってですか?」
「それは……分からないけど……魁斗くんが嬉しいって思うことを増やしていけば良いと思うよ」
「あなたらしいですね」
「高校生には夢を見てほしいからね」
“あなたが見れなかったからですか?”と返してみと“えっ?私は見てたよ?”と返ってきた。
なんだよ、僕だけが見れてないのかよ。夢を見れてないそんな自分を殺したくなった。でも、殺せない。殺したくても殺せない。殺せないから殺したい。そんなサイコパスみたいな事を考えながらまりなさんの目を見る。
「どうしたの?」
“なんでもないです”と答えて目を見るのをやめる。そのまま目を閉じて今までのことを振り返ってみた。……っとその前に言わないといけない事があった。
「いつまで掴んでるつもりですか?」
「あっ……ご、ごめんね!」
まりなさんは胸ぐらから手を離した。手を離すといつもの笑顔で“仕事頑張ってね”と肩を軽く叩いてスタッフルームに向かっていった。
今まで立っていたため少し足が痺れてきた。近くにあった椅子を持ってきて外が見える位置に座った。あれ?さっきも座っていたんじゃないの?と思った方。それは違うぞ。“告白してくれませんか?”と言った時には立っていたのさ!
心の中で溜め息をつきながらぼーっと中学から今日の事を振り返っていた。
中学は花咲川でもなく羽丘でもない共学校にいた。その学校にはA組にいる戸山香澄もいた。僕が花咲川にした理由は特に意味もなくただなんとなく選んだ。
進路表に花咲川学園と書いている時に戸山がその進路表を見てきた。戸山とは一応3年間同じクラスだった。だから、話し掛けられれば話すようにしている。まぁ、その進路表を見てきた時に……あっ、見てきたより見られたが正しいかもしれない。
「無駄にうるさいからなー」
「えっ?」
え?声に出てた?もし全部が声に出てたら頭がおかしいやつって思われるかもしれない。ここは冷静に返しておこう。
「どうかしましたか?」
いや、待て!何が冷静に返しておこうだよ!冷静になる必要なんてないだろ!普通に返せばいいだけだろ!
「ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
赤のロングヘアーでスタイルが良い人が話し掛けてきた。まぁ、ゆりさんの方がスタイルが良いんだけどね!
「良いですけど、練習中のはずでは?」
「1人マイペースそうな子がいましたよね?」
「パンを頬張りながら幸せそうにしていた子ですよね?」
「はい、そうです」
ん?もしかして、パンを食べてから始めるとか言い出したのか?それが本当だったら面白いけどそんなことはあり得ないからな〜。気になるから聞いてみるか。
「その子がどうしたんですか?」
「それが、パンを食べ過ぎて腹痛になったみたいで練習どころじゃ無くなってこうして休憩してるんですよ」
その理由も凄いな。と言いたかったが“も”ってなんですか?って言われそうなのでやめておいた。
「なるほど。それで、どうして僕のところに?」
「いや〜、商店街でよく見かけるから話してみたいなーと思って」
女子高校生って凄いって思うようになってきました。
「あっ、名前言ってませんでしたね。アタシは宇田川巴です。よろしくお願いします」
「………」
「どうしたんですか?」
「あっ、いや、久し振りにそのフレーズを聞いたなーと思って」
「確かに、アタシも久し振りにこのフレーズを使いましたよ」
「そうなんですか。あっ、僕の名前は
「新崎さんって高校生ですよね?」
「そうですけど、それがどうしましたか?」
「そしたらタメでも良いかなーと思って……ダメですか?」
「ダメじゃないな」
「なら、早速。新崎の趣味とかってなんだ?」
「それはだな──」
☆☆☆
それからしばらくの間話し合っていた。趣味や休日は何しているか、学校生活、世間について、友人関係、テストについてとかを話していた。宇田川の話を聞いていると僕は羨ましくなった。毎日楽しく過ごすことが出来て幼馴染と毎日話し合っているという事を聞いて。僕には幼馴染なんていない。腐れ縁っぽいやつはいるけどあまり話さないし、家族とは必要最低限の会話しかしない。そんな生活をしている自分が負け犬じゃないかと思ってしまった。
「あ〜あ、今更後悔するなんて情けないなー」
誰に言っているのか分からない。誰に聞かせているのか分からない。勝手に口からその言葉が出ていただけかもしれない。もしかしたら……やっぱり、なんでもない。
でも、やっぱり、僕は決められていなかったみたいだ。
ありがとうございました。
本当は主人公の名前出すつもりは無かったんですけど出した方が楽な気がしてきたので出しました。