その言葉の通り、戦場に於いてネクストは神のごとき存在だった。突然戦場に現れ、敵対する存在を殺し尽くす姿に、いつしか『死神』と呼ばれるようになっていた。
『ネクストだ!!ネクストが来たぞ!!』
無線機から敵の叫び声が聞こえてくる。最初の頃はこちらと通信をしようとしてきたり、所属を明かすように言ってきたりしていたのだが、今では此方の姿が見えた瞬間にこうして戦闘体制をとってくる。
まぁ、だとしてもこちらのすることは変わらないのだが。
「レイレナード社所属、ネクスト、ラ・プロヴだ。ただちに降服しろ。我々は無駄な殺生を望んではいない」
こちらの言葉に対して返ってきたのは言葉ではなく、ミサイルや砲弾だった。
空中にいるこちらに向かって殺到するそれらを避けつつつづける。
「なるほど、貴様らの返答はよく分かった。ラ・プロヴ、これより戦闘を開始する」
『死神…成る程、これほどとは。勝てないわけだ…』
最後の一機に向けてライフルを撃つ。それが最後の一撃となり、敵は全滅した。
「こちらラ・プロヴ。敵を殲滅した、作戦終了だ」
『こちらレイレナード社管制室。ラ・プロヴ、申し訳ないがそのまま次の作戦に向かってくれるか?』
「弾はそれほど使っていないからこのまま向かえるが、どうしたんだ?補給もせずに連続とは珍しいな」
『アクアビット社から援軍要請が入った。どうやら向こうのネクストが弾切れ寸前の上に徐々に敵に押され始めているらしい』
2週間前から始まったこの戦いについて、上から厳命されていることが二つある。
一つ目は、ネクストが参加する作戦に於いて失敗、及び撤退は許されないということ。これは作戦の重要度の問題ではなく、ネクストという存在を絶対的な力の象徴とするためだ。
二つ目は、レイヴンよりも国家の正規軍を優先して攻撃すること。こちらはレイヴンが傭兵であり、契約を結べば味方となる存在であるのに比べ、国家の正規軍は味方となることのない存在だからである。
とはいえ二つ目には例外もある。正規軍でも降服した者は受け入れるし、ネクストを撃破するために国家に雇われたレイヴンなど最優先撃破対象だ。
「成る程、理由は分かった。しかし何故俺に?向こうにも他のリンクスが居るだろう?」
『理由は二つ。一つは君が一番近くに居ること。そしてもう一つは敵の中に伝説と呼ばれるレイヴンが居ることだ』
「…成る程、理解した。ではこれより援軍に向かう。目標地点までのナビゲートを頼む。伝説と呼ばれるレイヴン…どれ程のものか」
『了解、これよりナビゲートを開始する。決して油断はするなよ』
『そろそろ目的地だ。それでは、健闘を祈る』
さて、まずは無線を入れておかなければ。
「あー、こちらラ・プロヴ。間もなく援軍に到着する。聞えているなら返事をしてくれ」
これは味方に対する連絡だけではなく敵に向けての警告でもある。ネクスト2機を相手にするのか、という。それで逃げ始めるなら背後から襲いかかればいいし、逃げなくてもネクスト2機を相手にして生き残ることはできない。
『こちらアクアビット所属、ヒラリエスだ。援軍感謝する』
無線から聞こえてきたのは、若い女の声だった。おそらく同じくらいの年齢ではないだろうか。
そろそろ戦場に着く。ノーマル相手とはいえ相手は伝説と呼ばれるほどの相手、油断は禁物か。