そのレイヴンには、いくつもの逸話がある。
曰く、受けた依頼は全て完璧にこなし、依頼に失敗したことは一度もない。
曰く、被弾したことはあれど機体が動かなくなるほど損傷したことはなく、今でもレイヴンになった時と同じ機体に乗っている。
曰く、その戦績に黒星は一つもなく、歴戦のレイヴンでさえ勝つことはできないほどの強者である。
曰く、その実力はネクストに届きうるほどである。
そのいくつもの逸話から、そのレイヴンは『伝説』と呼ばれた。
戦場に着くと、そこでは複数のACの残骸が広がる戦場で二機のACが戦闘を繰り広げていた。
二機のうち一機は移動中に聞いていたヒラリエスの外見と一致した。そして残るもう一機のACは、黒に近いカラーリングをした軽量機だった。
その二機を見たとき、俺は驚愕した。
アクアビット社製のネクストはプライマルアーマーが非常に優れていると聞いたことがあるため、ヒラリエスの方は分かる。だが、もう一機の方はプライマルアーマーで守られているわけではないただのノーマルACである。
いくらヒラリエスの武装が単発の威力を重視していて回避されやすいとはいえ、ノーマル相手に一発も当てられないということはないはずだ。
つまり、伝説とまで謳われたレイヴンの実力は我々の想像を上回るということだろう。
「なるほど、その称号にふさわしい実力と言うことか。どうやら過小評価していたようだな」
今までの有象無象の敵とは違う強敵を前に、無意識のうちに体に力が入る。
そして、クイックブーストを噴かして一気に接近し、マシンガンを叩き込みながら無線機に向かって叫ぶ。
「さあ、お前の実力を見せてみろ!!」
レイヴンは答えずブーストを吹かし回り込むようにして回避する。が、さすがに近距離でのマシンガンは避けきれなかったようでその機体に傷がつく。
そしてお返しとばかりにその手に持ったマシンガンを撃ってくる。
それを横方向へのクイックブーストで回避し、レイヴンの方向へクイックターン。今度はライフルを撃ちつつ飛び上がり頭上を飛び越える。
そして再びクイックターンをし背後を取りマシンガンとライフルを撃ち込む。
「どうした、伝説と言ってもその程度か?」
レイヴンは先ほどと同じようにブーストを噴かして回避をする。それに対して俺も先ほどと同じように飛び上がり頭上を飛び越える。
しかし、そこからは同じようにはいかなかった。
「なんだと!?」
レイヴンはこちらが着地する位置が分かっていたかのように正確にこちらを向き、そしてマシンガンとは逆の腕に装備したハイレーザーライフルを放ってきたのだ。
それは此方に吸い込まれるかのように向かって来ていた。
「くっ…」
急いでクイックブーストを噴かし避けようとするが、反応が間に合わずに直撃してしまった。
此方が被弾の影響で硬直している間にも、今度は背中に背負ったミサイルをこちらに向けて放ってくる。さすがに連続で被弾するわけにはいかないので、ブーストとクイックブーストを用いてすべて回避する。
そしてそのまま今度はネクストの機動力を生かして旋回し常に背後に回り込みマシンガンとライフルを叩き込むが、このままではまた対応されてしまうだろう。
俺がどうすべきかと考えていると、レイヴンに二条の緑色の光が吸い込まれ、そのまま沈黙した。
『援軍感謝する、ラ・プロヴ。あのままでは確実に弾切れしていたところだった』
その声を聞き、ようやくヒラリエスの存在を思い出す。待ち望んだ強敵が現れたことで忘れてしまっていたようだ。
「あぁ、それよりも大丈夫だったか?見た感じは問題無さそうだが…」
『心配してくれるのか?優しいんだな。あぁ、私は問題ない』
アクアビット製のネクストはプライマルアーマーが非常に優れているというのは本当の事だったようだ。すごい技術力だな。
「さて、任務は無事に達成した。俺は帰還するとしよう」
『あぁ…それなんだが、すまないがもう少し付き合ってくれないか?』
「どうした、まだ敵がいるのか?」
『いや、そうではないんだが…その…恥ずかしい話だがさっきのですべて弾薬を使い切ってしまってな…』
どうやら援軍は本当にぎりぎりだったかようだ…間に合ってよかった。
「そういうことか。分かった、そちらが無事に帰還するまで護衛しよう」
『すまない、助かる。どうせなら私達の基地で補給して行くといい。改めて今回の事を礼もしたいしな』
次回はP.ダムさんのフラグを建てるんだ…頑張ります(白目)