【プッシーキャッツの所有する山にジンオウガ亜種が現れた。このままでは取り返しのつかない被害が出てしまう。そうなる前に討伐を頼みたい。――また未確認情報ではあるが、複数のヴィラン。そして巨大な影や獣の目撃情報もある為、万全な準備で挑んで欲しい】
獄狼竜が振り上げた腕は、そのまま耳郎へと振り落とされた。
――と思われた時だった。
「うおぉぉぉぉ!!」
「切島!?」
間一髪のところで切島が耳郎と獄狼竜との間に入り、自身の個性を使って攻撃を防いだ。
しかし、防いだだけでは終らない。
獄狼竜は、すぐさま第二撃を放とうと、もう一度その腕を振り上げた。
だが今度はそこへ、砂藤が飛び出してきた。
飛び出してきた砂藤は、そのまま個性を使ったタックルで獄狼竜の顔面へ一撃を入れた。
すると獄狼竜も怯み、思わずその場から距離を取った。
それを見て切島や砂藤は一安心するが、同時に困惑もあった。
「とりあえず間には入ったけどよ……!」
「どうなってる!? なんで雷狼寺が……!」
二人からすれば青天の霹靂だった。
テレパスでヴィランについては聞いている。同時に雷狼竜の咆哮も。
だがだからといって何故、竜牙が耳郎を襲うとしたのかは分からなかった。
咄嗟に身体が動いたから攻撃を防いだ二人だが、目の前で唸り声をあげながら自分達を見ている獄狼竜に困惑しかない。
「切島! 砂藤!」
だが驚いたのは相澤も同じだった。
何故、施設にいた筈の生徒が出てきたのか。すぐに下がらせようとしたが、既に遅かった。
「雷狼寺!?」
「何がどうなってんだ!?」
芦戸や瀬呂までが施設から出てきてしまった。
そして、そんな彼等を追う様にブラドや物間が出てくる。
「お前達!? 勝手に出るな!――って尾白! ラグドール!? おい相澤! これはどうなってる!」
「うわ……嫌な予感」
ブラドは目の前の現状に驚いて、獄狼竜と相澤達を交互に見た。
その後ろにいた物間も嫌な予感を抱き、思わず笑みを浮かべながらも嫌な汗を流していた。
そして、そんな状況に相澤も観念して素早く事態を説明することを選んだ。
「ブラド! 手短に言うぞ! 雷狼寺はヴィランに薬物を打たれて我を失っている! あれは雷狼寺じゃない! 意思を持った生物! 雷狼竜の亜種だ!」
「っ! あれが……!――いや見覚えがある! 物間と騒ぎを起こした時に、確かにあんな姿だった」
相澤の言葉にブラドはすぐに理解した。
つまり危険な状況である事だと。
そして、それを聞いていた切島達や耳郎も驚いた顔をした。
「薬物!? マジすか!?」
「そんな……雷狼寺!」
「つうか意思ってなんですか!」
切島と芦戸は薬物という言葉に驚愕し、耳郎は意思という言葉に疑問を持った。
彼女達は知らないのだ。雷狼竜の個性に意思があることを。
だからこそ相澤も観念した様に、獄狼竜を警戒しながら口を開いた。
「俺もこの数日間で知った事だ……雷狼竜の個性には常闇と同じく、意思がある事が分かった。――そして今、目の前にいる雷狼竜は『亜種』と呼ばれる獰猛な性質を持つ個体だ。最近の雷狼寺はおかしかったのは、あの亜種の獰猛さも影響していたらしい」
「っ! アイツが……!」
「はぁぁぁ!!? 雷狼竜に意思があるのかよぉぉぉ!! しかも雷狼寺がおかしくなった原因がアイツかよぉ!?」
「ちょっと待て……それって事は、今がかなりヤバイ状況なんじゃ――」
耳郎は獄狼竜を睨み、峰田は騒ぎ、瀬呂は冷静に今がヤバイじゃないかと冷や汗を流した。
そして、それが正しいと言わんばかりに獄狼竜が咆えた。
「AOoooooooooooooooooN!!!」
「っ!!?」
その咆哮を聞いて耳郎達は、骨の髄から恐怖や震えを感じた。
――あれは雷狼寺じゃない。
少なくとも、彼女達もそれだけは理解する事が出来た。
野生動物と遭遇した時の様な驚きと恐怖を、彼女達は確かに感じた。
そして今にもこちらへ飛び掛かって来そうな獄狼竜を見て、相澤も覚悟を決めた様に口を開いた。
「止む得ない……お前達、良く聞け。――A組B組総員、イレイザーヘッドの名に於いて
「えっ! それって雷狼寺と戦えって事ですか!」
周りが困惑する中、代表して口を開いた耳郎の言葉。それを聞いて相澤は静かに頷いた。
「おい相澤!? 戦闘を許可って、お前――」
「先程までいたヴィランは生徒を標的にするらしいことを言っていた。ならば自衛行為は仕方ない!――責任は俺が全部持つ! 頼むブラド!」
「~~っ!! やむを得ないか!」
ブラドは拳を握り、何とも言えない表情を浮かべたが相澤の覚悟を聞いて諦めた。
「だが相澤! どうする……マンダレイにそれを伝えなければならんぞ?」
「本来なら俺が直接、行くべきだが……」
相澤は悩んでいた。本来ならば自身が動くのが良いのだが、雷狼寺を放っておく訳にはいかない。
それに目の前にいる生徒達もまだ困惑しているから尚更だった。
「けど先生! あれは雷狼寺なんだよ!」
「それを敵と見なせって言われてもよ!?」
「じゃあ、見す見す獄狼竜の餌になるか? もしそうなった時、傷付くの誰だと思ってる? 正気に戻った雷狼寺自身だ! 雷狼寺の為にも、自衛の為にも戦え!」
――その責任も俺が取る!
相澤の中で覚悟は既に固まっていた。
雷狼寺がこれからやるであろう暴走も、それに対する対処の責任も自身が取ると。
施設に避難させても獄狼竜にも何の意味もない。
ならば戦って自衛させる。――または逃がす方が良い。
だが問題はどうやってこの場を収めるかだ。
生徒を放ってはいけないと相澤は思っていると、そんな彼の肩にブラドが手を置いた。
「ここは任せて……救援へ行け相澤」
「ブラド! だが――」
「既に警察及び、各方面へ通報した。だが到着まで時間はまだ掛かる。――お前が守るべき生徒はまだいるだろ! だから行け……俺にも責任を背負わせろ。ここの連中は任せろ」
「そうです! 行ってください相澤先生! 雷狼寺君は僕達で止めます!」
ブラドの言葉に揺れる中、飯田も続いた。
確かに自身にはまだ守るべき生徒がいる。やるべき事がある。
例え目の前で雷狼寺を見捨てる形となろうとも、自身にはやらねばならない事があるのだ。
「ブラド……すまん! 後は頼む!」
「任せておけ」
ブラドは頷き、他の生徒も困惑しながらも覚悟を決めた表情をした。
それを見て、相澤は断腸の想いでその場から走った。
『AOoooooooooooooN!!!』
それを見て獄狼竜は吠え、相澤を追いかけようとした時だった。
「貴様の相手は私だ、亜種!!」
飛び出したブラドが自身の個性――『操血』で固めた拳で獄狼竜の顔面を殴った。
「ブラド先生……早ぇ!?」
「流石は僕らのブラド先生!」
切島は驚き、物間は誇り高そうに言った。
他のメンバーも驚きながら、その様子を見ていた。
『Grrrrrrrr……!!』
だがプロヒーローの攻撃をモロに受けても獄狼竜の様子に変化はなかった。
「クッ……!」
それを見てブラドはすぐに下がったが、攻撃が功を奏した。
獄狼竜は相澤をターゲットから外した。だが代わりにブラドや耳郎達の方を向き、口を開けて牙を剥きだしにして唸り声をあげる。
『AOoooooooooooooooooN!!!』
「来るぞ!!」
「雷狼寺……! ごめん!」
切島の声に一斉にその場の生徒達は身構えた。
耳郎も竜牙へ謝罪しながらも構え、今までの様子の元凶の一つ――獄狼竜を睨んだ。
こうして夜の森の中、雷狼竜・亜種との戦いが幕を開けるのだった。
まさか総合PVが100万PV超えていた事に驚きました(;´・ω・)
皆さん、読んでくれていたんだ……ありがとうございます(/・ω・)/