僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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第四十五:ヌシ

 

 獄狼竜との決着が着いた頃、緑谷達も激闘を繰り広げていた。

 

――敵の目的は『爆豪』だった。

 

 そんな状況下で彼等は爆豪を護衛していたのだが、そこに新手のヴィラン――Mr.コンプレスが現れ、彼の個性『圧縮』によって爆豪・常闇を奪われてしまったのだ。

 

「これで目標達成だ。各員、これより5分以内に回収地点へ向かえ」

 

 Mrコンプレスはそう言って逃げてしまうが、緑谷達も麗日・蛙吹の協力により追跡。

  

 彼等はヴィラン達の回収地点へ間に合うと、そこではボロボロの荼毘を筆頭にトガヒミコ・トゥワイス等の名のあるヴィラン達が集まっていた。

 

 そして彼等は緑谷達の登場に驚きの様子だった。

 

「あっ! このガキ共!! 知ってるぜ! 誰だ!!」

 

「――チッ! あの()()と言い……ゼェ、何なんだ……!――Mr! 爆豪は!」

 

「いてて……空から来るとは――爆豪ですか? 爆豪ならこの右ポケットに――ってあれ?」

 

 Mrコンプレスが右ポケットを漁るが、そこには何も入ってなかった。

 

――まさか。

 

 そう思っていると障子が腕から小さな球を二つ取り出した。

 

「残念だったなエンターテイナー。二人は返してもらった!」

 

「障子くん!!」

 

 緑谷が感動した様に叫ぶと、それを見ていた荼毘が目を見開いた。

 

「クソッ……! 失敗したのか!?」

 

「アハハハハ!! 流石は六本腕! 器用なものですね!」

 

 傷を負っている荼毘はフラつきながらも、自らの個性で発火を行おうとした。

 だがコンプレスは笑うだけで、余裕たっぷりな態度で彼を止めた。

 

「いやいや……問題ありません。間もなく時間――それにトリックはバレない様に……な」

 

「なっ! 口に――」

 

「っ! 返せ!!」

 

 コンプレスは仕込んでいた。

 ポケットには偽物を入れており、圧縮が解除されると障子の持っていた球から氷塊が現れた。

 

 本命はコンプレスの口の中に入っていたのだ。

 それ故に彼は余裕だったのだ。本命はまだ自身の手の中。

 

 それを見て荼毘も安心したのか、静かに頷いた。

――時だった。

 

「あっ――」

 

 緑谷は見た。見てしまった。

 その場にいた轟と障子も気付いた。気付いてしまった。

 

 コンプレス達の背後に()()がある事に。

 

『AOoooooooooooooooooN!!!』

 

 それは突如として飛び出してきた。

 荼毘を吹き飛ばし、同時にコンプレスの()()を喰いちぎって現れたそれ――雷狼竜に、緑谷達は嬉しそうな顔を見せた。

 

「雷狼寺くん!!」

 

「雷狼寺!」

 

「雷狼寺か……!」

 

 誰もがそれを竜牙だと疑わなかった。

 ずっと森で鳴いていた雷狼竜の声。それは気になったが、こうして今、助けてもらった以上、疑うことは無かった。

 

 逆に危機に陥っているのはコンプレス達だった。

 荼毘は吹き飛ばさ地面に叩きつけられ、コンプレスに至っては片腕を持っていかれた。

 

「ガハッ!――またあの犬かよ……いや……姿が違う……!」

 

「があぁぁぁ!! 腕が! なんだコイツは!?」

 

「犬!?」

 

「こいつ知ってるぜ!! 何なんだコイツは!!?」

 

『Grrrrrrrr……!!』

 

 ヴィラン達もパニックに陥っていた。

 回収目前になってこの雷狼竜の乱入により、コンプレスは腕を失った衝撃で口から吐き出してしまった。

――爆豪と常闇を。

 

「取って!!」

 

 それを緑谷達は見逃さなかった。

 緑谷の声に轟と障子が飛び出した。

 

 そして障子が常闇の入った球をその手に掴んだ。

 

「取った!」

 

「爆豪!!」

 

 残り爆豪だった。爆豪の入った球へ轟が手を伸ばし、あとちょっと――そんな時だった。

 

「申し訳ありませんが……時間です」

 

「なっ! ワープの!?」

 

 緑谷達の前に現れたのは黒霧と――彼の個性のワープゲートだった。

 

「撤退だ!」

 

「あの犬、可愛くないです!」

 

 次々とワープゲートに入って撤退していくヴィラン。

 荼毘とコンプレスもゲートの中に入って行くが、その刹那――コンプレスは圧縮を解除した。

 

「ちくしょう……! ショーが台無しだ!!」

 

「問題ありませんよ……雷狼竜が思ったより仕事をしてくれた様ですし、目的は達成です」

 

 爆豪はその姿を現した。だが、その身体の大半はワープゲートの向こうだった。

 

「かっちゃん!!!」

 

「くんな……デク……!」

 

 その言葉を最後にワープゲートは閉じて、爆豪の姿は消えた。

 

「あっ……あぁ……!!」

 

 緑谷の悲痛な叫びは燃え盛る森の中へと消えて行った。

 だが、問題はまだあった。

 

「爆豪……!」

 

 轟もワープゲートがあった場所を見るが、既に消えた後だ。

 残されたのは緑谷達――そして雷狼竜だった。

 

『AOoooooooooooooooooN!!!』

 

「えっ……雷狼寺くん?」

 

「雷狼寺……?」

 

「Grrrrrrrr……!!」

 

 雷狼竜は突如として咆えると、そのまま緑谷達を見て唸り声をあげた。

 その様子を見て緑谷達は、ようやくおかしい事に気付いた。

 

「ら、雷狼寺くん……?」

 

「待て緑谷! よく見ろ……コイツ、原種じゃねぇぞ」

 

 轟はその姿に違和感を持ち、すぐに雷狼竜の姿がいつもと違う事に気付いた。

 授業で見た不死種でもなく、亜種でもない姿。

 

 一見、原種と見間違いそうになった。

 だが荒々しく揺れる金色の鬣、黒く変色した甲殻。そして肉体の箇所にある()()に金色の雷を纏っていた。

 

「前脚も明らかに原種よりデカいぞ……!」

 

「雷狼寺? 雷狼寺なのか!!」

 

 轟と障子は嫌な予感を抱いた。

 直感だったが、僅かに下がりながらそう叫ぶも、雷狼竜――<ヌシ・ジンオウガ>は遠吠えで応えた。

 

『AOoooooooooooooooooN!!!』

 

「雷狼寺くん……じゃない?」

 

「雷狼竜……!」

 

 緑谷達は信じられないモノを見た言わんばかりに、ヌシを見上げていた時だった。

 マンダレイのテレパスが彼等の頭に響いた。

 

『緊急連絡! こちらで対応していたヴィランに逃げられた。それともう一つ――雷狼竜を見たら逃げて! 雷狼寺君は今、ヴィランに薬物を撃たれて気を失っているの! 暴走状態のは対処したけど、彼の肉体から分離した個体がまだいるの! だから見つけたら逃げて! それは雷狼寺君じゃない!!』

 

「……聞いたか?」

 

「あぁ……最悪だ」

 

「そんな……かっちゃん、雷狼寺くん……!」

 

 爆豪の誘拐。そして竜牙の暴走状態に緑谷はショックと怪我で立てなかった。

 そんな緑谷を障子が背負い、轟が気絶している常闇に肩を貸した。

 

 そして障子と轟は徐々に近づいてくるヌシを見ながら、少しずつ下がって行く。

 

 しかし、最後は木々に追い詰められた。

 これ以上は炎もあって下がれない。だがヌシは近付いてくる、そんな状況に三人は嫌な汗が流れた時だ。

 

 三人の間合いに入ったヌシは不意に顔を下げた。

 そして、鼻をヒクヒクさせながら三人の匂いを嗅ぎ始めた。

 

「僕達の匂いを……嗅いでる?」

 

「どういう事だ……?」

 

「分かんねぇけど、まずはジッとした方が良さそうだ」

 

 ヌシの鼻息や口の匂いも感じる程の距離感で数十秒。

 三人は生きている心地がしなかった。

 

 だがやがて、ヌシは顔を離すと三人へ襲い掛かる――事はせず反転し、ゆっくりと歩き始めたのだ。

 

「なんだ……一体?」

 

 轟がヌシの動きに困惑するが、ヌシは途中で立ち止まると緑谷達の方を振り返った。

 そして、また今度は控え目に鳴いた。

 

『AOoooooooooooooooooN……!』

 

「付いて来いって……ことか?」

 

「分からないけど、襲ってくる感じはないよ……付いて行ってみよう。どの道、先生達にかっちゃんの事を伝えないと……!」

 

 緑谷の案に二人は頷くと、ヌシが歩き始めたので後ろに付いて行く事にした。

 

▼▼

 

 どのくらい歩いただろうか。

 緑谷達はそう思っていると、徐々に救急車や消防車――そして警察のサイレンが聞こえてくるのに気付いた。

 

 誰かが通報したのだろうと、三人は思っていると、段々と見覚えのある場所に辿り着いていた事に気付く。

 

 だがヌシはまだ足を止めず、まるで目的があるかの様にどこかへ向かって行く。

 三人も、とりあえずは仲間との合流を目的としていたので後に続いてみた。

 

 目印として、これ以上の存在はいないだろうと、そう思っていた時だった。

 ヌシと緑谷達は、やがて広い空間へと出たと同時に、ライトが一斉にヌシへと向けられた。

 

「ギャアァァァァ!! 本当にもう一匹いるじゃねぇかよぉぉぉぉ!!」

 

「ええい! あれが分離した個体か!」

 

「この声……峰田か!」

 

「それに寅さんの声も……!」

 

『Grrrrrrrr……!』

 

「おい! 誤解を解かないとまずいぞ!」

 

 三人は安心の反面、先程のテレパスを思いだす。

 きっと何かがあったのだろう。皆はまだ雷狼竜を敵と見なしていると思い、すぐに三人は雷狼竜の前に出た。

 

「みんな! 待って!!」

 

「俺達だ! まず話を聞け! この雷狼竜は襲ってこねぇ!!」

 

「落ち着いてくれ!」

 

「その声……緑谷達か!!」

 

 最初に警戒しながら駆け付けてくれたのは相澤だった。

 相澤はヌシに間合いを取っていたが、ヌシが相澤の匂いを嗅ぐと無視して歩くの見ると、すぐに緑谷達に駆け寄った。

 

「お前達……無事か!」

 

「俺達は無事だけど……」

 

「先生……! かっちゃんが……!」

 

「!……そうか」

 

 相澤は緑谷の言葉で察した。

 何があったのかも全て。

 

 しかし目先の危機もまだあった。

 ざわつき始める背後からの声に振り返ると、周囲の者達はヌシ・ジンオウガの姿に警戒、ある者は覚えていた。

 

 数名は何故か物間を盾にしようとしていたが、ヌシは緑谷達同様に周囲の者達の匂いを嗅いでいた。

 

「な、なんだよぉ……!」

 

「もう一戦は勘弁してぇ……!」

 

 峰田と葉隠を始め、他の者達も警戒を解かなかった。

 プッシーキャッツ達も身構えていたが、ヌシは何もせず、救急隊員に運ばれようとしていた竜牙の下へと向かう。

 

『Grrrrrrrr……!!』

 

「う、うわぁ……!」

 

 そして腰を抜かす救急隊員を無視し、竜牙へ鼻を付けた時だった。

 落雷の様な音と衝撃と共に、ヌシの姿は消えた。

 

 竜牙の中へと戻ったのだと、誰もそう思った。

 そしてようやく、この夜の戦いは終わりを告げるのだった。

 

 重軽傷者:数名。

 行方不明:1名を残して。

 

 




雷狼竜達のA組達への印象

原種&不死種:最大の怨敵AFOを狙っている反面、自分達より弱い緑谷達(人間)との干渉       は気に入らない様子。

亜種:獰猛な性格なのも合わさり、AFOの事もあってA組にも敵意を向けている。だが、今回の敗北で僅かながら大人しくなった。

金雷公:亜種が敗北した事が許せず、種の誇りの為に出てこようとした二つ名個体だが、相澤によって完全解禁は防がれた。

ヌシ:A組を群れの一員として見ており、他の雷狼竜よりかは安心できる。だがあくまでも宿主以外の人間でもあること、自身が群れのボスと思っている点もある為、A組がヌシに敵意を向けた時は容赦しない。
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