一気に神野区の戦いに持って行っても良いですかね?
それとも、一気に飛ぶのは違和感あるから繋ぎで書いた方が良いでしょうか?
第四十六話:事件の後に
――ヴィラン三名確保。
――獄狼竜との戦闘で重軽症が数名。
――プッシーキャッツ数名が軽傷だが、全員が生還。
しかし行方不明者――1名:爆豪。
完全敗北とも見える展開にて、合宿は終わった。
そして竜牙も緑谷達も、合宿所近くの病院へ入れられる事になった。
そんな中で一際、豪華な病室に竜牙は眠っていた。
意識もなく、点滴を打たれて眠っている。
そんな少年を母親――雷狼寺そめり、彼女はただ黙って見ていた。
そして自分以外がいない病室で、静かに呟いた。
「亜種にヌシ……挙句には金雷公まで出かけた。結局、繰り返す事になるのね……」
話は既に学校側から聞いていた。
そう言って彼女は竜牙の顔へ触れようとしたが、その直前で手を止めた。
そして手は触れる事もなく、引っ込めた。
「……ハァ」
そめりは溜息を吐いた。そして身体の向きを変えて病室を出ようとした時だった。
「失礼しま――あっ」
「どうしたの耳郎ちゃん?――あら?」
「……雷狼寺の母親」
入って来たのはA組の者達だった。
耳郎や蛙吹、そして轟達が入って来て、そめりと目があった。
他のA組の者達も初めて出会う竜牙の母親に言葉も出ず、黙ってお辞儀するだけだった。
そめりも同じく簡単に頭を下げると、そのまま病室を出ようとする。
「あ、あの……!」
そんな時に呼び止めてしまったのは耳郎だ。
皆、竜牙の家族関係は盗聴で知っているのもあり、気まずかった。
そんな中での耳郎の言葉に、そめりは立ち止まった。
「何かしら?」
相変わらず冷静な声と態度に、轟は気に入らなそうに、飯田は思わず息を呑んだ。
そして皆も見守る中、耳郎は言葉を発した。
「あの……雷狼寺の様子はどうですか?」
「安定しているわ……お医者様の話では、ただ意識が戻らないだけ。薬物の後遺症はないそうよ」
「い、意識が戻らないだけって……それも問題じゃ」
「本当に無事なのか……?」
耳郎と障子は心配そうに言うが、そめりは特に反応はしなかった。
「その内、目を覚ますでしょ。それでは私は行きます。あなた達は好きにいてくれて良いわ」
そう言って、そまりは病室を出て行こうした。
だがそれを止めたのは轟だった。
「おい! 待てよ……息子がこうなってもアンタは何も思わねぇのか!」
「……またあなたね、エンデヴァーの息子。他人の家庭に口出ししない様に言ったはずよ」
「と、轟君!? 君はまた……!」
前回同様な展開に、獄狼竜との戦いで負傷した飯田がクラスメイトをかき分けて現れた。
だが今回は轟も食い下がらなかった。
「お前は……お前等は何とも思わねぇのか。ヴィランに良いようにされた雷狼寺を、家族に捨てられてこんな扱いを受けてる仲間を見てよ」
「そ、それは……」
「むぅ……」
轟の言葉に飯田は思わず言葉を詰まらせ、常闇も何とも言えない表情を浮かべた。
耳郎や障子達も思う事はあり、言葉が出なかった。
しかし、轟の言葉にそめりは小馬鹿にする様に小さく笑った。
「仲間……ね。今回の様な事があっても、まだアナタ達はこの子を仲間と呼べるの?」
「あ、当たり前です!」
「オレ等に怪我をさせたのは雷狼寺じゃねぇ! あくまでも獄狼竜――雷狼竜亜種だ!」
耳郎が叫ぶ様にそう言って、切島も竜牙を庇う様に前に出た。
他のメンバー達も力強く頷き、相手が竜牙の母でも力強い表情でそめりを見つめた。
しかし、そめりは主張を変えることは無かった。
「同じ事よ……結局は雷狼竜の個性――この子の力である事に変わりはないわ。それに竜牙は最近、力に対して執着していたとも聞くわ。結局は、この子の招いた事よ。今後も繰り返すでしょうね、そんなこの子を本当に仲間と呼べるのかしら?」
「そんなの……そんなの当たり前です! 雷狼寺は……雷狼寺は……!」
耳郎は思わず感極まりそうなるのを全力で呑み込んだ。
そんな彼女を蛙吹が肩を触って慰めた。
「……耳郎ちゃん。――雷狼寺ちゃんのお母さま。確かに最近の雷狼寺ちゃんは、ちょっと怖かったわ。でもね、それでも知ってるの私達。雷狼寺ちゃんの優しさや、私達に見せてくれた笑顔を」
蛙吹の言葉に皆が、体育祭の時の竜牙の笑顔を思いだした。
自分達の事を許し、再度話してくれた竜牙。
あの時に見せてくれた笑顔は、確かに竜牙の本心だと皆は確信していた。
「だから、何と言われても私達は雷狼寺ちゃんの友達であり、仲間と思ってるわ」
「……馬鹿な子達。原種や亜種で、てんやわんやしているあなた達が、いつまでそう言えるのか見物ね。いつか必ず後悔することになるわよ」
「……それでも俺達は雷狼寺の友達だ」
蛙吹の言葉にそめりは否定するが、それを障子が再び否定した。
きっと何かあるのだと――巨悪と呼んでいた存在が竜牙を狂わせたのだと。
大丈夫だ。皆がいるのだ。きっと竜牙は前みたいに戻ってくれる。
ここにいるA組の者達は、そう信じていた。
どれだけ冷たく、酷く扱われようとも。
竜牙を知っているからこそ、昔の轟の様に変わってくれると確信していた。
そして障子の言葉と、その言葉に頷くA組の者達の姿にそめりは溜息を吐いた。
「……ふぅ。そう、勝手にすれば良いわ。目が覚めた時に、竜牙が同じことを言ってくれれば良いわね」
そう言ってそめりは病室から出て行ってしまった。
それを皆は見送る形をとり、その姿が見えなくなると最初に叫んだのは芦戸だった。
「うわぁぁ! ムカつくぅ! 何あの態度! 本当に母親!?」
「本当だよね! 雷狼寺くん可哀想!」
「なんか……本当にこんな関係なんだな雷狼寺の家って」
「こんな凄い病室をご用意しているのに……本当に家族愛はないのでしょうか?」
芦戸の言葉に続いて、葉隠・瀬呂・八百万が言葉を発した。
こんな広く、良い病室を用意したのも世間体だけの為なのか。
少なくとも轟はそう思っていた。
「ねぇんだろ……前もそうだった。あの母親には雷狼寺なんて目に入ってねぇんだ」
「なんつうか……言葉が出ねぇな」
轟の言葉に切島も言葉が出せなかった。
自分にとっての当たり前が存在しない。それが竜牙の世界。
「雷狼寺くん……家族がいてくれたら、ここまでおかしくならなかったのかな」
麗日の言葉に何か言える者はいなかった。
耳郎も未だに眠る竜牙を見て、皆で買ってきたフルーツ篭を置くと、静かに呟いた。
「うちは……待ってるからね雷狼寺」
耳郎の言葉は本心だった。
入学試験で出会い、憧れたヒーローとしての背中。
だからこそ耳郎も障子も、竜牙がこのまま進むとは信じたくなかった。
そして耳郎はそう言い終えて振り返った。
すると、そこにはニヤニヤして見ているクラスメイト達がいた。
「キャアァァァ! うちは待ってるからね、だってさ!」
「うんうん聞いた! キャアァァァ!」
「子供か!!」
耳郎は、芦戸や葉隠達に揶揄われながら皆とその場を後にするのだった。
次は重症の緑谷の下へ行かないといけないからだ。
――しかし事態は更に混沌へと進んで行く。
――緑谷達の爆豪奪還作戦。
――雄英の謝罪会見。
――そしてオールマイト達、ヒーローによる爆豪救出及びヴィラン制圧。
そして巨悪――AFOとの対峙が近付いていたのだった。
後に神野区の戦いと呼ばれる伝説の終わりの時が。