僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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第四十八話:集結せしモンスター

 

「さぁ始めようかオールマイト」

 

 その言葉を発端に始まったオールフォーワンとオールマイトの戦い。

 両者は自身の今持てる力を全力で振るい戦いを始めた。

 

 オールマイトは可能な限りで出来る全力で攻撃し、オールフォーワンは自身の持つ個性を掛け合わせてオールマイトを攻撃する。

 

 それでも両者は共に全盛期の動きはできない。

 しかし、そんな戦いでも並の人間が視れば次元の違う戦いに見えていた。

 

 強烈な衝撃波。肉が奏でる打撃音。

 更に言えばそんな合間にでも両者は別の動きもしていた。

 

 オールマイトは傍にいた爆豪を気遣い、思う様に動けなかった。

 そんな時に動いたのが緑谷達だった。

 

「来い!!」

 

 空を跳ぶ緑谷達。その中で切島が叫びながら爆豪に手を差し伸べる。

 そして僅かな躊躇を見せながらも爆豪もその腕を掴み、その場から離脱した。

 

「行きな……バカガキ……!」

 

 Mt.レディの必死の援護によって。

 敵連合の攻撃を必死に防いだことで離脱する緑谷達。

 

 それを見ていたグラントリノは深い溜息を吐いたが、オールマイトが爆豪離脱によって全力で戦える環境となったのも確かだった。

 

 しかし同時に動いたのはオールフォーワンだった。

 グラントリノ登場でボロボロになった敵連合メンバーの離脱に彼は動いた。

 

 気絶して倒れている黒霧の身体へ触手を伸ばし、個性を強制発動させると死柄木達を離脱させた。

 

「ダメだ先生……! 今のアンタじゃ――」

 

「弔……戦いを続けろ」

 

 必死に手を伸ばす弔へ、オールフォーワンはそれだけ言って彼を見送った。

 

 これで残ったのはオールフォーワンとオールマイト&グラントリノの二人。

 一見すればオールフォーワンの不利だが、それでもオールフォーワンの声には不安も焦りも何もなかった。

 

 寧ろ、オールマイトへ挑発を続ける余裕を見せていた。

 同時に迫るオールマイトの活動時間。

 

 呼吸を乱し、血を吐くオールマイト。

 マスクは破損し、能面の様な姿を見せるオールフォーワン。

 

 両者の戦いは激しさを見せるが、同時に確実に最初よりも威力は落ち始めていた。

 

 やせ細るオールマイト。更に背後にいた一般人を守る為にオールフォーワンの攻撃をモロに受け切った事で更にダメージを負う彼は、それでも目線だけはオールフォーワンから外さなかった。

 

 守るものがある。守らねばならない存在がいる。

 このオールフォーワンからは、もう何も奪わせない。

 

 そう思うオールマイトだったが活動時間はもう限界に来ていた。

 

『オ、オールマイトが……萎んでおります!?』

 

 撮影をしていたテレビクルーがオールマイトの姿を見て驚愕のレポートをする。

 それを緑谷達も見ていた。街中の巨大モニターで。

 

 だがその表情には安心の顔はなかった。

 不安。ただそれだけの表情だった。

 

 誰もがオールマイトの姿に驚愕する中で、オールフォーワンは更に続けた。

 

「オールマイト……僕は君が憎い。僕が築いたものを全てぶち壊した君がね。君が僕を憎む様に僕も君が憎い。――だから更に嫌がらせをするよ」

 

「なに……!?」

 

 オールフォーワンの神経を逆撫でる様な声にオールマイトは限界の中で更に身構えた。

 既に身体はボロボロで出血も増えている。

 

 マッスルフォームを維持しているのは右腕だけとアンバランスなのが限界の証拠だ。

 

 それでもオールマイトは、これ以上オールフォーワンに何かさせない為によろよろと一歩前に出た時だった。

 突如、巨大な炎がオールフォーワンを襲った。

 

「なんだ……なんだその情けない背中は!! オールマイト!!」

 

 攻撃を放ったのはエンデヴァーだった。

 エンデヴァーは激昂したかの様にオールマイトに叫び、その肉体からの火力を上げていく。

 

 だが応援に来たのはエンデヴァーだけではなかった。

 エッジショットがオールフォーワンに牽制し、シンリンカムイが周囲の戦闘不能のヒーロー達を回収する。

 

 更に虎が身動きがとれない一般人を保護し、オールマイトの背負うものを少しでも軽くしようとしてくれていた。

 

 流れは変わろうとしていた。背負うものが多いヒーロー達へ。

 

――だが、オールフォーワンはエンデヴァー達を見て特に反応しなかった。

 

 逆にオールマイトの方を向いたまま、僅かにニヤリと笑う。

 

「背後の彼女を助けられて良かったじゃないかオールマイト。――しかし、君は()()()を助ける事はできなかった様だね」

 

「なんだと……!」

 

 オールフォーワンの言葉にオールマイトは顔を上げるが、オールフォーワンが何を言っているのかが分からなかった。

 そんなオールマイトの姿にオールフォーワンは満足そうに笑うと、腕から黒い霧の様なものを出し始めた。

 

「これは一回限り……特殊なマーキングをした相手だけを一回だけワープさせる事が出来る個性だ」

 

「ワープだと……!?」

 

 オールマイトは目を大きく開いたが、彼の中ではオールフォーワンが何をしようとしているのかが分からなかった。

 今のこのタイミングで何をしようとするのか。

 

 仲間を呼ぶつもりなのか、その割にはワープの規模は中途半端な大きさだ。

 だが碌なことじゃないのは確実だ。オールマイトは何とか阻止しようとするが、身体は限界を迎えて動くことできない。

 

 代わりじゃないがグラントリノやエンデヴァーが動こうとした時だった。

 

「気を付けろヒーロー達……()()()()傷付けるよ?」

 

 オールフォーワンがそう言ったと同時だった。

 オールフォーワンは、黒い霧の中から何かを引っこ抜くかの様に何かを取り出した。

 

 それは巨大なベッド。清潔さがある巨大な病院のベッドだった。

 しかし問題はベッドではない。そのベッドに眠っている存在――雷狼寺 竜牙だった。

 

 

▼▼

 

「雷狼寺くん!!」

 

「雷狼寺……!」

 

「白髪野郎……!」

 

 街中で映像を見ていた緑谷達は思わず声をあげた。

 オールフォーワンがワープさせたのは竜牙の眠るベッド――否、竜牙自身だったのだ。

 

 それに気付いたのは緑谷達だけではなく、他の一般人も同じだった。

 

「おい! あれって雷狼寺 竜牙じゃないのか!?」

 

「重症の生徒ってまさか、彼だったのか……!」

 

「っていうか誘拐されてんじゃん! 雄英や警察はマジで何やってんだよ!!」

 

 周囲から聞こえるのは驚愕と雄英を非難する声だった。

 それを聞いて緑谷達も何か声を出そうとするが、何でも良い言葉が出なかった。

 

 爆豪ですら歯を食い縛って映像を見るだけで、これから起こることが予想できなかった。

 一体、何の為に竜牙がそこにいるのか。何の目的があって竜牙をその場に呼んだのか。

 

 その意味が分からず、頭の中がパニックになり、心拍数だけが聞こえる中で緑谷達は映像を見守るしかできなかった。

 

▼▼

 

「雷狼寺少年!!」

 

「義息子よ……!!」

 

 竜牙が眠るベッドがオールフォーワンの前に現れたことで声をあげるオールマイトとエンデヴァー。

 その様子にオールフォーワンは笑みを浮かべ続けていた。

 

「可哀想に、また彼は君に助けてもらえなかった様だね。十年前も、学校でも、そして今も。――()()()()()。雄英で彼は暴走しているらしいじゃないか?」

 

 オールフォーワンの他人事の様な言葉にオールマイトの目つきが変わった。

 

「何を……! そうさせたのは貴様だろ! 一体貴様は何を奪った! 雷狼寺少年から何を奪ったんだ! 貴様が関わらなければ彼は皆を引っ張るヒーローの卵として――」

 

「守れなかった理由と導けなかった理由に僕を使うなよ。そういう所が先生失格なんだよオールマイト。――だが、まぁいいさ。そこで黙って見ていれば良い。僕が彼に教えてあげる最後の授業を。ただ、それを行うには少々うるさくなったね」

 

 そう言ってオールフォーワンは周囲へ意識を向けると今にも襲い掛かって来そうなエンデヴァーやエッジショット。そして空を舞うグラントリノの姿が確認できた。

 

「――だから使()()()()もらうよ。僕も()()()()()って奴をね」

 

 オールフォーワンがそう言ったと同時だった。

 彼の目の前に竜牙と同じく黒いワープが出現した。

 

 同時にその中から現れたのはコスチュームを纏った五人の男女だった。

 その誰もが目が虚ろになっており、立ってはいるが意識があるか怪しかった。

 

 そんな見ただけで異常を感じさせる彼等を見て、オールマイト達もその動きを止めた。

 

「彼等は……!」

 

「あぁ、僕がこの日の為に集めたヒーロー達さ。見覚えがあるんじゃないかな?」

 

「あん……? まさか、アイツは――」

 

 オールフォーワンの言葉を聞いてグラントリノは五人をジッと見ていると、その内の一人――2メートルはあるであろう巨体の男に気付いた。

 

「アメリカの軍人兼ヒーローの<イビルジョー>じゃねぇか! 単機でテロ組織の基地を幾つも壊滅させたヒーロー……個性は飢えを感じるさせる食欲を代償とした強大な力『餓力』だったか?」

 

 グラントリノの言葉を聞いてエンデヴァーとエッジショットもジッと彼等を見てみると、その正体に気付いた。

 

「あっちの男女に見覚えがある。確かイギリスの双子の兄妹ヒーロー<リオレウス>に<リオレイア>か! 個性は口からの炎と翼の合わさった個性『炎翼』だった筈」

 

「あっちの二人にも見覚えがある。女性の方は目立ちたくないからとビルボードチャートを辞退した異例の京都のご当地ヒーロー<ナルガクルガ>です! 個性は『迅翼』に、もう一人はロシアの探険家兼ヒーローの<ベリオロス>だ! 個性は『氷牙』」

 

 全員が世界で活躍するヒーロー達だった。

 特殊な個性を持つ者ばかりだが、実力や実績を残す驚異的なヒーロー達だ。

 

 問題なのは何故、彼等がここにいるのかが問題だがオールフォーワンは、グラントリノ達の言葉を聞いて呆れた様に笑った。

 

「アハハ……『餓力』に『炎翼』か。どれも的外れだな。その真の姿を知らないでいるとは……!」

 

「貴様……! 彼等にも何かしたのか!」

 

「あぁ……生涯で5人だけ10分間だけ洗脳できる個性を使っているんだ。まぁ君達風に言えば没個性って奴だが、今はそれで丁度良いさ。――さぁ、見せてやるんだ君達の真の姿を!!」

 

 オールフォーワンはそう言って指を軽く鳴らすと、五人のヒーロー達の目つきが一瞬にして変わった。

 眼光は鋭く、僅かに目が血走っていた。

 

 同時に唸り声をあげ始めると、彼等の肉体に変化が現れた。

 徐々に肉体は巨大化し、鱗や体毛が生え始めた。

 

 そして徐々にその姿を変化させると、彼等の姿は最後には人ではなくモンスターと化した。

 

 異常発達した顎を持つ恐竜の様な姿。

 炎を吐いて天に上る飛竜。

 漆黒に染まりし迅速な動きを見せる竜。

 牙が発達した白き獣。

 

 その姿にオールマイト達は絶望と驚愕の表情を浮かべながら見上げるが、その姿にオールマイトは、ある考えが過った。

 

「これは……まるで雷狼寺少年と同じ……!」

 

「あぁ、そうさ。同じさ。――さぁ、時間を稼いでくれモンスター達。私はその間に……彼へ最後の贈り物をしよう」

 

 オールフォーワンはそう言うと、静かに眠る竜牙へと顔を向けると腕をあげた。

 その腕には禍々しい光が放たれており、それを竜牙へ近付けた。

 

「待て! 何をする気だ貴様!!」

 

「なに……ただの『覚醒』の個性さ。この個性を使われた者は眠りし力が目覚める。本来ならば殆どの者には効果のない没個性だが、彼には必要な個性さ」

 

「っ!? 止めろ!!」

 

 目的が分からない。だがオールマイトは嫌な予感をし、必死にオールフォーワンへと叫んだ。

 だがオールフォーワンの動きは変わらず、ゆっくりと竜牙へ近付いた時だった。

 

 オールフォーワンへ空から迫る巨大な影が現れた。

 

 その影はオールフォーワンへ迫ると、オールフォーワンは間一髪でその影を受け止めた。

 そして、その正体に気付いた。

 

「リューキュウ……! たかが羽の生えた蜥蜴が彼等と同じ場所に立とうとするか」

 

「その子を放しなさい……!!」

 

 現れたのはリューキュウだった。

 リューキュウは必死に竜牙へ腕を伸ばすが、それをオールフォーワンが片手で受け止めていた。

 

 必死に竜牙を助けようとするリューキュウだったが、オールフォーワンに吹き飛ばされたが空で旋回して態勢を整えた。

――時だった。今度はイビルジョーへ強烈な衝撃が放たれた。

 

『GAU!!?』

 

 その衝撃にイビルジョーは僅かに体が傾くが、すぐに対象を睨み返すと、そこにいたのは一人の女性ヒーローだった。

 

「よう爺さん! テレビで見てたぜ! 良い蹴りしてんじゃねぇか!」

 

「お前……ミルコか」

 

 それはミルコだった。彼女はグラントリノにそう言うと、グラントリノも彼女を見ながらそう呟いた。

 

 しかし挨拶をしている暇はなく、すぐにイビルジョー達が動いた。

 イビルジョーは口を大きく開け、呑み込むが如くミルコとグラントリノに迫った。

 

「おっと!」

 

「チッ!」

 

 二人は咄嗟に回避するが、近くにあったビルはその顎の一撃で一瞬で砕け散ってしまう。

 脅威的な顎の力に二人は僅かに冷汗を流すが、同時にリオレウスとリオレイアがエンデヴァーとリューキュウへと迫った。

 

「クッ! 何という炎だ……!」

 

「速い……!」

 

 炎を吐くリオレウスにエンデヴァーは汗が蒸発しながらも応戦し、リューキュウもリオレイアと空で取っ組み合いを始めた。

 空で豪風が吹く中、エッジショットとシンリンカムイも動こうとしたが、それよりも先にナルガクルガが彼等に襲い掛かり、一瞬で肉体を吹き飛ばされた。

 

 そこへ、ベリオロスが噛み付こうとするが、シンリンカムイが間一髪で木で顔を抑え込んだ。

 

「なんだコイツ等は……!」

 

「うぐっ……油断するな。あの巨体でなんて速さだ……!」

 

 必死に抑えるシンリンカムイへエッジショットは腹部を抑えながらそう言っていると、暴れまわるイビルジョー達の姿にオールフォーワンは満足そうに頷くと、今度こそと竜牙の胸に手を置いた。

 

「止めろ!!」

 

 オールマイトは動かない身体を無理矢理に動かすが、それでも速いのオールフォーワンだった。

 

「黙って見てるが良いオールマイト。そして脳裏に焼き付けろ……これが嘗て、全盛期の私ですら勝てなかった存在にして、彼の本当の力だ!」

 

 オールフォーワンはそう言って覚醒の個性を使った。

――瞬間、眠っていた竜牙の瞳が一瞬にして大きく開いた。

 

――

 

――そして竜牙のいた場所に白銀の落雷が落ちた。

 

 

 

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