僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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今日までの出来事。

一昨年の9月に鬱病発症→休職するが11月に会社からクビを宣告される→今年に入って通院、投薬のお陰でようやく回復傾向→4月に新しい職場に→丁度繁忙期で忙しい日々を送る。

これが今までの出来事です。


第四十九話:極み吼えるジンオウガ

 

「これは一体……何が……!?」

 

 オールマイトは目の前の光景に意識を奪われていた。

 何が起こったのか分からない。何が目の前にいるのかが分からない。

 

 竜牙がいた場所は落雷と共に病院のベッドも吹き飛び、今もその場所は落雷が何度も落ちているだけだ。

 

 しかしオールマイトには分かっていた。そこには()()()いることを。

 それだけの存在感を感じる。尋常じゃない存在感だ。

 

 目が離せない程に引力と錯覚させる程の存在感。

 

 それだけじゃない。異常な程の電気もオールマイトは肌から感じ取っていた。

 嫌でも分かる。全身の毛という毛が、肌から感じる異常な電力。

 

 それを感じ取っているのはきっと、自分だけではない筈。

 オールマイトは小さな動きでグラントリノ達の方を見てみると、そこにはあったのは静寂だった。

 

 グラントリノ達――そしてイビルジョー達ですら動きを止め、竜牙がいた場所へ視線を固定していた。

 

 そんな静寂の中、唯一笑っていたのはオールフォーワンだけだった。

 

「アッハッハッハ! そうだ……これだよ。懐かしいな」

 

 オールフォーワンはそう言って服をめくって腹部を露出させた。

 そこには爪で付けられたであろう三本線の傷が刻まれており、それを見たオールマイトは目を大きく開いた。

 

「まさかその傷は……!」

 

「その通りさ。雷狼竜から受けた傷だよ。しかしただの雷狼竜じゃない……原種でも亜種でもなく、突然変異でもない。既に完成されたまさに極みの領域に達した個体! 雷狼竜の個性――その真なる姿がこれだよオールマイト!」

 

「真なる姿……!?」

 

 オールフォーワンの言葉にオールマイトは未だに落雷が続く、竜牙がいた場所に目を向けた。

 そこには相変わらず存在感だけで姿はなかった。

 

 しかし周囲を包む電気は更に増えていることにオールマイトは気付いた。

 そして一度だけ、反射的に瞬きをした。

――時だった。

 

 目を開いた瞬間、オールマイトは我が目を疑った。

 そこには先程までいなかった筈の雷狼竜が佇んでいたのだ。

 

 体育祭で見た時よりも巨大で、甲殻も体毛も角も異常発達している雷を纏う雷狼竜。

 何より鱗の色が白銀に染まっており、周囲は翡翠色の電気領域となっていた。

 

「雷狼寺少年……?」

 

 オールマイトは竜牙の名を呼んでみたが、何かが違う。

 唸り声一つない静寂の中、オールマイトは目の前の雷狼竜からは竜牙の意思を感じとることができなかった。

 

 そしてオールマイトは一歩前に出た時だった。

 

――それは訪れた。

 

AOooooooooooooooN!!!!

 

 それは鳴き声だったのだろうか。それとも何か別の音――現象だったのかオールマイト達には分からなかった。

 

 周囲が翡翠色の世界に包まれ、地面が抉れ、周囲の瓦礫と共に吹き飛んだ。

 グラントリノ達も、イビルジョー達も吹き飛んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ヘリから撮影していたクルー達も、あまりの衝撃にヘリは大きく揺れ、カメラも異常な電力によって映像に異常が発生する。

 その映像を緑谷達も見ていた。映像が乱れる中で確かに映っている雷狼竜の姿を。

 

▼▼

 

「あれが……雷狼竜の本当の姿……?」

 

 八百万から思わず言葉が漏れた。

 今まで見てきた、対峙してきた雷狼竜とは一線を画す雷狼竜。

 

 それを本能で察したのだろう。

 誰もが言葉を失い、轟や爆豪ですら冷汗を流しながら言葉を失っていた。

 

「……雷狼竜の頂点。雷狼竜の極み」

 

 そんな中で緑谷の口からも言葉が漏れた。

 周囲の人間達も言葉を失っていた。

 

 乱れる映像の中、確かに映る雷狼竜の姿に意識を奪われてしまっていたのだ。

 

 

▼▼

 

「っ!――何がっ! 一体、何が起こった……!!」

 

 吹き飛ぶ中で運よく助かったオールマイトは目の前に佇む雷狼竜を見て軽いパニックに陥っていた。

 今のは攻撃だったのか。それならば敵意を持っていることを意味している。

 

 竜牙の意思がないのかもしれない。

 オールマイトはヨロヨロと立ち上がり、雷狼竜へ手を伸ばしたが、その腕は動揺と疲労で震えていた。

 

 そんな姿を見たオールフォーワンは、同様に吹き飛んでいたが静かに立ち上がると呆れた様にオールマイトを見た。

 

「そんなみっともなく動揺するなオールマイト。ただ()()()()()じゃないか。――これが極み個体と呼ぶ雷狼竜の姿さ。今まで君が見てきた雷狼竜とは次元が違う最強の個体。雷狼竜の個性で最強の姿。それが極み吼える雷狼竜なのさ!」

 

 それは嘗てオールフォーワン自身も個性を奪うことが出来なかった理由でもあった。

 極――ただ吼えただけで全てを吹き飛ばす究極の個体。

 

AOooooooooooooooN!!!!

 

 雷狼竜が吼えた瞬間、雷が走った。

 同時に雷狼竜が消えた。

 

 周囲を縦横無尽に走る雷。

 しかしオールマイトは気付いた。その正体は雷狼竜だと。

 

 電光石火――異常な巨体にも関わらず視認すら出来ない程の速度を見せる雷狼竜に、オールマイトですら僅かに恐怖を抱いた。

 

『GYAOoooooN!!』

 

 その間にも雷狼竜の蹂躙は収まらなかった。

 イビルジョーやリオレウス達に攻撃を行い、その巨体が倒れても動きを止めなかった。

 

「……くっ! 致し方ないか!」

 

 雷狼竜の行動にエンデヴァーが動いた。

 空から炎を広範囲に放って雷狼竜を攻撃するが、雷狼竜は一瞬でその姿を消した。

 

 その速度にエンデヴァーですら困惑を隠せなかった。

 

「なっ!? なんていう速度だ……!」

 

 最早それは人が反応できる領域を超えていた。

――否、生物に許された領域を超えていた。

 

 エンデヴァーは周囲を見渡すが雷狼竜の姿を捉えることが出来なかった。

 

「くっ! オールマイト!!!」

 

 エンデヴァーはオールマイトに怒号の様に警戒を促すが、オールマイトは逃げる素振りを見せなかった。

 寧ろ堂々と立って仁王立ちするかの様に佇むと、強い眼差しで周囲を見ながら叫んだ。

 

「もう止めるんだ雷狼寺少年!! 君はそんな事をする少年じゃない!! 雷狼竜の個性に呑まれてはいけない! 君はヒーローになるんだろう!?」

 

 血を吐きながら叫ぶオールマイト。

 それは彼の心の中の叫びだった。竜牙を止めたい。これ以上、竜牙に何かをさせる訳にはいかない。

 

 オールマイトは背後にオールフォーワンがいるのに言葉を続け、オールフォーワンもそんなオールマイトの姿に笑みを浮かべていた。

 

「相変わらず無駄が好きだね君は。止まるものか……戦うこと、暴れること、蹂躙することこそが生きる理由の雷狼竜だよ?」

 

 オールフォーワンはそう言って右腕に力を込め始めた。

 今持てる彼が持つ個性――それで全力でオールマイトを殴る為の準備だ。

 

 それにオールマイトも気付いたが、それでもオールマイトは竜牙へ叫び続けた時だ。

 

AOooooooooooooooN!!!!

 

 不意に雷狼竜がオールマイトの目の前に現れた。

 雷を纏い、目の前に立つだけで尋常じゃない威圧感を放つ雷狼竜にオールマイトですら威圧されたが、それでも彼の瞳からは火が消えていなかった。

 

「すまなかった……雷狼寺少年。私は君にとってヒーローとしても先生としても失格だろう。――だが、だからこそ止めて見せる。もう良いんだ。オールフォーワンに使われるな! 君はヒーローになるんだろう!!」

 

 叫ぶオールマイト。それに迫る雷狼竜。

 しかしオールマイトは一切逃げる様子も雷狼竜から目を逸らすこともしなかった。

 

 そして雷狼竜の牙がオールマイトの眼前に迫った時だった。

――不意に落雷が落ちた様な轟音と共に、雷狼竜は姿を消した。

 

 代わりにその場にいたのは倒れている竜牙の姿だった。

 そんな光景にオールマイトは竜牙の頭を撫で、オールフォーワンは小さく溜息を吐いた。

 

「時間か……やはり宿主にダメージが大きい中で極み吼える雷狼竜は扱い切れないか。――しかしこれで良い。僕が彼に出来ることは全てやってあげた。さぁ、次は僕らの番だ。終わりにしようかオールマイト」 

 

「あぁ! その通りだ!! 今度こそ私は彼を守って見せる!! さらばオールフォーワン!!」

 

――そしてさらばだ。ワンフォーオール!!

 

 こうして神野区の戦いは終わりを告げた。

 勝者はオールマイト。最後の残り火を使い果たしてオールフォーワンを撃破した彼は№1ヒーローとして最後の仕事をやり遂げた。

 

「次は……君だ」

 

 この言葉を残してオールマイトは終わりを告げた。

 竜牙もすぐに救急隊員に運ばれて行った。

 

 だがこの時、オールマイトにも緑谷達にも分からなかった。

 林間合宿、そしてこの一件が竜牙の心に深い傷になってしまっていたことに。

 

 

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