僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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第五十六話:いざ海外留学へ

 

 あれから二日後、竜牙は空港にいた。

 パスポートに大型のキャリーケースを持っており、明らかに長旅の装いであった。

 

 そして、そんな彼の目の前には旅支度を同じくしているイビルジョーがいた。  

 

「さぁ! まずはアメリカだ! 行こうぜウルフボーイ!」

 

「……はい!」

 

 イビルジョーの言葉に竜牙は力強く頷くと、後ろを振り返る。

 そこには相澤とオールマイト。そして猫折さんが立っており、三人共、竜牙を見守っていた。

 

「竜牙さん、身体には気を付けて?」

 

「はい。猫折さんも無理はせずに」

 

「きっちり揉まれて学んでこい。本来ならありえない特例中の特例だからな?」

 

「分かってます。一芸だけじゃなく、あらゆることを学んできます」

 

「HAHAHAHA! アメリカはヒーローの本場だ! 色々と見てくると良い! きっと君の為になるよ雷狼寺少年!」

 

「はい! 必ず今よりも強くなって戻ってきます!」

 

 真剣な眼光でそう言った竜牙の言葉にオールマイト達は満足そうに頷く。

 こうなったのも二日前の事だ。雄英の校門前でイビルジョー達に言われた<海外留学>の件が関係しており、竜牙はその時のことを思いだしていた。

 

▼▼ 

 

「海外……留学?」

 

 イビルジョーの言葉に竜牙は黙って聞き、代わりに呟いたのは耳郎だった。

 皆も唖然とする中、相澤やオールマイトは分かっていたのか特に驚いた様子もなく、驚いたリアクションをしたのは葉隠と芦戸だ。

 

「えっ!? 雷狼寺くん海外行っちゃうの!!?」

 

「そんな……! やっと皆揃ったのに!」

 

「お別れなんて寂しいやん!」

 

「ケロッ……相澤先生どういうことか聞いて良いかしら?」

 

 二人の言葉に麗日と蛙吹も反応し、皆もどういう事か聞きたいのか相澤とイビルジョー達の顔を行ったり来たりする。

 すると相澤は深い溜息を吐くと面倒そうにA組を見た。

 

「早合点するな……この海外留学は長期的なものじゃない。短期的なものだとイビルジョーも言ったろ?」

 

「ハハハハ! ソーリー! ソーリー! 驚かせちゃったね!――イレイザーヘッドの言う通り、これは長期的な別れじゃない! 文字通り短期的な留学をしてもらい、俺達と訓練するって話なんだ」

 

「……訓練ですか?」

 

 竜牙がそう問いかけるとリオレウスが頷く。

 

「そうだ。実は僕達で話し合ってね。君がもし立ち直れたら一緒に帰国してもらい、短期的な間だけど僕達で訓練をつけてあげようって決めたんだ」

 

 リオレウスがそう言うとリオレイアやナルガクルガ。そしてベリオロスも頷いた。

 

「アナタはその若い年齢で雷狼竜の個性を扱ってる。それは間違いなく才能よ。本来なら暴れたりして制御が大変なんだから。――でもそれ故に勿体ないって思ったの。アナタはオールフォーワンの件があったとはいえ個性に身を委ね過ぎていたから」

 

「だからこそ私達が君にこの<モンスター個性>との向き合い方、そして扱い方を教えようってわけ」

 

「そういう事だ。勿論、短期的だからかなり忙しく国を行き来することになるが、それでも大丈夫ならどうだい? 私達と訓練しないかい?」

 

 ベリオロスがそう言うとベリオロス達は竜牙の顔を一斉に見た。

 同時に耳郎達も竜牙を見る。

 

 本来ならチャンスだ。海外のヒーローの下で研修を受ける様なものなのだから。

 普通なら断る理由がない。あの爆豪ですら羨ましいのか、かなり気に入らなそうに竜牙を睨んでいる。

 

 逆に耳郎達は短期的とはいえ竜牙とまた別れることに少しの不安があるらしく、全員の顔は複雑だ。

 そんな全員の意識が向けられる中、竜牙は決めた。

 

「……行きます! 皆さん、俺を鍛えて下さい」 

 

 竜牙は覚悟を決めた様にイビルジョー達に頭を下げると、イビルジョーは嬉しそうに手を叩いた。

 

「良し! これで決まりだウルフボーイ!! 最初の行先とルートは既に話し合った! まずは俺と一緒にアメリカだ! ヒーローの本場を見せてあげるよ!」

 

「その後はイギリスだ。僕と妹のリオレイアで色々と教えてあげるよ」

 

「宜しくね! 空中戦を教えてあげる!」

 

「次がロシアだ! このベリオロスが過酷な環境での個性の扱いを教えてあげよう!」

 

「……最後は京都ね。担当は私、ナルガクルガ。――イレイザーヘッドの話だと仮免試験を受ける様だから、終盤は日本にいた方が良いと思ってね」

 

 そう言ってナルガクルガは相澤を見ると、相澤は黙って頷いた。

 

「貴重な仮免試験だ。遅刻や時差ボケを言い訳にされて落ちられても困る。なら最後は京都の方が都合良い。――分かっていると思うが今回の留学は特例中の特例なのを忘れるな? 他の奴が付いて行こうものなら即却下だ」

 

 相澤はそう言ってジッと竜牙達A組全員を見る。

 

 落ちる言い訳作りの為の留学ではない。尚且つ、今回は特別扱いであることを忘れるな。

 相澤がそう言っているかの様に竜牙達には見えた。

 

 貴重な海外留学だ。ただの海外旅行で終わって良いものじゃない。

 

「――と、いう訳だウルフボーイ! 出発は二日後! その日に俺とアメリカだ!」

 

「……分かりました。しかし、よくすんなりと決まりましたね? 仮にも日本で活動していたヴィランの犯行だったのに」

 

 竜牙はそこが気になっていた。

 仮にもイビルジョー達は被害者だ。なのに日本の留学生を受け入れるのは国的にはどうなのだろうか?

 

 オールフォーワンという都市伝説レベルのヴィランだ。

 そんなヴィランが誘拐したヒーロー達。普通ならば帰国ついでに留学なんで本来ならありえない。

 

「勿論、問題はあったよ。だから特例中の特例なんだ。――でもそこは№1ヒーローのオールマイトだ。彼の説得があったからこそ今回の留学は叶ったんだ」

 

「引退したって言っても、オールマイトの名前は未だに世界各国に影響するもの。彼の説得があったからこそ国のお偉い様達も納得したのよ?」

 

 リオレウスとリオレイアがそう言って説明すると全員の視線がオールマイトに向けられる。

 仮にもオールマイトだ。世界への影響は健在であり、当の本人も笑っていた。

 

「HAHAHAHA! 元とはいえ№1ヒーローだったからね!――雷狼寺少年にはオールフォーワンの件で随分と苦しめてしまった。だからこれくらいさせてほしい」

 

「……オールマイト。ありがとうございます!」

 

「なぁに! 良いって事さ! 世界で学んできたまえ雷狼寺少年!」

 

 竜牙はオールマイトに頭を下げると、オールマイトは嬉しそうに笑った。

 これで少しはオールフォーワンとの件で苦しめてしまった罪滅ぼしになるかな、とオールマイトはそう思っていた。

 

 竜牙の異変に気付けていたのに何もしてあげられなかった。

 それはオールマイトが、ずっと気にしていたことだった。

 

 ならばと、竜牙の為になるならば世界に喜んで頭を下げる。

 それがオールマイトの選択であり教師として出来ることだった。

 

――たまには役立つな。

 

 相澤も内心ではそう思っており、皆も再度オールマイトの凄さを理解した時だ。

 不意に耳郎が何とも言えない表情で呟いた。

 

「あ~あ、でもこれで雷狼寺とはまた離ればなれか」

 

「……すまん耳郎。皆も、せっかく俺の為に色々としてくれたのに」

 

「そ、そんなことないよ!? こんなに凄いヒーロー達に訓練つけてもらるのに! 断る方が駄目だよ!」

 

「今回は自主退学の件とは違う。俺等も納得できるし、喜んでお前を送り出すぞ?」

 

 竜牙の言葉に緑谷は慌てて、轟は冷静な態度でそう言った。

 すると、それに続く様にA組のメンバー達も声を出し始める。

 

「そうだぞ雷狼寺君! 委員長として俺は君を送り出す! 海外で色々と学んだら俺達にも教えてほしい!」

 

「そうですわ! それまで私達も特訓してますから! お互いに頑張りましょう!」

 

「ケロ! 海外で風邪とか引かない様にね雷狼寺ちゃん?」

 

「気を付けて行って来いよ雷狼寺!」

 

「土産は海外製のエロ本で良いぜ!」

 

 飯田、八百万、蛙吹、切島、峰田がそう言って励ますと、他のメンバー達(爆豪を除く)も笑顔を竜牙に見せた。

 自主退学は皆も納得できなかったから今回ここまで動いたが、海外留学なら話は別だ。

 

 竜牙の為になると皆、分かっているから今回は反対しなかった。

 竜牙も皆の気持ちが分かったからそれ以上は言わず、静かに礼を言う。 

 

「皆……ありがとう。――耳郎、その……なんだ。待っててくれるか?」

 

「まぁ……別に良いけどさ。でも連絡ぐらいはしてよ? 時差とか関係なく待ってるからさ」

 

「気を付けて行って来いよ雷狼寺。俺も訓練を積んで個性を伸ばして見せるからな」

 

「あぁ、障子も後は頼んだ。何かあればすぐに連絡してくれ」

 

 耳郎は照れくさそうに、障子は期待する様に竜牙へそう言うと竜牙も二人を見て頷いた。

 しかし、そんな会話だが見ている側からすれば違和感が半端ない。

 

「ねぇ? 雷狼寺くんって短期留学なんだよね? でもあれってさ……」

 

「うん、普通に見ても遠距離恋愛するカップルにしか見えないよね?」

 

「じゅ、純愛なのですね……!」

 

「うぅ……見てるこっちが熱くなるわぁ」

 

「ケロ! 二人共、素直になれば良いのに」

 

「クラスメイトでもリア充は許されないとオイラ思うんだ」

 

 葉隠、芦戸、八百万、麗日、蛙吹、峰田がそんな光景を見て好き勝手なことを言うが、その気持ちも皆分かっていた。

 

 明らかに雰囲気が友人のそれではないのだ。

 何というか、お互いを理解し合っている男女の別れ。そんな感じだ。

 間違いなく遠距離恋愛的、離れ離れになる恋人の様な感じなのだ。

 

 そしてそんな二人を見ていたイビルジョー達も真顔で見ていた。

 

「あれで付き合ってないって……ジャパンは進んでいるのか遅れているのか分からないな。アメリカだったら結婚待つまでに俺の天寿を全うしそうだよ」

 

「僕は純愛派だからこういう雰囲気は好きだよ」

 

「でも女性も時には攻めて欲しい時もあるのよ?」

 

「……私は静かな恋愛が良いな」

 

「ロシアでもあんな二人は中々見ないよ?」

 

 もう皆、好き勝手に言い合っていた。 

 その内、何故か恋愛議論まで始まってしまうがそれは別のお話。

  

「姉ちゃんとのことどうすんだろうな、雷狼寺の奴」

 

 さり気なく姉とのことを心配する轟であった。

 そんなこんなあり、竜牙の留学が決定したのであった。

 

▼▼

 

「それじゃ出発だウルフボーイ!」

 

「……はい!――それでは行ってきます」

 

 竜牙はそう言ってオールマイト達に一礼するとイビルジョーと共に飛行機の中へと入って行くのだった。

 そして竜牙の後ろ姿が見えなくなった後、相澤は安心した様に一息ついた。

 

「ふぅ……無事に行ったか」

 

「あぁ……この留学が雷狼寺少年に良い影響を与える事を祈るだけだよ」

 

 オールマイトも流石に不安はあった。

 しかしそれは自身の過保護的な部分がそうさせていることを理解している。

 

 自分の手から離れて行く。

 全てを守ることが出来ない、目の前からいなくなってしまう。それを分かっているオールマイトだからこその不安だった。 

 

 だがもう賽は投げられた。

 後は竜牙次第だと二人は納得すると、相澤は不意に隣にいる猫折さんの方を向いた。

 

「それでは……雷狼寺の入寮を認めて下さるんですね?」

 

「はい……けれど、それは雄英を信じたからではありませんよ。――クラスメイトの子達。竜牙さんの為にあそこまでして下さった耳郎さんや緑谷さん達を信じたいからです」

 

「それでも構いません。ありがとうございます」

 

「ありがとうございます」

 

 相澤とオールマイトは理由はどうであれ、認めてもらえたことに感謝して一礼した。 

 これでA組全員の入寮が決まり、相澤達も一安心だったが、まだ完全な安心はできなかった。

 

「では戻りますよ? 我々と生徒達にはここから本番ですから」

 

()()()……だね」

 

「えぇ……こっからは血ヘド吐くぐらいの圧縮訓練になりますからね」

 

 相澤はそう言って静かに笑うのだった。

 こうして竜牙は海外で、残りのA組は雄英にて訓練が始まろうとしていた。

 

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