僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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カクヨムコン11の短編部門最終選考に落ちたぁ(´;ω;`)
残念! 次だ次(`・ω・´)ゞ


第五十七話:竜牙の背中

 

 竜牙の見送りを終えた相澤とオールマイトは学校へ戻ると、残ったA組達へ新たな課題を提出した。

 それは――

 

――<必殺技>の開発だ。

 

「ヒーローっぽいのキタァァァ!!!」

 

 A組は大喝采だった。

 学校っぽく、それでいて子供心をくすぐる課題<必殺技>だ。

 聞いただけで皆の胸が高鳴り、騒がずにはいられなかった。

 

 更に、そんな彼等の為に集まった教師陣

――ミッドナイト・セメントス・エクトプラズム。

 

 彼等は必勝の型――<必殺技>こそヒーローには必要不可欠であることを告げ、同時に現在の状況では戦闘力がヒーローには不可欠であることを示した。

 

 オールフォーワンが消えたとはいえ敵連合を始め、ネームドヴィランや新規のヴィラン達は健在且つ出現しているのだ。

 

 だから今の現代では一定の戦闘力は必要だった。

 新たなるヴィラン達と戦う為に。

 

「これよりコスチュームに着替え、体育館γ――通称トレーニング台所ランド! 略してTDLに集合しろ!」 

 

――TDLはまずいんじゃ……!

 

 相澤の言葉に一瞬で絶句するA組。

 だがそんな呑気なことは言ってられない。

 ただでさえ竜牙の件で遅れが発生しているのだ。

 

 相澤は緑谷達の様子を察したがガン無視した。

 

「ここはセメントス考案の施設だ。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意してもらえる。台所ってのはそういう意味だ」

 

「質問です! 何故、仮免取得に必殺技が必要なのか意図をお聞かせください!」

 

「話すから落ち着け飯田。――ヒーローとは多種多様なトラブル人々を救い出すのが仕事だ。試験では当然その適性を見られることになる」

 

――情報・判断・機動・戦闘・コミュニケーション・魅力・統率。

 

 仮免試験では毎年違う試験内容で数多くの適性を判断していた。

 それに対応する為には<必殺技>は不可欠。

 

 同時に<必殺技>は攻撃である必要ではなく、飯田の様な高速移動――<レシプロバースト>も既に必殺技であるとエクトプラズムは告げた。

 

「必殺技ハ 必ズ攻撃デアル必要ハ ナイ。自分ノ勝テル・有利トナル型コソが必殺技ノ真髄ダ」

 

「本当なら中断された合宿である程度のプロセスになる筈だったが、諸君らの知る通り合宿は中断された。――だからこそ後期始業まで、夏休みの残り8日程度を使った圧縮訓練とする」

 

 相澤がそう言うと同時にセメントスによって巨大な山が次々と生まれ、エクトプラズムの分身も次々と現れた。

 

「因みにこの点に関しては雷狼寺はかなりに先に進んでいる。サポートメカによる雷光虫、武器作成、そして雷狼竜化。そのどれもが<必殺技>の域に達している。そんなアイツが海外で似た個性のヒーローと特訓して帰って来る。――後は言いたいことは分かるな? 雷狼寺に置いて行かれたくなかったら全力で焦れ。何があってもプルスウルトラの精神で乗り越えろ! ではこれより訓練開始!」

 

――わくわくしてきた!!

 

 相澤の言葉と竜牙の存在に刺激されたのだろう。

 A組の中の競争心にも火を付け、彼等のやる気を一気に全開へと持って行った。

 

「さ~て! やりますか!」

 

「あぁ、雷狼寺が帰国してきた時に驚かせないとな」

 

 耳郎も障子も拳を握ってやる気を出し、他のメンバー達も真剣な表情となった。

 これより<必殺技>の訓練が幕を開けた。

 

▼▼

 

「イヤホン・ジャック!」

 

 始まった圧縮訓練。

 耳郎はセメントスの作ったブロックにイヤホンジャックで衝撃を与えたり、サポートグッズに刺して出力をあげたりと色々と試していた。

 

 しかし、まだ試行錯誤を重ねているのだろう。

 ブロックには激しい亀裂が出来ても破壊まではいかず、サポートグッズも出力が安定しなかった。

 

「ウム……見タトコロ地力ヲ鍛エルト言ウ所カ。個性ノ出力ヲ上ゲルノハ間違イデハナイ。シカシ、理想ヨリハマダマダ遠イナ」

 

「ハァ……ハァ……了解……!」

 

 耳郎は額の汗を拭いながらエクトプラズムの分身体の話を聞いていた。

 自分でも分かる個性の力不足。汎用性や出来ることも、もっと増やしたい気持ちが耳郎には強かった。

 

 何故なら、耳郎の頭の中には竜牙の背中が視えているからだ。

 

『それじゃ、今逃げているあの連中がヒーローになり私が来たって言ったとして――人々は安心するのか?』

 

 入学試験で見た竜牙の背中に憧れて今まで来たのだ。

 もう一度、あの時みたいに後ろではなく横に立ちたい。

 

 もう無力な仲間と思われるのはごめんだ。

 竜牙をもう悲しませたくない。悲しませない程に強くなりたいのだ。

 

 それは障子も同じだった。

 

「……!」

 

 まるで瞑想しているかの様に佇み、自らの個性『複製腕』の幅を伸ばそうとしていた。

 複製の腕を伸ばし、口や耳など複数の器官を生やすなど、もっと汎用性を、もっと出来ることを増やそうと冷静に考えていた。

 

 他の者達に比べて訓練景色は地味で静かだが、障子は大真面目だ。

 障子の個性は異形系だが索敵・諜報も可能な万能個性でもある。

 だから更に腕を増やして接近戦に強くしようとも思ったが、問題は<必殺技>だ。

 

 やれることが多すぎる為、障子はどう伸ばせば<必殺技>となるか悩んでいた。 

 

「……やれる事が多いと迷うな」

 

「君ノ場合ハ長所ヲ伸バスベキダト思ウガ? 生ヤス腕ヲ増ヤストカ、コピースル器官ヲ良ク考エルベキダ」

 

「……むぅ」

 

 障子にとってそれは言うは易く行うは難しだった。

 合宿で多少とはいえ個性を伸ばしている。

 

 だが増やす腕もコピーする器官の数や部分も、まだまだ半端な感じで<必殺技>と呼ぶには甘い。

 障子も竜牙の背中に憧れたのもあり、海外から帰ってきた竜牙の隣に立ちたいという意思があった。

 

 だから妥協も半端なこともしたくない。

 これと言った<必殺技>を必ず生み出したかった。

 

 こんな感じで二人共、かなり悩みながら訓練に勤しんでいた。

 それだけ集中し、考えていると言えるが形にするのは難儀だった。

 

 手段の中にはコスチュームの改造も視野に入れてあったが、それはまだ後だ。

 また時折、他のメンバー達の様子を見てみると、やはり活発な動きを見せたのは爆豪だった。

 

 ずっと派手に爆発させており、ストレス解消の如く大暴れしていた。

 

 けれど他のメンバー達はそういかない。

 緑谷の様に方向性に悩み、何も出来ずにいる者もいれば、尾白の様に動きの単調さを指摘されて悩む者もいる。

 

 全員が苦労しているのだ。

 それを肌で雰囲気を感じ取ったのだろう。

 耳郎や障子も気合いを入れなおす。

 

「良し! うちも頑張ろ!」

 

「やれることはまだある筈だ」

 

 一呼吸を入れて再度、訓練に励む二人だったが不意に脳裏に竜牙のことが過った。

 

――雷狼寺ならどうしていただろう? 何を見せてくれただろう?

 

 肉体の雷狼竜化――更に<超帯電状態>もある。

 部分的にも雷狼竜化させれた筈の竜牙のことを思いだし、それを考えるとやはり焦ってしまう。

 

 相澤の言葉通り、竜牙は<必殺技>という点では既に完成させている。

 だから焦りながら二人は必死に考え、竜牙に並ぼうと胸に刻んだ。

 

 同時に気になった事もあった。

 

「……雷狼寺の奴、一体どんな訓練してんだろ?」

 

 耳郎が不意に呟いた言葉。そのまんまの意味だった。

 だが答えが帰って来ることはなく、無駄な問いだと耳郎は頭を切り替えた。

 

 そして、竜牙が何をしているか。それが判明するのはまずは三日後のことだった。

 

▼▼

 

 それは三日後の訓練の休憩のことであった。

 皆は耳郎と障子の下へ集まっていた。

 

「えっ、雷狼寺……?」

 

「そうそう! 雷狼寺くん何してるのかなって!」

 

「ケロ! 耳郎ちゃんと障子ちゃんには連絡来てるのよね?」

 

「まぁ一応……だが思っているのとは違うぞ?」

 

 葉隠と蛙吹が代表して話を聞くと耳郎と障子は何とも言えない表情を浮かべていた。

 確かに連絡は来ている。しかし内容は至って平凡なのだ。

 

「まぁ見たいなら見せるけどさ……」

 

 耳郎はそう言ってスマホを操作すると、メッセージアプリを開いた。

 そして竜牙とのメッセージを開いて皆に見せると、皆もなんだなんだと覗き込んだ。

 すると、そこに写っていたのは短いメッセージと写真だけだった。

 

『今日の夕飯。これ食べた』

 

 そう書かれたメッセージの下には巨大な焼かれたステーキの写真があった。 

 

「うおっ! 旨そう! やべぇ……肉食いたくなった」

 

「やべぇ……肉感半端ないな! 流石アメリカ……!」

 

 切島と上鳴は強く反応したが、他のメンバー達は思ったのと違う内容に少し肩を落とした。

 てっきり、凄い訓練の動画でも送られてると思ったが、実際は観光の様に食事の内容ばかり。

 

 他にもタワー状のハンバーガーや巨大なパフェの画像だったりで、見ていると段々とお腹が空いてきた。

 

「うわぁ……雷狼寺くん、堪能してるんやな」

 

「うっ……見てるとお腹空いてきたな」

 

 麗日と尾白はそう言って苦笑する。

 育ち盛りの高校生達には目に毒な画像であった。

 ただでさえ訓練中なのに余計に腹が減る。

 

 特に耳郎と障子なんかは、送られてくる時間帯のせいで軽く飯テロを受けているのだから結構大変だった。

 最初は時間帯を気にせずメッセージを送る様に言ったが、まさかこんな飯テロ画像ばかり送られてくるとは思っても見なかった。

 

「ハッ! 外国だから調子乗ってんだろあの白髪野郎! 付き合ってられっか!!――エクトプラズム! 訓練再開だ!」

 

 メッセージをちゃっかり見ていた爆豪はそう言うと、イライラしながら先に休憩を終えてしまう。

 彼からすれば少しは糧となると思ったが実際の内容はこれだ。

 

 時間の無駄だと吐き捨てるかの様に近くの破片を蹴ると、再び大きな爆発をさせ始めた。

 

「まっ、雷狼寺らしいっていうか……元気そうだな」

 

「うん、少なくともエンジョイしてるみたいだね」

 

 轟と緑谷はそう言って何とも言えない表情をし、周りもちょこちょこと訓練に戻って行くと耳郎と障子も立ち上がって訓練に戻ろうとした。

 

「なんか雷狼寺は楽しんでるっぽいね?」

 

「まぁ……息抜きも大事だろ。特に雷狼寺には」

 

 二人も肩透かしを受けた様な表情しながらも理解は出来ていた。

 最近の竜牙なら息抜きをした方がプラスになるだろう。

 

 少なくとも二人はそう思って訓練に戻るが、その考えが大きな間違いであったことに気付くのは次の日になってからだった。

 

▼▼

 

 訓練四日目、職員室で相澤はパソコンで送られてきた映像と贈り物を見ていた。

 その内容は――竜牙の訓練映像と海外の新聞だった。

 

『ジンオウガ!! ジンオウガ!! ジンオウガ!!』

 

「……アメリカは騒々しいな」

 

 映像から聞こえるジンオウガコールに目を険しくする相澤だったが、その内容自体は満足だった。

 周りに軍人やアメリカのヒーローの囲まれて竜化したイビルジョーと対峙する雷狼竜。

 

『AOooooooooN!!』

 

『GYAOooooooN!!』

 

 互いに咆哮をあげながら威嚇し合い、やがてジンオウガが駆け出してイビルジョーの喉元に噛み付いた。

 それに対してイビルジョーも暴れ、首を振り回してジンオウガを地面へと叩きつけるが、すぐにジンオウガも態勢を整えて再び咆えた。

 

『AOooooooooN!!』

 

「派手にやってるな雷狼寺の奴……」

 

 まるでモンスター版のストリートファイトだ。

 周りも煽る様に歓声をあげているので戦いの熱は下がらず、雷狼竜も<超帯電状態>となり、イビルジョーも唾液を垂らしながら大きな口を開けた。

 

 そこから更に繰り返される攻防。モンスター同士故にその周囲への余波も凄まじい。

 地面や周辺の設置物は既に破壊されているが、二人も周囲も気にせずに戦いを続けていた。

 

 だが相澤的には満足な光景でもあった。

 

「雄英では出来ない訓練だな……」

 

 残念ながらここまで出来る訓練は雄英にはない。

 生徒同士でも、0p敵を使っても出来ないだろう。

 

 まさに野生、本能を使っての訓練映像を見て相澤は満足そうに頷くと、時計を見た。

 

「そろそろ行くか」

 

 相澤はそう言って体育館γへと向かう。

 見てやらねばならない生徒は竜牙だけではない。

 寧ろこっちが大変だ。ようやく形にしたりコスチュームを改造する者がいるが、まだまだ削りは粗い。

 

 爆豪は派手に活動しているが、それは爆豪が特別なだけだ。

 他も同じかと聞かれれば答えは否。だが順調に進んでいるのも確かだ。

 

「間に合わせねば……」

 

 仮免試験までに絶対に。

 相澤はそう言って体育館γへむかうのだった。

 

▼▼

 

「……妙だ」

 

 体育館γへ着いて緑谷達の訓練を見ていた相澤だったが、その表情は妙に重い。

 その理由は――目の前の光景への違和感だった。

 

「なんだこの気持ちは……?」

 

 相澤は自身に宿る気持ちに違和感を抱いて仕方なかった。

 目の前の光景――それは別に不思議な光景ではない。

 

 皆、コスチュームを改良しながら訓練に励んでおり、その熱も高く、全員が試行錯誤しながら必死に訓練しているのは相澤にも伝わってきている。

 

 なのに、この変な気持ちが相澤に邪魔をする。

 全員が必死だ。個性を伸ばし、汗を流して必死の表情で<必殺技>への道を探っている。

 

 しかしどうしてか。やがて違和感の正体に相澤は気付いた。

 

「物足りない……?」

 

 違和感の答え。それは物足りないという感想だった。

 コイツ等、もっと出来るんじゃないかと思えて仕方なかったのだ。

 

 目の前の光景、それがぬるま湯に相澤には見えてしまっていた。

 だがその理由自体はすぐに相澤には分かった。

 

「……そうか。雷狼寺の訓練映像を見たからか」

 

 答え単純だった。

 竜牙の訓練映像を見てしまったからだった。

 あの映像のインパクトが強すぎて残ったA組の訓練が弱く見えるのだ。

 

 あの爆豪の訓練ですら物足りないと感じてしまった相澤はそれに気付くと、その場で頷くと、手を叩いて全員に聞こえる様に言った。

 

「注目!! 一旦、訓練は中断だ!」

 

「えっ……!?」

 

「どういう事ですか!?」

 

「あぁ!?」

 

 緑谷、飯田、爆豪達が驚きの声をあげ、他のメンバー達も訓練を中断して相澤へ視線が集中すると相澤はニヤリと笑った。

 

「全員、今から俺に付いて来い。大丈夫だ。すぐに終わる」

 

▼▼

 

 訓練を中断したA組は相澤と共に雄英の廊下を歩いていた。

 目的、そして目的地も知らず困惑しながらA組は相澤の後を着いて来ていた。

 

「一体、なんだろうね?」

 

「さぁ? でも相澤先生が無駄なことをすると思えないしな」

 

「分かんないけど、きっと何かあんじゃないの?」

 

 葉隠、瀬呂、耳郎がそう言うと皆も頷いた。

 本音を言えばすぐにTDLに戻って訓練を再開したいが、あの合理主義の相澤が訓練を中断させる程のことだ。

 

 皆もそれを分かっているから黙って着いて来くと、相澤はやがて映像室と書かれた教室で足を止めた。

 

「ここだ。中に入って自由に座れ」

 

 相澤はそう言うと中に入ると、耳郎達も困惑しながらも教室に入って自由に座わると八百万が手を上げた。

 

「あの相澤先生……一体、何を観るのですか?」

 

「雷狼寺の訓練映像だ」

 

「雷狼寺の……?」

 

「……!」

 

 相澤の言葉に周囲はザワつき、轟と爆豪も反応し表情が変わった。

 そして周囲も更に騒がしくなる中、相澤は映像を再生しスクリーンに映すと自然と周囲は静かになっていった。

 

 気付けば息を呑んでスクリーンに集中していると、映像は不意に始まった。

 

『AOooooooooN!!』

 

『GYAOooooooN!!』

 

『ジンオウガ!! ジンオウガ!! ジンオウガ!!』

 

『イビルジョー!! イビルジョー!! イビルジョー!!』

 

 ジンオウガとイビルジョーの咆哮と共に焚き付ける様な双方の名前の大合唱。

 そして、そこからの映像は相澤の見た通りだった。

 

 ジンオウガがイビルジョーに噛み付き、それを首を回して反撃し、しかしジンオウガは受け身を取って再び駆け出して行く。

 

 全身傷だらけの雷狼竜ジンオウガ――その()()()()()は激しく揺れ動き、焔の様に雷の様に存在感を示していた。

 

 そこからイビルジョーに飛び付くと爪で引っ搔き、噛み付いて雷を放電させた。

 そんな攻撃にイビルジョーも激しく咆哮をあげながら走り回り、無理矢理に引きはがす。

 

 そして一瞬の間が生まれた瞬間、双方は瞬時に<人型>になると互いに走り、そのまま互いの腕を掴んで力比べを始める。

 だが一瞬の隙を突かれて竜牙は腕を取られると地面に叩きつけられた。

 

 けれど竜牙はすぐに動き、『作成』の個性を使って双剣を作成してイビルジョーを斬り付けると、イビルジョーはそれを両手でガードした。

 

 そんな一進一退の攻防。激しい戦いと言う名の訓練にA組達は目を奪われてしまった。

 これは訓練なのか。モンスター同士の大戦闘に誰もが息を呑み、竜牙の訓練映像を見ていた時だった。

 

 不意に相澤は新聞を取り出し、自身の真後ろのデスクに置いた。

 

「これは……?」

 

「海外の新聞! それに写っているのは雷狼寺君じゃないか!」

 

 それはアメリカの新聞だった。

 だが一面を飾っているのはコスチュームを纏う竜牙の姿であり、それを見て全員が目を丸くしていると耳郎は八百万を読んだ。

 

「ヤ、ヤオモモ! これ読める!?」

 

「は、はい! えっとですね――『日本から来た新ヒーロー<ジンオウガ>イビルジョーと共にヴィラン撃退!』 まだ免許を持っていないアマチュアヒーローであるが、その戦闘力は凄まじくイビルジョーと共に複数のヴィランを撃退した。今後のジンオウガの活躍に期待し、日本とアメリカと新たなる架け橋となる事も期待。と、書かれていますわ!」

 

「アメリカじゃ、プロがいれば資格なしのアマチュアも個性を使えて戦える。――どうやら雷狼寺はアメリカで派手にやっている様だ。さて、これを見せた理由だが――」

 

 相澤は振り向かずにそう言った時だった。

 背後から強烈に扉を開ける音と共に、大勢が駆け出す音が相澤の耳に入ってきた。

 

 そして相澤がゆっくりと後ろを振り返ると、ニヤリと笑った。

 何故なら、そこには既に誰もいなかったからだ。

 

▼▼

 

「エクトプラズム!! 100だ!! 一気に100体寄越せや!!」

 

「セメントスこっちも!! もっと大きなブロック作って!!」

 

「うおぉぉ……!!」

 

 相澤がTDLに戻ると、その光景は一変していた。

 皆、先程以上の熱と気合で訓練をしていたのだ。

 

 爆豪はエクトプラズムに無理難題を言い、耳郎は更に巨大なブロックにイヤホンジャックを差して衝撃を必死に与え、障子は筋トレと触手操作を同時に行う等、皆々、やる気が凄まじかった。

 

 飯田は更にエンジンを吹かし、八百万は大砲等巨大な物を次々と作り、切島は更に硬く、芦戸も酸をもっと出そうと必死にやっていた。

 

 緑谷も蹴り技に重点を置き、必死に壁を蹴ったりし、轟も炎と氷の威力を更に上げていく。

 蛙吹達もそうだ。自分に出来る事を先程まで以上に必死に行っていた。

 

 そんな光景を見て、相澤はようやく満足そうな表情を浮かべており、そんな光景を見たオールマイトは相澤を見た。

 

「な、なんか凄いね……! 一体、何をしたんだい相澤くん?」

 

「いえ、ただ……見せてやっただけですよ。仲間の努力をね」

 

 相澤はそう言ってニヤリと笑い、やれば出来るじゃないかと満足そうに頷いた。

 

「雷狼寺……お前がこの場にいなくても皆の心を燃やしてやれてるぞ。だからしっかりと学んで戻ってこい」

 

 この場にいなくても体育祭の時の様に皆の心に火を付ける竜牙に、相澤は嬉しそうな表情をした。

 その隣でオールマイトが不思議そうにしていたが、相澤は敢えて黙った。

 

 こうして訓練は続いていき、時は流れた。

 そして仮免試験当日が訪れたのだった。

 

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