僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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決して逆鱗に触れることなかれ……<<ヌシ>>の怒りに触れることなかれ。


第五十九話:仮免試験開幕! 解き放てヌシの咆哮!

「……皆。ただいま!」

 

 それは体育祭の時に見せた時と同じ、満面の笑みだった。

 それを見て耳郎達も一瞬だけ呆気になったが、すぐに笑みを取り戻すと一斉に竜牙を囲む様に駆け寄った。

 

「おかえり! 雷狼寺!! なんか超ロックになって帰って来たじゃん!」

 

「おかえり……時間に間に合ったな」

 

「おかえり! 雷狼寺くん!」

 

「おかえり」

 

 耳郎、障子、緑谷、轟達が安心した様に、そして嬉しそうな表情で竜牙を迎えると、竜牙も笑みで返した。

 そして、その様子を見て飯田達も竜牙へ話しかけた。

 

「おかえり雷狼寺君! 海外はどうだったんだい?」

 

「新聞見ましたわ! 随分と活躍されてた様で!」

 

「活躍しやがってこの……!」

 

「イビルジョーさん、本当に新聞を雄英に送ってたのか……あぁ、随分と勉強になったよ。日本とは違うヒーロー活動はかなり刺激的だった」

 

 飯田、八百万、峰田の言葉に竜牙は思い出す様に語った。

 日本とのヴィランの特色の違いやルール。実戦の空気も味わえて刺激的だったことを語ると、今度は芦戸達が騒ぎ始めた。

 

「ねーねー! お土産は? おーみーやーげー!」

 

「おーみーやーげー! おーみーやーげー!」

 

「ケロ! 三奈ちゃん、透ちゃん……今から仮免試験よ? お土産は後でよ」

 

「……梅雨ちゃんの言う通りだ。安心して良い、お土産はちゃんと全員分ある」

 

 お土産コールをする二人を蛙吹が止めるのを見て、A組らしい空気だと感じた竜牙。

 ようやくA組に帰って来た感じがして、まるで懐かしいものを見る様な目で見ていると、今度は上鳴達が竜牙に話しかけてきた。

 

「っていうか、雷狼寺! なんだよその髪型と瞳は! 海外デビューしてイメチェンか!」

 

「つうか、雰囲気変わったな……漢らしくなったつうか、なんつうかすげぇのは分かる」

 

「髪や瞳の色は雷狼竜の影響が出ている。別に染めたりカラコンを付けてる訳じゃない。雰囲気は……自分じゃ分からないな」

 

「いや、すごく変わったわ! なんていうか、大人な感じやん!」

 

「あぁ……修行の成果だな、雷狼寺」

 

 上鳴と切島の言葉に今一実感がない竜牙だったが、麗日と常闇も変わったと言うので少しだけ実感する。

 

「あの野郎……!」

 

 そんな事を竜牙が考えていると爆豪は心底面白くないと言った表情で竜牙を見ていた。

 しかし爆豪だから分かる竜牙の今の実力。

 

 雰囲気が変わった?――馬鹿を言え。次元が変わったのだ。殆ど変わらない日数の内に、海外での経験で。

 必殺技を覚えた自分でも勝てるのかすら分からない竜牙の雰囲気。

 

 それに爆豪が悔しがっていると、同じくそんな竜牙達を見ている者達がいた。

 

――ジョークと真堂達だ。

 

 特にジョークは竜牙の纏う雰囲気や佇まいだけでも目を丸くしており、唖然としながら相澤へ話しかけていた。

 

「ちょっ……ちょっとイレイザー! なにあの子!? 体育祭で見た時と比べ物にならないぐらい変わってるじゃん! 一体、どんな訓練させてたの!?」

 

「……フッ、さてな」

 

 相澤はそう言ったが表情は意地悪く笑っていた。

 内容は本当は知っているが、散々弄られた仕返しだ。絶対に教えてやるものかと相澤は決めていた。

 

 しかし実際は相澤も驚いていたのが本音だった。

 

 外見もそうだが雰囲気で成長が見て分かる程だ。きっと良い経験をしてきたのだと理解でき、留学が無駄ではなかった事に嬉しく思う。

 

 見た感じ、獄狼竜やオールフォーワンの影響を受けていた時に比べ、表情も柔らかくなった。

 周りへの対応を見る限り、もうあの時の様な暴走寸前、唯我独尊みたいな感じではなくなっており、相澤もまずは安心した。

 

 だが逆に安心ではなく、あまりの存在感と雰囲気に息を呑んでいた者達がいた。

 真堂達――傑物学園の生徒達だった。

 

「……すご」

 

「う、うわぁ……凄いよTVで見た時より凄い存在感! 本物の雷狼寺 竜牙くんだよ!」

 

 他の傑物学園の生徒達は驚いて戸惑っていたが、真堂だけは冷や汗を流していた。

 

「……雷狼寺 竜牙」

 

 既に雰囲気に呑まれてしまっていたが、それだけで格付けが済むことを真堂は望んでいなかった。

 だから汗を拭い、苦笑していた表情を無理矢理に先程の様な笑顔にすると、側面から声をかけた。

 

「や、やぁ! 雷狼寺 竜牙くんだよね! 体育祭とか見たよ! いやぁ本当に凄いな! こんな有名人に会えるなん――」

 

――

 

「――なんだお前は?」

 

「っ!?」

 

――瞬間、雷狼竜の赤い瞳が真堂を射抜いた。

 

 そして同時に殺気が真堂を呑み込んだ。また一瞬で空気を変えた竜牙の圧に、真堂は思わず後退りしてしまう。

 

「あ、あ、あぁ……!」

 

「ちょっ! 雷狼寺!?」

 

「お前は爆豪か!? いきなり脅すな! 失礼だろ!」

 

 突然の竜牙の豹変に耳郎と切島が竜牙を慌てて抑えるが、当の竜牙は眼光を真堂から逸らさなかった。

 

()()を持って話しかけてきたのは向こうだ。それで……お前なんだ?」

 

「あ、あ……いや、真堂って言うんだけど……!」

 

「……なるほど、()()()()()()の前の敵情視察か。それとも油断させる気だったのか……どちらにしろ敵意を向けている以上、俺も容赦しなくて済みそうだ」

 

「……!」

 

 竜牙のその言葉に真堂は苦虫を噛み潰したような表情になり、思わず背を向けてクラスメイト達の下に戻ってしまう。

 踏み込み過ぎた?――否、安易に触れたのだ。雷狼竜の怒りに。

 

 そして真堂が離れると切島達が頭を下げていたが、同時に竜牙の言葉に皆違和感を持った。

 

「ケロ? 雷狼寺ちゃん、例の恒例行事って何かしら?」

 

「うん、仮免試験で何かあんの?」

 

「……何も知らないのか? 俺はねじれちゃんに教えてもらったから知ってるが……ん?」

 

 竜牙は蛙吹と耳郎。そして皆も首を傾げている光景に違和感を抱いていた時だ。

 不意に相澤が視界に入り、そっちの方を見てみると相澤は静かに首を横へと振っていた。

 

「……なるほど何も教えてないのか」

 

「おいおい、何に納得してんだよ?」

 

「雷狼寺君! 何か知っているなら教えてくれないか?」

 

 一人で納得する竜牙に上鳴と飯田が聞いてくるが、竜牙は視線を真堂達へ向けた。

 そこでは真堂を心配するクラスメイト達が、ジョークの指示で施設の中へと入ってく姿があった。

 

 それを確認した後に相澤を見ると、相澤はジッと竜牙を見ていた。

 その視線は好きにしろ、そうも思える視線であり、竜牙も察したのか頷いた。

 

「……何でもない。本気で合格する気があるなら、やる事は変わらない」

 

「ハァ……? なにそれ?」

 

「何か隠してないか?」

 

 耳郎と障子がジト目で竜牙を見ていると、他のメンバー達も竜牙を見ていた。

 そんな視線を受けて仕方なくだが、竜牙は一言だけ呟いた。

 

「……()()()()

 

――えっ?

 

 竜牙の言葉に皆、呆気になっていると竜牙は軽く笑みを浮かべ、コスチュームの入ったスーツケースを持って先に施設へ歩き始めてしまう。

 

 そんな竜牙の背中を見て、耳郎達は緊張とは違う嫌な汗を流した。

 

「なに……雄英潰しって?」

 

「帰って来て早々、不吉なことを言うなアイツ……縁起でもねぇって」

 

「ですが嫌な予感がしますわ……」

 

 耳郎、峰田、八百万が各々そんなことを呟く中、緑谷は頭の中でパーツが次々と繋がって行くのを感じた。

 そしてすぐに竜牙の後を追った緑谷は竜牙の隣に立って歩くと、竜牙に話しかけた。

 

「雷狼寺くん! もしかして雄英潰しって……唯一、個性や戦闘スタイルが公になっている僕達を狙っての――」

 

「……それでもやることは変わらない。返り討ちにすれば良いだけだ……だろ?」

 

 そう言って笑う竜牙を見て、緑谷も安心して自然と笑顔になった。

 そして皆も困惑しながらも竜牙の後を追って行き、A組は施設内へと入って行くのだった。

 

 

▼▼

 

 コスチュームに着替えて会場入りした竜牙達を出迎えたのは、同じ様に仮免試験に参加する大勢の学生達だった。

 

 その数は数百――否、千は超えている様に見える。

 

「……多いな」

 

「マジ……これ全員が参加者?」

 

「凄いなこれは……」

 

 竜牙が人数の多さに思わず呟くと、耳郎と障子も似た思いだったのだろう。

 圧倒されたかの様に周囲を見渡していた。

 

 なにせこれ全員がライバル――競う相手なのだ。

 合格する為に競い合う相手――その数が千超えている。それは皆の想像を遥かに超えており、竜牙や轟等一部を除く全員が警戒一色の表情をしてしまう。

 

 これだけの人数だ。一体、どんな試験をするのか誰もが息を呑んでいた時だった。

 不意に正面に座る係員らしき男が口を開いた。

 

「……どうも、僕はヒーロー公安委員会の目良です。――単刀直入に言います。この場にいる受験者1540人一斉の勝ち抜け演習を行ってもらいます」

 

「……シンプルだな」

 

 目良の言葉に竜牙は落ち着いた態度で呟いた。

――1540人の参加者だ。向こう的には数を絞りたい筈だ。

 

 そんな中での勝ち抜け演習。

 ルール次第では簡単に半数にすることも出来る筈。

 

「うわぁ……一体、どんな演習になるんだろ」

 

「……不安か?」

 

「……ちょっとね」

 

 緊張しているのだろう。耳郎の顔色は若干だが悪い。

 だからなのか、少し竜牙に近い位置に彼女は立っていた。

 

 それを見てか、竜牙は障子に視線を送った。

 

「……障子」

 

「……あぁ、分かってる。何かあればすぐに援護する」

 

 障子は既に耳や目を複製しており、既に諜報として動いていた。  

 周辺がざわつく中での諜報。障子は意識を集中すると周辺の声を拾えた。

 

『……おい雄英だぞ?』

 

『……分かってるな? 試験内容次第だが最初にやる事は』

 

『あぁ……毎回恒例の<雄英潰し>だな』

 

 周囲がざわつく中で確かに聞こえる声と視線。

 それを聞いた障子は竜牙の傍に来ると、静かに語り掛けた。

 

「……どうやら俺達は想像以上に注目されている様だぞ? お前が言っていた雄英潰しって言葉も聞こえる」

 

「……聞いてた通りか。とりあえずは言葉通りの意味だと思って良い」

 

「ちょっ! マジで……!」

 

 二人の言葉に耳郎はヤバイという表情を浮かべているが後の祭りだ。

 試験は始まるし、やる事は変わらない。

 

「……焦るな耳郎。俺達のやる事は変わらないし、その為の特訓もしてきた筈だ」

 

「!……そうだった。ごめん、うちらしくもない。ちょっと緊張してたみたい」

 

 そう言って耳郎は自分の頬を叩き、サポートグッズに触れると顔色も良くなっていた。

 耳郎も無駄な時間を過ごしていた訳じゃない。

 皆と同じ様に、そして竜牙の映像や新聞を見て限界以上の訓練を耐え抜いたのだ。

 

 気合を入れなおし、全員で係員の言葉へ耳を傾けた。

 

「簡単に言いますと……今の事件発生から解決に至る時間はヒくくらい迅速になっています。――よって試されるはスピードです。()()100名の条件達成者を通過とします」

 

「おいおい!? 1540人だぞ! 半数ってレベルじゃねぇぞ!!」

 

「理不尽だぞおい!」

 

「これが大人の世界って奴です……では条件を説明します」

 

 目良は騒ぐ生徒達を一蹴すると条件を説明し始めた。

 

・ターゲットを三つ、身体に付ける(脇とかは駄目)

・ボールを6つ所持して相手のターゲットに当てる(当たるとターゲットが発光する)

・ターゲット三つに当てられた者は失格。

・ターゲット三つ目に当てた人が撃破とする。

・二人撃破した者から勝ち抜き。

 

「……入学試験の比じゃないな」

 

「やば……ボールの数もギリギリだし、相手もロボじゃなく人じゃん!」

 

「しかも先着100名……ターゲットも三つ目に当てる、それか三つとも当てなきゃ撃破にならない。かなり面倒なルールだぞ」

 

 一つでも当てるではなく、三つ目に当てて撃破扱いという特殊ルール。

 ただロボを破壊するだけの入学試験が楽に見えるぐらいであり、三人の表情が真剣なものへと変わった。

 

「では()()()……ボールとターゲットを渡します。それから1分後にスタートとします」

 

「展開……?」

 

 竜牙が何だそれはと首を傾げると同時だった。

 地響きと共に周囲の壁が倒れると、それは姿を現した。

 

――街、ビル群、工場地帯、山や川。あらゆる地形が周囲には存在していた。

 

「地の利を言い訳にされたくないので……これなら文句はないでしょう。ではターゲットとボールを配ります」

 

 目良がそう言うとどこからともなく係員が現れ、素早く竜牙達にターゲットとボールを渡していく。 

 

「……ターゲットか」

 

「うちどこに貼ろうかな……」

 

「俺も貼る場所に困るな」

 

 ターゲットを受け取った竜牙達はすぐに考えた。

 有利な場所に貼るか、敢えて不利な場所に貼るかだ。

 

 そして竜牙はすぐに答えを出した。

 

「……この受難に感謝」

 

 そう言って竜牙がターゲットを貼ったのは<首の後ろ>・<胸>・<右腕の甲>だ。

 それはどこも相手からすれば狙い易い場所だ。

 

 竜牙にとっては死角。または一瞬の隙で当てられる場所だったが、竜牙にとってはこの仮免試験すら訓練と思っていた。

 だから敢えてその場所に貼る頃には耳郎達も貼り終えており、同時に緑谷が指揮を執って行動に移っていた。

 

「皆! 僕達は既に個性や弱点が割れてる! だから一塊になって行動しよう!」

 

 既に体育祭で情報は出てしまっている。

 そうなれば個人戦というよりも学校対抗とも言えるこの試験では、自分達は不利だと緑谷が伝えるが爆豪や轟は独自に動き始める。

 

「ふざけろ! 遠足じゃねぇんだぞ!」

 

「馬鹿待て! 爆豪!?」

 

「俺も大所帯じゃ実力が発揮できねぇ!」

 

「轟くん!?」

 

 爆豪は勝手にどこかへ行ってしまい、切島もその後を追って行ってしまう。

 そして轟も個性故の理由で独自に動き出していると、上鳴が爆豪を追うか残るか迷ってオロオロとしていた。

 

「やべぇ!? オレどうしよ!? 爆豪を追うか残るか!!」

 

 制限時間は1分だ。

 上鳴の慌てようは当然の状態であり、そんな風に慌てていると竜牙が助け舟を出した。

 

「……上鳴。迷ってるなら俺の傍にいろ。お前を勝たせてやる」

 

「キュン!――バッ! お前、雷狼寺……! 俺が女だったら惚れてたぞ!? でもお前の傍にいる!」

 

「アンタ達は何やってんのさ……ほら緑谷達と、とっとと行くよ」

 

 竜牙と上鳴のやり取りに耳郎がツッコむ中、竜牙達も緑谷達と一緒に行動を始めた。

 その場から走って山に近い場所に向かう途中、緑谷は竜牙へ話しかけてきた。

 

「雷狼寺くん……雄英潰しってやっぱり?」

 

「……お前の考えている通りだ。ねじれちゃん曰く、最早恒例となっているらしい。唯一、個性や戦闘スタイル、弱点が割れているトップ校。狙わない方がおかしい」

 

 相手の個性が分からない。そのアドバンテージを既に無くしている合格候補である雄英。

 狙わない方が馬鹿であり、寧ろ合理的だ。

 

 そして爆豪、切島、轟を除いたメンバー達が走っていた時だった。

 その時は訪れた。

 

『それでは試験を開始します。試験開始』

 

「うおっ! 前前!!」

 

 試験開始の合図と共に峰田が指差した場所を全員が見た。

 すると、そこにいたのは真堂を筆頭とした傑物学園生――そして他校の生徒達が一斉に竜牙達へ身構えている光景だった。

 

「やっぱり狙われてる!?」

 

「これが雄英潰しか……!」

 

「……来るぞ!」

 

 耳郎、障子の言葉の後に竜牙が檄を飛ばすと同時だった。

 真堂達がボールを持って行動に出た。

 

「全てを破壊する雷を操る竜に! 自身すら壊す超パワー! そりゃ出る杭は打たれるよな!!」

 

 真堂が叫ぶと同時に一斉にボールを投げてくる真堂達。

 だがそれと同時に緑谷達も動き、一斉にボールを迎撃する。

 

「……雷光虫弾」

 

 そして竜牙もノーモーションで雷光虫を弾とし、一斉に放つとボールに直撃して相殺した。

 それを見て真堂達の表情が変わった。

 

「やっぱりこの程度じゃ雄英は倒せないか!」 

 

「だが見えてきた! “硬質化”――任せた!」

 

「任された……“ブーメラン”」

 

 敵の動きが連携に変わった。

 硬質化したボールを地面へと投げると、ボールは地面の中を突き進んで緑谷達へ迫ってきた。

 

「地面の中を……!」

 

 緑谷が叫んだ瞬間、耳郎が前に飛び出した。

 

「皆下がって! うちやる!!――<ハートビートファズ>!!」

 

 耳郎は両腕のサポートグッズにイヤホンジャックを差すと、一気に地面へと増幅させた音を解き放った。

 その結果、目の前の地面は一斉に崩壊させ、地面を割ったのだ。

 

「……強くなったんだな耳郎」

 

「ッ!……ハハッ、まぁね!」

 

 竜牙の言葉に耳郎は思わず口元がニヤけるが、それを必死に我慢した。

 そして地面を割ったことで相手の態勢を崩し、地面からボールが現れて峰田へと迫った時だった。

 

「うわぁ!! オイラに来た!?」

 

「任せて! <アシッドベール>!!」

 

 峰田へ迫るボールを芦戸が粘度・溶解度を極限まで高めた酸液で壁を作り、一気に防いで溶かした。

 

「……やるな芦戸」

 

「!……えへへ! どう? 強くなったでしょ!」

 

 以前の竜牙の態度があったからか、竜牙に褒められた芦戸は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。

 

「……皆、強くなったんだな。なら次は俺の番だ」

 

 皆、強くなった。その光景に竜牙は嬉しそうに笑みを浮かべると、両手足、そして頭部も雷狼竜へと変化させると一気に前方へ飛び出した。

 

「……皆、下がって耳を塞げ!!」

 

「雷狼寺!?」

 

「何をする気だ……?」

 

 竜牙の言葉に皆、耳を塞ぎながら竜牙の様子を見守った時だった。

 竜牙は真堂達へと咆哮を解き放った。

 

「……ヌシの咆哮(バインドボイス)!」

 

「AOooooooooN!!!」

 

 竜牙の解き放った咆哮は前方の真堂達を呑み込んだ。

 地面をひび割れを発生させる程の咆哮。それをモロに受けた真堂達は耳に大きなダメージを受けた事で必死に耳を塞いでその場で動きが止まった。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

「キャァァァァァ!!」

 

 動きが止まらざる得ないヌシの咆哮。それを受けた者達の動きは完全に止まり、耳への痛み、身体の底から震え上がる現象に苦しんでいる時だった。

 必死に目を開けた真堂は見てしまった。

 

「……これ程の受難。馳走されるだけなのは申し訳ない。ならば俺も君達への受難となろう」

 

 そこには巨大な雷狼竜の腕を天へとかざし、雷狼竜の瞳で自分達を見る竜牙の姿があった。

 腕にはまるで<嵐>でも受けた様な赤く発光する()()が刻まれており、同時に()()の雷が爪へと集中しながら放電していた。

 

 その異常すぎる姿と雷に上鳴達は息を呑んだ。

 

「すげぇ……!」

 

「マジヤバ……!」

 

 上鳴と耳郎は思わず言葉を零し、緑谷達も、そして真堂達も思わず言葉を失った時だった。

 その雷は爪となって放たれた。

 

金雷爪!」

 

――その瞬間、雷狼竜の腕が振り下された。

 

 そして巨大な雷の爪が真堂達を呑み込んだ。

 

「……嘘だろ、こんな――」

 

 真堂は目の前の光景に思わずそう呟いたが、全てを言い終える前に雷爪に呑み込まれ、そのまま強烈な電撃を全身へと受けた。

 そんな光景に客席にいたジョークは思わず立ち上がったが、残されたのは黒焦げになって一掃され、倒れる教え子達の姿だった。

 

「……うそでしょ?」

 

 震えながら唖然とするジョークだったが、そんな光景を見ていた相澤は少しだけ笑った。

 

「どうしたジョーク? ()()()?」

 

「……笑えないって」

 

 相澤からの言葉にもジョークは笑う事は出来ず、力なくその場に膝を付いてしまう。

 そしてそんな光景を目の前で見ていた耳郎達も唖然とするしかなかった。

 

 あれだけいた大勢のライバル達が、竜牙の腕の一振りで一掃されたのだ。

 

――底が見えない。

 

 竜牙がどれ程の訓練をしてきたのか想像が出来ず、見惚れていた時だった。

 振り返った竜牙は満面の笑顔で皆へと言った。

 

「……強くなったろ? 俺も」

 

 傑物学園――壊滅!

 

投稿に関して

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