僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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感想欄では既にギャングオルカでは勝てない意見が……!
確かにハンデもありますし、相性もありますしね(;´・ω・)


第六十話:士傑襲来! 竜牙VS肉倉

 

「凄い……!」

 

「ヤバッ……! 壮絶にロックじゃん……!」

 

「……あの数をたった腕の一振りで」

 

 緑谷、耳郎、障子――そして他のA組も言葉を失って目の前の光景に唖然とするしかなかった。

 傑物学園だけじゃなく、その他の学生――自分達よりも年上もいたであろう筈の中、竜牙は一人で一掃してしまった。

 

 しかも雷狼竜にならずにだ。

 最早、体育祭や合宿の時の竜牙の比ではなく、とんでもない成長をして戻って来たのだとA組の誰もが自覚していると、竜牙は気絶する真堂達の下へ歩いていきターゲットにボールを当てていた。

 

 真堂達に抵抗する状態はなく、その光景にジョークは辛そうな表情をしているが無情にも竜牙は真堂のターゲット全てにボールを当てると、放送が鳴った。

 

『一名失格です』

 

 これで真堂の失格が確定し、続いて竜牙は隣の女子のターゲットにボールを当てようとした。

――その時だった。

 

「っ!」

 

 不意に竜牙は後方へと跳んだ。それと同時に竜牙がボールを当てようとした倒れている者達へ、一斉に群がる()()らしきものがその者達に触れると包み込んだ。

 そして最後には掌サイズの肉塊になってしまい、それを見た竜牙達は再び警戒を行う。

 

「……新手か」

 

「ヒィィィ! なにあれキモ!? 雷狼寺!!」

 

「うわぁぁぁ!! 雷狼寺!? 絶対やべぇぞこれ!!」

 

 突然の未知な物体の登場と現象に、耳郎と上鳴の二人は竜牙へ思わず抱き着いて叫んだ。

 明らかに未知なる個性だ。緑谷や麗日達も一塊になって周囲を警戒するが、それよりも先に竜牙が敵の正体に気付いた。

 

「……匂いで分かる。お前だな、この個性の犯人は?」

 

「言葉遣いがなってない……これでも諸君等より年上で学年も上である!」

 

 竜牙が睨む先、そう言って瓦礫の影から出てきたのは士傑高校の制服と帽子を身に着けた一人の男子生徒だった。

 

 西の士傑の襲来。

 それを見た緑谷達は一斉に身構えた。

 

「西の士傑……!」

 

「皆さん気を付けてください!」

 

「ケロ! ただの個性じゃないわね」

 

 緑谷、八百万、蛙吹が警戒を促す中で竜牙は耳郎と上鳴を引き剥がすと前に出た。

 すると士傑生は間合いを取る様に僅かに下がると、それを見た竜牙は口を開いた。

 

「……雄英1-A組、雷狼寺 竜牙。ヒーロー名<ジンオウガ>」

 

「士傑……ヒーロー科2年――肉倉精児だ」

 

 竜牙と肉倉は互いに自己紹介をするが、それはまるで嵐の前の静けさの様だった。

 気絶していたとはいえ肉倉は、百人近くいた受験生を一瞬にして肉塊にしてしまっている。

 

 だから耳郎と上鳴は勿論、障子も緑谷達も警戒を解くことは無かった。

 しかしそんな緑谷達とは裏腹に肉倉は、両手を広げて落ち着いた様子で語り始めた。

 

「我々、士傑生は活動時、制帽の着用を義務付けられている。何故か? それは……我々の一挙手一投足が士傑という伝統ある名を冠しているからだ。――これは示威である! 就学時より責務と矜持を涵養する我々と粗野で徒者のまま英雄を志す諸君等との水準差!」

 

「うわ……あの人何言ってんのか分かんないんだけど……!」

 

「普通じゃねってことは確かだよ……!」

 

「己に囚われた者の末路か」

 

 耳郎と上鳴は薄気味悪そうに肉倉を見て、常闇は彼の異常性を一早く察した。

 竜牙も彼個人の個性を警戒しているが、同時に彼の人間性のおかしさを察していた。

 

 無駄に難しい言葉遣い。そして大々的に見せつけるかの様な目の前の惨状。

 そのどれもが彼の異常性と絶対的な思想があることを示していた。

 

「……噂の士傑。どれ程のものか」

 

 竜牙は両手足を再び雷狼竜化すると、金色の雷を放電しながら肉倉を睨みつける。

 それを見て肉倉もやれやれと首を振っていた。

 

「雄英高校……私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ!――それを1年A組は品位を貶めてばかり……!」

 

「なっ! 何なんですかアナタは! 俺達の何を知っているって言うんですか!」

 

「そうですわ! 私達だって出来ることを精一杯やってきましたわ!」

 

 肉倉の言い分に飯田と八百万の委員長コンビが反論するが、肉倉の答えは両手を後ろに組んでから再び肉片を空中に発生させるという暴挙だった。

 

 話す気――否、会話する気すらまともにないのだ。

 肉倉は飯田達には目もくれず、竜牙だけを見ていた。

 

「あの爆豪よりかはマシだが……それでも貴様も品位を貶めているんだ雷狼寺!! 体育祭で優勝しながら……惨めに重傷を負い、尚且つヴィランに誘拐すらされる!――情けなし!!」

 

 そう叫ぶや否や、肉倉は肉片を周囲に浮かせながら突っ込んで来た。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! きもいのがきた!!」

 

「雷狼寺ぃぃぃ!!!」

 

 耳郎と上鳴が叫びながら竜牙へ助けを求めると、竜牙は構えなしで反撃に出た。

 

「――雷光虫弾」

 

 竜牙の周囲を飛び回る雷光虫達が集まると、金色の雷を発しながら肉倉の周辺にある肉片を一瞬で貫いた。

 更に竜牙は耳郎の方を向くと、そちらにも雷光虫弾を放つ。

 

「えっ――」

 

 耳郎は思わず声を出しそうになるが、それよりも先に彼女の背後に迫っていた肉片を破壊した。

 そんな現実に耳郎達は思わず驚きを隠せなかった。

 

「うそっ! 背後から――!」

 

「マジかよ、気付かなかったぜ……!」

 

「物音も何もしなかったぞ……!」

 

 耳郎、上鳴はいつのまに!――と驚き、障子も索敵に引っ掛からなかった事に驚きを隠せずにいると、そんな戦い方を見ていた緑谷は皆に注意を促した。

 

「皆! 注意して! あの士傑の人! 見た目や言動と違って戦い方はクレバーだ!」

 

 挑発して自分に注目を集めながら、肉で相手の背中を取る。

 言動で騙されてしまったが、肉倉の戦い方はかなり恐ろしく、皆も肉倉から顔を逸らしてすぐに背後を気にし始めた。

 

 まだ他の受験生が周囲にいないのが救いだが、いつ騒ぎを聞きつけて来るか分からない。

 しかも肉倉の肉片も警戒しないといけないという、神経を削る警戒もしなければならない。

 

 しかし、同時に竜牙が肉倉の個性の正体に気付こうとしていた。

 

「……なるほど。わざわざ後ろからの騙し討ち。その肉片、触れなきゃ良いんだな? 海外のヴィランでも似た様な条件の個性持ちがいた」

 

 肉倉の個性――<精肉>

 それは竜牙の言う通り、触れなければ無害であった。

 

 無論、少しでも触れればアウトだが、それ以外にも肉倉自身の肉体には自由度が高く、切り離して操作をしたり、巨大化が可能だったりするのが真相だ。

 

 しかし竜牙には触れなければ良い。それだけ分かれば十分だった。

 

「……雷光虫で対応出来るなら脅威じゃない」

 

「……言ってくれる。だが飛び道具は厄介だな」

 

 竜牙がそう言って前にジリジリと詰めると、肉倉も肉片を腕に戻しながら再び距離を取り始めながら再び演説を始めた。

 

「これは示威である! 今試験は異例の少数採用。オールマイトが引退して時代は節目。本来であればヒーローは増員して然るべきではないか? 即ち、これが示唆するのは有象無象の淘汰! ヒーローの選別が始まったと推察する。――私は賛助したくこうして諸君等を排している」

 

「何それ……! おかしいんじゃない! 今は仮免試験中なのにやることなの!?」

 

「まるでステインに近い考え方だ……雷狼寺君、緑谷君、皆。――彼は危険だ!」

 

 耳郎がおかしいと抗議をし、飯田も肉倉の思想がステインに近いものだと理解し危険を伝える。

 しかし肉倉はその言葉に自身の細い目をカッと開いた。

 

「ヴィランと一緒にするな! 私のは至極当然な思想だ!!」

 

「自覚なしかよ!! やっぱやべぇってコイツ!!」

 

 峰田がやべぇと叫ぶが肉倉は言葉を無視し、再び肉片を周囲に展開し始める。

 

「その選別の為……雷狼寺。お前を排する!」

 

「……お喋りな人だ。俺と雷狼竜を排せるものならやってみろ。――AOooooooooN!!」

 

 竜牙はそう言うや否や咆哮をあげ、尻尾を生やすと同時に一気に雷を纏った。

 そして髪や鬣が荒ぶるように靡き、竜牙の眼光も金色に光り、強力な雷を竜牙が纏った状態<真帯電状態>となった。

 

 そして金色の眼光を肉倉に向けた時だった。

 竜牙は一瞬で肉倉との間合いを詰めた。

 

「なっ! 速い――」

 

 肉倉はすぐ目の前に竜牙が現れたことで焦って肉片を操作しようとするが、既に竜牙の間合いだった。

 竜牙はそれよりも先に動き、その場で一回転する様に動き、雷の波を発しながら尻尾で肉倉を空中へと叩き上げた。

 

「あれって! 雷狼寺の!」

 

「尻尾を使ったサマーソルトか!」

 

 耳郎と障子が叫んだ時には肉倉は空中へ浮かび、その意識が薄れていた。

 

「まだ……だ……! この程度で私はぁ……!!――ハッ!」

 

 必死に意識を保とうとする肉倉だったが、空中に浮かぶ自身よりも更に上に竜牙がいる事に気付いてしまう。

 金色の眼光を向けられる中、竜牙は前脚に金色の雷を集中させており、そのまま肉倉へと叩きこんだ。

 

「――金雷撃……別名ダイナミックお手」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

 空中からその一撃を受けた瞬間、肉倉の全身に金色の雷が走ると同時に強烈な衝撃を身に受けた。 

 そして、そのまま地面に叩きつけられると、ようやく肉倉は意識が途切れ、その長い演説の様な言葉を閉じた。

 

「……アンタは俺にとって受難じゃなかった。俺が距離を詰めると、アンタはすぐに間合い取っていた。接近戦が苦手だと言っている様なものだ。――演説じゃなく、基礎からやり直せ」

 

 竜牙はそう言うと腕を元に戻し、気絶する肉倉の三つのターゲットにボールを当てた。

 すると放送が流れた。

 

『はい! 早くも通過者が1名出ました! 通過者の方はすぐに別室へと集まって下さい』

 

「……仮免試験。この受難に感謝」

 

 竜牙は祈る様にその場でそう呟くと、静かに天を見上げるのだった。

 そしてそれを見ていた相澤は満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「……あの士傑すら一瞬か。随分と成長してきたな雷狼寺」

 

「……いやはや、あの子だけ別格でしょ。笑えないって……!」

 

 満足そうに笑う相澤と違ってジョークは笑えず、勘弁してくれと天を仰いだ。

 だがこれで決まった。

 

――雷狼寺 竜牙。試験1位通過!

 

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