僕のヒーローアカデミア~ジンオウガの章~   作:四季の夢

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スタバのソイラテ旨し。

最近の流行曲はゲッターロボの『HEATS』です!


第六十一話:竜牙とイナサ。そして海外での経験

 

 

『通過者1名……控室へどうぞ』

 

「……全てのターゲットが光った?」

 

 肉倉を撃破し、ターゲットにボールを当てたと同時に竜牙のターゲットが全て点灯した。

 そしてボイスが流れ、竜牙へ控室へ行くように指示を出した。

 

「……これで突破だ。耳郎! 障子達も急げ! ターゲットにボールを当てろ!」

 

「えっ、あっうん!」

 

 肉倉が倒れたことで彼の個性の影響は消え、倒れて肉塊にされた者達も元に戻っていた。

 相変わらず気絶しているのもあり、竜牙はすぐにターゲットにボールを当てる様に指示を出す。

 

 そして耳郎達も倒れている者達へボールを当て始め、全員がターゲット1人目を満たした時だった。

 不意に倒れている人の中から飛び出す人影が現れ、そのまま緑谷のターゲットにボールを当てたのだ。

 

「……緑谷!?」

 

「なっ!?」

 

 竜牙が叫び、緑谷も唖然とする中でその人影に皆が視線を向けると、そこにいたのは士傑の制服を着た女子生徒だった。

 

「油断大敵……駄目ですよ。ボーっとしてたら」

 

 女子生徒はマイペースな感じでそう呟くが、緑谷達は突然の襲来に驚くしかなかった。

 

「この人! 士傑高校の……!」

 

「いつの間に!?」

 

「また士傑かよ!」

 

 緑谷が警戒し、八百万がすぐに盾を出して緑谷の前に立ち、峰田も泣き叫びながらも前に出ていた。

 同時に竜牙も両手足を竜化させ、放電をし始める。

 

「……下がれ緑谷! 俺がやる!」

 

 竜牙はそう言って士傑生に飛び掛かろうとした時だった。

 

『通過者はすぐに控室へ。通過者となった者の戦闘参加はルール違反になります』

 

「っ! しまった……! 早抜けした分、同校の戦力が下がるのか……!」

 

 竜牙はそう言って自身のターゲットを睨むが後の祭りだった。

 学校対抗となっているこの試験。一人勝ち抜けすれば逆に言うと戦力ダウンを意味していたのだ。 

 

「って事は雷狼寺は戦力になれねぇってか!?」

 

「マジかよ!?」

 

「……上鳴、瀬呂! 焦るな……俺が倒した奴等で通過出来る筈だ! 女は無視してターゲットに当てろ!」

 

「お、おう! そうだな!」

 

 竜牙は全員に聞こえる様にそう言って指示を出すと、峰田はターゲットにボールを当てていく。

 だが緑谷は自分を見降ろす女子生徒を見て、笑っていた。

 

「ごめん雷狼寺くん……! やられっぱなしじゃ僕の気が晴れない」

 

「へぇ……やられたのに笑うんだ?――かっこいい」

 

 緑谷の態度が気に入ったのか女子生徒は嬉しそうに笑うと、そのまま奥へ消えていってしまう。

 そして緑谷も竜牙へそう言うと女子生徒の後を追って行った。

 

「緑谷!?」

 

「ごめん! 私もデクくんを追う!」

 

 麗日もそう言って緑谷の後を追ってしまい、竜牙は頭を抱えた。

 

「……麗日まで。まずは通過することを考えるべきだろ」

 

「でも気持ちは分かるっしょ? やられっぱなしじゃヒーローとして負けた気分になるし」

 

「それに悪い癖だぞ雷狼寺? もっと俺達を信じろ。お前が倒した奴等がいなくても通過してみせる」

 

「……それでもだ」

 

 耳郎と障子の言葉に竜牙は、優先順位を決めろと言いたかったが、それも後の祭り。

 二人と他の皆も大丈夫だと言いながら緑谷の後を追ってしまい、みすみす通過できるチャンスを蹴ってしまった。

 

 そんな現状に竜牙は溜息を吐くと、残った二人に対して口を開いた。

 

「……逆に行かないのか? お前達は?」

 

 残ったのは峰田と上鳴だった。

 二人は当たり前だと言わんばかりに膝を折って竜牙の足に抱き着いてきた。

 

「当たり前だろぉぉぉ!! オイラじゃ役に立たねぇよ! とっとと通過させてもらうぜ!!」

 

「オレもだ!! 聞こえるだろ遠くからの大混戦の声が!! 緑谷達にはわりぃけど抜けさせてもらぜ!!」

 

 峰田と上鳴はそう言って倒れている参加者のターゲットにボールを当てた。

 すると条件を達成したことで峰田と上鳴のターゲットからも音声が流れた。

 

『これで通過者3名……控室へ向かってください』

 

「ふぅ……これでまずは助かった」

 

 上鳴は安心した様子で息を吐き、峰田も安心した様に尻餅を付いていた。

 

「よっしゃ……これでとりあえずは安心だぜ」

 

「……ならとっとと行くぞ。雄英だからと絡まれたら面倒だ」

 

 もう通過しているので関係ないが、それでも肉倉みたいな奴もいる。

 下手に絡まれても面倒なので竜牙はすぐに二人を立ちあがらせると、静かに控室へ歩いていく。

 

「あっ! おい待ってくれよ雷狼寺!?」

 

「オイラ達も行くよ!?」

 

 それを見て峰田と上鳴も慌てて竜牙の背中を追って行く。

 こうして傑物学園と士傑の肉倉を撃破した竜牙達は、とりあえずは試験を通過するのだった。

 

▼▼

 

 控室へ入った竜牙達を出迎えたのは、100名以上は優に入る清潔感溢れる控室だった。

 テーブルの上にはドリンクやお菓子、軽食が置かれており<自由にどうぞ>と書かれたプレートもあると同時に奥にあるキーでターゲットを外して返却する様にも書かれていた。

 

 それを見て竜牙達は専用キーでターゲットを取り外し、回収ボックスへ入れるとようやく一息ついた。

 

「いやぁ緊張したけど雷狼寺のお陰で何とかなったな……」

 

「ほんとほんと、雷狼寺様様だぜ」

 

 上鳴と峰田はそう言ってテーブルの上のドリンクをコップに注ぎ、飲みながら竜牙にも手渡した。

 それを竜牙も受け取って軽く口に付けていると、上鳴が気になっていたかの様に竜牙へ問いかけた。

 

「いや、それにしても雷狼寺お前……強くなり過ぎだろ! どんな訓練してきたんだよ!?」

 

「……フッ、色々だ」

 

「その色々を聞きたいんだよオイラ達は!?」

 

 軽く笑う竜牙に上鳴と峰田はブーブーと文句を言うが、竜牙からすれば本当に色々だったので仕方ない。

 

 竜化しての訓練は勿論、体術、技術、海外ヴィランとの経験、空の敵との戦い方、過酷な環境での戦い方、高速な敵との戦い方等、色々と学んだのだ。

 

 適応――そういう言い方が正しいのかもしれない。

 雷狼竜に、あらゆる戦闘に適応して帰って来た。

 

 そして訓練の結果、全ての雷狼竜を扱うことが出来る様になったのだ。

 今回――否、今現在、最も波長が合う雷狼竜は『原種』と『ヌシ』だ。

 

 波長が合う雷狼竜で戦う時は実力以上の力が発揮でき、外見に多少の変化が起こる以外にデメリットもない。

 それもあって傑物学園と肉倉を容易に倒すことができた。

 

 力はイビルジョー達に劣り、速さもナルガクルガにも劣る敵に竜牙が負ける道理はない。

 特に安易に敵意を向ければ竜牙の内なる<雷狼竜>達の怒りを買い、竜牙も手加減が難しくなる。 

 

『ウルフボーイ! 雷狼竜達の意思を無視してもダメだからな!』

 

 イビルジョーを始め、リオレウス達にも似た事を言われた。

 だからそうなると竜牙も血の気が多くなり、加減が出来なくなる。

 

 雷狼竜達が怒れば竜牙にも影響し、今回の真堂達の様に蹂躙する結果となる。

 少し不便とも言えることもあるが、それも仕方ないのだ。

  

 イビルジョー達曰く、この個性の向き合い方は一つだけとのこと。

 

――『共生』

 

 どっちが上とかではなく、支配下に置くわけでもなく、共生こそがこの個性の理想の形。

 だから竜牙も雷狼竜達の意思を無視せず、雷狼竜達も宿り主である竜牙の危機にその力を貸してくれる。

 

「……少なくとも色々と学ばせてもらった。今回の海外留学、俺にとってかなり勉強になった」

 

 そう言って拳を握ると金色の雷がスパークする。

 それを見て上鳴と峰田は負けたと言わんばかりにげんなりしていた。

 

「全くよ……オレ等があんなに苦労して必殺技とか身に着けてたのに2歩も3歩も先に行くなっての」

 

「オイラ、自信無くすぜ……」

 

「……比べるな。持ち味を活かせ。二人共シンプルな個性な分、そうすれば強くなる」

 

 上鳴と峰田にも『個性』故の持ち味がある。

 切島と同じでシンプルに鍛えれば間違いなく化ける。

 

 少なくとも竜牙にはその確信があり、そう言うと二人も少し安心できた様で、表情が焦りから柔らかくなった。

 

「そう言ってくれると自信持てるけどよ……」

 

「ハァ……まだまだ訓練不足って事かよ」

 

「……伸びしろがあると思え」

 

 肩を落とす友に竜牙がそう言った時だった。

 控室の扉が勢いよく開くと、一人の男子生徒が入って来た。

 

 しかし竜牙達は同時に警戒した。

 何故ならば相手は士傑高校の制帽を被っていたからだ。

 

 更に上鳴達は入って来た男子の顔を見て、あっ、と声をあげた。

 

「アイツ! 異常なテンションの奴!!」

 

「確か名前は……<夜嵐イナサ>!? 推薦組のトップだぞ!」

 

「……知り合いか?」

 

 上鳴達はイナサのことを相澤から聞いて、実際に会っていたから知っていたが竜牙はその時にはまだ来てなかった。

 

 だからそれを思いだした上鳴達はそうだったと、納得した様子で竜牙へ説明を始めた。

 

「アイツは夜嵐イナサ……相澤先生曰く、俺等の年の推薦組でトップ合格したのに雄英を辞退した変人らしいぜ?」

 

「けどよ……推薦トップってことは実力は轟以上って事だろ? しかもこんなに早く突破して来てるしよ」

 

「……変人だが実力はあるか」

 

 イナサを見て竜牙は雰囲気や外見を見た。

 確かに雰囲気は実力を現すかの様に落ち着いていたが、一番は外見だ。

 

 あの大混戦が起きている中、イナサの姿は一切乱れていなかった。

 それは竜牙も同じだが、それが意味するのは圧倒したという事実。

 

「……なるほど、強いんだな」

 

 竜牙がそう言った時だった。

 

「あっ! 雄英の人達っスね!」

 

 竜牙達とイナサが目が合うと、イナサは笑みを浮かべながら堂々と近付いてきた。

 

「どうもっス!!――いやぁ! 自分が一番だと思ったっスけど流石は雄英高校っスね! 先を越されました!! 正直参りました!!」

 

「お、おう……相変わらずテンションで乗り切る様な奴だな」

 

「なっ? 変人だろ?」

 

「……あぁ」

 

 イナサはまずは試験が落ち着いたというのに、テンションはとんでもなく高かった。

 勢いも凄く、上鳴達は圧倒される中、椅子に腰を降ろしている竜牙は落ち着いてイナサを見ていると、今度は竜牙とイナサが直に目をあった。

 

「あっ!! アンタ!! 雷狼寺 竜牙さんっスよね!! 体育祭見たっす!! 雷狼竜!! 凄くてカッコ良かったっス!! 凄くテンション上がったっス!! 優勝おめでとうございます!!」

 

「……あぁ、ありがとう」

 

 確かにこれは変人だ。

 竜牙も人のことは言えないのだが、そんな竜牙ですら思うイナサの変人具合に何とも言えない表情をしているが、イナサは話を続けていた。

 

「好きなヒーローは誰っスか!!」

 

「……あぁ、オールマイトを除けばミッドナイトとリューキュウ。後はイビルジョー・リオレウス・リオレイア・ベリオロス・ナルガクルガだな」

 

「っ!! すいません!! ミッドナイトとリューキュウは知ってっスけどイビルジョーとかは知りません!!」

 

「……海外と京都のご当地ヒーローだ。かなりの実力者だから覚えていて損はない」

 

「なるほど!! ありがとうございます!! 勉強になりました!!」

 

 イナサはそう叫んだ瞬間、地面に頭を叩きつけてお礼を言った。

 それを見て流石の竜牙も目を丸くし、言葉も出なかったがイナサは一切何事も無かった様に周囲を見渡していた。

 

「それにしても他の士傑の人達が来ないっす!! 少し寂しいっス!!」

 

「……悪いが士傑生なら一人は確実に来ないぞ? 肉倉という奴は俺が倒した」

 

「ええっ!!! 肉倉先輩やられちゃったんスか!! 流石は雄英の皆さん!! 凄いっス!!」

 

「……そうか」

 

 言いたい事はそれだけなのかと、竜牙は少し拍子抜けした。

 

 仮にも同校の生徒が倒されたのだ。普通ならライバル心を抱くとか仇を取るとか、そんなことを思っても不思議じゃないが少なくともイナサからはそれらは感じなかった。

 純粋に肉倉を倒したことを凄いと思っている反応であり、竜牙はもう何も言うまいとイナサの性格に諦めた。

 

 そして当のイナサはと言うと、他の通過者が入ってくると今度はそっちの方に同じテンションで話しかけに行ってしまい、文字通り嵐が過ぎ去った様に場は静かになるのだった。

 

「……本当に嵐の様な奴だな」

 

「……あのテンションこえーよ」

 

「……疲れる奴だな。――とりあえず、俺達は皆を待とう」

 

 イナサのせいで少し疲れた様子の三人だったが、竜牙の言葉に頷くと他のメンバー達を待つことにした。

 皆の通過ノルマ残り一人。ターゲットも殆ど無傷。通過してくるのも時間の問題だと竜牙は信じていると、それから10分後ぐらいだ。

 

 他の通過者に紛れて耳郎と障子。そして緑谷達が入って来た。

 

「……耳郎! 障子! 皆も無事だったか」

 

「うん、何とかなったよ……いやぁ結構手強かったぁ!」

 

「あぁ……だが何とか通過だ」

 

 竜牙は耳郎と障子とハイタッチをすると二人へドリンクを手渡した。

 そして二人はそれに口を付けると、竜牙は他のメンバー達にもドリンクを渡しながらターゲットやボールを奥の回収ボックスに入れる様に指示を出した。

 

「……残ったボールとターゲットは奥の回収ボックスに入れる様にってあったぞ?」

 

「ケロ! ありがとう雷狼寺ちゃん……すぐに外しに行きましょう」

 

「けど大変だったなぁ……まさかあんなに囲まれるなんて」

 

「僕は余裕だったね☆!」

 

「これで残りは爆豪君、切島君、轟君の三人だな」

 

 蛙吹、尾白、青山、飯田がそう言うと竜牙も周囲を見た。

 すると確かに三人の姿だけはいなかった。

 

 自ら独断行動を取ったメンバー達だけが今だ通過していないのは皮肉だが、竜牙からすれば時間の問題に見えた。

 

 性格に難があっても爆豪だ。残りの二人も余程の搦め手な相手じゃなければ敗北することはないだろう。

 数の暴力に苦戦はするかもしれないが、少なくとも轟はそれでも突破できる筈だ。

 

 そんなことを竜牙が思っていると早速、轟が控室へと入って来る。

 そして皆がいる事に気付くと、轟は竜牙達の下へとやって来た。

 

「雷狼寺……皆も早いな」

 

「雷狼寺くんのお陰だよ」

 

「コイツ一人で傑物学園とか他の連中を倒しちまったんだぜ!」

 

 緑谷の峰田の言葉に轟は雷狼寺を見た。

 

「随分と海外で学んで来たようだな雷狼寺?」

 

「あぁ……かなり学べたぞ」

 

 竜牙がそう言うと、その隣に葉隠と常闇達がやって来た。 

 

「ねーねー! 雷狼寺くん! 海外での話とか聞かせて!」

 

「映像では見たが、かなりハードな訓練だった様だな」

 

「……時間はあるな。今の内に話せることは話しとくか」

 

 まだ通過者は100人に至っていない。

 ならばまだ話す時間はあると、竜牙は腰を降ろした。

 そして、そんな竜牙の周りにA組が集まると、竜牙は静かに語り始めた。

 

「……海外ではイビルジョーさん達から個性に関して、そして戦う技術や心構えを教えてもらった」

 

 そう言って竜牙は緑谷達へ語った。

 竜化は勿論、肉体を変化させての訓練。接近戦での秘訣や技術。

 

 そしてヴィランと戦う時の心構えや考え方。

 それは海外の考え方が強かったが、竜牙も納得できたことだった。

 

「……イビルジョーさん達からヴィランと戦う時、こう教えられた。ヴィランには()()させるなってな。何かさせた時点で負けだと思え、その点では日本は甘いと言われたがその通りだと思ったよ。海外のヴィランには迷いがない。狂ってるか覚悟が決まってるかのどちらかだったからな」

 

 日本は正当防衛でヒーロー活動スタートが多い。

 それとヴィランの殺害も基本的には認められていない。

 

 竜牙は国のルール・暗黙のルール。それの甘さを指摘された。

 それだけ日本は平和であり、同時にヴィランには異形系や異形の姿のヴィランが多いとされている。

 

 だから異形系差別の少ない海外――多種多様なヴィランの多い海外とは違い、日本では決まった系統のヴィランが多いから悪い意味で慣れていると竜牙は言われた。

 

 だからイビルジョー達から海外のヴィランとの実戦を学ばせてもらったり、野生や本能を交えた実戦訓練を行った。

 だがその成果もあり、雷狼竜達は一気に目覚めて竜牙の力となり、同時に竜牙も扱い方が分かったのだ。

 

 短期間――故に短い時間で莫大な経験値を竜牙はイビルジョー達から貰ったのだ。

 

 ヒーローに敗北や失敗は許されない。

 未熟を理由に敗北や失敗した時点でヒーローではない、そうとすら言われた。

 

 同時に()()する様にも竜牙は言われた。

 今の竜牙は強い。そうなる様に育てたとイビルジョー達から言われた竜牙は、彼等から同期や多少の格上を圧倒出来る様になれとも言われた。

 

 今の竜牙には出来る筈だと――<雷狼竜>の個性を持つ竜牙が圧倒できない筈がない。

 圧倒できなければ弱いからだと言われた。

 

 弱さは罪。弱さは個性が原因ではなく竜牙自身が原因になるとも言われた。

 雷狼竜の個性は強力だ。訓練無しでも多少の相手には勝てる。

 

 だが圧倒となれば話が変わる。

 確かな芯――強さが無ければできない芸当だと。

 

 そしてこの短期間。それが出来る様になる訓練や経験をイビルジョー達から竜牙は貰った。

 逆に言えば、それで出来なければ竜牙自身の責任になる、そう厳しくも言われた。

 

 イビルジョーからは純粋な力と技術を。

 リオレウス・リオレイアからは空中を支配し、縦横無尽に動く敵との戦い方。

 ベリオロスからは過酷な環境でも戦える精神力を。

 ナルガクルガからは尋常ではない速度を扱うものとの戦い方を学んだ。

 

 そこまで竜牙が言い終えると、耳郎と障子、緑谷達は唖然としながら話に集中していた。

 そして耳郎達は緊張の糸が切れた様に一呼吸入れてからくちを開いた。

 

「いやぁ……随分と濃い経験してきたんだね。そりゃ強くなる訳でしょ?」

 

「あぁ……雰囲気も随分と変わる訳だね」

 

「しかし海外のルールと日本のルール。この違いはかなりありますわ……」

 

「ルールの違いか……随分と考えさせられる話だったよ雷狼寺君」

 

「うん……ヴィランの特性も随分と違うし、日本じゃ出来ない経験だよ」

 

 耳郎と障子は竜牙の強さに納得し、八百万や飯田、緑谷は海外との違いについて考えている時だった。

 不意に竜牙は視線の端でイナサを捉えた。

 

「……夜嵐?」

 

 竜牙が違和感――興味を持ったのはイナサの轟を見る視線だった。

 テンション高めで誰にでも話しかけるコミュニケーションを持つイナサだが、轟を見る目に笑顔はなく、寧ろ嫌悪に近いものだった。

 

 だがすぐにイナサは視線を外し、他の参加者と話を始めてしまう。

 しかし竜牙は間違いなく視線を見た。轟も気付いた様子であり、少し困惑していた。

 

「轟……夜嵐イナサと何かあったのか?」

 

「……いや、アイツとは何もなかった筈だ。よく分かんね」

 

 竜牙が心配して轟に声をかけたが轟自身も謎の様だ。

 そして互いに少しイナサを警戒していた時だった。

 

「ダァァァァ!! 俺達が最後かよクソガッ!!」

 

「落ち着け爆豪!!」

 

 ここで爆豪と切島が通過し、控室に顔を出した。

 しかし自分達が最後だった事に怒りが溢れており、爆豪は吠えていた。

 

 だがこれであることが決まった。

 

「やったー! これで雄英A組は全員突破だー!」

 

「すげぇ! スゲェよ!!」

 

 麗日や瀬呂が叫ぶと他のクラスメイト達も叫び、大いに喜ぶ。

 

「いやだけどさぁ……うちらの場合、雷狼寺のお陰もあったからさぁ」

 

「少し不完全燃焼だな……次の試験で本領発揮できると良いが」

 

 誰一人として落ちなかったことは喜ばしい反面、竜牙のお陰だった事に少し気にする耳郎と障子。

 他のメンバー達も少し気にした様子だったが、障子の言葉を聞いて次の試験で頑張ろうと気合いを入れなおす。

 

 そんな時だった。

 不意にフィールドの映像が映った。

 

『皆さん、フィールドをご覧ください』 

 

「……フィールド?」

 

 放送に従って竜牙はフィールドの映像を見ると、全てのフィールドが一斉に爆破されて瓦礫と化した。

 

「えっ!? なんで!?」

 

「どういうこと!?」

 

「何かあるのでしょうか……!」

 

 耳郎、芦戸、八百万が皆の声を代弁するかのように声を出すと、周囲の者達も頷き合っていた。

 しかしその答えはすぐに分かる事になる。

 

『次の試験で最後になります。皆さんにはこれから、この被災現場で<バイスタンダー>として()()演習を行ってもらいます』

 

「……救助?」

 

 モニターを睨みながら竜牙がそう呟くと、モニターに人影が沢山映っていた。

 その人影は瓦礫の方へと向かって行き、よく見ると老人や子供らしき風格だった。

 

「……今度は何だ?」

 

 救助演習、そして謎の人影を前に竜牙は静かにモニターを睨み続けるのだった。

 

 

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