魔法科高校の劣等生に憑依したバカ   作:飛べ飛べあおこ

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第一話

 

「……様……おに……様!」

 

誰だろう、優しい声がおれの鼓膜を刺激する。

柔らかくて、なめらかで、それでもって可愛くて。

 

ああ、もっと聞かせておくれその声を。

もっと近くで……。

 

「お兄様! 起きてください! お兄様!」

 

お兄様?

やけに上品な呼び方だな。

どっかのとんでもない金持ちの家でも絶滅しかけている呼び方じゃね?

 

「お兄様! 今日は入学式ですよ! 遅れちゃいます!」

 

体を揺さぶられる。

お兄様とはおれのことを言っているのか?

おれには妹は居ないはずだが。

 

「お兄様!」

 

「はいはい起きます起きます」

 

ちょっと重い瞼をあげて、上半身を起き上がらせる。

 

「へ?」

 

目の前にはとんでもない美少女がいた。

 

「もう!お兄様ったら! 珍しいですね、寝坊するなんて」

 

だ、だれだ。

今おれは猛烈に混乱している。

目の前には美少女がいて、おれをお兄様と呼んでいる。

周りを見渡してみると広い部屋。

まさに金持ちの部屋。

 

「お兄様、早く着替えて学校へ行きましょう! さあ、早く!」

 

「あ、あぁ」

 

混乱しまくりながら、おれはこの美少女が持ってきた制服に着替える。

って制服!?

おれ学生!?

 

「まてまてまて!!」

 

いつの間にか居た、見知らぬ広い家を走り回って鏡を探す。

体がめちゃくちゃ軽い。

おれ、なんかすげー運動神経良くなってね?

洗面所を見つけた。

当然そこには鏡があるわけで……。

 

「マジ???? 誰だよ、このイケメン」

 

「お兄様?」

 

お兄様と呼んだこの子、なにか見覚えがある。

たしか、えーっとえーっと……。

 

「深雪ちゃん!?」

 

そうだ、この子は深雪ちゃんだ!

魔法科高校の劣等生の主人公の妹、司波深雪。

これは夢か?

まあ夢だろうな。

冷静に考えて。

 

もう一度鏡を見る。

おれは……。

 

「達也になってる!?」

 

鏡をぶち壊しそうな勢いで顔を鏡に近づける。

 

「お、お兄様……どうされたのですか……」

 

いかん、深雪がおびえた顔でおれを見ている。

 

「す、すまん深雪ちゃん。そんな怖がらないでくれ」

 

「は、はぁ……」

 

現実か? いやこれは夢だ、夢に違いない。

おれは司波達也に憑依した夢を見ている。

もう一度冷静に考えろおれ。

これが現実なわけがない。

うん、これは夢。

夢。

夢だ。

うん。

 

「お兄様……?」

 

「……はっはっは」

 

「お、お兄様?」

 

「ハーハッハッハッハッハ!!!!!!!!」

 

どっかの野生のチンパンジーのような笑い声がとまらない。

おれは最高の夢を見ている。

さーて楽しむぞぉ!

この夢をぉ!!!

目、覚めませんように。

 

「深雪ちゃん! 今日は入学式でござったな。参ろうぞ。学校へ!! ハーッハッハッハッハ!!!!!」

 

「お、お兄様?!」

 

好き放題やってやる。

だって夢だし。

あーこんな美少女がいつもそばにいてくれるのか。

わくわくが止まんない。

 

おれは玄関を探して、家を飛び出す。

 

「深雪ちゃん! おれ走りたくてたまんねぇ! 走って学校いきまっせ!」

 

おれはこの鍛え抜かれた体を体験したくてうずうずしている。

 

「GO!!」

 

おれは全力で走った。

とんでもなく速く走れる。

なんだこりゃ!

まじで人間か?達也の体は。

 

「お兄様!!!」

 

もう遠く離れた深雪ちゃんが大声をだした。

 

「学校、逆方向です!!!!」

 

そういやおれ、学校の場所知らなかったです……。

 

 

――――――――

 

 

 

 

「ここが第一高校か……」

 

まるで迷子になった幼稚園児のように、深雪ちゃんに案内されてしまった。

 

「お兄様、本当に大丈夫ですか? 朝から様子がおかしいようですが……」

 

おれの顔を、首を傾げて下からのぞき込む深雪ちゃん。

か、かわえぇ。

こんな美少女がおれの妹だなんて。

 

「最高!!!!!」

 

「そ、そうですか。体調は最高なのですね……」

 

 

 

 

 

おれ達は肩を並べて、入学式がおこなわれる講堂へと向かう。

なんだか嬉しすぎてずっとスキップしちゃってる、おれ。

周りの視線が痛いが構うもんか。

これは夢だ。

勝手におれのこと馬鹿にしとけ、おれの脳で作り上げた人々よ。

 

「しかし納得いきません! なぜお兄様が補欠なのですか!? 入試だってトップ成績だったじゃありませんか!」

 

あーこんなこと原作で言ってた言ってた。

そういや、達也って補欠なんだよねーん。

けど能力高すぎるっていう。

 

って待てよ。

おれって達也の能力使えんの?

頭も全然良くないんだけど……って!!!!

 

突然全身にかなりの痛みが走る。

なんだこれ。

声も出ないくらい痛い。

立てない……。

倒れる……。

 

「新入生総代は私ではなく……ってお兄様!?」

 

深雪ちゃんはおれを抱きかかえてくれた。

周りの人間がざわついている。

それだけは分かった。

 

今、おれの体に異変が起きている。

どんどん脳に入り込む知識。

そして技術。

しかも、達也が本来持っていない魔法の才能まで入り込んでくるのが分かる。

痛みに耐えながら呟く。

 

「おれ……チートじゃん……」

 

「お兄様? お兄様!!!」

 

抱きかかえられて20秒ほど、痛みは治まった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「深雪ちゃん、心配かけたね。もう大丈夫」

 

分かった。魔法の使い方も、達也がもっていた知識もすべて。

いいの?おれこんなに強くなっちゃって。

都合よすぎな夢だなぁ。

 

「ただの立ち眩みってやつだね。さあ、講堂へお行き。深雪ちゃんは答辞の打ち合わせの時間だろ? おれはここらで時間つぶしているから。可愛い妹の晴れ姿みせてくれよな!」

 

「お兄様……。はい! 行ってまいります! お体にはお気をつけて……」

 

深雪ちゃんは、走って講堂のほうへ向かった。

おれは暇なもんだから、そこらのベンチに座って本でも読もうか。

 

 

 

っく!

達也め、エロい本が一つも入ってねぇじゃねえか。

おれがバンバンエロいの買いまくってやるからな畜生。

 

「ねぇ、今の子ウィードじゃない?」

 

ウィード。

おれの制服を見た一科生が言った。

雑草ですよーだ、どうせおれは。

馬鹿にしやがってこんにゃろー。

 

「べろべろバー!!」

 

ちょっと一科生の人間が離れてから、舌を出してやった。

周りの同じ二科生の生徒が笑っている。

嘲笑ではない。

おれは二科生たちに対して、ぐっと親指を立てて笑い返した。

また笑いが起きる。

二科生たちはおれに軽く手を振って講堂へ向かっていった。

 

エロ小説、今からオンラインで買うか……。

 

 

 

 

 

「うーむ、これもいいなぁ。あれもいい。あー悩む!!」

 

ピロン『あと30分です』

 

おれの端末が入学式の時間を教えてくれる。

もうそんな時間か。

おれはベンチから立ち上がる。

 

その時

 

「新入生ですね? そろそろ会場に向かったほうがいいですよ」

 

一科生の先輩か……。

確か原作ここで現れるのって。

CADつけてる……。

 

「七草真由美……」

 

「あら、私の名をご存じで?」

 

きれいな顔立ちと、きれいな髪を風になびかせて。満点の笑顔でこちらを見てくれた。

 

「第一高校生徒会長の七草です。よろしくね」

 

「おれは、えーっと。司波達也です。」

 

「え!? あなたがあの司波君!?」

 

七草先輩は原作の通りテンションが高い。

達也が入試のペーパーテストですごかったことを記憶しているようだ。

おれ、この子好きなんだよなぁ。

明るいし。

まあ原作キャラだいたい好きなんだけど。

夢だし、ちょっと言ってみるか。

 

「好きです。七草先輩。あなたのことが」

 

「へぇ!? い、いきなりなにをっ!?」

 

「付き合ってください。おれは真剣です!!!」

 

「わ、私たち会って数秒よ!?」

 

顔赤らめてる会長、可愛すぎぃ!

 

「ん?」

 

なんか講堂のほうから冷気が漂った気がした。気がしただけだ……。

いやーな予感が……。

走って逃げることにした。

 

「時間なんで、失礼します!! あと、さっきの半分冗談です! ごめんなさい!」

 

「じょ、冗談なのね……ほっ。って半分!?どういうこと?!」

 

――――――――

 

 

 

入学式が無事に終わり、柴田美月と千葉エリカと出会った。

これまた原作通り。

講堂の外で、三人で適当に話す。

同じE組とのことだったり。美月の目が特殊だったり。

 

「お兄様ー!!」

 

遠くで深雪ちゃんの声がした。

走ってこちらに向かっているようだ。

 

「深雪ちゃ……」

 

周りが凍えている。

あれ?怒ってる?

 

「お・に・い・さ・ま~。早速デートですか?」

 

「ちゃ、ちゃうわ!この子たちとは喋ってただけや!」

 

「なぜ関西弁なのですか?」

 

周りがさらに凍る。

 

「生徒会長様にもご迷惑おかけしたらしいじゃないですか、お兄様~??お聞きしましたよ~」

 

「あれは冗談でありまして~……」

 

「半分、よね?」

 

七草先輩が深雪ちゃんの背後からひょっこり顔を出した。

あ、七草先輩いたのね……そして喋っちゃったのね。

 

「だあああああああああああ! ここは逃げの一手じゃ!」

 

おれは全力で走る。

一瞬で離れることができた。

 

「お、お兄様!」

 

「そういや、そこの女の子2人、柴田美月ちゃんと、千葉エリカちゃんって言うんだ!おれと同じクラス! 仲良くな~! 答辞、良かったぞ~! それと七草先輩! 妹のことよろしくお願いします~! 立派な生徒会員になれますよ~! では!」

 

おれはトレーニングついでに全力で家に帰った。

 

のちに家に帰ってきた深雪ちゃんにはめちゃくちゃ怒られた。

 

 

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