魔法科高校の劣等生に憑依したバカ   作:飛べ飛べあおこ

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第四話

 

「もう駄目だぁ……おしまいだぁ……」

 

再びこの夢の中に帰ってきたおれなのだが、せっかく朝早く目覚めたというのに、深雪ちゃんの寝姿を拝めることが出来なかった……。

せっせと朝ごはんを作ってくれていた。

鼻歌を歌いながら機嫌良さそうに料理してるもんだから、ちょっとショックも治ったけどね。

 

「あ、お兄様。起きてらっしゃったのですね。今朝食を作っているところです、少しお待ちください」

 

「深雪ちゃん……(泣)ありがとぉおぉ……」

 

ん? おれってもしかして深雪ちゃんの手料理食べるの初めてじゃね?

てててて手料理!??

まじかぁ!!!

こんな幸せな人間いる?! ねえ神さま! いる?!

まあ夢なんだけどね、これ。

しかしそれでも嬉しい!

 

こんな張り切って料理を作ってくれている深雪ちゃんには、ちゃんと正装で対応しなければ……。

おれは血眼になって家の中のスーツを探した。

それも一番高価そうなスーツを。

どこだどこだどこだ!!!

 

「お兄様〜、何をそんなにドタバタ騒いでいるのですか〜」

 

「ひ、秘密〜」

 

マジでどこだよスーツ。

一つも見当たらねーぞ!

どこに隠してんだよ達也!!

 

「ご飯出来ましたよ〜、こちらにきてくださ〜い」

 

ハッ?!

まずいぞまずいぞ、記念すべき日に正装で過ごせないなんて……。

なんてダメな男なんだおれ!!

 

――――ピキーン。

 

頭の中の思考回路が、どこかとどこかで繋がった……。

悪魔的ッ……悪魔的な発想だ……。

この発想は、あの賭博師カ◯ジでも、思いつかない発想!

あのナレーションが頭の中にこだまするようだ。

 

『逆行!、暖かい出来立てのご飯を食べるために時間の無いこの男が考えついたもの、それは逆行! 今でもなく、未来でもなく、過去へ!!逆行!!!』

 

そう逆行だ!、おれに残されたものは逆行しかねぇ! そうだろ!?

 

おれは深雪に呼ばれた場所へとゆっくりと向かう。

食事場まで数メートル。

おれが出来ること、それは……。

 

「お、お兄様っ?! なぜこちらへ向かうたびに服をお脱ぎにっ?!」

 

幸い、達也はブリーフを履いていた。それが、幸運ッ――!!

おれは食事場に近づくにつれ、二足歩行をやめていった。

きたッ!! ついに食事場までッ――。

おれは四つ足のまま、ゴロンと仰向けになった。

 

「オギャー! マ、ママー、たべさせて〜」

 

人間にとって一番神聖な食事の儀式、それは母親からの無償の愛による授乳!!!

授乳こそ、もっとも神聖なもの!

しかし、深雪からの授乳は、圧倒的ッ!!圧倒的に不可能!というか趣旨がずれる!

だから、おれは出来るだけ近づいてやる。

授乳の期間を終えてからも、赤ん坊には物心つかない不安定な状況が存在する!!

そこに、そこにおれは行ってやる!!

あの神聖な場所へ!!

 

「っお、お兄様……嘘でしょ……」

 

深雪ちゃんが、泣いた……。

 

「うわあああああああああん」

 

大泣きしている。

 

「マ、ママ……」

 

これマズくね?

いや冷静に考えろよおれ。

朝食作ったら急に達也が赤ちゃんプレイ始めちゃって……。

ママとか呼んじゃって……。

しかもブリーフ一丁で。

これは謝るべきところでは無いのか?もしかして。

 

「ママーーーーごめんよぉ〜〜、ってママじゃねーや。深雪ちゃんごめ……」

 

「お、お兄様が強力な魔法の才能を手に入れたばかりに……手に入れたばかりに……赤ちゃんにいぃいい゛いい」

 

深雪ちゃん?

 

「きっと後遺症だわああああ゛ああああ。えええええぇぇええ゛ん」

 

どういうことや?

深雪ちゃんはおれが本当に赤ちゃんになってしまったと思ってる?

後遺症? 強力な魔法?

分からん……。

 

そういえばおれは魔法師としての腕がめちゃくちゃ強くなった筈だ。

しかし、誰にもそのことは公表していない。

何故知っている?

前に話したっけ?

おれが無意識に話したという仮説を立ててみる。

そうすれば、深雪ちゃんのこの大泣きに説明がつけられる。

おれ、司波達也は魔法師の強力な力を持ったせいで、後遺症が起こり、精神が赤ん坊化してしまったと。

あってるのか?この説は……。

ちょっと芝居を……。

 

「ママ、泣かないで!!」

 

「ごめんなさい、ごめんなさいお兄様!! 私、なにも知らず喜んでばかり。そうですよね、世の中そう上手くいきませんよね?」

 

「ママ!!謝るのはぼくの方だよ!もう二度と強い魔法は使わない!ね? そう決めたから!」

 

「もう手遅れですよおおおぉお゛ 赤ちゃんになっちゃったんだからぁ……ヒッグひっぐ」

 

「おお、神よ、私の魔力を最小化したまえー」

 

なんという棒読み。

 

「ママ、目を瞑って……神様が奇跡を起こしてくれるよ〜」

 

「神ざま〜どうが〜〜〜お願いいたしまず〜〜〜」

 

深雪ちゃんが目を瞑った。

今だ! このおれの身体能力と九重先生の技を持ってすれば!

全力で、そして音を立てずおれは自分の部屋へ向かった。

すぐに制服に着替えて、髪を整える。

 

「マ……深雪ちゃん、どうしたんだい? 泣いたりして」

 

「へ?」

 

深雪ちゃんは目を開けて、おれを見上げる、奇跡を目撃したかのように。

 

「お兄様? お兄様なのですね? 赤ちゃんになる後遺症は……?」

 

「なんのこと? おれは赤ちゃんになったりしてないよ? 夢見てた?」

 

「夢……? 先程のは夢だったのですね?」

 

深雪ちゃんの全身の力が抜ける。

 

「ああ、多分全部夢だよ。怖かったね〜、お〜よちよち」

 

深雪ちゃんを抱き寄せる。

 

「お兄様!お兄様が赤ちゃんになるくらいなら、魔法は、魔法はやめて下さい!」

 

「うん、大丈夫だよ、赤ちゃんってのはよく分からないけど、何故だか、前に戻っちゃったみたい。いつもの達也だよ、今のおれは、赤ちゃんにはならないよ大丈夫」

 

「神様に思いが届いた? 本当に?」

 

「分かんないやそれは、けど魔法が前の腕前にもどったことは確かだよ」

 

もちろん嘘だ、今でもバリバリ力がみなぎっている。

隠してはいるが。

しばらく、深雪ちゃんの前では実力披露はやめておこう。

絶対トラウマになってるわ……。

ただの赤ちゃんプレイだったと言っても良かったが、達也が流石に可愛そうだと思いました。

って重大なこと忘れてた!

 

「あぁ!ご飯冷める!」

 

 

 

――――――

 

 

 

今日は原作通りだと、おそらく風紀委員の大仕事の日だな。

クラブ活動勧誘期間。

大変そうだ。

風紀委員会本部へ向かってみよう。

 

「司波達也!入ります!」

 

扉を開く。

風紀委員の先輩方は皆もう集まっていた。

おれが入ると、どんよりと空気が重くなったような。

 

「お、おい司波達也って姐さんが言ってた……」

 

「ああ、ヤベー奴だ」

 

おれがヤベー奴?なんのことだ。

 

「来たか司波達也。この前は挨拶なしに帰ってしまったことを詫びよう」

 

渡辺委員長がいきなり頭をさげてきた。

 

「はぁ……挨拶?」

 

あったかなぁそんなこと。

 

「あの後、冷静になってからあの現場にいた皆で話し合っていたのだ、君のような超優等生がこの第一高校にいてくれることの幸運を」

 

超優等生???

 

「我ら風紀委員会は、君を全力で歓迎する!」

 

生徒会委員の方々が一斉に立ち上がっておれを見る。

 

「って、あれ、森崎いるじゃん。お前風紀委員に入ったのか、お前が風紀守れんのか? むしろぶち壊すタイプのような」

 

「うるさい司波達也! お前がやばい奴だってことは先輩から聞いたぞ! どうやばいのかは聞いてはいないが」

 

なんだ?さっきからおれはどう思われているんだ?

ちょっと揺さぶって見るか。

 

「あ〜ん、森崎くんったら怖がっちゃって〜、か・わ・い・い〜。チューしちゃお!」

 

おれは森崎に抱きついてキスの真似をする、するわけがないけどな男相手にキスだなんて。

 

「うぅわわわわ!!!! 先輩! やばいってこういう事だったんですか?!」

 

「ち、違うが……」

 

渡辺委員長がたじろいでる。

 

違うのかーい!

こんな奴に抱きついて損したぜ。

 

まあ渡辺委員長がおれのことがやばいって言ってるのは、やはり魔法関係か? そういえばおれ1日分の記憶がないんだよな、この世界の。カレンダー見て確認した。

誰がその1日この世界の司波達也をやっていた?

 

……

 

それは司波達也だろうなぁ、本物の。

 

あいつが深雪ちゃんと、渡辺委員長に実力見せたのは確定かな。

あと考えられるのは生徒会長の七草先輩、それと周りの役員たちかな。

面倒臭いことになってんのか?

おれが恐れられてる?

まあ悪い気持ちではないが、なんだかなぁ。

おい、本物の司波達也! めんどくさいこと起こしやがって。

あとで腕に油性ペンでも忠告書いとこう。某アニメ映画みたいに。

 

「司波? どうしたんだ?」

 

「ああ、ちょっと考え事を」

 

渡辺委員長の手には風紀の腕章と、ビデオレコーダー。

これをつけて巡回っすね。おーけーおーけー。

 

渡辺委員長は引き締まった顔で、

 

「では、皆ただちに出動!」

 

と叫んだが、

 

「ちょっと待ったあああああ!!!」

 

おれが叫び返した。

風紀委員の人たちが皆静止する。というより硬直している。

ちょっとこの人たち勘違いしてそうなので、訂正しておこう。

 

「ふっふっふ、風紀委員会の皆さんには僕がどういう奴か分かってらっしゃらないようですね」

 

「なっ、言っていいのか司波! お前の自由ではあるが……」

 

渡辺委員長が少し焦っている。

 

「空前絶後のぉおおおおおお!!!」

 

「「「!!!!」」」

 

「超絶孤高のおお高校生魔法師!! 魔法を愛し! 魔法に愛された男ぉおおお!」

 

おれは体を全力で反らす、肉体を躍動させろ!

 

「そう、我こそは!」

 

「「「わ、我こそは……?なんなんだ?」」」

 

「たとえこの身が朽ち果てようとぉおお! 魔法を求めて命を燃やし!燃えた炎は星となりぃ!! 見るもの全てを笑顔に変える! みんなご存知!そう俺こそは最強無敵の魔法師!」

 

「「「どんな魔法師なんだ?」」」

 

「あまりのポテンシャルの高さにぃいい!……」

 

「委員長、こいつ馬鹿でやばいって意味だったんでしょうか?」

 

「いや、そんなわけでは……」

 

渡辺委員長は戸惑っている。いいぞ戸惑え。

 

「馬鹿っていう奴が馬鹿なんだあああああああああ! イエエェエエエーーー!!!!!」

 

「「「はぁ……」」」

 

風紀委員の奴らは、呆れて一人一人部屋から減って行く。

 

「あほくせえ、びびって損した」

 

そういう奴には、

 

「びびれえええええええええ!!!!」

 

と耳元で叫んでやる。

 

「ひえっ!! すまんすまんびびるからやめてくれぇ」

 

渡辺委員長一人残るまで、おれは叫び続けた。

 

「イエェエエエエエエエーーー!!!!」

 

「……」

 

渡辺委員長は、口を開けたままおれを見ていた。

 

「そこまでして、実力を隠したいか司波……」

 

その表情、驚愕といったところか。

ふん、本気を出せばこんなもんよ。

 

「これが、プロですよ。ちなみに、僕はもうあのような力をお見せすることができません」

 

「な、なぜだ! なぜ隠さねばならんのだ!」

 

やっぱり達也はみせちゃったんだな。

 

「使えなくなったんですよ……もう二度と……」

 

深雪の前だけはね。おれは深雪とはいつも一緒だからな。実質使えないといったところか。

 

「な、何故なんだ司波! 理由を、教えてくれないか?」

 

え、理由? うーむ……えーっと

 

「赤ちゃん?ですかね」

 

渡辺委員長の頭の上に、はてなマークが見えた気がする。

 

「おれ、巡回行ってきます! では委員長! これで!」

 

エリカちゃんと約束してたんだよね〜。

一緒に高校回るって。

遅刻しちゃうよ〜。

 

なんで夢なのに忙しいんだろ?

まあいろんな夢があるさ。

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