魔法科高校の劣等生に憑依したバカ   作:飛べ飛べあおこ

5 / 5
第五話

 

 

「あれ、教室にいない」

 

風紀委員の仕事ついでにエリカちゃんとラブラブデートの予定があった。

てっきり教室で待ってくれてるものと思い込んでいた。

どこにいるんだろう。

まあ探すか……。

この自慢の足を生かして学校内を探す。

って簡単に見つかった。

 

「エリカちゃーん!!」

 

エリカちゃんは、こちらに振り向いて笑顔を見せてくれた。

か、カワイイ。

 

「遅いわよ!達也くん!」

 

「ごめんなちゃい、ママ」

 

親指を咥えて謝った。

なんだか甘えたくて。

今日は深雪ちゃん泣いちゃったけど、この子ならノリノリで母親役やってくれそうな気がした。

なんなんだ、このおれの心の奥底で沸いてくる赤ちゃんになりたい願望。

 

「ど、どうしたの?」

 

あ、やっぱり引きますよね。

しかし、何事も中途半端はだめだ。

何事も本気で取り組む。

それが男ってもんよ。

 

「ママーよしよしして〜」

 

おれはエリカちゃんに抱きつきにいく。

今は深雪ちゃんはいない。

やれるときにやっとかないと、今後チャンスがあるかどうか分からないしね。

流石に胸に飛び込むのはダメだから腹に。

 

「ママ、マ゛ッ―――」

 

強烈な痛みが左頬に。

ビンタされたみたいだ。

避けようと思えば避けられたけど、女の子にビンタってのも良いかなーって思いまして、ええ。

っておれ宙に浮いてね?

どんだけ強烈なビンタくらってんの。

エリカちゃん舐めてました。

ドスッ という鈍い音が鳴った、自分の体から。

エリカちゃんから数メートル離れている。

 

「ママ!酷いよ! ビンタはないでちゅよ!ビンタは!」

 

「ママって言うなーー!」

 

あれ、エリカちゃん怒っているというより顔赤らめてるじゃん。

あれ、これゴリ押したらイケるんじゃ……。

 

「どうしたの達也くん! いきなり赤ちゃんのマネなんかして!」

 

「ママはママじゃないでちゅか! よしよししてくれたら、いつもの達也に戻りまちゅ!」

 

「えぇ……」

 

ドン引きしてらぁ。

まあ今は周りに人がいないからできるんだけども。

この後のデートでは流石に赤ちゃんにはなれないという常識は持ち合わせてる。

一応大人だからな。

 

「エリカママ!頼みまちゅ! よしよしだけでもぉ!」

 

「は、恥ずかしいよぉ……」

 

これはイケる!

 

「アタマなでなでしてー」

 

次は抱きつかない。

四つ足になって、エリカちゃんの前で頭を差し出す。

まだ会って間もないのを思い出していた。

おれはうすうす感じていた。

おれの夢の中はそんなに甘くないって。

思うようにはいかないのだ。

順序というものがある。

抱きつくのはもう少ししてからだ。

 

「頭撫でるだけなら……」

 

よしっ! 心の中で小さなガッツポーズをした。

大きな前進には、小さな一歩からだ。

 

そっと柔らかい手がおれの頭に触れる。そして左右に揺らしてくれる。

 

幸せだぁ……。

 

「さて、ママ……じゃなくてエリカちゃん、肝心のデートといこうか」

 

すっと立ち上がって、普段の達也モードに戻す。

 

「ははっ、どうしたんだい、エリカちゃん。そんなに顔を赤くして。ほら、おれはもう普段のおれだ」

 

「達也くんって性格悪いって言われない?」

 

「失礼な! 紳士のなかの紳士と言われたこのおれが!」

 

「どこが紳士なのよ」

 

ツッこんでくれた後、エリカちゃんはじーっとこちらを睨んだ後、ニコッと笑って。

 

「まぁいいわ、こんな『変な人』と一緒に回ってあげるんだから感謝しなさいよ!」

 

変な人ではないよ!

まあいいか、笑ってくれてるし。

さあ、楽しい1日にしよう。

 

「ちなみに、デート、じゃないからね?」

 

まじっすか。

 

 

――――――

 

 

 

「彼女に声をかけたのは我がテニス部だ!!!」

 

「いいえ! バレー部の方が先よ!」

 

エリカちゃんが揉みくちゃにされてらぁ。

勧誘激しすぎね?

ベタベタ彼女に触ってるやついるし。

 

「ちょっ どこ触ってるの! やめっ」

 

エリカちゃんの体がビクッとした。

おれは見逃してはいない、彼女の顔を。

体に触れてるの女の子だし。許した。

良いものを見させてもらった。

おれは後ろから男は触るなよオーラを出し続ける。

エリカちゃんに触れる男がいたらブッ飛ばすぞ。

 

「や、やめて、あたし他に行くところが!」

 

ちょっとヒートアップしすぎだな。

もう楽しんでちゃだめだ、助けよう。

 

両手をパンパンと叩いて。

 

「はいー終了ーーー勧誘終わり〜」

 

「は? 下級生のしかも二科生かよ。黙ってろって」

 

ムカつくぜ。

この野郎。

おれは拳を振り上げた。

 

「な、殴るのか!? 風紀委員だろお前は!?」

 

「殴るのは、地面じゃああああああ!」

 

ドンっと地面が鳴った。

おれはこの世界に来てから、全力を出していなかった。

今、ここで出す。魔法は使わず、身体能力のみで。

なんだ、この強さ。

地面が揺れる。

ヒビが何メートルも先まで続いた。

規格外すぎだろ、マジでチート……。

 

皆が揺れでよろめいている間、おれはエリカちゃんの体を抱きかかえて、ここから飛んだ。

ジャンプ力も半端ねぇ。

第二小体育館 通称闘技場の天井の上までやってきた。

原作ではたしかここで何か問題が起こったはず。

なんだったかは忘れたけど。

 

「あ、あなた人間……?」

 

「おれでも驚いてるんだよ。日々強くなっているんだよね。一応人間だと思われます、はい」

 

ってエリカちゃん!?服が乱れて、む、胸が見えてますよ!

おれは胸を凝視する。

エリカちゃんはそれに気づいたみたいで、顔を赤らめる!

 

「み、見るなーーー!!」

 

「はい!!」

 

エリカちゃんをおれの手から下ろして、エリカちゃんに背を向ける。

 

「もう、馬鹿!!」

 

背中に蹴りを入れられた。

 

ムフフ見ちゃったぁ……。

目に焼き付いてるぞ今でも。

ひゃっほーう!

 

「なにニヤニヤしてんの?」

 

「いや、嬉しくて、素直に」

 

また蹴られた。

 

「それにしても、ここからどうやって降りるの?」

 

屋上から降りる梯子がなった。

 

「エリカちゃん、もう一度抱っこ」

 

めちゃくちゃ嫌な顔された。

 

「じゃあおれが先に降りるから、エリカちゃんはそのあと飛び降りて」

 

「え?まあまあの高さじゃない?ここ」

 

「大丈夫、おれが受け止めるから」

 

「へ?」

 

おれは屋上から飛び降りる。

魔法も使わずに。

また地面にヒビが出来てしまった。

上ではエリカちゃんが心配そうに見下ろしていた。

 

「さあ!飛び降りて!絶対大丈夫!」

 

「信じるわよー!!」

 

エリカちゃんは飛んだ。

ほんとに思いっきりのいい女の子だな。

度胸があるというか。

すぐ飛び降りたよ。おれを本当に信じてくれているということでもあるかな?

でも結局抱きつくことになるという……。

 

「離して!」

 

「はい…」

 

 

 

壬生先輩と桐原先輩がなんだか戦っている。

エリカちゃんはなかなかの好カードだと言って、近くまで見学にきていた。

剣道部と、剣術部ねぇ。

なかなか面白そうな組み合わせだね。

 

桐原先輩は面を打とうとしていない。

まあ流石に防具なしじゃねぇ。

 

「決まった!壬生先輩の突き!」

 

へ?そこに突き?肩の方に当たったように見えたが。

おれの時代と突きのルール変わってるのね剣道。

 

ん?なんだか桐原先輩キレてね?

真剣での勝負があーだこーだ言っていたが。

 

「真剣で勝負してやるよ」

 

キーンと鳴る音に耳が痛い。ガラスを引っかいたような音

たしか、高周波ブレードってやつか。

CAD使ったのね。

ってまずくね?

まともに当たったら死ぬじゃん。

最初の攻撃は、壬生先輩が避ける。

うわっ紙一重。

マジで死ぬって。

 

「キャー!!!」

 

女の子の叫び声が聞こえる。

これ殺人になるよ?

これ誰か止めないと、って!おれ風紀委員だった。

 

「はぁ……止めるか、やれやれ」

 

やれやれって言ってみたかった。

なんか主人公っぽいじゃん。

 

桐原先輩が剣を振り上げて、壬生先輩を攻撃にかかる。

 

「ダメっ!危ない!」

 

エリカちゃんが叫んだ。

おれは全力ダッシュで、桐原先輩にタックルし、そのまま掴んで闘技場の壁をぶち壊し、外へ出た。

 

 

――――――

 

このあと、第一高校部活連本部に呼び出され、初めて十文字さんと会った。

いい筋肉してるぜ、ほんと。

男はああでなくっちゃな!

おれも帰って鍛え直そっと。

結局桐原先輩は、厳罰は無し。

非を認めていたらしいし。

闘技場の壁をぶち壊したのは流石に怒られた。

地面にヒビ入れたのもついでに。

 

その呼び出されたあと、おれは風紀委員の仕事に精を出す日々。

まあ魔法使わずに、全部タックルで対処している。

巷では問題を起こすと神隠しにあう、という噂がたってるらしい。

気づけば保健室行きだと。

そして風紀委員にとてもすごい奴がいるらしいという噂も流れてた。

二科生のおれの名前はあがらない。

代わりに森崎の活躍なのではないかと、言われてるみたいだ。

森崎は戸惑っているみたいだが。

おれのタックルは誰にも見えていないらしい。

とほほ。

 

しかーし! 今後俺には壬生先輩にいろいろ勧誘されて二人きりになるときがあるのだ、原作では。

それを待つとしよう。

タックルを続けながら。

 

『全校生徒の皆さん!!僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!!』

 

え?もしかして壬生先輩とのフラグ立ってなかった?

マジかよ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。