PSO2かと思ったら   作:炙り屋

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第2話

 

あれから約1ヶ月たった。正史と同じようにまだ第1層をクリアしていない。クリアしていたならば私の他にも異分子がいることになる。そうなれば私が生きていける時間も多分減るだろう。あと2年ぐらいしかない余生が更に減るのは御免こうむる。

 私は今はトールバーナの宿屋の一室に居るのだが、メセタがコルと同じように使えて助かった。カーディナルシステムに修正されるかもしれないのでコルも貯めておこう。

 

 とりあえずこのひと月に試したことをある程度まとめようと思う。

 まずは食事。キャストなのだから食べなくても平気なのだろうと思っていたら徐々に可動部位が動かなくなっていったのだ。バレンタインチョコ等を常時持ち歩いていて助かった。機械の身体で普通の食事をするのは大丈夫かと思ったが、今のところ何も不具合はでてきていない。この身体は結構凄いんだと再確認。視界スクショやら脳内メモ帳などもあってかなり便利だ。

 次に戦闘。ウィークバレットやフューリースタンスは使えたのだが、ダメージ表記が出てこないので本当に3倍のダメージを与えているのかわからなかった。フューリーの被ダメージ増加効果は自分のHPゲージみて確認したので発動はしているのだと思う。だがある問題がわかった。私には痛覚があるのだ。この世界に転生したのだから当たり前といえばそうなのだが、このことがわかってから戦闘がかなり怖くなった。

 それとオートワードが非常に恥ずかしい。自分の意図してない発言をするのは困るのだ。冷凍マグロを振っている時に「乾かず飢えず無に還れ」「ツルギの理ここに在り」など無意識に発言していることに気がついた次の日はずっと宿屋にいた。という訳であまり戦闘はしないことに決定した。

 そして服装。アイテムポーチの中にある物を一通り試してみたが、すべての機械関節部分を隠せる服はなかった。水着、巫女服、ぬれバスタオル等は所持しているのだが露出が少ない服は倉庫にあって着れないのだ。前世の私に服は厳選していた方がいいと言っておきたい。とりあえずケンランバカマ雪が露出度が低いので着て行くことにする。

 一応着ぐるみもあった。ラッピースーツとリリーパスーツを所持している。どちらもPSO2では素顔見せたくない用やPAの調整用に着たりする。ラッピースーツが黄色い2等身の鳥の姿を模した形。でリリーパスーツが猿とウサギを足して割ったような姿のスーツだ。一応モンスターの姿なので圏内で着るのはダメだと思う。なのでフィールドで着たのだが……。

 

 

 

 

「おい、あれ。やっぱりあれだよな」

「おう……。多分、あれだな」 

 森フィールドで3人で狩りをしていると、すこし離れた所の林の影から190cmぐらいある黄色い生物が出てきた。2等身で目玉がでかい。クチバシや羽、趾があることから鳥類だろうか。

「あれが、ラッピーか。思ってたのよりでかいな」

 デスゲームが始まってから2週間近くたっていた。俺達はβテストプレイヤーだったのである程度の狩場も覚えていたのだが、やはり装備が弱い。そこで今一部で話題になっている武器を狙いに来たわけだ。

 『冷凍マグロ』

 ネタのように見えるがこの武器相当強いらしい。実際に見たことはないのだがこの武器敵を低確率で凍結状態にするという効果をもつらしい。モンスターを一方的に殴れるのはこれから先も非常に役立つ。その武器をドロップするのがこのラッピーだ。情報屋から聞いたのだがどうやら初日、それもデスゲームが始まる前からこの武器を引き当てた猛者がいるらしい。なんでも女性なんだとか、一度お会いしてみたい。

「とりあえず、シングルシュートで様子を見てみるか?」

「いや、初日から今まで目撃例がなかったんだ。多分気付かれると即行でにげられるんじゃないか?」

「じゃあどうするよ。攻撃モーションがわかってない敵にはあんまりつっこみたくないしさ」

 βテストの時から3人でやってきていたがその時はラッピーというモンスターは実装されていなかった。それに情報屋ですら知らないのだ。もしかしたら初見殺しの技があるのかもしれない。

「……。オレがレイジスパイクでつっこんでみるから後はどうにかしてみてくれ」

 乾いた笑顔で仲間の一人が言った。止めようとしたが言葉が見つからない。

「……すまん」

 謝罪の言葉しか出なかった。もう一人も申し訳無さそうに下を向いている。

「いいって。他のゲームとかでもつっこむのはオレの仕事だったろ?それにもしファーストアタックで倒しちゃっても文句言うなよ」

「了解、まかせた。じゃいくぞ?」

 そう言ってカウントダウンを始める。こいつにはいつも助けられていると思いながらも気を引き締める。もう一人の方も両手斧を担ぎ準備はOKのようだ。

 0になると同時にラッピーとの距離を詰め、その背後に宣言道理にスキルを叩き込む。しかし既のところで交わされる。それもほぼバク転に近い形でだ。だが避けられてもいいようにこちらももう仕掛けていた。両手斧持ちのワールウインドが待ち構える。だがそれも回避、今度は側転だ。いや側転というには少し変か、空中で1回転している。だがその空中に居る今がチャンスだ。空中であれば避けられまい。俺は対空スキルとしてソニックリープを放った。だが奴は空中で更に回転し攻撃を避け俺の後ろへと落ちていく。後方でピヨッという音が聞こえた。

「反撃が来るぞ!!」

 俺の一声で皆が一斉に防御態勢に入る。後方を確認している余裕が無い俺は盾を構えつつ後ろを向く。防げるかどうかは神頼みだ。お願いします。その瞬間爆発音が響き、辺りを白い煙が覆う。が、いつまでたっても反撃が来ない。恐る恐る盾から顔を出してみるとそこにはラッピーの姿が影も形もなく只々木々が続いているだけだった。

「あー、まさか……逃げられた?」

 二人の方へ振り返りながら謝罪のジェスチャーを出すと二人共笑って許してくれた。やはり持つべきものは友である。

「多分な。それにしてもあの回避すごかったな」

「確かになー。空中でもう一回回避出来るとは思わなかったぜ」

「やっぱり見た目が鳥類種なだけはあるな。その気に慣れば空中に静止出来るかもしれないし、それに両羽から火花みたいなのが凄いでてて怖かったぜ」

 そうだ。目撃例と決定的に違っていたのがそこだ。羽の先、人間でいえば指の所辺りから手持ち花火のごとく猛烈に火花が出ていた。多分最後の爆発もその火花で起こしたのではないだろうか。

「炎使うみたいだしもしかしたら新種かもな」

「なら倒してたら冷凍マグロじゃなくて炙りマグロとかか?」

 そんなもんどうやって武器にするんだよと思いながらもふと思い出す。

「そういや背中になんか付いてなかったか?」

「ん?なにが?第2の羽か?」

「いやー、見てなかったら多分俺の気のせいだよ」

 多分あれはファスナーのスライダーだったような……。

 

 

 

 

 ――あの時は焦った。咄嗟に取り出した武器がツインマシンガンで良かった。でなければ多分三連撃をもらっていたはずである。スタイリッシュロール回避が非常に助かる。あっちでもこっちでも。しかしプレイヤーに狙われるとは、そんなにモンスターっぽかっただろうか?これでも結構カワイイほうだと私は思うのだが。

 そうこう思考をまとめているうちに体内時計が鳴る。そろそろ広場でディアベルさんの会議が開かれるころだ。椅子から立ち上がり背伸びをする。キリトやアスナが居るかどうかの確認だけはしておこうと思う。ここから原作からずれていたらこれから先の原作知識が役に立たなくなってしまう。少しでも私が長生きするために……。

 そうして私は宿屋を後にした。

 

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