魔法少女リリカルなのはAvenger   作:ヘタレ屋本舗

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プロローグ

 漆黒の空に不気味な輝きを放ちながら舞うそれは、禍々しい魔力光を纏った黒衣の少年の姿だった。

 風変わりな黒の仮面で顔の上半分を覆い、すらりと引き締まった体つき、一切無駄のない動きが、彼をただ者ではない事を物語っている。

 

 仮面や纏っている黒衣にはベッタリと真っ赤な血が付着し、彼の眼下には数十を越える遺体が転がっていた。

 そんな凄惨な光景を目の辺りにし、男は仮面の奥で一人ほくそ笑んだ。

 

 転がっている無数の屍を見下ろす。

その眼は、生ゴミを見るかのような冷たいものだった。

いや、生ゴミを見る眼だとしても、もう少し温かいだろう。

 

 彼の眼前で息絶えた者は皆、黒いバリアジャケットに身を包んでいる時空管理局の局員だ。

二年前から一人で始めた局員狩り、目的のためにロストロギアを強奪した事から、局内では『ロストロギア強奪事件』と呼ばれ、日に日に襲撃人数とロストロギアの強奪件数を増やしている。

 彼が局員を襲撃する人数を増やせば増やすほど、ロストロギアを強奪すればするだけ彼が束ねている反管理局組織『Avenger』に加入する人数も少しずつ増えていき、着々と勢力を拡大していった。

 その規模はもはや管理局が危惧を抱くほどに。

言い換えればそれは、それだけの人間が今の管理局の体制に不満を抱いているという事の証明に他ならなかった。

 

 彼――いや、彼らAvengerと管理局との争いも、既に半年が過ぎ、その戦闘回数は優に百を越えている。

その都度、戦闘後に訪れる息苦しさと苦痛、郷愁や憤怒が少年の胸を締め付けた。

その度、無意識に過去の記憶がフラッシュバックする。

 

 

 

 第108管理外世界フリューゲル――

それが彼――タツヒ・クルーガーがネクタル・ソーマ族として生まれ育った場所だ。

緑溢れる草原、透き通るような澄んだ川、自然豊かな世界で、娯楽施設は何一つなく不便な世界ではあったが、タツヒにとってそこは楽園であった。

 

 ネクタル・ソーマ族は少数戦闘民族で、知力・体力・腕力などか非常に秀でた一族だ。

 今から数十年前、一部のネクタル・ソーマ族が管理局を倒し、自分達こそが新たな世界の管理者としてその主導権を握ろうと画策、反抗を企てた事があったが、事件は未遂に終わり、首謀者は捕縛され後に処刑されている。

 それらの経緯があったため、ネクタル・ソーマ族は管理局から排斥され、残された者達は管理局が用意した無人世界(はこにわ)で暮らす事を余儀なくされた。

 たが、それでも家族や仲間と共に暮らし、日々を楽しく明るく笑って暮らしていた彼にとって、その暮らしが苦だと思った事など一度も無かった。

 

 しかし、管理局は彼らの能力の高さを危険視し、集落は局員の襲撃を受ける事となった。

 

 タツヒの目には今でも鮮明に焼き付いている。

深緑が鮮明に染まり、阿鼻叫喚の地獄絵図、管理局員の愉しげな表情――

 

 あの光景を忘れた事など一度も無い。

忘れようと思った事も無い。

俺は忘れない、あの光景を。

 

 

 

――子供が何も出来ないと思ったら大間違いだ

 

 

 

――子供が力に怯え屈伏すると思ったら大間違いだ

 

 

 

――子供が剣を手にしないと思ったら大間違いだ

 

 

 

ーー子供が敵を殺せないと思ったら大間違いだ

 

 

 

 俺は討つ。

俺の敵を必ず討つ。

家族を、仲間を、友を殺した管理局を絶対に――

 

 

 

 眼下に広がる鮮血の光景を鋭い視線で見据え、苦い思いに身を浸していたタツヒは、通信機から入ってきた青年の声で我に返った。

 

 

《――カオス殿、任務完了しました》

 

 

 カオス――それが今の少年の名前だ。

反管理局組織Avengerのリーダーであり、カオスという名前は今では局内では広域次元犯罪者として知られている。

 

 

――広域次元犯罪者?……フン、俺から全てを奪った管理局(やつら)の方が犯罪者じゃないか!

 

 

 内心毒づく。

そう、これは当然の報いなのだ。

自分から全てを奪った管理局が受けなければならない当然の報い。

 

 

「――そうか、ならば退くぞ」

 

 

 タツヒ――カオスは素早く気持ちを切り替え、次の標的の元へその怒りの矛先を向けた。

 

 再び無様に転がっている局員を見やり、彼は密かな満足感を覚える。

 

 

――俺は力を手に入れた

 

 

 目の前で家族を殺されるまま、何も出来ずただ逃げ惑う事しか出来ずにいた九歳の子供。

あれから七年――今の自分は、あの無力な子供ではない。

 

 

 

 

 

 

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